GATE 地球連邦軍 彼の地で 斯く戦えり 作:急行根府川(青い鳥)
ピニャの渾身のドア開けに当たりそのままぶっ倒れたイタミは、痛たたと、痛打した顎を擦りながら目を開ける。
「あらぁ、気がついたようねぇ」
周りを見渡すとテュカが、赤髪の子を何となく罵倒しているのが見える。他を見遣れば兵士や住民のような人達が集まっているようだ。
「大丈夫?ちゃんと、憶えてるかしらぁ?」
イタミは頷く。顎を打ったせいか、何となくだがロウリィが言っている言葉がわかるようになっていた。ある時テレビで見た頭を打ったら記憶力が超人並になった人の話を思い出す。
さっきまで罵倒していたテュカも、イタミが起きたことに気がついたようで「大丈夫?」と心配した声で言う。
「あはは…みっともないとこ、見られちゃったなぁ」
イタミはびしょ濡れになった上着を脱ぎTシャツ姿になる。とりあえず濡れた上着の水を飛ばし、着直して、レレイからヘルメットを受け取る。
無線からクワバラ曹長の声が聞こえる。
〈イタミ隊長、ご無事でしたか?心配しました。〉
「どーにかね。ちょっくら気を失ってたみたいだ。」
〈もう少し返事が遅かったら隊員を突入させるところでしたよ…〉
「なら良かった。やっぱり、戦闘はできるだけ避けたいからね。とりあえず状況の確認をするから、もう少し待機しておいてくれ。」
〈了解〉
「んで、誰が状況を説明してくれるのかな?」
全員の目がピニャに向けられる。ピニャは「私?」という顔をしてイタミを見ていた。
状況を確認した後、イタミはMSを急いで取りに戻る。少したってイタミとクワバラ達03部隊の残りの面々がやってきた。
6体の巨人を目にした住民達は歓喜の声を出す。なんてあの炎竜を撃退したという巨人が6体も来てくれたという事だからだ。
「いやー、違う意味で熱烈な歓迎っすねぇ。」
タカモトはスナカスを動かして手を振る。
「どこでもこんな感じならばいいのですがねぇ」
トミタはさっきの違う歓迎を思い出して言う。
ピニャはその巨人達を見て、尻もちを着いた。
「なんて大きさだ…!」
と。
イタリカの町の城壁はビル3階分の高さがある。ビル3階分というのはだいたい9〜10Mぐらいの高さとなる。だが、MSの平均身長は18.xMぐらいの大きさの為、足から股下の部分だけで城門の高さと同じかそれ以上になっているのだ。
さすがに歩きで入ろうとすると城壁を壊しかねないし、この状態で飛んだりするとするのは危ないので中に入ることはないが、それでも心強さを住人たちは感じただろう。
ところが、ピニャがイタミに命令したのは南門“だけ”の防衛である。
「あのお姫さん、軍師の才能ないね」
タカモトが城壁の上で愚痴る。
「まあまあ、戦略的にはできないことは無いからなぁ。」
「とりあえず東西南北に一体ずつMSを置いときゃあ盗賊だって来ねぇだろうしなぁ」
「予測論は外れるからさ、ま、とりあえず準備をしようじゃん?」
「へいへい」
イタミは的確な指示を出して武器やMSなどを配置していく。地平線の先に盗賊らしきものが陣を成しているのがなんとなく伺える。
さっきはタカモトにああは言ったが、イタミも彼女の考えているこの作戦はあまりいいものではないなと感じていた。
MSは背が低い建物しかないこの世界ではすごく目立つものだ。それが同じ場所に6体も居れば敵も近寄ろうとはしなくなる。そうしたら他の門に行くことになるだろう。相手方の選択肢を減らすことは相手がどこを攻撃するかわかりやすくはなるが、ピニャ達騎士団と、イタミ達03部隊以外はみんな戦闘はド素人だ。(ピニャ達も実戦経験はほとんどないらしいが…それをイタミ達は知る由もない。)そんな彼らに大群を抑えることが出来るとは考えづらい。
「そうだなぁ、とりあえず援軍呼んどくかぁ、クワバラ、無線で本部につなごう。」
「了解。」
クワバラが無線を起動し本部に繋ぐ。
救援のお願いを受けたアルヌス本部では上官達が怒号の会議を開いていた。
「だから!うちら61式戦車部隊が救援に向かうって言ってるだろ!」
「戦車は地面這ってんだからいつ着くかわからん!うちのファンファン改部隊で敵を一網打尽にすりゃあいいんだよ!」
「ファンファンなんか一年戦争で使えねーってわかってんだろ!あんたらはうちのジム隊のコルベットブースターを運転をしてればいいのさ!」
「何をー!」
「やんのか!」
「お、落ち着きたまえ君達」
