支える片腕の恋愛事情   作:燕尾

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ども、燕尾です。
タイトルつけるのって難しい……





幼馴染たちの事情

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「どうしたの、溜め息なんて。なんか悩み事でも――って、曜が悩むのは奏絡みでぐらいだよね」

 

Aqoursの練習での休憩中。小さくため息を吐いた私に気づいた果南ちゃんが悩みの内容を当ててくる。

 

「また、やっちゃった…」

 

「曜と千歌は嫉妬深いからね」

 

そんなことないと言いたいのだけど、自分でも思うところがあるし、幼馴染みの果南ちゃんの前で強くは言えなかった。

 

「でも奏もそこまで気にしてないと思うけど? そもそも、曜たちが嫉妬してるってこともわかってないでしょ。あれは」

 

「よく分からないけど機嫌を損ねたお詫び――って言ってハーゲン○ッツを奢るくらいだからね……」

 

「あはは。奏らしいや」

 

からからと笑う果南ちゃん。

そうくんがこうなのは昔からだ。昔からそうくんは鈍感だった。

 

「でもそんな奏が好きなんでしょ?」

 

「……うん」

 

長い付き合いの果南ちゃんに今さら嘘を言っても仕方がない。私は素直に頷いた。

 

「こういうとアレだけど、奏は何気に競争率高いよね。顔は整ってるし、何でも器用にこなせるし、普段はぶっきらぼうにしてるけど何かあれば親身になって助けてくれる優しさもあるし――曜に千歌、鞠莉以外でも奏に好意を寄せている子たちいるよ」

 

「えっ? うそ!? 誰なの!?」

 

「それは教えられないかな。本人にも口止めされてるし」

 

果南ちゃんがそう言うということは、恐らく三年生の人だ。果南ちゃんにそうくんのことを聞いているのだろう。

 

「ちなみに下級生たちにも人気だよ。噂話を廊下でよく聞くし。まあ、ほとんどが奏をステータスのように見て近寄ろうとする子達らしいけど。だけど本気で奏のことを好きになっている子達もいるよ。あれは多分私たちの知らないところで奏と何かあったんだろうね」

 

「……」

 

年上年下関係なく、そうくんは人気があるらしい。

それは幼馴染みとして誇らしいけれど、彼に恋する女としては少しだけ複雑だった。

 

「とりあえず、後悔だけしないようにしなよ」

 

「うん……」

 

「それじゃあ、練習に戻ろっか――あっ、練習中上の空だったら容赦なく注意するからね」

 

「それは大丈夫だよ。ちゃんと切り替えるから」

 

ならよし、と果南ちゃんは手を叩いて練習の再開を促すのだった。

 

 

 

 

 

「あ~、疲れたぁ~」

 

練習が終わって家に帰り、お風呂から上がった私はベッドに大の字になって寝転がった。

そこで思い出されるのは今日の練習中に果南ちゃんと話したこと。

 

――奏のこと狙ってる子、結構多いよ。

 

初耳、というわけではなかった。実際同学年の子達もそうくんのことを好きだという子もいたから。だけど、私が思う以上にそうくんに好意を寄せている子が多かった。

 

その子達の多くは、そうくんの優しさに触れたからだろう。

流石そうくんと思う反面、私の心中は穏やかではなかった。

 

「う~、そうくんのたらし~」

 

ぎゅっ、とうちっちーのぬいぐるみを抱き締めて、そんな文句を垂れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

休日の早朝――俺は日課のランニングで海岸沿いを走る。

一定の間隔でペースを崩さないように意識しながら前へと進む。

ランニングで走るルートは適当なのだが、ゴールはいつも決まっていた。

そのゴールの前に佇む一人の女の子が見える。

 

「おはよー! 待ってたよ、そーくん!」

 

「はぁ…はぁ…! おはよっ……千歌っ…」

 

ゴールで出迎えてくれたのは幼馴染みの千歌。ランニングのゴール地点は千歌の家である旅館"十千万"に設定していた。

 

「はい、飲み物とタオル」

 

「ああ、ありがとう。んっ……」

 

千歌から受け取ったタオルを頭に被せ、ポ○リに口をつけながらクールダウンのウォーキングをする。

 

「わんっ!」

 

「うい、しいたけもおはようさん」

 

ウォーキングをする俺の後ろをついて、自分の存在を知らせてきた千歌の家の飼い犬――しいたけとも朝の挨拶を交わし、一撫でする。

 

「そーくん、お風呂入るでしょ? いつでも使えるよ!」

 

「おう。お客でもないのにいつも悪いな」

 

「いいのいいの! お母さんや志満姉や美渡姉には許可もらってるから! それに、私たちそう言うことを遠慮する関係でもないでしょ?」

 

まあ、それは千歌の言う通りなのだが、俺が一番気にしてるのはそこではない。

 

「だけど俺が使ってもいい条件として、朝早く起きて風呂掃除とかしてくれてるんだろ?」

 

「――っ!!」

 

その事を話した途端、千歌の顔が真っ赤に染まった。

 

「えっ、そーくん、その話っ、誰から…!?」

 

「志満さんと美渡さんからだけど」

 

むしろその二人以外に誰がいるというのだろうか。

慌てる千歌にそう言うと、彼女は頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 

「あああああ! 二人とも、内緒にしてって言ったのに~!! どうして本人に言っちゃうの~!?」

 

まあ、俺のためにと動いていたのを本人に知られてしまって恥ずかしくなる気持ちは分からなくはない。

 

