ちょっとドジを踏みつつさらなる出会いも。
「んー、段々慣れてきちゃったな。…あんまり良くない気もする」
その後、草原や海辺などいくつかの場所で【食材集合】を使ったランチ。
だんだん大きくなることにも慣れていたが、
恥じらいとか乙女とかそういった部分でちょっと危機感も感じていた。
「さっきは失敗しちゃったし…。うう、余計なことしなきゃよかった…」
そんなランチも赤面する出来事があった。海辺で巨大化した際のことだ。
「わぁ…。今までよりはるかに大きいね…。」
海辺では周りが警戒していないので、数百人のプレイヤーが巻き込まれ、
今までで一番巨大なランチが出現していた。
「…そういえば、この状態って動けたりするのかな?」
ふとそんなことを考えるランチ。
今までは巨大化したらすぐに泡だて器の出番だったが、
特に泡だて器を使わないといけないような動作制約もない。
「歩いたらどうなるんだろ…。ちょっと動いてみよっと」
大いなる一歩(物理)を踏み出すランチ。
しかし、大きさに慣れていないのかうまく足が動かせず、
横にあった崖を踏みつけてしまった。
「わわっ!まずっ!?」
姿勢を崩すランチ。支えきれず、尻餅をついてしまった。
「な、なんか動き出した…って、えっ!?」
「やべぇ!!こっちに崩れてくるぞ!」
「し、尻が!?尻が来る!?うわあああ!!」
「わが生涯に一片の悔いなし!」
…そして、それはそのまま近くの草原に着弾した。
凄まじい音とともに、草原で呆然と見上げていた
数十人のプレイヤーが巻き込まれて消滅した。
ランチ、初めて食事以外での攻撃である。
STR も DEX も 0 のランチだが、
高さ+質量がすべてを押しつぶしていた。
「失敗失敗…。って、わっ、みんな逃げ出そうとしてる!
そうか、麻痺が解けたのか…」
気を取り直したランチは、ボウルの中がうごめいていることに気が付いた。
1分経って麻痺が解けたプレイヤーたちが、必死の脱出を図っていた。
「ここを登り切れれば!」
「これで一時的に飛べるわ!貴方だけでも逃げて!」
「ばかな!お前を置いて逃げられるか!」
「いいから!」
「…くそっ!必ず敵は取るからな!」
ちょっとしたドラマも生まれつつ脱出を急ぐプレイヤー達。
「あ、何人かに逃げられた…。やっぱすぐにかき混ぜた方がよさそう…」
そして、ごく一部プレイヤーは脱出に成功していた。
(ちなみに、上記の脱出したプレイヤーはその後ランチに突撃し、
武器とスキルを封印されたうえで、再度ボウルに集められた)
しかし、単純に巨大な壁となるボウルの壁面を登るすべは少なく、
殆どのプレイヤーが何もできないで手をこまねいていた。
「というか、どうやって登るん?突起もない断崖絶壁だぞ…」
「ここに集められた時点で、大体詰んでるな…」
一部の複数回巻き込まれたプレイヤーはある意味諦めていた。
「ぎゃああ!!」
「あああ!!脱出できねぇ!!」
「うわああ!!」
そして、超巨大な泡だて器でかき混ぜられた。
今の大きさだと、プレイヤーから見れば泡だて器とはわからず、
自身の身長をもはるかに超える巨大な鉄棒で、
前後左右から叩きのめされているようにしか感じなかった。
【食材の素を、 1230 個手に入れました。】
「おお、いっぱい手に入った。…もしかしてモンスターより手に入りやすい?」
危険な事実を知ったランチ。
「他にも色々移動してやってみよっと。」
【ガォ~!残り1時間!】
【1位はペインさん! 2位はドレッドさん! 3位はメイプルさんドラ~!】
次はどこへ行こうか考えているランチのもとへ、マスコットのドラぞうが現れた。
「おお!メイプル頑張ってるなー。」
ちなみにランチも10位以内に入っていることは
本人もあずかり知らぬところだった。
【これからは、上位3名を倒した際、得点の3割が譲り渡されるドラ!】
【3人の位置は、マップに表示されるドラ~!】
【それじゃあ、がんばるドラ~♪】
「ん?おお、なんかマップに表示されてる。これがメイプルかー」
それは、最初に居た森から少し南に下ったところだった。
…そこではメイプルが毒と麻痺をばらまく地獄を展開していたりしていた。
