剣聖がオラリオに降り立つのは間違っているだろうか   作:名無しの葦名衆

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更新遅くなってすみません
今回はグダグダになってしまいました
息抜きにプレイしたブラボでゲールマンとカインの流血鴉にボコボコにされてしまった・・・
いつかその二人がそれぞれ主役のクロスオーバーも書きたい



五話「ロキ・ファミリアは剣聖と出会う」

「行ってしまった・・・」

まさか助けてくれた人から逃げるとは思わなかったので唖然としてしまう

助けてくれた金髪の剣士もそのようで少しおろおろとしていた

 

「お主、大丈夫か?」

「・・・大丈夫です」

気になって声をかけてみたが声を聴く限り落ち込んでいる

というか今にも蹲りそうになっておる

 

「儂の仲間がすまぬな、あやつの代わりと言ってなんじゃが感謝するぞ、儂は【ヘスティア・ファミリア】の葦名一心じゃ。お主の名は?」

「【ロキ・ファミリア】所属のアイズです」

「なんと、ロキ・ファミリアとな」

まさか都市最強と謳われるファミリアに出会えるとはな

しかもこの少女、先ほどのベルを助けたときに放った一閃

 

「こちらこそごめんなさい。私のファミリアがのせいでミノタウロスが・・・」

説明を聞くとアイズのファミリアの遠征帰りにミノタウロスの集団に出会い、戦闘したら怯えたミノタウロスが上層に逃げてきたらしい

 

「なるほどの、つまりお主らのせいで儂らは死にかけたと」

「ごめんなさい・・・」

そう言うとアイズは落ち込んでしまう、流石にこればかりは儂が悪いの

 

「冗談じゃよ、お主らのおかげでこうしてミノタウロスと戦うことも出来たし逆に感謝しておるわい」

「倒したんですか?」

「・・・まぁそうじゃが」

食いつくように質問をしてきたアイズに少し驚きながらも答える

何かまずいことでもしてしまったのだろうか

 

「Lv・・・」

「ん?」

「一心さんのLv・・・いくつですか?」

あぁ、なるほどな。もし儂がLv1だと答えるとLv2にカテゴライズされるミノタウロスを倒せるのは難しい、仮に本当の事を話しても信じてくれるかどうか・・・。疑われてロキ・ファミリアに因縁を付けられてしまえば拾ってくださったヘスティア神に申し訳が立たん。

ここは少し誤魔化しておくとしよう

 

「Lv1じゃよ、だがミノタウロスは既に瀕死だった。恐らくお主らの攻撃を受けて逃げてきたのじゃろう、そのおかげでLv1の儂でも倒すことができたわい」

「そう・・・ですか」

なんとか誤魔化せたのかアイズはそれ以上なにも言ってこなかった

しばらく沈黙が続いた後、奥から一人の冒険者が走ってくる

 

「おい、アイズ!!始末できたか!!」

「うん、なんとか」

やってきたのは狼人、恐らくアイズと同じファミリアなのだろう

大声でアイズに声をかける

 

「チッ、やっと終わったか。ミノタウロスの野郎自分より強いからって逃げるのかよ、あいつらモンスターだろ」

「それはラウルの忠告を無視したベートさんが悪い」

「あー悪かったよ、これでいいだろ」

ベートと呼ばれた狼人は嫌そうな顔をし、頭を掻きながらアイズに謝罪する

 

「んで、そこのジジイはなんだよ」

「この人は一心さん、私が助けた冒険者と一緒にいた人」

「お前が助けた冒険者ってあれか!!さっき逃げるように上に向かってたやつか!!」

くくっと笑いながらベートは腹を抱える

アイズはむすっと顔を膨らませる

 

「おいフィン!!ババア!!ガレスのジジイ!!やっぱりアイズの野郎、助けたやつに逃げられたらしいぜ!!」

ベートが向いた先を見ると先程ベートがやってきた道から大人数のパーティーがやってくる

 

「う~ん、やっぱりそうだったんだ、遠くから見てもしやと思ったけど」

先頭にいたのは金色の長槍を持った小人族と

 

