GATE 地球連邦軍 彼の地で 斯く戦えり 作:急行根府川(青い鳥)
レレイは炊事車の前に立っていた、すると
「お、君か、ちょっと待ってろよ?今作ってるからなぁ」
と、門の向こう側の言語で何か言われる。レレイの見るところ、彼らはこちらの言語を覚えようとしている。現に彼らはたどたどしいながらも意思疎通ができるようになってきた。しかし、相手がこちらの言語を覚えるのを待つのは現実的ではないとも思った。なぜなら、人間というのは成長期を過ぎれば新たにものを覚えるのは辛くなっていくものなのだから。彼らが使う道具、技術、そして考えていることを覚えようと思うならば、彼らの言葉を学ぶしかない。そう思いレレイはその男性に話しかけることにした。
古田兵長は、素晴らしい包丁さばきを見せながら微笑んでみせる。
地球圏でも有数の老舗高級料亭の板前を勤めていた彼は、紆余曲折を経て、連邦軍へと入軍した。
女の子が、ダンボールに山積みになっていた食材を指さしてみせる。
「ん?」
『uma-seu seu?』
その子は大根を指さして盛んに何かを言っている。同じ単語の繰り返し、しかもまだ現地語を覚えきれていない古田は少し鬱陶しく思って
「大根だよ。大根」
と返した。その直後に現地の人には優しくしろと、言われてたのを思い出し「いっけねっ」と頭をぽんと叩く。
『Dai-kon?』
「そう。大根」
古田は皮を剥いた大根を大きくいちょう切りにした。今古田が作っているのは煮物である。
あるのだったら刺身なんかを作ってあげたいところであったが、今の地球圏で新鮮な魚介(なお養殖)を食べれるのは官僚か企業の幹部クラス以上かお金持ちぐらいになってしまっている。
寒い時代だと古田は思いつつ、プラチナブロンドの少女に言葉を返していた。
『sou daikon』
「だ、い、こ、ん」
レレイは首を傾げつつ、daikonという単語を持ったものを持つ、souは恐らく肯定を表す言葉なのだろうとレレイは考察した。
「だ、い、こ、ん」
包丁を振るう男性『sou sonotouri』と言い、頷きながら綺麗にdaikonを4等分する。少しの寸分も違わぬように見える切れたdaikonのを見て、レレイはこの世界の男性はみんなこれほど料理が上手なのだろうか?という感想を抱いていた。
賢者の弟子である。レレイは、誤解を含めながらもハイスピードで門の先の言葉を覚えるようになる。
また数日が経つ、その頃になると地球圏の新聞は様々な記事を出す。例えば
「堕落した地球連邦軍、200人もの民間人被害!」
だとか
「飛び交う憶測、連邦軍の報告は本当に真実なのか?」
とか。
「ふうむ、なるほどな…」
クワバラは、日曜日の親父さんのように新聞を読んでいる。
「おやっさん、メディアなんて金さえ積めばジオンにだってしっぽを振りますから、あんま信用しちゃダメっすよ?」
スナカスを小破させて、1週間の謹慎処分になってるタカモトがプラモデルを組み上げながらいう。
「お前…本当に謹慎してるのか?」
クワバラは率直な疑問をぶつける。
「まー、ちゃんとその分の仕事はしてるし、品行は慎んでるつもりなので多分大丈夫っすよ。よし、出来ました、アリゾナ」
道具は何も使わずに綺麗なプラモデルが出来た。ちなみに、今は日本時間で言う10時頃、ここは本部にある03部隊用の事務室みたいなところである、今この部屋にいるのは、休憩中でネット2次小説を読んでるイタミ、新聞を読んでるクワバラ、プラモを組み立ててたタカモトの3人がいた。
そこにクリバヤシとクロカワが入ってくる。
「中尉、イタミ中尉、あ〜中尉、聞いてます?」
イタミは斜め後ろから聞こえる声を無視しようと努力した。今は休憩中だから出来ればそういうのは遠慮して欲しいという意思表示をする。
しかし、
「隊長、いくら休憩中だからといって部下の意見を聞かないというのはいささかどうかと思われます。」
と、クワバラに言われてしまう。彼の意見はごもっともであるので尚更応答しない訳には行かない出来れば自分用の執務室が欲しいなと思うイタミであった。