「そーくん、他に二人から聞いたことはあるの!?」

 

「色々と」

 

「あああああああ!!」

 

手で顔を覆って叫ぶ千歌。すると、千歌の家の2階の窓が勢いよく開かれた。

 

「朝からうっさい千歌!! 他のお客さんもいるでしょーが!」

 

「美渡姉たちが悪いじゃん! 何でそーくんに喋ったの!?」

 

高海姉妹の口論は長女の志満さんが間に入るまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

「ふあー…気持ちいい……」

 

肩まで湯船に浸かった俺は息を吐く。

 

「朝からの貸しきりの露天風呂は最高の贅沢だなぁ……」

 

足を投げ出して空を仰ぎながらそう呟いた。

 

「千歌には感謝だな」

 

本人は恥ずかしがってたけれど、俺からしてみれば素直に嬉しい。いつもならギリギリまで寝てたりするあの千歌が、早起きしてここまでしてくれているのだから。

だけど、こうして風呂を使わせてもらっている立場なのだけど、一つだけ問題があった。

 

「そーくん、お湯加減はどう?」

 

ドアの目の前で問いかけてくるのは言わずもがな。千歌だ。

 

「ああ、問題ない。問題ないから脱衣所から出ていってくれ」

 

「じゃあ、失礼しまーす♪」

 

警告する俺を無視して、千歌は風呂場へと入ってきた。

しかも、バスタオル一枚の姿で。

 

「だから! 何でお前はいつも無視して入ってくるんだよ!!」

 

「もう、今さら説明しなくても分かるじゃん」

 

「俺は分かるけど読者が――」

 

「それ以上は駄目だよ、そーくん」

 

おっと、危ない。あうやく強制終了させられるところだった。

 

「いいでしょ。ずっと前からしてることなんだから」

 

「いい加減、歳というものを考えろよ。それにもう一人でも大丈夫だっつーの」

 

「いいからいいから」

 

そして強引に俺の腕を取って引っ張り、シャワーの前に座らせる千歌。

 

「それじゃあ、お背中お流ししまーす♪」

 

そう言ってんしょ、んしょ、と力を込めてボディーソープで泡立てた垢擦りで俺の背中を擦り始める千歌。

 

「痒いところはありませんか、お客さま?」

 

「ないから早く終わらせてくれ」

 

「もう、折角雰囲気だしてるのにその言い方はないと思うな」

 

「この状況が他の誰かに見られるかもしれないってことと、さっきも言ったが歳を考えろ」

 

「でも一人で大丈夫って言っても、限界はあるじゃん。私知ってるよ、定期的に銭湯にいって垢擦りして貰ってるの」

 

「どうして、それを知ってるんだ」

 

「曜ちゃんから教えて貰ったから」

 

それを聞いた俺は嫌な汗が出る。

 

「それにそうくん、よく曜ちゃんとお風呂入ってるみたいだね」

 

後ろにいるというのに千歌の瞳が鋭くなったのを感じた。

 

「語弊がある。曜と風呂に入ってるんじゃなくて、曜が勝手に乱入してくるんだ。今の千歌と同じように」

 

「曜ちゃんは良くて、私はダメなの?」

 

「話し聞いとるか、千歌はん。あんさんらが聞き分けのう話でありんすよ?」

 

「じゃあ、もう諦めよっか」

 

ダメだこりゃ。

 

俺が嘆息していると千歌の手が俺の肩へと伸びてくる。

 

「――もう、大丈夫なの?」

 

先のない(・・・・)肩を撫でて心配そうに言う千歌。

 

「いつの話をしてるんだ」

 

「力入れれば生えてこないのかな?」

 

「そんな再生能力を俺は持ち合わせていない。それに生えてきても色は緑色だろうな」

 

生憎だが、俺はナ○ック星人ではない。指先から直線ビームを出すことも出来ない。

ありのままを受け入れるしかないのだ。何をしても戻ってくる訳じゃないのだから。

 

「みんなには感謝してるよ、本当に。みんなが居なかったら俺はあのまま腐ってた。一人でのたれ死んでたよ」

 

「そーくん……」

 

俺は皆に支えられて生きてきた。そしてこれからも支えられながらしか満足には生きていけない。そのことを気にしないほど俺も厚かましくはない。

 

「大丈夫だよ」

 

すると、安心させるように千歌は後ろから抱き締めてきた。

 

「私が、私たちが、そーくんを一人にしないから。だから遠慮しないでどーんと頼ってよ」

 

「千歌…」

 

いつも気に掛けてくれる皆には本当助けて貰っているし、その厚意を有り難く受けている。実際に、救われたことだって何度もある。

 

千歌たちはそう言ってくれるけど、一人で生きていく努力をしないで良いわけではない。その努力をしないつもりも俺には毛頭ない。

 

 

だから――

 

 

「正面は自分で洗えるから、伸ばしてる手を引っ込めて、離れんかいこの変態」

 

「痛い痛い痛いよ~!」

 

背中にぴったりとくっついて、胸元から腹回りに伸ばしている千歌の手を掴んで軽く捻るのだった。

 

全く、何をしでかそうとしてたんだか。

 

油断も隙もない幼馴染みに俺はため息をはくのだった。

 

 

 

 







いかがでしたでしょか?

千歌ちゃんが若干変態チックになってしまったw
でも、幼馴染の美少女に背中を流してもらうって夢だよねぇ?


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