「ババアと呼ぶなベート、何度言ったらわかるんだ全く」

呆れ顔をしたベートを叱る、エルフの女性に

 

「まぁ、あやつには何度言っても変わらんぞ。そんな簡単に治るはずもないしの」

大斧を携えたドワーフであった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

お互いに軽く自己紹介を済ませた後、一心はアイズ、ガレス、フィン、リヴェリアと会話をしていた

ちなみにベートはぎゃーぎゃー騒ぎながら二人のアマゾネスに連れていかれた

 

「すまないね、僕らのファミリアのせいで君ともう一人の冒険者に迷惑をかけて」

そういいながらフィンは一心に頭を下げる

 

「なに、気にしなくてもよいわ。まぁ流石に冒険者とやらになって初めてのダンジョンでいきなりこんな目に合うとは思わなかったがの」

「ん、一心よ。お主今日初めてダンジョンに潜ったのか?」

「おう、そうだが?」

一心の答えを聞いたガレスは少し笑いながら喋る

 

「いや、お主のような歳を食った者が冒険者になるのは珍しいを通り越して不思議での。ちと気になったのよ」

なるほどのと少し考える一心

 

「やはり儂のような歳から冒険者になるのは珍しいのか」

「まぁの、お主の歳まで冒険者をやっている者は少なくての。殆どは」

「おめぇみてぇな雑魚か、こいつらくらいだよ」

ガレスの言葉をベートが遮って一心に話す

それを聞いた一心はピクリと眉を動かす

 

「ほぅ、そこまで言うか。ベートよ」

「雑魚が俺の名を呼ぶなよ。おめぇのような歳食ったジジイがこんな所で何してやがる」

「やめるんだベート」

「ベート、その口を慎め。彼は今私たちと話してるのだ」

「フィンとババアは黙ってろ」

注意をするフィンとリヴェリアを無視しベートは一心に話し続ける

 

「ジジイならジジイらしく田舎でこそこそと生きていればいいのによ。その歳で冒険者だぁ?舐めてんのかよ」

「舐めてはおらんぞ」

「その身体でなにが言えるんだよ、装備もろくにしてねえのによくギルドが許したもんだ。雑魚じゃないなら証明して・・・いてぇ!?」

突然の頭に拳骨を喰らったベートは後ろを見る

そこにいたのは先程ベートを連れ去っていったアマゾネスの二人だった

 

「ベート!なんで団長の邪魔をするのよ!!」

「そうだよベート!大人しくしといてって言われてたじゃん!!そんなにアイズが誰かと話すのが嫌なの?」

「うっせえぞバカアマゾネス共!!!!」

「・・・すまない、彼はあんな風にしか話せなくてね」

「大丈夫じゃよ」

勝手に喧嘩を始めるベートとアマゾネスたちを見ながらフィンと一心は苦笑する

 

「さて、君とこうやって話の場を設けたのは理由があるんだ」

「ほう、その理由はなんじゃ?」

「君、アイズから聞いた話だと瀕死になっていたミノタウロスを倒したんだってね」

「あぁ、そうじゃが?」

「それ、僕は嘘だと思うんだけどどうかな?」

一瞬一心の時が止まる

 

「理由は?」

「勘さ」

あまりにも簡単な理由だったがフィンには十分な理由だったようで、自分が倒したと確信しているかのように感じた一心は渋々答える

 

「・・・確かに儂がミノタウロスを倒した。して、それだけのために儂と話をしたのか?」

いいやとフィンは首を横に振る

 

「実はもう一つあってね・・・ロキ・ファミリアに入らないか」

その発言にガレスやリヴェリア達が驚く

 

「フィン、正気か?」

「あぁ、至って正気さ」

リヴェリアの質問に一切顔を向けず答えるフィン

その目はジッと一心を見ていた

 

「その理由も聞かせてもらえないだろうか」

「さっきと同じさ。それと絶対君を仲間に入れるべきだと僕の親指が言っている」

どうだろうかとフィンは一心に手を差し伸べる

だがその手を一心は止める

 

