支える片腕の恋愛事情   作:燕尾

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ども、燕尾です。
2話目です。





学校の日常

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ピーンポーンパーンポーン♪

 

 

 

『ハァイ、エブリワン! 今日も元気にしてるかしらっ? 浦の星学院3年生兼理事長の小原鞠莉よ!』

 

「……」

 

校内に設置されているスピーカーから響くうるさい声。

 

『今から私がある生徒を指名するから、その生徒は理事長室までカモーン! ね!』

 

「……」

 

その話に嫌な気がした俺は気配を消し、無言で立ち上がり帰ろうとする。

 

「あれ、そーくん? どこいくの?」

 

なん…だと……?

 

気配を消したはずのこの俺に千歌が声をかけてきただと?

 

「いや、全然気配消せてないから」

 

「むしろ全員鞠莉ちゃんが指名する人が誰か分ってるからみんなから注目されてるわよ」

 

「俺じゃないかもしれないだろ!」

 

「いや、この呼び出し方で奏くんじゃなかったことなかったよね?」

「諦めてもう向かったら、そうくん?」

 

いやだ! 行きたくない! どうせ面倒くさいこといわれるだけだもん!!

 

俺じゃないという一縷の望みを賭けて放送の続きを聞く。

 

『そのラッキーな生徒は――周防カナデ、あなたよ! カナデ、ちゃんとくるのよ! 来なかったらあなたのところまで行っちゃうんだから!!』

 

言いたいことだけ言い残して、放送をぶった切った理事長様。

この傍若無人ぶりはかの第六天魔王もビックリだろう。

ちなみに、あの女の言ったあなたのところまで、というのは地の果てまで追いかけるということだ。

 

冗談だと思うが、あの女なら可能だ。あらゆる手段を持って俺の位置を特定し、あらゆる手段で俺のところに来る。

 

「……行ってくる」

 

「いってらっしゃーい」

 

「みんなには鞠莉ちゃんとくるって伝えておくね」

 

「まあ、たぶんみんな分ってると思うけど、一応伝えておくよ」

 

察しの良い幼馴染と友人に俺は肩を落としながら理事長室まで向かう。

そして俺は理事長室前までやってくる。気分が乗らないが、後が怖いので目の前の扉を開いた。

 

「失礼しま――」

 

「カナデ――――!!!」

 

「ぬぶ!?」

 

直後、柔らかい感触と大きな衝撃が俺の顔面を襲った。

 

「ちょ、鞠莉さん!?」

 

それから奥の方から慌てた声も聞こえてくる。

 

「むー! むぐぅ――!!」

 

「あん♪ くすぐったいわよカナデ」

 

しかしそんなことよりも息が出来ない俺は少ない酸素で必死に抗議の声をあげていた。

 

「鞠莉さん、ハレンチな行為もそうですが奏さんの顔が青くなってますわよ! はやく放しなさい!」

 

「oh! てっきり私の感触を楽しんでるのかと思ったわ! ごめんね、カナデ」

 

「ぷはぁ!! んなわけあるかっ、死ぬかと思ったわ!!」

 

「でも女の子の胸で窒息死するのは男の夢だってパパが言っていたわよ?」

 

それはあの人が特殊なだけだ。胸で死にたいのなら勝手に死ねば良い。

 

「で、校内放送使って呼び出した理由はなんだ? 理事長」

 

「ノンノン、理事長じゃなくて鞠莉姉でしょ?」

 

「はいはい。鞠莉姉、一体何の用?」

 

「むう…適当な感じがするけど、まあ良いわ――そろそろ定期メンテナンスの時期でしょう? その日程を話したかったの」

 

「話は分かるけど、そのために校内放送を使ったのか?」

 

「ええ。そうだけど?」

 

「私的使用にも程があるだろ!」

 

「鞠莉さん、あなたは…」

 

ほら、ダイヤ姉さんも頭抱えてるじゃん!