「ちょっと遠いな…。できれば会いに行きたかったけど…仕方ないか。」
AGI 0 のランチの速度だと、ついたころにはイベントが終了している可能性が高い。
そう考えたランチは、ふと、2位のプレイヤーが割と近くにいることを突き止めた。
「じゃあ、2位の人の近くへ行ってみよー。そこなら人も多く集まるんじゃないかな」
プレイヤーの近くで食材集合を使えば、集まったプレイヤーを一網打尽にできる。
そんな思いで、現状2位のプレイヤー ドレッド の所へ向かうランチだった。
「あー。だりー」
ドレッドは尽きない挑戦者に辟易していた。
放送があってから既に100人単位で相手をしていた。
「さて、あとどれくらい…。うえっ、まだ半分もあんのかよ…。…!?」
システム時間を見てげんなりするドレッドだが、
周りに霧が立ち込めているのをみて素早く反応する。
(触れて良いことはねぇな…。そういえば、噂で霧と巨人の話があったな…)
ドレッドもまた、直感で霧を触れてはまずいものと判断した。
「しかたねぇ…。【神速】!」
そして、即座に切り札となるスキルを使用する。
桁違いの速度となったドレッドは、立ち込める霧の範囲から逃れるよう、
一気にその場を離脱した。
そんなことはつゆ知らないランチは、いつも通りスキルを展開していた。
ちなみに横には魔法で作った雷を食べられてスキル封印され、
涙目の魔法使いがたたずんでいた。
(毎回真上から落ちてくる雷は、ランチにとって掴みやすかった。
ちなみにレモネード味のパチパチ弾けるお菓子みたいな味だった)
「じゃあ…【食材集合】! これが最後だし…消費HPは30000で!」
HPが回復するのを待って、ほぼすべてのHPでスキルを発動するランチ。
抵抗条件となる「VIT300」を超えるプレイヤーは範囲内にはおらず、
ドレッドを狩るために集まった半径100m内の全プレイヤーが巻き込まれた。
「げっ!マジか!?また霧かよ!」
「な、なにこれ?!2位のプレイヤーがやってるの?!」
「うわああああ!」
初回から複数回巻き込まれた者まで一様にボウルへ集められる。
その数は1000に届こうとしていた。
先の水辺からみても倍以上となるランチが現れた。
おそらくフィールドの全域から見ることができるだろう。
「な、なにあれ? ら、ランチっぽいよね…」
周りを毒と麻痺の海に沈めているメイプルにも遠めに見えている。
見た感じ自分が良く知る友人のプレイヤーに似ていた。
というか、格好的に明らかに本人だとメイプルも分かった。
「ランチも凄いことしてるね。私も頑張ろっと! 【毒竜】!」
そして、毒の海に警戒するプレイヤーへ、遠距離から毒ブレスが襲い掛かった。
「マジか…。何だありゃ…」
思わずドレッドも普段の飄々としたなりを潜めて嘯く。
【神速】による離脱で、ギリギリ【食神の霧】の効果から逃れたドレッドは、
かなり離れた場所からその光景を見つめていた。
「…ま、とりあえず危険はなくなってそーだ。戻ってみるか」
目の前の巨大な相手に興味がわいたドレッドは、
巨大なランチの方に向かって戻っていった。
「ぎゃああ!!」
「あああああ!!」
「武器ー!!防具ーー!!」
阿鼻叫喚とともに消えるプレイヤー達。
【料理の素を、2012 個手に入れました】
「うん。大成功。…ちょっと最後は大きすぎた気がしたけど…」
最後はさすがにやり過ぎた。
最初に降りて歩いてきたところがすべて見えるくらいの大きさだった。
「なんか紫の霧に包まれてるところがあったな。…あれメイプルのとこだよね?」
自分もスキルを取るために【毒竜】と戦っているので何となくわかる。
「メイプルもめちゃくちゃっぽいなぁ…。毒しか見えなかったよ、あの建物」
メイプルの真価は防御力にあることを気づくのはさらに先のことだった。
そして、自分の方がめちゃくちゃをしていることには気づかなかった。
そんなランチを見つめる目があった。
(あー、多分アイツだな…。とりあえず、気づかれないところから一撃か)
ドレッドである。
元々自分がいたところまで戻ってきたドレッドは、
ランチに気づかれないところから攻撃の機会を狙っていた。
(じゃ、あばよ!)