ゴップはすごくあせっていた。部下たちが怒りでさらに怒る状態になっているからである。今言い争っている61式戦車部隊、航空部隊、そしてジム隊は今まで防衛と訓練しかできていなかった。そのため鬱憤が溜まっていたのだろう。
「と、とりあえずだ。こ、今回は航空部隊に頼むことにしたい。なぜなら、対人用の武装も頼まれているからね…」
「でも!」
「シーネン中佐。ジムはうちの中の虎の子だ。私の立場からしたらできるだけ手の内を見せたくないのだ。今回は、すまないが、引いてもらいたい。」
MS隊のシーネン中佐も、ゴップの言うことには従うしかない。
こうして無事?支援攻撃の許可を貰った航空部隊のケングン大佐はヨウガ第1航空中隊長(中佐)と音楽の話なんかをしながら格納庫へ向かった。それを見たゴップは「はぁ…」とため息をついた。
イタリカに届く陽の光が消えてゆく…。灯りはいらないのかと住人に言われたが彼らには必要ない。
「ねぇ?敵であるはずの帝国に、どうして味方しようとしているのかしらぁ?」
ロウリィがある意味では最もな質問をする。
「街の人を守るためだね。」
「本気で言ってるのぉ?」
「そういうことになっているはずだけど」
「お為ごかしは必要ないわ、貴方達にとって盗賊は敵の敵、ある意味では味方とも取れるわぁ?それに、あの皇女、色々偉そうじゃない」
「まあ…それは同意する。」
イタミは夜間用装備をメットにつけようとするが上手く固定ができていない。作業をしやすいよう、ロウリィにメットを持ってもらって両手でそれを装着する。
「エムロイは戦いの神。人を殺めることを否定しないわぁ。でも、それだけの動機は重要視されるの。偽りや欺きは魂を汚すことになるわよぉ。」
イタミは夜間用装備を付けたメットをロウリィから受け取りつけようとするが、ロウリィは自ら頭に載せようとした。イタミは首をくぐめてロウリィにメットを乗せてもらった。
「ここの住民を守る、この名目は嘘じゃない」
「ほんとぉ?」
「もちろん。ただもう一つ理由がある。…まあ、俺たちと喧嘩するより仲良くした方がいいってことをお姫さんに理解してもらう為さ。」
ロウリィは、この言葉をこう理解した。
お姫様の脳内に恐怖というものを刻み込む。使徒が、巨人が人を蹂躙する様を余すことなく見せることで彼女に「私達では勝てる相手ではない」と体が震え上がるまで刻み込ませる。そうすれば喧嘩するより仲良くした方がいいと思うだろうと。
「気に入った、気に入ったわぁ!それ!」
彼女は邪悪そうに微笑む。
「そういうことなら、是非協力したいわぁ。わたしも久々に狂えそうで楽しみぃ。」
ロウリィはまるでダンスの誘いを受けるかのようにお辞儀をした。
深夜、月が少しづつ闇に食われていく。そして紅く、紅く染まってゆく。
交代交代で仮眠を取っていたイタミは揺さぶられて夢から戻る。
「ん?動いたのか?相手」
「は、はい。そのようですが…」
「まー何となくわかる。こっちに来てないんでしょ」
「はい、と、とりあえずこちらへ!」
トヅに連れられて壁の上から昨日盗賊がいた場所を確認する。既に誰もいなくなっている。
「タカモト、お前起きてるか?」
「そりゃあ仮眠しましたもん昨日」
「ああ、寝てたな移動中、どっちに行ったか分かるか?」
「ええ、この門から外を見て左方面に行きましたから…多分東門に出るはずでしょう。」
「了解。じゃ、僕達もそっち方面に行く支度をしよう。起きてるみんなは仮眠中のみんなを起こして」
「「「了解」」」
数分も経たずに03部隊が横一列にに並ぶ。
「よし、みんな揃ったな。では配置決めをする。まずタカモト」
「はい!」
「お前は武装を持ってくる航空部隊と合流し、武装を受け取って航空部隊共に東門へ向かう。」
「了解!」
「俺、トミタ、クリバヤシ、アルギニナ、モリスは大通りを渡って東門に向かう。」
「「「了解」」」
「あとクラタ、君はホバートラックで、レレイ達といてくれ、いつ何かが襲ってくるか分からない。残りのみんなはここで待機していてくれ。その間ここでの指揮はクワバラ曹長が担当する。」
「「「「了解!」」」」
「みんな、健闘を祈る。」
紅く染った月の元、狂気と狂乱の賛美歌が始まる。
後編へ続く。
登場兵器紹介
ファンファン改
ファンファンを1から設計し直した機体。機体を大型化し、小型化したローターを4基下部につけている。横にスライド式ハッチを設け、そこからでも武装を発車可能にした。ホバークラフトとヘリコプターの間の子のようなデザインをしている。固定武装は5連誘導小型ミサイル、60mmバルカン砲×2