「すまぬがその話は出来ぬということにしてはもらえないだろうか」

「・・・理由を聞いても?」

「儂は見知らぬ土地でヘスティア神に助けられ、ファミリアにも入れてもらった。ならば恩を返さねばならぬものよ」

「そうかい、それは悔しいよ」

フィンは手を戻す

 

「じゃが、ヘスティア神に助けられなかったらお主のところに行っておったかもな」

「それこそ悔しいね、こんな優秀な冒険者を目の前にして仲間に加えれないのは」

「ならばこれで話は終わりじゃな?そろそろ戻らんとベルが心配しているかもしれんからの

「時間を取らせて申し訳ない、今度は是非いい返事をしてくれるのを期待しているよ」

「まだ諦めておらんのか」

笑いながらフィンと握手を交わした一心は続いてアイズを見、話す

 

「アイズよ、いずれベルを連れてくるからの。その時まで待っててはくれんか?」

「わかった」

「それとフィンよ、儂がミノタウロスを倒したという事。どうか他言無用で頼むぞ」

「考えておくよ」

こくんと頷いたアイズと要望を聞いてくれたフィンを見て一心は【ロキ・ファミリア】に別れを告げてダンジョンを上った

 

 

 

「団長~、どうして出会ったばっかりの冒険者を勧誘しようとしたんですか?」

「ティオネ、多分それは僕よりアイズに聞いたほうが早いと思うよ」

そういいフィンはアイズに発言を促す

 

「あの人・・・戦ってないから分からないけど、とても強い」

「え~!!そうなの!!じゃあさガレス、リヴェリア!!二人はどう?」

ティオネと呼ばれた者とは別のアマゾネス――ティオナ――は二人に聞く

 

「概ね私も同意見だ」

「儂もじゃな、ティオナはどう思ったか?」

私?と質問を返されたティオナは悩む

 

「う~ん、遠くから見ても普通の冒険者だと思ったけど?」

「俺もだ、ただの死にぞこないのジジイだろ」

「うわ、何かベートと同じ意見って嫌なんだけど」

「何だとてめぇ!」

「・・・・・・」

(ベート達に気づかれないほど隠すのが上手いのか?でも隠しているようには見えなかった・・・それならば僕の勘違いか?)

ティオナとベートが喧嘩しているのをよそにフィンは悩み考え込んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あっははは!!つまり君はダンジョンに潜った初日でミノタウロスに出会い、単独で倒したのか!!」

そう笑うのはギルドの個室で一心といる担当アドバイザーヘルタだ

ダンジョンから出た後、ギルドに向かうとそこでは彼女とベル、そして彼の担当であるエイナが待っていた

ベルからは

「一心さん大丈夫でしたか!?」

と心配され

エイナからは

「ベルと一緒に帰ってこないなんて何していたんですか!!」

と怒られ

ヘルタからはベルから話を聞いたのかニヤニヤしながら

「個室で詳しく話を聞こうか」

と誘われたため一心は話したのだが・・・

 

「少し笑いすぎではないか・・・?」

あまりの反応に流石に一心も困惑するしかなかった

 

「いやいや、誰だってこんな反応をするさ。信じられるか?冒険者になって一日も経ってないいに等しい者がLv2にカテゴライズされるミノタウロスを倒したって」

確かに言われると信じられないとしか言えないが

 

「ベルから聞いたのではないのか?」

「彼からは二人がミノタウロスに襲われたとしか聞いてないよ。その後すぐにエイナに連れていかれたからね」

てっきりベルから聞いていたと思っていた一心は迂闊に話してしまった事を後悔していた

 

「ならばわざわざ話さなくてもよかったの・・・」

「何を言うんだい、私が君の担当になったのはこういう面白い話を持ってきてくれると感じたからさ」

「お主、中々性格に難があるの・・・」

未だに笑っているヘルタに一心は呆れる

 

「私より神のほうが厄介だよ、こんな話を持っていったら確実に騒ぐだろうね」

「神がか?」

「そうさ、神は娯楽に飢えていてね。こういう話が大好物さ。飢えすぎて自分の眷属にちょっかいを出す神もいるくらいだ」

「そんな神で大丈夫なのかの・・・」

「ま、それは入った奴の責任ってことさ」

ヘスティア神の様に慈悲深い神だけではないということか。

 

