「【毒竜】!」
「【パワースラッシュ】!」
「【食神の霧】!」
三者三様のスキルが入り乱れる。
氷の嵐をしのいだ3人は、各スキルで銀翼のHPを徐々に削っていた。
ランチのスキルは、直接的な効果は与えないが、
範囲スキルで銀翼まで届くことから、
注意を引き付けることに成功していた。
「っ!【悪食】!」
しかし、それでも銀翼の攻撃は苛烈だった。
メイプルの防御力を素で貫通する攻撃力も相まって、
3人もスキルを徐々に使わされていった。
「【ダブルスラッシュ】!よし!5割!」
そんな中でも、3人の攻撃が積み重なり、
ついにHPを5割まで削ることに成功した。
「あ、なんか口が…」
その瞬間、銀翼の口に光が集まり始め、
巨大な魔法陣が形成された。
「【カバームーブ】!【カバー】!」
「二人とも、私の後ろに!」
「うん」
「分かった!」
危険と判断したメイプルは、とっさにスキルを使って二人の前に立つ。
縦一直線に並んだ3人に、銀白色のレーザーが襲い掛かる。
「っっ!!」
音も光も消えるような時間が過ぎ、メイプルは盾を下す。
「【悪食】はあと1回!」
「わかってる!【ヒール】!」
「みんなこれ使ってねー」
サリーがMPポーションを飲み、ランチが料理を配って回復+ドーピングする。
【悪食】を使用しているのにメイプルにダメージが入っていることも異常だった。
ランチの料理のおかげでHPやMPは全快に近いが、
回数制限があるスキルがほぼ枯渇しつつあった。
「一気に決めないと!行くよ!」
「うん!」
「分かった。(あ、そうだ、これ食べておこっと)」
攻撃を仕掛けるメイプルとサリー。
ランチは霧を出しつつ、その中で料理を1つ食べていた。
食べ終わると、ランチのHPとMPが半減する。
「【パワースラッシュ】!」
ランチが料理を食べていると、大きな音とともに銀翼が落下してくる。
麻痺毒による麻痺が発動したのだ。
「【毒竜】!」
「【ダブルスラッシュ】!」
ここぞとばかりに攻める2人。ついにHPが3割というところまで削り切った。
「うわわっ!」
「麻痺が解けた?!」
すると、銀翼は一気に飛び上がり、3人を見据えながら黒い霧のようなものに包まれた。
そしてHPが徐々に減っていく。
「来るよっ!」
「うん!」
「つかめるかなー」
次の瞬間、視認ギリギリというレベルの速度で、銀翼が突進してきた。
「【悪食】でこのまま倒せれば…!」
何とか反応できたメイプルは、悪食で銀翼にダメージを与える。
「よし、その間に!」
メイプルが止めている隙に、ランチが横に移動しようとする。
「あっ!?」
しかし、悪食が切れ、メイプルの盾が一気に破壊される。
凄まじい効果音とともに、メイプルが爪の一撃を受け、
HPの9割以上を消し飛ばされた。
「うあっ…!」
「メイプル!」
「よっと!」
返す爪でとどめを狙った銀翼だったが、ランチが嘴を掴んだことで攻撃が停止した。
体の動きも停止していて、【捕食の手】が発動したことが分かった。
「よーし。これで…って、え!?」
しかし数秒すると、基本的にあまり驚かないランチが驚愕の声を上げる。
銀翼は掴まれた嘴の一部を切り捨て、動き出したのだった。
「まずい!私が」
「【カバー】!」
再び振り下ろされる爪に、サリーが割って入ろうとする。
しかし、それをさらに割り込み、メイプルが攻撃を受ける。
「「メイプル!」」
思わず叫ぶ二人。メイプルのHPは、ゼロになっていた。
しかしメイプルは倒れずその場に踏みとどまった。
無言で目配せする3人。最後の攻撃をするべく一気にスキルを発動する。
「【食神の霧】!」
霧を発動させるランチ。
「【パワースラッシュ】!」
見えなくなる隙を狙い、側面からサリーが仕掛ける。
銀翼は翼で一気に霧を払った。