俺は思いきり息を吐いた。

 

「まあ、もういいや――それで、メンテナンスの日だよな。そっちの都合の良い日で良いよ。俺は何時でも空いてるし」

 

「メンテナンス前に壊さない?」

 

「……まだその話を持ち出すのか」

 

「替えが利かないってことよ」

 

「それほど皆に心配をかけたということですわ。自覚してくださいな」

 

「俺だってあんなこと(・・・・・)もう2度と御免被るわ。全部片付いた後、各方面からこっぴどく怒られたんだから」

 

「まあ、わかっているならオッケーよ。じゃあ日程が分かったらまた連絡するから」

 

「校内放送はもう使うなよ?」

 

「保証はしないわ。さ、練習行きましょ」

 

頼むからそこは保証してくれ。

 

 

 

 

 

「で、これは一体どういうことかな? そうくん?」

 

「私も聞きたいなかなー? そーくん」

 

「それは鞠莉に聞いてくれ」

 

目の前にいる二人に正座させられている俺は今日何度目かのため息を吐いた。

 

「私はそうくんに聞いてるの」

 

「どうして鞠莉ちゃんと腕を組みながら来たの!?」

 

ずいっと迫ってくる曜と千歌に俺は顔を反らす。

俺が責められているのに鞠莉姉はどこ吹く風の様子。

 

「だーかーらー、鞠莉姉に聞いてくれって! 振りほどいても何度も引っ付いてきたんだから!」

 

「でも嫌じゃないから、ああやって屋上に来たんでしょ!?」

 

「諦めてただけだ! わかるだろ、鞠莉姉が言うこと聞かないのは!」

 

 

 

 

 

「――またやってるずら、あの三人」

 

「いつもの光景でしょ。あれでわかってない奏も奏だけど」

 

「うゆ」

 

「まあ、奏が気づかないのは昔からだからね」

 

遠巻きで好き勝手言っている外野の人間。

ちくせうちくせう、お前ら覚えておけよ

 

「はいはい。曜さんもそこまでにしてください。練習ができませんよ」

 

「千歌ちゃんも。奏くんを責める前に、歌詞はどうなってるの?」

 

「むぅ……」

 

「う˝…それは……」

 

不機嫌そうにするもそこで止まってくれた曜と、気まずそうに顔を歪ませる千歌。

どうにもならない俺にいつも救いの手を差し伸べてくれるダイヤ姉と梨子には感謝しかない。

 

「いつも大変ね、カナデ」

 

それとは反対に、原因をいつも作っている鞠莉姉は暢気な笑顔でそんなことを言ってきた。

 

「こうなることがいつもわかってるのに鞠莉姉があんなことするからだろ」

 

「こればっかりはカナデが悪いわ」

 

「なんでだよ」

 

「カナデが分かるまで教えてあげない」

 

ふふ、と笑う鞠莉姉に俺は頭を掻く。

 

「……」

 

「曜…痛いんだが……」

 

「そうくんの馬鹿」

 

そしてわき腹を鋭く突く曜の扱いに困るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、曜。いい加減機嫌直せって」

 

「……ふん」

 

練習も終わり、バスで帰ってきて、俺の家で夕飯を作っている曜はいまだに不機嫌さが残っていた。

 

「鞠莉姉がああなのはいつものことだろ。からかいというか、じゃれつきというか、そういう類いの」

 

鞠莉姉との付き合いは曜や千歌と同じくらい長い。それこそ幼い頃からの付き合いだ。

そしてそのときからスキンシップが激しい人でもあった。海外の親を持つ影響なのか、果南姉さんの影響なのかはっきりとは分からないが。

 

「そうくんは、本当にそう思ってるの?」

 

「は? なんで?」

 

逆にそれ以外何があるんだ?

 

「……長い付き合いも考えものだね」

 

首を傾げる俺に対して曜は複雑な表情を見せて何かを呟いた。

 

「今なんて言ったんだ?」

 

「なんでも! はい、よきそばの出来上がりだよ!」

 

「お、おう…ありがとう……」

 

「じゃあ、私は帰るから!」

 

「あ、ああ…わかった、また明日」

 

「また明日ッ!」

 

最後の最後まで曜の機嫌が直ることなく、彼女は自分の家へと帰っていった。

 

「……わからんなぁ」

 

俺は曜の特製オムヤキソバ――ヨキソバを口に運びながらそう呟くのだった。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
奏くんの名字は周防にしました。
パッ、と思い付いたのがそれだったのでw
ではまた次回に~
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