「そういえばミノタウロスの魔石はどうしたんだい?」

「持ち帰って換金してもらったが」

「そうかならばいい。しばらくは食い倒れにはならんだろう」

その答えを聞いて満足したのかよいしょとヘルタは腰を上げる

 

「今回はここまでにしておこう」

「よいのか?」

「あぁ、今回の挑戦でどのモンスターをどれくらい倒したかを報告して貰えるだけで大丈夫さ。本当は君の出自についても色々聞きたかったんだけど、ベルが君に紹介したい店があると言っていたからね」

 

それならば確かに切り上げねばなと一心も思う。

 

 

「そうか、ならば儂も出るとしよう」

「次も面白い話を期待しているよ」

ヘルタからのそんな言葉に一心は少しだけ笑い返した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一心が広場に戻るとすでにベルが待っていた

一心を探しているのか辺りを見回しており、見つけると近寄ってきた

「一心さん!!」

「すまんな、待たせてしまって」

「いえいえ、僕も今来たところなので」

大丈夫ですよと話すベル

 

「それじゃあ一心さん、向かいたい所があるのでいいですか?」

「おう、その話はヘルタから聞いておるぞ」

じゃあ行きましょうと歩みを進めたベルについていくことにした

 

 

「そういえばベルよ、少し良いか?」

「どうしました?」

目的地に行く途中で立ち止まりベルに話しかける一心

 

「お主、何故アイズから逃げたのじゃ?」

ダンジョン内での話を切り出した事にギクッとするベル

 

「す、すみません・・・」

「儂に謝ってもの・・・。後でお主一人で会って謝ってこい」

「そ、そんなの無理ですよ!!」

「それはどうしてじゃ?」

「ど、どうしてって・・・」

一心に質問されたベルは顔を紅くしながら視線を逸らす

その行動に一心はある確信を持った

 

「お主もしや・・・惚れたな?」

再度一心の言葉にギクッとするベル

それを見た一心は笑う

 

「カカカッ、惚れて恥ずかしいから謝りにも行けないと!!中々面白いではないか!!」

「そんな大声で言わないで下さいよ!!」

大声で話す一心にベルは恥ずかしくなりながら注意する

 

「まぁ、よいではないか。惚れる事は」

「でもエイナさんにこう言われたんです。『ロキ・ファミリアの幹部であるアイズさんにお近づきになるのは難しい』って。ただでさえファミリアが違うというのに」

確かに異なるファミリアの色恋沙汰はご法度に近いとヘルタは言っておったが

 

「別に不可能ではないのじゃろう?」

「けれど難しいって・・・」

「なあに、お主が強くなればよい」

「僕が・・・ですか?」

情けない声を出すベルに一心はおうと答える

 

「強くなればいずれ、アイズの方から寄ってくるかもしれんぞ?」

その言葉にベルは少しだけ励まされた

 

「・・・そうですね!ありがとうございます、一心さん!!」

「なに儂から話し始めたことだからの、何かあったのなら励ますつもりだったわい。さて、元気になったのならば行くとするか」

「はい!」

二人はまた道を進み始めた

 

 

 

 

 

 

「ここです」

「ほう、ここが儂を連れていきたいといった場所か」

連れてこられた場所は他の建物よりも二回りも大きい建物であった

 

「ベルよ、ここは?」

「【豊穣の女主人】という名の酒場ですよ、ここの店員の方に今晩どうですかと誘われて・・・」

「ほう、酒場か」

酒場と聞いて嬉しそうな声を上げてしまう

酒が飲めるかもしれないとわかると居ても立っても居られなくなり一心は店へと進む

 

「失礼するぞ!」

「あっ、待ってください一心さん!!まだ心の準備が!!」

ベルの静止も遅く既に一心は扉を開け店内へと入っていった

 

 

「いらっしゃいませ!!何名様でしょうか?」

出迎えてくれたのはヒューマンの少女であった

 