今度は後ろに回ったサリーを銀翼が捕らえる。
そこにはメイプルやランチも居た。
振り向きざまの爪の一撃が3人を捕らえた。
…しかし、3人は爪が当たると煙のように掻き消えた。
「【蜃気楼】…。私のとっておき!」
「…【毒竜】!」
「ごー」
銀翼が振り替えると、元の位置にスキルを発動しようとするメイプルがいた。
霧と蜃気楼で二重の目くらましをした間に、
ランチが回復させることでメイプルのスキル発動条件が整った。
3人を見据える銀翼だったが出来ることは無かった。
毒竜を受け、今度こそHPがゼロになる。
…しかし
「あっ!また口に光が!【悪食】もうないよ!」
「ファイナルアタック!?まずっ!」
消えゆく銀翼の口に、先ほどのレーザーと同じ光が集まる。
スキルを発動した直後の3人に、
レーザーを回避することは不可能だった。
「2人とも、私の後ろに」
焦る2人の前に、ランチが立つ。
「ランチ!?」
「だめっ!」
「ものは試しでー。やられたらごめんね。あと、支えておいてほしいな」
止めようとする2人を制し、銀翼に向かって右手を伸ばした。
メイプルとサリーは、ランチを信じて2人で肩を掴んだ。
ランチを先頭に、騎馬戦の馬のような形になった3人に対して、
銀翼からのレーザーが再び発射された。
「うわあっ!!」
レーザーがランチの右手に着弾。思わず声が漏れる。
手から弾かれ、漏れたレーザーが周囲を破壊していく。
メイプルをして【悪食】を切らざるを得ないレーザーの威力はすさまじく、
万を超えるランチのHPが一気に削り取られていく。
「ランチっ!」
ついにランチのHPバーがゼロになった。悲鳴を上げるサリー。
「えっ?!」
「あれ?」
…しかし、ランチはHPがゼロになっても、右手でレーザーを受け続けていた。
そして、ついにレーザーが止んだ。そこには何もいなかった。
銀翼は最後にすべての力をレーザーにつぎ込み、消えた。
「ふうーーー」
思わず息を吐いて座り込むランチ。
レーザーの威力で、最初の地点より数十メートルも押し出されていた。
「ランチ!」
「大丈夫!?」
「あ、うん。なんとか。メイプルとサリーは大丈夫?」
「うん、私も大丈夫。」
「私も」
「良かったーー。ダメかなーと思ったけど、上手くいったね」
皆の無事を確認して笑顔のランチ。
メイプルとサリーも嬉しくなるが、ちょっと聞きたいこともあった。
「ありがと!ランチ!」
「うん。凄かった。どうやってあのレーザーを耐えたの?」
「あ、途中で料理を食べたんだ。こんなの」
現物は食べてしまったので、レシピだけを見せるランチ。
【チョコクッキー】
食べ物。食べると美味しい。
付与効果:全ステータスが半減するが、1度だけどんな攻撃でもHP1で耐えられる 10分間
「なるほど…。これでさっきの攻撃を耐えたのか…」
「連続で来る攻撃だったらダメかなーとおもったんだけど、あの攻撃は大丈夫だったみたい」
「強力だけど、ステータス半減か…」
「うん。普通なら色々下がっちゃうけど、私はHPとMPだけだから。
半減しても耐えられるならあまり気にならないかなーって」
「最近できたレアなものだから、再現は出来ないんだけど」
「なるほど…って、ランチ、今のHP1なの!?」
「あ、私も1だね。さっきやられたとき、【不屈の守護者】ってのが手に入ったんだ」
「メイプルも!?【ヒール】!って、ランチは無理!」
「ポーションで回復させるから大丈夫ー。サリーはメイプルを回復させてあげてー」
イズから買った割合回復のポーションで回復するランチ。
「こっちは素材があるねー。鳥の羽。」
「メイプルー!ランチー!こっち来れるー?」
「私無理かもー」
「うーん、じゃあ一旦メイプルだけ来てもらっていい?」
「分かった!」
巣の上に上がるメイプル。
