ヒノエ・ミノト「惚れたハンターを送り出して帰ってきたと思ったら恋人作って連れてきた」   作:あんころずんだ餅

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キャラの口調や呼称、設定などきちんと履修できてないかも


違和感を覚えるかもしれませんが、ざっくり雰囲気を楽しんで頂ければ幸いです。


帰郷

「ん~、今日は一段とおいしく感じます♪」

 

 

鼻唄を唄いながら上機嫌にうさ団子を頬張る受付嬢の一人、ヒノエ。

表情は喜色満面を通り越し、最早だらしないと評されるほど緩んだ顔を晒している。

 

 

「ヒノエお姉ちゃん、とっても美味しそう…ううん、嬉しそう?」

 

 

「あら嫌だ私ったら、そんなに顔に出てましたか?コミツちゃん」

 

 

「うん!コミツも嬉しくなっちゃうくらい嬉しそうだよ!」

 

 

たたら製鉄が盛んなカムラの里、その象徴たる巨大な高殿の前には村の中央とも言える広場がある。そこにハンターにクエストを斡旋する受付嬢の一人であるヒノエが長椅子に腰掛けており、隣に飴屋のコミツが並んでうさ団子を頬張っていた。

 

 

「えへへ、でもね、コミツも今日がすごく楽しみなんだ。だってあの人が帰ってくるもん!」

 

 

「えぇ、早いもので彼が此処を発ってもう一年が経つのですね…」

 

 

生まれてからずっと同じ村で過ごしてきた幼馴染。幼少の頃から鍛錬を積み重ね、この里でモンスターを狩るハンターとなった彼。

ハンターとなってからも様々なモンスターに立ち向かい、その悉くに勝利を収め、古龍種すらも狩猟せしめる腕前まで己を磨き上げた彼。

この里の誇りであり、唯一のハンターだった彼がこの里を後にしたのはちょうど一年前だ。

モンスターはこの里の近辺だけでなく、世界中に存在している。

時に人々の暮らしを脅かすモンスター、その中でも災厄とも称される古龍種は強力なだけではなく、その通り名に違わず一帯の環境や生態系を変えてしまうほど強大かつ多様な影響力を持つ。

その強大な存在に立ち向かうのがハンターであるがその数は限られており、まして古龍種を狩れる程の腕前を持つハンターとなればその数は極々少数。

 

その数少ない狩りの腕前をもつハンターである彼にある便りが届いた。

簡潔に言えば、ハンターギルドからの救援要請だ。

 

過去に風神龍、雷神龍と呼ばれる新種の古龍を撃退した実績を持つ彼の腕前はハンターギルドでも高く評価されており、世界で古龍の被害を受ける集落の救援に向かって欲しいという要請が届いたのだ。

 

当然、里で唯一のハンターである彼を連れて行かれてしまっては里の存続に関わるため、当初はこの要請を拒否していた。

しかし、困っている人々を放っておけないお人好しな彼。

里に代わりのハンターを派遣する事を条件にその要請を受諾してしまったのだ。

 

 

「本当、あの時は力づくででも引き止めようと思ったのですが…」

 

 

「真剣な顔してたもんね、困ってる人が居るのなら放っておきたくないって」

 

 

「…昔から、里の皆が知っていたことでした。あの表情の時の彼は梃子でも動かないと」

 

 

「優しいけど頑固だもんね、あの人」

 

 

「フゲン様といい、ハモン様といい、この里のハンターは頑固でなければならない決まりでもあるのでしょうか…」

 

 

「でもヒノエお姉ちゃん、あの人の事好きだよね?」

 

 

「んぐっ…、そう率直に言われると少し、いえ、かなり気恥ずかしくはありますが…」

 

 

思いがけない不意打ちにうさ団子を詰まらせそうになるがなんとか飲み込む。

彼に恋心を抱くようになったのはいつ頃からだろうか。

気が付けば芽生えていた自身の想いに当初は困惑していたものだが、時を追う毎に抑えられない心は膨れ上がり、その気持ちに素直になるようになれたのは彼が里を去った後の事だった。

 

 

「…えぇ、そうですね。私はあの人の事を愛しています」

 

 

「…えへへ、やっぱりなんだかコミツも嬉しくなっちゃうね、不思議だね」

 

 

「もう、あまりからかわないで頂戴なコミツちゃん」

 

 

上機嫌にぱたぱたと両足を振るコミツ。

相反して怒っているように、拗ねているように唇を尖らせるヒノエ。

しかしその口角は隠し切れないほど釣り上がっており、誰の目から見ても喜んでいる表情だった。

 

 

「…頬が緩んでいますよ、姉様」

 

 

「あら、ミノト。ごめんなさい私ったら年甲斐もなくはしゃいじゃって」

 

 

「こんにちは、ミノトお姉ちゃん」

 

