支える片腕の恋愛事情   作:燕尾

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ども、燕尾です
三話目です





とある休日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。それじゃあ、腕を出して(・・・・・)

 

目の前の女性にそう言われた俺は自分の左肩をグッと掴む。

かちり、と音が鳴り、緩まったことを確認してからゆっくりと肩から外し、文字通り腕を差し出した。

 

「うん。見た目の外傷はなさそうだね。着け心地の方はどう?」

 

「今のところは問題ありません。最初の頃と比べると違和感を感じることもまだないです」

 

「そりゃ君の成長が緩やかになったから。初めの成長期なんて何度調整したことか」

 

「お世話になってます。先生」

 

「ふふ。素直に感謝してくれる子は好きよ」

 

先生は嬉しそうに微笑み、腕にあるプラグに端子を挿す。そしてパソコンでカタカタと、恐らく俺が理解するのは一生出来なさそうなコマンドや文を打ち込んでいく。

 

「ここにいても退屈でしょう? 鞠莉ちゃんのところに行ってきたら?」

 

黙って見守っていると、恐ろしいことを提案された。

 

「いえ。あっちに行ったらなにされるかわからないから、ここでいいです」

 

「とは言ってもねぇ。わかるでしょ、これの検査や微調整がどれだけかかるか」

 

わかってはいる。わかってはいるのだが、鞠莉姉達のところに行くぐらいだったらここで時間を持て余していた方がまだいい。

 

しかし――

 

「カナデー!」

 

「ちょ、鞠莉さん、いけませんわよ!」

 

「やっほー、奏。来ちゃった」

 

そんな俺の気持ちはいつもこの三人に踏みにじられるのだ。

 

「ハロー、ティーチャー! カナデを貰ってもいいかしら?」

 

「いいわよ。でも四、五時間後には返してね」

 

三人だけじゃない。俺は先生にすら見放されているようだ。

 

「オーケー! それじゃあ、カナデ! 行くわよ!!」

 

そして有無を言うことすら出来ずに、俺は拉致されるのだった。

 

 

 

「あ゛~」

 

家に帰ってきた俺はソファにダイブする。

 

「駄目だ、もうなにもしたくない」

 

腕のメンテナンスが終わるまでの間、鞠莉姉、ダイヤ姉さん、果南姉の買い物に付き合わされ、カラオケに付き合わされ、ゲーセンに付き合わされ――俺のヒットポイントは底を尽きていた。

 

「全く、人の都合も考えてほしいわ……」

 

楽しくなかったかと聞かれればそうではないとはっきり言えるが、疲れるものは疲れるのだ。

 

それに――

 

「……やめだ、やめ」

 

嫌な光景が思い起こされた俺はそこで思考を断ち切る。

 

「さて、今日はなに作ろうか」

 

気持ちを切り替えて俺は冷蔵庫の中を漁る。

なにもしたくはないが腹は減る。独り暮らしの俺が作らなければ食べることはできない。

 

玉ねぎ、人参、じゃがいも、豚こま肉――うん、決まり。

このラインナップで作るものは定番のアレしかない。

 

玉ねぎを薄切りにして、油を引いた底の深いフライパンに入れて弱火にかける。焦がさないように時々混ぜながら、人参を乱切りし、じゃがいもを1/4のサイズ、肉を好みの大きさに切っていく。

それらも同じく火にかけて焼き色が付いたところで、一つにまとめ、水を入れる。

 

「後はルーを入れて終わり――って、まじか……」

 

俺は棚の中を見てやらかした、と息を吐く。

まさかのカレーのルーが無かったのだ。

 

め、面倒臭ェ…

 

ルーがなければ肉じゃがにでも転向させればいいのだが、俺の口は既にカレーの口になっている。要するに肉じゃがの気分じゃない。

 

「仕方ない、買いに行くか」

 

俺はため息を吐きながら財布を持って、家を出る。

 

「あれ? そうくん?」

 

すると同じタイミングで隣の家の曜が出てきた。

 

「どうしたの、こんな時間に?」

 

「カレールーを買いにスーパーにな。無くなってたの忘れてた」

 

「珍しいね。そうくんがルーを使うなんて」

 

「そういう気分なんだよ。それに今日は色々と疲れたし」

 

「あ、そっか。今日メンテナンスの日だったんだっけ?」

 

「まあ、そっちは待つだけだったから良かったんだけど」

 

「けど?」

 

「途中で鞠莉姉たち三年生らに拉致られて連れ回された」

 

「――へぇ?」

 

その瞬間、曜の声色と周囲の気温が下がった気がした。

 

な、何だこれは…めちゃくちゃ寒気がするぞ。

 

「あの…曜さん……?」

 

恐る恐る声をかけると、曜は何事もなかったかのように笑顔を浮かべた。

だが逆にその笑顔が怖い。小さな子でも雰囲気を察して泣き出すぞ、こんなん。

 

「そういえばそうくん。私アイスが食べたくて、今から買いに行こうとしてたんだ」

 

「あ、ああ。いつものコンビニだろ…?」

 

「でもコンビニにあるアイスにいま私が食べたいの無いから、私も一緒にスーパー行くよ。いいよね?」

 

確認という言葉にこれほどまで強制力を感じたのは初めてだ。

コンビニとスーパーの商品の種類の差なんてほとんどない。だがそれを言ったら俺はカチンコチンに凍らされそうだ。

 

「じゃ、いこっか」

 

そして曜は俺の腕を取って歩き出し、がっしりと組まれた俺は覚束ない足取りで歩かされることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ曜、歩きづらいんだが…それに、注目されてるぞ」

 

スーパーの中を男女が腕を組みながら歩いていれば当たり前に周囲に見られる。それに加えて曜の容姿となれば尚更注目された。

 

俺としては早く離れてほしい。てか、ホントに歩きづらい。

 

「それがなにかな?」

 

「いや、なんでもないです」

 

しかし笑顔なのに異様なオーラを発して聞き返してくる曜に、俺はすぐに口を閉じた。

よく分からないけど、これ以上曜の機嫌を損ねるとアウトなのは理解した。

曜のことを諦めながら俺は目的の物を探す。

 

「おっ、あったあった。バー○ンドカレー」

 

カレーを既製品のルーで作るときはいつもこれだ。バーモ○ドこそ至高。異論は認めん。

 

「で、曜は何のアイスを買いに来たんだ?」

 

「ハーゲン○ッツ」

 

「またお高いものを……」

 

コンビニにも売ってはいるが、そこで買うには高すぎるものだった。

あれ? でもさっきコンビニには売ってないものって言ってたよな?

 

「あったあった。クッキークリーム味♪」

 

だけど、そんなことは曜の顔をみれば些細なことだった。

 

「まあいいや。かごの中に入れていいぞ」

 

「買ってくれるの?」

 

俺はハー○ンダッツの抹茶味を手に取り、かごに入れる。

 

「俺も買うからついでだ、ついで。それとよく分からんが機嫌を損ねたお詫びだ」

 

「正直に言い過ぎだよ……でも、ありがとう」

 

「あと、そろそろ本当に歩きづらいから離れてくれ」

 

「それは駄目かな」

 

なんでだよ。くそ、いけると思ったのに。

 

結局、家に着くまで曜が離れることはなかった。だが、機嫌は直してくれたようで、帰りは終始笑顔だった。

 

 

 

 





いかがでしたでしょうか?
キャラクターがブレでなければいいのですが、どうでしょう?
そこだけが不安ですね

ではまた次回~( ´Д`)ノ
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