「他は特になさそうかな。あんまり食べられなかったなー。残念」
2人が上の探索をしている中、ランチは毒が消えたので銀翼の最後の地点に行ってみた。
「ん?」
最後の地点に行くと、何か光っているものが落ちていた。
「あれ?さっきメイプルが見落としてた?けど、あんな光ってるものを?」
疑問に思いながら近づいてみると、メッセージが表示された。
【ぎんよく の にく が おちている】
「わーい!お肉だ!これ貰っていいかな?2人と相談しよ!」
早速拾うと、丁度2人が降りてくるところだった。
「上でこんなの見つけたんだ。どうしようかと思って」
「卵だよ」
「玉子だね!」
微妙にニュアンスが違うが、2つの卵があったことを伝える。
メダルも5枚あったが、それはメイプルとサリーに譲った。
「私はこんなの見つけたよー」
「えっ?肉…?」
「すごい!なんか昔のマンガであるようなお肉だね!」
「んー、でもそのままじゃ食べられないみたいなんだよね。
私のスキルでも料理できないみたい」
アイテムの説明にはこう書かれていた。
【銀翼の肉】
素材。調理が必要。食べるととても美味しい。
「効果とかも書いてない…。何かの記念アイテムなのかな?」
「とりあえず、お肉は私がもらっていい?」
「あ、うん。いいよ。じゃあ卵は私たちがもらっていいかな?」
「うん、いいよ!」
「メダルも貰ってるから、ちょっと申し訳ないけど」
「気にしないでー。美味しそうなものあったら教えてねー」
きゃっきゃ言いながら戦利品を分けていく。
「さて、行きますかー」
「うん!魔法陣どれ乗る?」
「サリーにお任せっ!戦闘がないとこが良いなぁ」
「同感…。さすがに疲れた…。じゃ、これで」
「はーい。食べられるところがいいなー」
整理が終わった3人は、次の場所へ向かうことにした。
「あ”あ”あ”あ”ーーー!」
そして、同じ時間、悲鳴がこだまする空間があった。
「【銀翼】がやられた!!」
「は?」
「おいおい、あいつはプレイヤーが倒せる設定じゃないだろ…」
「そうだ。ステータス・スキル共に悪意の塊。直前の調整でさらに強化されてるのに」
元々が罠として用意されていたに近いモンスターであり、
昨今の事情を鑑みて急遽強化された【銀翼】は、
トッププレイヤーだろうと容赦なく葬る実力を持っていたはずだった。
「けどやられたあああ!!!」
完全に予想外の結果にざわめくスタッフルーム。
「だれだ!?誰にやられた!?」
「これだ!」
映像が出る。そこには白・黒・青の装備に身を包んだ3人がいた。
「メイプルとランチ!?どうやって!?」
「機動力ゼロのはずなんだが…って、この青い子はなに?」
「メイプルのお友達らしい…んだが、ヤバいな。何だこの回避…スキルは…使ってないな」
「ヤバい。プレイヤー単体だと一番ヤバい気がする…」
思わぬ伏兵のサリーに唸るスタッフ達。
しかし、重大な事実に気づく。
「やべぇ!!幻獣の卵が!!」
「中身は?!」
「【狐】と【亀】だな。鳥と狼は【海皇】のとこ」
「まあ、あれは大丈夫だろ。ギミックなしじゃどうしようもない」
「だな…。あー、ありえねー…」
脱力するみんな。しかし、次の言葉でみんなが固まった。
「…あの、銀翼が【肉】落としたんですが…。ランチが入手しています。」
「は?」
「は?」
「は?」
映像には、マンガ肉のようなアイテムを拾うランチの姿があった。
「…いやいや、なんだ【肉】って」
「いやなんか、マンガ肉みたいなの普通に落としてましたよ!なんですあれ!」
「知らん!そんな機能はなかったはずだ!」
「まさか【暴食】関連か!!何仕込んでんだよ!!」
大騒ぎするスタッフを尻目に、3人の探索は続いていた。
ということで、銀翼戦が終わりましたー。
ランチ達もスタッフ達も頑張りましたー。
お肉はまた今度で。