支える片腕の恋愛事情 作:燕尾
ども、燕尾です。
電車の中で、ふと思い付いたことを書き始めました。
後悔はしてません。
ピピピピピピピピピ――――――
穏やかな眠りを妨げる悪魔の鳴き声(目覚まし時計)が部屋に響き渡る。
「……うるさい」
ピピピピ――ピッ
俺はこの悪魔に手を伸ばし、その鳴き声を封じ込むことに成功する。
そしてまた優しい世界へと旅立とうと、天使の羽衣でその身を包み込もうとしたそのとき――
「そうくーん、朝だよー!! おっきろー!!」
第二の悪魔が俺の城に急襲してきた。
しかし俺は屈しない。俺がこの悪魔に屈すれば、この世界の平和はたちまち乱されてしまうからだ。
「誰が悪魔なのかな? ん?」
「痛い痛い痛い痛い――」
頬を思いきり引っ張られ、俺はすぐさま白旗を振った。
世界の平和? そんなことより自分の身が一番だ。
てか、なんで俺の心の声が分かったのだろうか。
「おはヨーソロー! そうくんっ!」
「おはよう、曜」
元気に敬礼しながら朝の挨拶をしてくる目の前の女の子の名は渡辺曜。俺の幼馴染みだ。
「朝ご飯できてるよ。顔洗って早く来てね」
「いつもすまないねぇ、婆さんや」
「それは言わないお約束――って、誰がおばあちゃんかな? 変なこと言ってないで、早く起きる!」
はい、すみません。でも乗ってくれて嬉しいよ。
頬を再び引っ張られた俺は渋々と起きる。
欠伸をしながら階段を下り、洗面所で顔を洗い、完全に目が覚めたところで我が家のダイニングに座る。
テーブルの上には出来上がったばかりの朝ご飯が置いてあった。
「「いただきます」」
二人揃って手を合わせ、朝ご飯を食べ始める。
しかし、曜の箸はあまり進んでおらず、俺の方を気にしながらチマチマと食べていた。
「――うん、美味しい」
「ほんとっ? よかったー!」
その言葉を待っていたかのように、安心した曜はようやく自分の朝食を食べ進める。
「毎日美味しいって言ってるのに、何をそんな不安そうにするんだ」
「だって、やっぱ不安なんだもん。料理は私よりそうくんの方が上手だし」
「小手先のテクニックを知ってるだけで上手いわけじゃない。それに料理は作る人によって味が変わるんだから、あまり気にすることじゃないだろ」
「でもやっぱり言葉にして貰うと安心するかな」
作って貰っている以上、そこは俺も疎かにするつもりはないし、感謝もしている。だが、
「ってか、いつも作りに来なくても良いんだぞ?」
毎朝俺の家で朝ご飯を作って、俺を起こすために自分の支度を早くすませているのはかなり厳しいはずだ。
たまには曜だってゆっくりしたいときもあるだろう。
しかし曜から返ってきたのは不安な顔だった。
「……私がやるのは、迷惑かな?」
「迷惑じゃない、助かってる。だけど曜だって毎朝大変だろうし、それに気が乗らないときだってあるだろ」
「私は好きでやってるよ。大変だなんて思ってないし、気が乗らないときなんてないよ」
俺の言い分が気に食わなかったのか、ちょっと不機嫌そうに頬を膨らませる曜。
この様子は、何を言っても聞かない感じだ。
「……無理だけはしないでくれよ?」
「なら私がもう少しゆっくり出来るように、そうくんは早く起きよっか?」
そう返された俺はぐうの音も出ないのであった。
「そうくん、そろそろ学校に行こー!」
身支度をすませ、毎朝するべきことをしていると、玄関で待っていた曜に呼ばれる。
「ああ、今いく――それじゃあ父さん、母さん、行ってきます」
目の前に飾られている写真にそう言葉を残し、俺はその部屋をあとにする。
「お待たせ」
「ううん、大丈夫だよ。バスには余裕で間に合うから」
曜も俺の日課を知っているので、いつも時間を把握してくれていた。
家を出た俺たちは最寄りのバス停でバスに乗り込み、空いている一番後ろの席に並んで座る。
「……」
「……」
家や学校では結構喋る俺たちなのだが、何故か不思議とバスのなかでは無言だ。
もしかしたら、いつも移り行く海をずっと眺めている俺に合わせてくれているのかもしれない。
それに、この無言の時間もお互い苦じゃないのは分かっている。それほどまでに俺と曜が一緒にいた時間が長いのだ。
しかしその無言の空間もいくつかのバス停を越えたら終わる。というのも――
「おっはよー! 曜ちゃん、そーくん!!」
そう、この朝からうっさいみかん大好き娘、高海千歌がやってくるからだ。
「おはよう、曜ちゃん、奏くん」
続けて入ってくるのは、今年転校でこっちに来た桜内梨子。普段は落ち着いているのだが、意外とポンコツな部分が多い。
「おはヨーソロー! 千歌ちゃん、梨子ちゃん!」
「……いまなんかそーくんに失礼なこと思われた気がする」
「奇遇ね千歌ちゃん。私もよ」
ジト目で見てくる二人に俺はそんなことない、と口笛を吹いてそっぽを向く。
「まあ、いいや、お隣失礼しまーす」
納得がいかない様子だが、何時までも立っているわけにもいかず、千歌は曜と反対の俺の隣に、梨子はその千歌の隣に座る。
「でね! そのとき美渡ねぇがうるさーい! って怒鳴り込んできて――」
「いや、それは千歌ちゃん怒られると思うよ――」
「確かに、私の部屋まで聞こえてたわよ――」
「うそ――!?」
女3人寄ればなんとやら。千歌と梨子は良いのだが、千歌と曜が何故か俺を挟んでいるため、二人の元気な声が俺の鼓膜を刺激するのだ。
それに耐えつつ、バスに揺られながら学校の最寄りのバス停まで付けば目の前には俺たちが通う学校がある。
――私立 浦の星女学院
そう。なんの因果か、俺はいま女子高に通っているのだ。
いかがでしたでしょうか?
新しい試みですが、こんな感じでゆるーく、てきとーにやってみようかと思います。