「あら?ここは関係者以外は立ち入り禁止よ?」
「そうかい、そりゃあ知らなかった」
「・・・・・どうやって侵入したのかしら?」
「さぁ?」
本来関係者以外立ち入り禁止のターフへと続く地下の道、普通なら絶対にいない青年刃牙がそこにいた。こちらを見ながら感心したかのように笑う。
「俺とは違う形だが、掴んだようだな」
「ええ、よくわかったわね」
「わかるさ見れば、俺の場合なら周囲に被害があるがあんたは違う、今は肉体そのものにだけ結果が出てる」
「流石に格闘技じゃないから貴方ほどは無理よ」
「で、どうだい?」
「なにが?」
「やれそうかい?」
問いかけてくる刃牙に対してキングヘイローは腕を組みながら笑う。今日という本番までにどれだけの研鑽を積んだが知るのは二人のみ、見ただけで分かる者、積み上げてきた者、これまでにどれだけイメージしながら戦ってきたか、その結果をこれから披露する。
相手は生身のウマ娘、イメージ通りに行くかは保証はない、しかしそれでも彼女はやりおおせた。だからこそ余裕の笑みを浮かべる。勝利を確信した笑みを。
「あら愚問ね、私の勝利は確定事項よ」
「そうかい、なら見させて貰うよ、一流の姿を」
「ええ、見ていなさい、このキングの勝つ瞬間を」
バシンッと手を叩き合う。ハイタッチとは違う音、光指す道へとキングヘイローは脚を進めた。G1のファンファーレが鳴り響く、観客が盛大な拍手で場を盛り上げる。ゲートに各ウマ娘達が収まる中、挑発してくる者もいる。勝ち宣言をしてくる者もいる。しかしそれでも彼女は、キングヘイローはすでに勝者はこの私といわんばかりの表情をする。
ただ一言、今日のレースの勝者はこの私だと、それだけを言いゲートに収まる。そしてついにゲートが開いた。全員出遅れなくゲートから飛び出す。先頭争いはメジロダーリングやアグネスワールドが先頭争い、ほとんどのウマ娘が混戦状態の中でもキングヘイローは冷静に周りを見ていた。3、4コーナー中断を33秒台で駆け抜けていく、まずまずのスピード
「このままマーク!」
「逃がさない!」
「勝つのは私だ!」
「・・・・・・」
練習通り、今のところは読めている展開、しかし負ける可能性もあるが、キングは確信していた。イメージトレーニングの中で一番勝率が低かった勝ち方。大外からまくって勝つ方法。自身の能力を理解した上で何度も何度もあらゆる戦法で勝負した。
その中で一番勝率が低く、しかし現実的であるであろう勝利へのルート。何十何百という勝負の中、見つけ出した勝利へのルート。
やはり全員ペースが速い、混戦状態のままコーナーを駆け抜けている。それでも想定内、このまま直線に入れば一気にペースを上げて先頭は逃げ切るはず。内側と中断から一気に前に出る娘もいる。
なら私は大外から一気に行くとしましょう。見ていなさい、このキングが勝利する姿を!今日という日に数え切れない敗北と手のひらで数えるほどの厳しい勝利を手にしたこの私にひれ伏しなさい!
最終コーナーを回って直線に入る。先頭は以前アグネスワールド、各ウマ娘も一気にペースを上げゴールへと駆け出す。そんな中大外から一気に仕掛ける。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なに!?」
「くっ!」
メジロダーリング、アグネスワールド、ブラックホークが先頭を譲らんばかりにギアを上げ逃げ続ける。しかし途中スタミナ切れで失速する者もいれば一気に末脚で抜け出してくる者もいる。
そんな中大外から一気にまくって上げてくるキングヘイロー、何バ身あったのかわからない距離を段々と縮めてくる。声を荒げながら余裕なんてない表情を浮かべ走り続ける各ウマ娘達
栄光のゴールまであとわずか、一切気を緩めずただゴール盤を駆け抜けること、他のライバル達も私が勝つと言わんばかりに走り続ける。しかし大外からやってくるキングの末脚の驚きを隠せない。
「なんで、なんで」
「あんたが!」
「キングヘイロー!!!」
「どうしてそこにいる!!?」
マークをしていないわけではなかった。ただ途中から完全に眼中になかった。いつも通りに逃げたり先行で駆け抜けたり、己の走りをしていた。勝手に沈んでいったと思った。まさかこんな最後の直線で一気に先頭まで来るとは思っていなかった。
だからこそどんな手品を使った。レースの最中答えろと言わんばかりに睨みつける。キングヘイロー自信も余裕の表情ではない、レース前とは打って変わった表情。しかしほんの一瞬笑みを浮かべた。
「レース前に言ったでしょう。勝者は私だと」
「ふざけるなぁぁぁ!!」
「ブラフも脅しもきかないね!」
「勝つのは私だ!!」
先頭がついに変わる中大外から一気に末脚で上がってくるキングヘイロー。各ウマ娘達もラストスパートをかけているがどんどん追いつかれ追い抜かれていく、しかし先頭との距離はまだ遠い、だからこそほんの一瞬油断したのだろう。ペースが一瞬落ちた。そこを見逃さなかった。
全身全霊を駆けて走り続ける。このままいけば誰が最初にゴールするのか分からない状況。それでも最後に勝つのは私だと確信していた。異変に気がついたのはすぐにわかった。
「なんで・・・なんで笑ってるんだ!?」
「本当に勝つってこと??」
「いいえブラフよ!差し切れるはずがない!」
「いいえ、ブラフでも冗談でもないわ」
笑みはなくなり真剣な表情に戻る、もう語ることはないと、差を詰めながら徐々に追い上げてくる。後少しで、あと少しでゴール。G1の栄光のゴールまであと少し、逃げ切れる。
「勝てる!勝てる!」
「負けるかぁぁ!!」
デットヒートの中、静かではない中それでも周りは聞こえた。大外から迫る脅威の足音が、キングヘイローがやってくる。負ける可能性が出てくる恐怖に打ち勝つべくもう残り少ないスタミナを、すでにないスタミナを使い、根性で、執念で走る。
ついに二番手まで上がり先頭に追いつく、抜かれる者、抜き返そうとする者にキングは笑みを浮かべ先ほどの続きを答えた。
大外から飛んできたキングはゴール直前で纏めて撫で切り勝利した。ついに手が届いたG1、喜びの感情を爆発させる。スタンドからはキングの名が、勝者の名前が、これがG1、これが勝利、久しく味わえなかったこの勝利をキングは噛みしめた。
控え室に戻ろうとするとまたいた。お疲れさんとねぎらいの言葉をくれる。
「見てたぜ、ギリギリの勝利」
「ええ、私もまだまだね」
「ならもっと鍛えないとな」
「そうね」
「改めておめでとう一流のウマ娘」
「ええ、ありがとう」
刃牙と別れた後、全てのプログラムが終了し、トレーナーと勝利を分かち合う。おめでとうとの連絡がたくさん来る中キングはただ空を見つめこう呟いた。
「はぁ~早く練習したい」
キング編は終了です。過去のレースを見返して書いたのですが、やっぱり難しいです。