戦闘能力は皆無なランチさんが頑張ります。
「お楽しみの所を、失礼…。お嬢さん。」
ご飯を食べ終わってしばらく経つと、ランチのもと剣を携えた男性のプレイヤーが近づいてきた。
「私の剣のいけにえになってもらうよ。悪く思わないでくれたまへ。覚悟!」
「わわっ!」
剣を抜いて突進してくる。とっさに反応できず、一撃喰らってしまうランチ。
VITが0のため、凄まじい量のダメージエフェクトが出る。
「うわあ!」
「お嬢さんのようなか弱い存在を痛めつけるのは気が引けますね…。一思いに終わらせてあげましょう!」
「うわっ!やっ!あっ!うう、上手くいかない!」
その後も、何度か攻撃を食らうランチ。
昔アニメで見た白刃取りのように、剣を掴もうとするがなかなかうまくいかなかった。
しかし、ダメージエフェクトは凄まじいが倒れる気配は無い。
「…なぜ倒れない?!あれだけのダメージが出ているのに!」
焦る剣士のプレイヤー。最初と同じように切りかかっていく。
「わっ!」
体勢が崩れたランチは、白刃取りがうまくいかず、とっさに襲い掛かる剣に手をかざす。
パシッ
「あ、つかめた。そうか、両手でやる必要ないのか…。」
結果、片手で相手の剣を受け止めるという、バトル漫画のような光景が展開された。
ダメージエフェクトは出るが、やられる気配もなかった。
「はっ!?武器を止められた!?動かせない!って、な、なにやってんだ?!」
【捕食の手】の効果で武器が動かせず、もがく男性プレイヤー。
しかし、もがいてもどうにもならず、
掴んだ武器を口の方へ持っていくランチを見ているしかなかった。
「ごめんね、ちょっとだけだから!あむっ!」
そういって、ランチは掴んだ剣の先端を食べた。
食べられた先端が、ダメージエフェクトとなって散っていく。
「うーん、味がしない。仕方ないか…。次から【調味料】使おう」
「うわああ!!剣が食べられた!?クソっ!やめろ!」
自分の武器が食べられることに恐怖を抱いたプレイヤーがさらにもがく。
しかし、【捕食の手】が効いている限り武器を動かすことはできない。
そして、3口くらい食べると、武器が消えてなくなった。
「お、俺の武器が…!」
「だ、大丈夫です!暫くしたら戻ってきますから!ちょっと使えないだけです!」
「と、とりあえず逃げ…って、なんだこれ?!スキルが全く使えない?!」
その場から逃げようとスキルを使おうとするが、まったくスキルが使えなかった。
その間に、ランチがプレイヤーの鎧を掴む。
「よいしょっと。」
「はっ!?離せ!離せぇ!!」
剣を食べる相手に鎧を掴まれて、完全に身動きが取れなくなる。
かなりの恐怖に取り乱すプレイヤーだったが、どうにもならなかった。
「さて、どうしよ。そのまま食べるのはさすがに拙いよね…」
さすがのランチもプレイヤー自身を食べるのは何となく良くないと感じていた。
なお、システム的には特に問題なく食べることができたりする。
「あ、そうか。【食神の霧】!消費HPは…500で!」
周囲が真っ白な霧で染まる。
身動きが取れずスキルも封印されたプレイヤーに、
「5秒以上の接触」を回避する術はなかった。
「【食材集合】!これで食べなくても大丈夫だね。料理の素も手に入るし。」
そして、食材集合を発動する。しかし、プレイヤーが集まってくることは無かった。
「そうか、VIT以上じゃないとダメなのか。
…あ!もしかして【食材集合】しようと思ったら、
【食神の霧】って結構HP使うしかないんじゃ?!」
納得すると共に、恐ろしい事実に気が付くランチ。
「どうしよう…。そうするとまた大きくなっちゃうよね…。うう、恥ずかしいな…」
暫く葛藤するランチ。
ちなみにその間もプレイヤーは何とか脱出しようとしているが、
ランチが鎧を掴んでいる時点でどうしようもなかった。
「仕方ない!【食神の霧】!消費HPは…5000で!」
巨大な白色のドームが森に誕生する。
それは、周りで戦っているプレイヤーも巻き込んでいた。
「てやっ!って何だこれ?!」
「真っ白になってるぞ!」
「こ、これもしかしてランチちゃんの?!ヤバい!」
一部プレイヤーは何なのか気づいたようだが、
どちらにしろ対応方法が分からずウロウロしていた。
「じゃあ…【食材集合】!」
「「「うわあああ!!」」」
ランチが掴んでいた男性プレイヤーが、周りのプレイヤーとともに一斉にワープする。
そして、ランチが巨大化していく。
幸い、十数人程度だったのでそこまで大きくはなっていないが、
それでもその辺の木と同じくらいに成長したランチだった。
「うう、やっぱり大きくなるよね…。仕方ない!早めに終わらせよう!」
「な、なんだここ?」
ランチを襲ったプレイヤーは、唐突に視界が変わって戸惑っていた。
見えるのは、周囲に銀色の壁、真上に大空。
そして壁の上に見える大きな赤いリボン。
何が起こっているか全くわからなかった。
「と、とにかく脱出!って動けん!」
ステータスを見ると、【麻痺】が付与されていた。
そして、周りの声で他のプレイヤーが居ることにも気が付いた。
「ま、麻痺してる!?私耐性あるのに!?」
「多分、耐性無視だ!俺も耐性あるのに麻痺が解けない!」
「ランチちゃんやべぇ…でも可愛い…」
一人だけ状況を把握しているプレイヤーは、
大きくなったランチをありがたそうに拝めていたが、
他のプレイヤーは大混乱していた。
「ど、どうすれば…って、うわああ?!」
そんなプレイヤーへ、銀色の棒が襲い掛かる。
巨大化したランチの泡だて器だ。
「ぎゃあああああ!」
「うわああああ!」
「ひいいいぃぃ!そ、装備がぁぁ!」
麻痺で動けない中、泡だて器でかき混ぜられるプレイヤー。
泡だて器が当たるごとに、防御無視の10%割合ダメージを食らう。
また、武器や防具もすべて破壊されていた。
破壊されたのではなく一時無効なので、武具は後で戻るのだが、
それを知らないプレイヤーたちには絶望的な光景にしか見えなかった。
そのままダメージエフェクトを散らし、プレイヤーたちは消滅した。
【料理の素を、40個 手に入れました】
「うーん、とりあえず成功だけど…今後も大きくなるしかないか…。
これしか攻撃手段無いし…」
料理の素を手に入れ、元の姿に戻るランチ。
見事に迎撃したが、今後の戦いを考えてちょっと憂鬱になる。
「…まあ仕方ないか!割り切ろう!」
「とりあえず仕切り直しに何か食べよっと」
再び料理を取り出そうとしているランチ。
そんな様子を、観戦席のプレイヤーやスタッフが言葉もなく見つめていた。
ランチさん頑張りました。食べただけともいう。
Q:どうすれば?
A:一度も武器を掴まれずにHPを削り切りましょう。
(一度でも掴まれると武器なし+スキル封印になります)