「うあっ!?何!?」
唐突にピリッとした衝撃が来たランチは、慌てて周りを見る。
「へぇ…。無事なのか。ま、今のである意味終わりだが」
「ど、どこから…。って、な、なんか体が動かない…!」
動きが鈍くなるランチ。ステータスには【麻痺】の効果が出ていた。
「ま、悪く思うな。最初の一撃をもらった時点で、アンタの負けだよ」
「じゃ、あばよ。っ?!」
そして、とどめを刺そうと攻撃しようとしたドレッドは、
ナイフがランチに届く直前で無理やり軌道を逸らし、
そのままバックして大きく距離を取った。
「えっ、攻撃を止めた…?」
ランチもびっくりして思わず声に出た。
その手は、ドレッドのナイフを掴むべく体の前で構えられていた。
「…理由は分からんが…やっぱ麻痺が回復してたか…。」
「どーいう理屈か分からねぇが、その手に掴まれたらダメそうだな」
「うそ、そこまで分かるんですか…?」
「勘だよ、勘。これを疑っちゃ、俺はしまいだ。」
ランチは驚愕する。
初撃の【麻痺】は飴の効果ですぐに回復していた。
そのため、麻痺したフリをしながら攻撃を受け止めようと考えていたのだ。
しかし、それを見抜かれていたことが信じられなかった。
「しょ、【食神の…」
「ああ、さっきの霧か?あれは効かねぇ。最初に霧が蔓延した後でも逃げられたからな。」
「多分だが、当たり続けなけりゃいいんだろ?なら、やりようはある」
「!」
霧の仕組みまで見破られているランチは、スキルの発動をキャンセルする。
この状態で使っても捕らえられることは無いと考えたからだ。
どうしようと考えていると、ドレッドは武器をしまって移動する体制に入った。
目をぱちくりさせるランチ。
「あの、私を倒さないんですか?」
我ながら間抜けな質問だな。と思いながらドレッドに問いかける。
「倒せるなら倒すがな。すげーダルそうだ。どうせまた人も集まってくるだろーし、
ここはおさらばさせてもらうぜ。」
「ちなみに、良けりゃ名前聞かせちゃくれねーか?」
翻して走る直前で、ドレッドが問いかける。
「あ、私はみ…ランチっていいます」
「そーか。もう知ってるかもしれねぇが、俺はドレッドだ。また会うときはヨロシクな」
そう言うと一気に走り去るドレッド。
実は、【神速】を先ほど使ってしまったドレッドにとっても、
本人の前で霧に包まれるのは実はかなりまずい状況だった。
(さっきの一撃で麻痺ってかそもそも仕留められない時点で、やべぇな…)
ドレッドは、要警戒人物としてランチのことを心に刻んだ。
「うーん。凄い人だったな…。メイプルもあんな感じなのかな?」
「さて、どうしよ?もう時間もないよね」
一人残されたランチは、大量の料理の素を片付けながらどうしようか考えていた。
【がおー!終了ー!】
「あ、これで終わりなのか。」
すると、再びマスコットが現れてイベント終了を告げた。
【結果、1位から3位までの順位変動はなかったドラー】
「おー、メイプル3位入賞したんだ。凄い!」
ちなみにランチは次の次である5位だったりする。
【それではー。上位入賞者からコメントを戴くドラー。まずはメイプルさんからー】
「い、いっぱい耐えれてよかったでしゅ…」
「あ、噛んだ…。ドンマイ、メイプル」
サムズアップするランチ。
こうして、多々のツッコミどころを残し
第1回イベント終了ー。
ドレッドさんも登場ですー。
順位などは大きく変動していないです。
ドラグさんも1回やられただけなのでそこまで影響はなく。
ちなみにランチさんは巨大化してたから
質量も凄い判定になっていただけですー(謎の補足)。
次回、いよいよ親友が参戦しますー。
…ただ、今回で書き溜めが無くなってしまいました。
申し訳ないですが、次回からは更新のペースが落ちると思います。
1週間に1回以上は更新していきたいと思いますので、
引き続きよろしくお願いいたしますー。