 

「こんにちは、コミツちゃん。姉様、気持ちは分かりますが少し緩みすぎでは?」

 

 

ヒノエと瓜二つの容貌のミノトと呼ばれる彼女。

ヒノエの双子の妹であり、もう一人のカムラの里の受付嬢だ。

普段から冷静沈着であり、鉄面皮でもある彼女は冷徹な印象を受けがちだ。しかしその心根はとても温和で里の皆にも良く尽くしている。

そんな彼女だからこそ里の皆からも愛されており、ヒノエと二人、里を彩る看板娘として受付嬢の仕事に就いていた。

ゆっくりこちらに歩いてきた彼女の表情は僅かに呆れており、その口から姉への叱責の言葉が紡がれる。

 

 

「確かにあの人のハンターとしての腕前は認めていますよ。幼少の頃よりウツシ教官やフゲン様のしごきにも耐え抜き、オトモのアイルー、ガルクと確固たる絆を結び、驕る事なく狩りに臨む姿は凛々しく写ることもあるでしょう。しかし、飽くまでもそれは狩りの腕前だけに焦点を当てた盲目的な意見です。部屋は散らかり、装備の手入れなども最低限のみ。家事の大半は家のアイルーに任せっぱなしでだらしない事この上ない。以前も彼の家を訪ねた時は見かねて私も部屋の片付けを手伝ったほどです。そもそも彼はこの里のハンターなのですからここを出ていくこと自体が言語道断。にも関わらず困っている人が居るのだと押し切って出て行ってしまう始末。えぇ、確かに彼のあの優しさは他の人には無い美点ではあります。しかし困っている人が居るのはこの里でも同じことが言えるでしょうに。イブシマキヒコ、ナルハタタヒメも未だその行方は知れず、対になる前に討伐しなければならないのに手遅れになったらどうするのか、里の近辺にはこれまで確認されていなかった古龍の発見報告もあるのに里に居ないのではどうしようもないではないですか。だと言うのにあの人と来たら…」

 

 

「ミノトお姉ちゃん、あの人の話だとすごくたくさんお話しするよね」

 

 

「え、い、いやそれは…」

 

 

「それに、あの人の家の事情にまで詳しいのねぇミノト?」

 

 

「あ、あの人にはそれだけ言っておかなければならないことがあるという事です。家のことは…たまたまです。たまたまオトモのアイルーから聞いた話であって…」

 

 

「それでわざわざ直接お家の片付けに行ってあげたの?」

 

 

「あの人の為ではありません、アイルーが可哀想だったからです」

 

 

「うふふ、まるで通い妻みたいね?」

 

 

「んなっ、い、いくら姉様の言葉とはいえ聞き捨てなりません。私が…あ、あの人の…」

 

 

鬼灯のように耳まで真っ赤に染めた姿は普段の冷静な彼女からは考えられないほど狼狽している。

受付嬢としての彼女しか知らない者が見れば驚きのあまり目を見開き、卒倒しかねないだろう。

 

 

「それにほら、このミノトを見てると私まで嬉しくなっちゃう」

 

 

「な、なんですかその写真!?」

 

 

「ミノトお姉ちゃん、すっごくにやけてる…」

 

 

ヒノエが取り出したのは集会所のクエストカウンターに座るミノトの写真。普段からこの場所で受付嬢の仕事をこなしているため、謂わば日常的な写真ではあるのだが、その顔は抑えきれずといった具合に緩み切っている。

 

 

「い、いつの間にこんな写真を…!?」

 

 

「うちで飼っているフクズクちゃん、とっても優秀なのよ?」

 

 

「あの子は…!私だって普段のお世話をしているのになぜ姉様の言う事ばかり…!」

 

 

「うふふ、それでも普段のミノトなら撮られている事くらい気付けるでしょうに、余程嬉しいことでもあったのかしら?」

 

 

「し、知りません!というか捨ててくださいそんな写真!」

 

 

「あら、ダメよ勿体ない。ミノトのこんな顔、普段なら絶対見れないもの」

 

 

「わー、このミノトお姉ちゃんの顔、さっきのヒノエお姉ちゃんの顔そっくり…」

 

 

「「コ、コミツちゃん!」」

 

 

女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、じゃれあう三人は微笑ましく少々騒々しい。しかし、彼が去ってからは目に見えて彼女らの笑顔は数を減らしていた。彼が帰ってくるとの便りを受けた途端に笑顔を取り戻している様子は単純だと揶揄されるかも知れない。だがその様子から彼が彼女らにとってどれだけ大切な存在かが窺い知れる。

 

 

「それにしても遅いですね、彼」

 

 

「そうね、そろそろ着く頃だと思うけど…あら?」

 

 

到着の遅い彼を訝しんだ時、神妙な顔つきで話す二人の高年の男性が視界に飛び込んでくる。

カムラの里の里長であるフゲン、そして加工屋を営むハモンが顔を合わせ話している。

 

