支える片腕の恋愛事情   作:燕尾

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ども、燕尾です。

今回は特に何のオチも何もない、普通の日常を描いてみました。






曜との作業

 

 

 

「そうくん、おっはヨーソロー!!」

 

「ん、んぅ…?」

 

とある休日。気持ちの良い夢の国で過ごしているところに侵略してきた幼馴染み。

 

「そうくん、起きてー! それから私とお出掛けしようよ!」

 

「却下……」

 

この侵略者から国家を守るため、俺は城壁を積み上げる(布団を被る)

 

「誰が侵略者なのかな? 誰が?」

 

「いひゃいいひゃいいひゃい――」

 

しかしそんな城壁も侵略者(幼馴染み)には通用せず、腕一本で突破されてしまった。

頬をつねられて完全に目が覚めてしまった俺は抗議の目を曜に向ける。

 

「おはよう。一体なんだこんな朝っぱらから」

 

「もう10時だよ、そうくん」

 

俺にとっては休みの10時は早朝と等しいんだよ。

堂々とそう言うと、明らかに呆れたような息を曜は吐いた。

 

「折角の休みなのに、ずっと家でだらだら寝てるのは勿体ないよ?」

 

「休日なんだし、今日はAqoursの練習も休みだから、どう過ごしたって俺の自由だろ」

 

「勿体ないよ?」

 

「俺の――」

 

「勿体ないよ?」

 

お前は一度話しかけたら後は同じ返事をする村人か。

 

「はあ…そう言ってくるということは、どこか付き合って欲しいところがあるのか?」

 

諦めて問いかけるが、曜は特に無いよ、ときっぱりと言う。じゃあ何で押し掛けてきたんだよ。

 

「いやあ、まあ、そうくんと違って私にはやることがあるんだけど」

 

「喧嘩売ってんのか己は」

 

勝手にやってきて人を叩き起こしておいてなんて言い草だ。

 

「別に喧嘩売ってる訳じゃないよ。その、なんというか――一人で黙々とやっているのにも限界が来てしまいまして」

 

そこでようやく俺は曜の目的に気づく。

 

「だから、来たっちゃ♪」

 

「来たっちゃじゃねーよ」

 

うるせぇやつじゃないんだから。雷落とせないんだから。

 

「はあ、まあいいや。いつものあれだろ? なら付き合うよ」

 

「ほんと!? ありがとう、そうくん! じゃあ下で準備してるねっ! あ、それとご飯も作ってあげるから!!」

 

「うーい」

 

機嫌良くしながらリビングに下りていく曜に適当に返事を返す。

 

「さて…完全に目が覚めたことだし、起きるかね」

 

軽く伸びをしながら、俺もリビングへと降りるのだった。

 

 

 

 

 

曜と一緒に朝飯と言う名の昼飯を食べた後、曜が持ってきたものを見る。

 

「……どうかな?」

 

緊張した面持ちで聞いてくる曜。

曜が持ってきたもの――それはAqoursの衣装だ。皆の衣装は基本的に曜が作っている。

そして、作っている途中でいつも俺のところに転がり込んでくる。

曜自身好きでやっていることとはいえ9人分は物量が物量だし、単純作業になると集中力も続かなくなる。そうなったときの気分転換に衣装を持って俺を訪ねてくるのだ。

 

「うん。仕上がりは綺麗だ」

 

「よかった~」

 

俺の言葉に安堵の息を漏らす。しかし、俺が言ったのは仕上がりの話。指摘する場所はいくつかある。

 

「だけど、強度的に不安なところがいくつかあるな。裏当ての生地は?」

 

「うん、持ってきてるよ」

 

「じゃあ、場所を教えるからそこに入れていくぞ」

 

「了解であります!」

 

 

 

「ふぅ……こんなものか。曜、終わったから確認してくれー」

 

目立たないギリギリで糸を切り、俺は曜に声をかける。

 

「お疲れ様ー。ありがとね、助かったよ」

 

