そして理沙にとって想定外の事態が。
「今日は重要な報告があるのだよ、楓君」
「ほうほう、それはなんだい?理沙君」
次の日、美咲が通学路を歩いていると、
前から何やら会話が聞こえてきた。
「うむ。話してみたまへ」
よくわからないノリだったのでそのまま便乗してみる。
「なんとなんと…ゲームをプレイする許可が下りたんですー!!」
「おー」
「おー」
ぱちぱち。思わず拍手する楓と美咲。
理沙にとっては一大事だったゲーム禁止事件。
悲しい事件も終わりを遂げたということだ。
「ということで、美咲、おはよー」
「おはよ、美咲」
「おはよー」
「というわけで、私もようやくプレイできるよー!!」
「これで3人一緒に遊べるねー」
「だねー。」
「うん!って、2人とももう始めてるの?!」
「楓は押し付…勧めたから分かるけど、美咲まで!」
「押し付けてる自覚あったの?!」
「うん、前に聞いて色々食べられそうだなーと」
「食べ…なんか変なプレイしてそう…」
「むー。これでも、イベント5位だったんだよ!」
「え?」
「あ、私は3位だったよー!」
「えええ?!」
「まって、2人のレベルは?」
「私は20ー」
「私は28ー」
「低くはないけど…何でそのレベルでランクインしてるの!?スキルとか装備は!?」
「じゃあ、理沙だけには教えてあげるー」
「うん。とりあえずガッコ行こう」
結構早い時間に着いたのか、教室には誰も居なかった。
まずは楓からキャラの説明をする。
理沙の顔がみるみる驚愕に染まっていった。
「何その化け物キャラ…。さすが楓、やることが天然すぎる…」
「そうかな?」
「そうだよ!」
「じゃ、次は私だ」
身を乗り出す理沙。
そして今度は美咲の番だった。
話を聞くにつれ、今度は理沙の顔が無表情になっていった。
「え、なにそれ…?」
「だから、相手の武器を掴んで食べるんだよー。あと、霧で相手を集めるの」
「いや、やり方の話ではなくて…」
楓も謎のステータスやスキルと思った理沙だが、
美咲はそういう問題ではない。
(多分、一回でもつかまれたら終わりだよね…。)
ゲーム、特に対人戦が詳しい理沙は、すぐに対美咲戦をシミュレートする。
聞いた話が正しければ、一度でも武器を掴まれると、食べられてスキル封印。
武器とスキルが使えなくなって、そのまま「集める」とかいう即死コンボを食らう。
「楓と違ってダメージは食らっちゃうんだけどね」
「痛くないの…?」
「あ、うん。ちょっとピリッと来るけど、我慢できないほどではないかな」
物が食べられなかったころは、注射などもちょくちょく受けていたため、
好きではないがある程度慣れていた美咲。
だからこそ、普通はゲームと分かっていても割と抵抗がありそうな、
相手の武器を素手で受け止める。といったことが可能になっていた。
(…うんまあ、下手にダメージ喰らわないより絶望度高そうだけど…)
楓はダメージが無いだけなのである意味わかりやすいが、
美咲はダメージは大量なのに死なないので、かなり怖いと思う。
多分ある程度知らないと対策すら打てない気がする。
色々考えた理沙は机に突っ伏した。
「あー、これは追いつくの大変そうだ…」
「あ、でもでも、理沙も私の真似すれば!」
「そうだよ!全部食べれば!」
「ううん、楓は楓。美咲は美咲だよ。かすめ取るなんてできない」
「っていうか美咲はとりあえず違うと思う」
「えー」
「…決めた!私は【回避盾】を目指す!すべての攻撃を避ける!」
「おおおお!カッコいい!」
「凄そう!」
「私と楓は、戦場をノーダメージで走り切るんだよ!」
「避けられない攻撃は、私が守るよ!」
「うん!」
「私も攻撃食べるから任せて!ノーダメージは無理だけど…」
「大丈夫!攻撃してもやられないのはそれはそれで凄い!ってか攻撃も食べれるんだ…」
「炎と雷は食べたよ。オレンジとレモネードっぽかった」
「味あるんだ!?」
「さすがにそれは食べられないな…」
色々話をしていると、周りが騒がしくなってきた。
「っと、じゃあ次はゲームで!よろしくね!」
「うん。」
「よろしくー」
(大量の魔法や攻撃…それを避けて攻撃…いいねぇ!)