「中尉」
「ぐおっ!」
イタミの下腿にクリバヤシの半長靴のつま先がヒットする。振り返るとジト目でイタミを見つめるクリバヤシとクロカワがいた。
連邦軍にもよくスポーツを嗜む者がいて、時々そういう大会が開催される。クリバヤシは武道大会の女性部門で参加したもの全ての優勝をかっさらっている。しかも大会終了前最後の余興にある男子のチャンピオンと女子のチャンピオンが戦うという謎の余興を自ら提案し、男子優勝者をぶっ飛ばしているという事実すらも持っている。そのことを知っている関係者からは2代目霊長類最強なんかと呼ばれているらしい。
「おーこわいこわい」
とりあえずプラモを会議室の机に入れたタカモトが言う。めっちゃ汗をかいて。
「話を聞いて下さいませんか?」
「俺にぃ?」
気だるそうな口調でイタミは返答し「俺なんかに相談してもしょうがなかろうに」と呟く、今の彼の気持ちがよく現れている。
「で、なによ?」
「テュカのことです」
クロカワが03部隊で保護した金髪碧眼のエルフ娘、テュカ・ルナ・マルソーの事だった。
「テュカがどうかしたのか?」
「実は…彼女、なにかおかしいんです。例えば食事、支給品、居室など全てを“2人分”要求するんです。」
「ただ単に欲張りなだけなんじゃないの?エルフが沢山食べる種族なのかもしれないし…ホラ、彼女だってたぶん年頃女の子なわけだしぃ、服だって一つだけだとつまらないじゃん?」
「違います、食事が二人分というのは2人分の食料だけではなく、食器なども2人分の要求するんです。そしてその1セット分は必ず廃棄しています。それに服…彼女が余分に請求するのは必ず男物なんです。」
クリバヤシが記録をめくりながら言う。このことにイタミはチクッとした頭痛とともに心の奥に押し込んだはずの記憶が湧き上がろうとする感覚を覚える。
「ふ〜ん、で、理由を尋ねてみたか?」
「言葉が上手く通じないのでよく分からないのですが、1番言葉のわかるレレイちゃんに同席してもらって尋ねてみました。どうして残すのって」
「そうしたら?」
「彼女にも『わからない』『食事時に』『いない』という答えでした。」
沈黙の時間がながれる。イタミはその間に、『誰か』と同居しているつもりなのではと思い浮かぶ。
「もしかして、脳内彼氏をでも飼っているとか?」
茶化すようにイタミは言うが、誰も期待した反応は示さなかった。脳内彼氏、そのようなものに該当していそうなものをクロカワやクリバヤシも考えていた。救った経緯があれであるため、深刻なものであるかもしれない。
「そうだったらいいのですが…」
クロカワが心配そうにつぶやく
「医師には相談したか?」
「精神科医はこちらに来ていません。そもそもこんな状況を連邦の上層部は考えているとは思えませんし…、それに『亡くなった家族を一定期間、生きているこのように振る舞う』なんていう葬送なんて言う可能性も否定できませんわ。私達には何が正常で、何が異常かなんて、勝手に判断する訳にも参りません。」
「そうか…それならレレイの師匠、カトー先生にも尋ねてみたらどうだ?あの爺さんなら詳しそうだ。」
「もう既に尋ねていますわ。私たちの見立てと同じような見解のようです。しかし、カトー先生によると、彼女はエルフの中でもさらに希少な存在で、さすがに細かいところまでは『知らない』という答えでしたわ。」
「そうかぁ、タカモト、お前はどう思うんだ?NTっていうのは人の気持ちが理解るんだろ?」
「…無茶言わないでください、僕は万能じゃないっすよ…まあ、なんとか、感じ方を色で表すなら彼女は青黒い感じだった…としか言えないっす。」
タカモトはお手上げのポーズをしてみせる。
「なるほどなぁ、まあ、とにかく意思疎通を増やすところからだな…俺ももっと話しかけてみることにするよ」
「今はそうするしかありませんわね…」
「隊長、出発の時間です。クリバヤシ、クロカワ、タカモト、お前らも来い」
「はいっ」
休憩時間が終わり、03部隊は難民キャンプの方へ準備をして向かう…
土曜日に本当の後編とMS紹介を出します。