はい、コーヒー。と差し出されたコーヒーを礼を言いながら受け取り口をつけて一息はく。

 

「それにしてもいつ見ても凄いねー。私のしたところとそうくんがやったところじゃ全然出来が違うや」

 

「いや、曜の方が綺麗に出来てるだろ。ミシン使っているんだし」

 

そう言う俺だけど曜はいやいやいや、と手を横に振って自分が仕上げた衣装と俺が仕上げた衣装を見比べさせるように見せてくる。

 

「なら手縫いでなにをどうやればこんな等間隔の綺麗な直線を縫えるのさ」

 

「慣れだろ」

 

「慣れの問題じゃないよ…片腕ほぼ使えないのに」

 

「そこもまあ、慣れだよ。義手とはいえ掴むことぐらいはできるし。それにお互い酷い出来じゃないなら気にすることもないだろ」

 

縫い目を気にする人なんてそれこそ衣装を作っている俺や曜、ルビィや善子ぐらいだろうし。

 

「いつもみんな驚いてるよ? そうくんの仕上がりに。それと、喜んでる」

 

「ならいいよ」

 

皆の役に立っているのなら俺から何も言うことはない。

 

「それじゃあ衣装も完成したことですし。いつものあれ(・・)、しよっか?」

 

だが、そう言う曜に俺は思わず嫌な顔をしてしまう。

 

「いつもの嫌がる反応!」

 

「いやだって嫌だから、そこはいつも言ってるだろ。いつもみんなに見せるし、どういうわけか千歌や鞠莉姉が凄く怒ってくるし、精神が削られるんだよ」

 

「そこでわからないっていうのが、そうくんだよね」

 

なんのことを言っているのかわからない俺はますます渋い顔をする。

 

「今さらのことじゃん。思い出作りだと思ってさ、しようよ。というか、そうくんに拒否権はないよ?」

 

「だと思ったよ! なら最初から聞いてくるなよ!」

 

「いやあ、そういうやり取りはやっぱり必要だと思いまして。読――」

 

「言わせねぇよ!!」

 

なんて危ない橋を渡ろうとするのか。この幼馴染は。

 

「じゃ、着替えてくるね!」

 

さんざん振り回して曜は衣装を持って2階に上がっていく。

それから曜が戻ってきたのは30分後ぐらいだった。

 

「お待たせ、そうくん――」

 

「――」

 

曜の姿を見て、俺は息を飲んだ。

 

「どう、かな…?」

 

照れ臭そうに聞いてくる曜。だけど、返す言葉が見つからない。

 

「ああ、似合ってる。さすがだな」

 

なんとか出た言葉に、もっと他の言葉があるだろう、と思ったものの、やっぱりそういう言葉しか出なかった。

 

「ふふ、ありがと」

 

わかったように返す曜に俺は心の中で、ああくそ、と毒づいた。

いつもそうだ。ライブ衣装を着た曜を見ると言葉が出なくなる。ステージの上にいる曜を見てもこうはならないというのにだ。

 

「それじゃあそうくん、写真撮ろっか」

 

笑顔で俺の顔を見上げてくる曜に、俺の顔が熱くなる。

 

「ほらほら、もっと寄ってよ。入らないよ?」

 

携帯のカメラをタイマーに設定し、設置して戻ってきたのは曜は俺の腕を引き寄せて体を密着させる。

 

「そうくん、今日こそ笑顔だよ?」

 

「いや、俺は写真は真顔でしか撮れない呪いにかかっているんだ」

 

「あはは、なにそれ?」

 

「緊張してる、ってことだ」

 

「私と写真撮るなんて昔からしてるのに?」

 

「昔からしてるのにだ。これだけは慣れない」

 

「……そっか」

 

そう呟いた曜の顔は、どこか嬉しさを孕んだ笑顔だった。

 

くそ、見透かされてるんだろうなぁ。

 

こういうときにお互いをよく知っているというのはなかなか難儀なものだと、そう思うのだった。

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?

ではまた次回に
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