「2名じゃ」

「2名様ですか?ですが他に見当たりませんけど・・・」

はて?と後ろを向くとベルが入り口の隙間から店内を伺っていた

 

「何をしておるベルよ。そこにいるとほかの客にも迷惑がかかるぞ」

一心の言葉にビクッとしたベルはやがて観念したのかゆっくりと中に入ってくる

 

「・・・やってきました」

「お待ちしておりましたよベルさん。お客様2名はいりまーす!!」

ヒューマンの少女はベルにニコッと笑いかけると大声で店内に知らせる

そして進んでいく少女の後を一心とベルは続く

 

「ベルよ、そう縮こまってるとかえって目立つぞ」

びくびくしているベルに一心は声をかける

 

「でも僕こういう場所初めてで・・・」

「だとすれば尚更じゃ、お主も男ならしゃんとせい」

バシッと一心に背中を叩かれたベルはなんとか立ち直ることができた

 

「では、こちらにどうぞ」

「おう、助かるわ」

「は、はい・・・」

案内されたのはカウンター席。4席が空いていたが真ん中に座るように促された。座ると目の前の女将と向き合う感じになった

 

「アンタ達がシルのお客さんかい?一人は可愛い、もう一人は中々良い顔をしてるじゃないか。しかもなんだい、あんたに至ってはあたしたちに悲鳴を上げさせる程の大食漢なんだそうじゃないか」

「!?」

女将から告げられた言葉にベルは驚く。

 

「ちょっとシルさんどういうことですか!僕がいつから大食漢になったんですか!?」

「・・・えへへ」

「えへへじゃないですよ!」

「まぁよいじゃないかベルよ、それよりもここには酒があるかの?」

「当り前さ、ここは酒場だからね、じゃんじゃん飲んでくれよ」

それを聞いた一心は酒と飯を、ベルはパスタを頼んだ

直ぐに醸造酒を出され、一心はぐいっと飲む。

 

「カーッ,ここの酒も中々美味いの。」

葦名に負けずとも劣らずの酒の美味さに一心は喜びを感じる

 

「一心さんのいたところにも酒があったんですね」

「おう、葦名という国でな。源から流れる水から作られた酒はそれはもう美味くての」

「葦名っていうことはもしかして一心さんの・・・」

「そうじゃ、儂が興した国じゃよ」

一心が答えるとベルは目を輝かせる

 

「じゃ、じゃあ国を興すためにモンスターと戦ったりとか」

「いや、儂が戦ったのは人じゃよ」

聞くか?と問いかけるとベルは頷いたため一心は自身が国を興した物語―――国盗り戦―――の話を語った

 

 

 

 

「そして儂は敵将田村を討ち取り、内府どもから国を獲ったのじゃ・・・ベルよ、大丈夫か?」

途中からベルが何も反応していたなかったので気になって見るとベルは驚きと興奮が混ざったような顔をしながら一心を見ていた

 

「一心さんってもしかして凄い方ですか・・・?」

「そうかの」

「だって一人で何十人も一気に相手したり、敵の一番上を一騎打ちで倒したりって普通の人出来ませんよ!!そんな事成し遂げるなんて英雄じゃないですか!!」

「カカカッ、儂らはただ取られた物を取り返したまでよ」

もしかしたら今目の前にいるのは物語で語られるような英雄なのではと興奮しているベルに対し一心は笑いながら酒を飲む

 

「ということは一心さんが国の主ってことですよね?こんな所にいて大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃよ、…もう葦名も儂も死んだからの」

「え?」

「……」

(まずいの・・・この話、ヘスティア神にも話しておらんかったわい)

酒に酔っていたからかうっかり口を滑らせてしまった一心、自分の失態に一気に酔いが覚め焦っていた

 

「それってどういう・・・」

「おお一心!お主もここにおったか!!」

まずいと思った時に横から声をかけてきた人がいた。

助かったと思い横を見ると。

 

「まさかお主とまた会うとはな・・・ガレスよ」

ロキ・ファミリア所属のガレスであった

 

 

 