授業の間も理沙は自分が考えたプレイスタイルに興奮を隠せなかった。
(ちなみによそ見しがちになって先生には怒られた)
「おー!これがゲームの中かー!」
「すごいよねー。」
「うん。初めて来たとき、私もびっくりした」
場所は変わって広場の公園。
メイプルとランチ、そして理沙がフィールドに降り立った。
「じゃあかえ…っと名前はまずいか…これからはえーと…」
「あ、ゲームの中ではメイプルだよ」
「私はランチー」
「分かった。メイプルとランチって呼ぶね。私はサリー。名前ひっくり返してサリーね」
「サリーね。わかった。」
「よろしくね、サリー」
早速サリーとフレンド登録する二人。
そのままステータスを見せてもらった。
「いろんなステータスに振ってるね」
「いや、これが普通だからね!」
「え、でも私防御だけだよ?」
「私HPだけ」
「……」
明らかに自分が正しいはずなのに、なぜか多数決で負けた。
頭を抱えるサリーがいたが、気を取り直して聞いてみる。
「そういえば、その装備って入賞して貰ったの?」
「ううん、入賞景品はメダルだったよ。装備はダンジョンでボス倒したら手に入った」
「私もメダルだった。装備は食べ比べで勝ったら手に入ったよ」
とりあえずランチの方にはあまりツッコミをいれないように。
と考えたサリー。さらに気を取り直して、次の話をしていく。
「私も色々手に入れないと…。今日はどうしよう?」
「あ、私、湖の方に行きたいんだ。白いウロコのアイテムが欲しくて」
「白いウロコ?」
「うん、白い装備を作りたくて!」
全身真っ黒な装備のメイプルがそんな話をしてきた。
そして、白いウロコにランチは心当たりがあった。
インベントリからいくつかアイテムをとりだす。
「あ、それってこれ?」
「うん!それだ!」
「じゃあ、何枚か持ってるからあげるね。」
「え、悪いよ。前にチョコケーキも貰ったのに」
「チョコケーキ?」
「あ、うん。私、料理も作れるから」
とても家庭的な発言のようだが、ランチの料理風景は
研究とか錬金術的なものだったりする。
「今度サリーにもあげるね。何か食べたいものある?」
「う、うーん。そうねぇ」
ゲームの中で好きな食べ物を聞かれると思っていなかったサリーは、
ちょっと狼狽えながら考えている。
「サリーが好きなのは、シュークリームだったかな」
「あー。そういえば、前に凄い食べてた気がした」
「い、いや、そんないっぱい食べては…いなぃょ?」
ちょっと恥ずかしくなるサリーだが、シュークリームが大好きなのは確かだった。
「じゃ、次ゲームで会うときにプレゼントするね。」
「あと、手持ちのだけど何個かあげるね。良ければ食べてみて。美味しいよ」
【ミルフィーユ】
食べ物。食べると美味しい。
付与効果:STRアップ 10分間 5%
そういって受け取ったサリーは、料理の効果を見て驚く。
「えっ?【付与効果】って」
「あ。私の作った料理にはついてるんだ。皆にはナイショだよ?」
「う、うん(あれ?このアイテムって唯一無二じゃ…?)」
思ったより色々ヤバいと知ったサリーだった。
「うーん、やっぱりもっとウロコが要るみたい。」
「じゃあ、今日はその湖に行こうか」
「いいの?」
「うん!一緒に遊べるのも楽しいし!」
「わかった!でも、結構遠いんだよね…」
「じゃあ、私が背負っていくのはどうかな?」
「それなら、早いかも!あ、でもランチが付いていけないか…」
「そうだねぇ。んー、じゃあ今日は私別行動するよ」
「え?」
「ちょうど、森の方でやってみたいことあったから」
「分かった。じゃあ、今日はこれで」
「はーい。またねー」
そして、メイプルは装備を外すと、サリーに背負われて移動していった。
「おー。早いねー。」
2人を見送ると、美咲は南の森へ向かっていった。
そんな光景をありがたそうに見ているプレイヤー達とか、
離れたところでびくびく見ているスタッフ達には気づかずに。
そんなわけで、ほのぼの会話回でしたー。
…そう、極振りでないのはサリーだけだったりします。
ちなみにモンスターを食べないのもサリーだけだったりします。