 

「…隠し通せることではあるまい、話すしかなかろう」

 

 

「…どうなると思う?」

 

 

「…考えたくはないな」

 

 

悲痛であり、どこか諦観を感じられる空気で話す二人。

ヒノエとミノトにとっては古い付き合いであるが、その二人でも見たことのない表情をしている。

 

 

「御二方、如何されましたか?」

 

 

「御顔を見る限り、只事ではないようですが…」

 

 

「お、おぉ、ヒノエ、ミノト。いや、大したことでは無い、のだが…」

 

 

気焔万丈、どんな時もその言葉を口癖に豪快に笑う。そんな姿こそ二人の知る里長なのだが、そんな里長らしからぬ歯切れの悪さ。

 

 

 

 

よもやと、嫌な予感を胸に抱いた二人だが察した様子のハモンが二人に待ったを掛ける。

 

 

「里の危機であるだとか、火急の事態が起きたと言う話ではない」

 

 

「ウム、我が里の誇りである彼のハンターの事なのだが、その便りにな…」

 

 

「…彼が、どうかしたのですか?」

 

 

腕前は疑うまでもなく一流のハンターと言える彼だ。しかしそんな彼であってもハンターとは時に命を落とす事もある稼業。

まさか彼の身に万が一があったのかと嫌な予感を胸に抱いたその時、遠くから響き渡る様に快活な声が聞こえた。

 

 

「おーーーい!みんなーー!!」

 

 

その声を聞き間違えはしない。何度も勇気付けられたから。

その姿を見間違える筈はない。その笑顔に何度も救われたから。

 

 

我らの里の誇り、唯一のハンター。

 

そんな彼が変わらぬ満面の笑みを浮かべ、大きく手を振りながら此方へ走ってくる姿はまるで子供のようだ。

 

 

「あぁ…良かった。無事、戻って来てくれたのですね」

 

 

「…まぁ当然でしょう。彼ほどの腕前であれば」

 

 

安心したように胸を撫で下ろすヒノエ。

言葉はぶっきらぼうだが、表情に滲む安堵を隠しきれないミノト。

自分たちの抱いた心配はどうやら杞憂だったようだ。

しかし近づいてくるにつれ見えてくる一つの違和感があった。

 

 

「…あら?」

 

 

「…もう一人、誰か居ますね」

 

 

件の彼の後ろを付いて誰かが一緒に走ってきていたのだ。

段々はっきりと見えてくる顔は疲労の色に染まっており、滝のような汗を流している。

彼と同じようにハンターの装備を身にまとった女性。

しかしその顔に見覚えはなく、二人の知己では無いことは確かだ。

首を傾げている間にすぐ側にまで辿り着いた彼が嬉しそうに声を掛けてくる。

 

 

「ただいま!ヒノエ、ミノト!コミツちゃんにハモンさん、里長様も!」

 

 

「えへへ、お帰りなさい!」

 

 

「壮健な様で何よりだ」

 

 

「ウム、良くぞ戻った!我が里の猛き炎よ!」

 

 

「何よりもまず、ご無事で何よりです。お帰りなさい、貴方様」

 

 

「えぇ、本当に良く無事にお戻り下さいました。里の皆も貴方の帰りを心待ちにしていましたよ」

 

 

「…嬉しいな、皆の顔も、里の光景も、出迎えてくれた暖かさも、ようやく帰って来れたんだって実感できる」

 

 

涙を浮かべそうなほど感極まった表情を浮かべ、帰郷の喜びに浸る彼。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、は、速いよ、置いてかれない様にするのでいっぱいいっぱいだった…」

 

 

その傍ら、息絶え絶えに両手を膝に突き、呼吸を整えるハンターであろう女性。

 

 

「あはは、ごめんごめん、里に帰ってきたんだと思うと居ても立ってもいられなくて」

 

 

「えぇと、ごめんなさい、そちらの方は…?」

 

 

「見覚えの無い方ですね、里の者ではないようですが…」

 

 

ようやく呼吸の整った彼女が顔を上げ、二人を見据えて話し出す。

 

 

「ひぃ、ふぅ、えっと、初めまして。私はハンターギルドに所属するハンターです。それと、えっと…」

 

 

 

 

 

 

後に、その場にいた里の者達はこう語る。

 

 

 

 

 

「か、彼と、お付き合いさせて頂いています!」

 

 

 

 

 

その言葉が放たれた瞬間、

風に乗って舞い踊る桜の花びらも、高殿から舞う火の粉さえも雪と見紛う程の冷気に里全体が包まれ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………は?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに確かに、二頭の雪鬼(ゴシャハギ)を見たと。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか書いてるうちに勝手にコミツちゃんが暴走し始めた
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