「団員と酒を飲んでたんじゃがすぐに酔いつぶれる者が多くての、どうしたかと思っていたらお主がいたから声をかけたんじゃ。」

一心の隣に座りながらガレスは話す。

ちらとベルのほうを見ると先程案内してもらった店員と話しながら食べている。どうやら助かったらしい

 

「酒飲みならば付き合うぞ、たった今助けてもらったしの」

「どういうことだ?」

「こちらの話じゃ」

一心がそう答えるとならばとガレスはカウンターに樽を置く

 

「これは?」

「ドワーフの火酒じゃよ、お主もいける口ならどうよ」

「ほう、ならば試してみるとするか」

一心はコップに並々と注ぎそれを一気に飲み干す。すると口の中に旨味と辛さを感じ口元が緩む。葦名にて隻狼から貰った猿酒を思い出す味わいであった

 

「カーッ、辛いの。猿酒に負けておらんわい」

「おお、飲むか。まだまだいけそうじゃがこれは儂の秘蔵での。それに勝手に飲むと主神に怒られる上、好き勝手に飲めんのよ」

「そうか、残念じゃが今はここの酒で我慢するかの」

「もし時間があれば儂らのファミリアに来るといい。その時にまた一緒に飲むとしよう」

「そうじゃな」

一心とガレスはお互いにジョッキをもち乾杯をした

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「そういえば、ダンジョンではすまなかったの」

「ダンジョンというと?」

「ほれ、儂らのファミリアに入らないかという提案についてじゃよ」

しばらく飲みあっているとガレスがそんなことをいう

 

「大丈夫じゃよ、驚きはしたがの。あやつはいつもあんな風に勧誘したりしておるのか?」

「いや、あれが初めてじゃよ。普段は拠点でしか募集を受け付けてなかったからこっちも驚いたぞ」

「成程の、そういわれると嬉しくはなるが今のところはファミリアを変えるつもりもないしの」

「そうか、それは残念じゃ」

ガレスはそう言いながら酒を飲む。お主にもそういわれるとはな

追加の酒を頼もうとすると何やら遠くで宴会をしている席が騒がしくなっていた

 

「あそこの席、何やら騒がしくないか?」

「む?あそこは儂らのファミリアの席じゃが」

確かによく見るとアイズやフィンが見え,他の団員達と仲良く飲んでいた

だが、一人だけ明らかに冒険者といえない格好をした女性がいた

 

「ガレスよ、あの女性は何者じゃ?冒険者のようには見えんが」

「ん?あれは儂らの主神じゃよ」

ガレスが主神と呼ぶ緋色の髪をした女性は自身の眷族よりも酒を飲み、眷族にダル絡みしているようだ

 

「ほう、主神も宴に参加するのか」

「儂らの主神は酒と宴が大好きでの、大きな山を越えた時にはああして皆で集まって騒いでおるのじゃ」

「中々良い主神ではないか」

 

そんな話を一心とガレスが話しているとロキ・ファミリアの席から大声を発する者がいた

 

「そうだアイズ!!お前のあの話を聞かせてやれよ!!」

何だと一心が声の主を見るとミノタウロス討伐後にダンジョンで噛みついてきた狼人、ベートであった

 

「あの話?」

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、あん時いたトマト野郎の!」

アイズが聞き返すとベートは答えた。

(5階層にミノタウロス・・・、ベルを助けた時の事か)

恐らくは自分達の出来事だろうと気になり、少しだけ耳を傾ける一心

その隣では聞こえたのだろうかビクッと反応するベル。

内容はやはりと言うべきかあまりにも酷いものであった

まとめると深層まで『遠征』していた彼ら【ロキ・ファミリア】は

帰路の際に遭遇したミノタウロスの群れを仕留め損ね

何とかそれを追いかけていき、最後の一匹を一心達がいた5階層へと追い詰め

アイズがとどめを刺した

その時そこにいたのは

「それでよ、いたんだよ。いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ冒険者が!!」

ベルであった

 

「抱腹もんだったぜ。兎みたいに追い込まれちまってよぉ!可哀そうなくらい震え上がっちまって、顔を引きつらせてやんの!!」

「・・・・・・」

「ふむぅ?それで、その冒険者どうしたん?助かったん?」

「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」

「・・・・・・」

ベートの問いにアイズは少し眉をひそめる

 

「それにだぜ?そのトマト野郎、一緒に潜ってたジジイを置いて叫びながら上に行っちまって・・・。うちのお姫様、助けた後に逃げられてやんの!!」

どっと笑い声に包まれる【ロキ・ファミリア】の人達。

 

「全くベートめ、面倒なことを・・・。すまぬな、一心。今ベートを…一心?」

「すまないなガレス、このままだとお主から貰った酒がまずくなるからの。…少しだけ待っててくれ」

 

他人の出来事を、ましてやその人を辱める様な話酒の肴にしながら話す彼を当然一心は許せなかった。

しかも今回は件の本人が隣にいる。純粋無垢な彼にとって憧れの人がいる場でこのような話をされてしまうと最悪立ち直れなくなってしまう。

そんな事態にはなってはならぬと、ベートの言動に呆れながら謝罪し注意をしてこようとしたガレスよりも速く、一心はガレスに謝罪をしながら席を立ち上がり【ロキ・ファミリア】の席へと向かった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「よぉベートよ、ダンジョン以来じゃのう」

一心は賑わっていた【ロキ・ファミリア】の席に向かうと、ベートに声をかける

 

「あ?なんだよジジイ」

「なに、こちらから面白そうな話が聞こえてきての。気になったから来てみたのじゃよ」

「話だと?」

一心の言葉にベートは酒の入ったジョッキを持ちながら一心に聞き返す

 

「お主が先ほどまで喋っていた話じゃよ」

「あのトマト野郎の話か、それがどうかしたか?」

「儂の仲間であるベルを侮辱した事を謝罪してほしくての」

その言葉にベートはあからさまに嫌そうな顔をする

 

「なんで俺が謝んないといけないんだ?俺は本当の事を言ったまでだぜ?」

「あぁ、確かにお主は真の事しか話しておらぬ。そこについては何も言えんよ」

「だろ?だったらなおの事謝らなくていいだろ」

呆れた顔をするベートに対し一心は言葉を続ける

 

「だがの、自分たちの話ならまだしも他人の失態の話を酒の肴にするのは許せんのよ。【ロキ・ファミリア】はこんな者が上に立っているとはフィンやリヴェリアも苦労するの」

「……今てめぇなんて言った」

一心の挑発にベートは嚙みつく

席から立ち上がり一心を睨む

 

「何、他人の失態を肴にするような者がこの都市で最高峰のファミリアの幹部とは残念だと言っただけじゃよ」

「てめぇ・・・!!」

「そこまでだ、ベート」

怒りのあまり一心の胸ぐらを掴もうとしたベートをフィンが止める

 

「あぁ!?なんでだよ!!」

「確かに他人の失態を酒の肴にするのは良くなかった。それにそれを止めることをしなかった僕達にも非がある。」

「だからってあのジジイの肩を持つのかよ!こんな雑魚に!!」

「ベート、彼は僕が認めた冒険者だ。それでもそんなことをいうのかい?」

ベートの発言にもフィンは優しく諭す

だがダンジョンで一心をフィンが勧誘した事にイラついているベートは、納得がいかずまた一心を睨む

 

「よう、ジジイ。フィンが認めたらしいけどよ、俺は納得がいかねぇんだ。たかがLv1の雑魚と俺らが同じ実力を持っているってことをな」

「ならばどうすればよい」

「簡単さ、今実力を見せてくれればいい。フィンに認められたジジイなら簡単だろ?それとも怖気づいて逃げるか?」

「……」

初めて会った時から中々性格に難がある者とは思っていたがここまでとは思っていなかった一心は頭を悩ませていた

(まずいの…、下手に事を荒げたりしてしまうとベルとアイズの機会を失ってしまう…)

どうしたものかと助けを求めたくちらりとフィンを見るも、フィンも一心の実力に興味があるのか、やっても構わないとジェスチャーで答えられる。フィンの近くにいるアイズやリヴェリアも同じようで、【ロキ・ファミリア】の主神であるロキも面白そうにこちらを見ていた。

 

「そういやアンタの名前聞いてなかったな、名前何て言うん?」

「儂は葦名一心と申す。そしてロキ神よ申し訳ない、せっかくの宴会の邪魔をしてしまった」

「大丈夫や、うちの団員が迷惑をかけたのは事実やしな。逆にこっちが申し訳ないわ」

ヘラヘラと笑いながら話すロキを見て一心は少しだけ安堵する。どうやら【ロキ・ファミリア】の主神の怒りは買ってなかったようだ

 

「てことはあんたがフィンが言っとった冒険者やな。初めてフィンが勧誘をしたのにそれを断ったって聞いたときはおもろかったで。」

どうやらフィンが勧誘した時の話が面白かったようで、ロキはケラケラと笑い酒を飲みながら話す

 

「それでな、滅茶苦茶気になったんや。フィンが自ら勧誘するほどの冒険者がどんなもんかってな。」

そう言うとロキは目にもとまらぬ速さで一心の近くに行き、

 

「どれどれ・・・」

一心をじーっと見ていた

 

「ロキ神・・・?」

これには流石の一心も困惑の声を上げざるを得ない

 

「ん~決まりや!!あんた、今度うちのファミリアに来てくれんか?」

ロキの~一心の肩を叩きながら発言した~言葉に一心や団員たちが驚く

 

「ロキ、もしかして勧誘するの!?」

フィンの近くにいたティオネが驚きの声をあげる

 

「ちゃうちゃう、実力見るんやったらちゃんとしたところでやった方がええやろ?ならうちのファミリアに来てもらってやるのが一番ええと思ってな。どやフィン、いい考えやろ」

「確かにそれも良いね。ここで見せてもらってもベート辺りが納得しなさそうだし『あぁ!?』後は本人が良いと言えばいいけれど……どうかな?」

「神の頼みとあれば断れんな。儂は構わん」

とんとん拍子で話が決まっていきこちらとしても案外悪くはない提案だった一心は承諾する

都市最強と謳われるファミリアとのお手合わせ。それが出来るなど願っていもいないことだからだ

 

「よっしゃ!ほな明日か明後日の昼間に来てもらえれば大丈夫なようにしとくわ」

「感謝するロキ神」

「ええで。ほな楽しみに待っとるで~」

ロキのお陰もあって特に大事に至らなかった事に感謝しながら一心は自分の席へと戻っていった

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「それで、ロキ。彼はどうだった?」

「ん?なんのことや」

一心が戻るのを見てからフィンはロキに声をかけた

 

「彼を近くから見たんだろう?神として何か言ってもらってもいいんじゃないかと思ってね」

「んまぁ、簡単に言うとヤバい奴やな、近くで見とったけど恐ろしかったわ」

ヒィーと体勢を少し崩しながらしゃべるロキ

 

「そんなにかい?」

「ほんまや、フィンが勧誘したってのも分からなくはない。しかもあれ・・・英雄やわ」

「…英雄?」

ロキの言葉にぴくりと親指がうずいたフィンは聞き返す

 

「せやで。多分あいつ…小さくながらも英雄と呼ばれるくらいの偉業を成し遂げるわ。」

「偉業か…」

普段のロキなら冗談で聞いていたが少しずつ真面目に話していくロキとにフィンも真剣になっていく

 

 

「ま、それも明日か明後日に分かるかもしれんし、その時まで楽しみにしとくか。今は楽しむ時間や」

「そうだね」

そういいながらロキとフィンの二人は再び酒を交わした

 




こんなに長く書いたの初めてなので誤字脱字、変な言葉遣いがあるかもしれません
どうやら一心様背中の傷一つしかないようで
癒えたけど微かに見える古傷ということで・・・(三話参照)

頑張ってみましたけどロキ・ファミリア側のキャラの口調などがミスってるかもしれない(特にロキ辺り)ので気になる方がいらしたらご指摘お願いします

お気に入り、感想本当にありがとうございます

一心様は不死がいいか

  • 不死がいい
  • 不死じゃない方がいい

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