食べるのが大好きなので、全てをいただきます   作:にゃもー

47 / 84
お時間開いてごめんなさいー。

イベントを見てる人たちが出てきますー。


美咲と外の人たち

 

 

【楓の木】のプレイヤーが、シンと戦ったカスミの報告を聞いて覚悟完了しているころ、

遠く遠く離れた町では様々なプレイヤーが談笑しながらモニタを見つめていた。

 

そこは今回のイベント用に用意された観戦専用の街。

全ギルドの状況などが確認できる代わりに、戦闘エリアには一切情報が伝わらない。

リタイヤしたプレイヤーもここに送られてくることになっていた。

 

イベントが開始して僅かだが、発生した幾多の戦闘を観戦していた

彼ら彼女らは興奮しながら話していた。

 

「おーやってるやってる!いやーすげえ!」

 

「見てるだけで楽しめるな!」

 

「ああ!戦うのも面白いだろうが、観戦も大正解だ!」

 

「ここに居るのはギルド未加入か参加してないギルドのプレイヤーだな」

 

「まあ参加してるギルドは強いとこばっかだ。特に大規模は」

 

「上位は大規模が独占するかもな。」

 

「1位は【集う聖剣】か【炎帝の国】か?」

 

「まあ小規模中規模にはキビシイだろ。…例外っぽいのも居そうだが」

 

「【楓の木】な…。とりあえずランチちゃんがスタートダッシュと

ばかりに霧出しまくってたな」

 

「あれなぁ。襲撃警戒してて霧が出たらとっさに反応しづらいよな」

 

「結構やられてたな。実際、繰り返されるだけでギルドによっちゃ厳しくないか?」

 

「襲撃してでも阻止したくなるな」

 

「襲撃したらメイプルちゃんがお迎え」

 

「アカン」

 

「てか、俺ランチちゃん映ってるモニタ見てたんだが、

 あれただ単に襲撃してただけか?

 何かウィンドウ見ながら色々メモ取ってたような気もするんだが…」

 

「…もしかして、あの霧でターゲットにした相手の場所ってランチちゃんにバレてる?」

 

「ああ、その場所をメモしてるってことか」

 

「引っかかった相手の場所を記した地図ができるな」

 

「それ、相手多いとこ=ギルドの位置じゃね?」

 

「…実質、ワイドエリアスキャンってことか。」

 

「1人でも霧に引っかかったプレイヤーがいるギルドは、【楓の木】に位置がバレたということだな。」

 

「メイプルちゃんがこんにちわ。撃退しないとオーブとられる」

 

「地獄かよ」

 

 

色々憶測が飛び交う一方、【楓の木】では早くも次にむけて動きだしていた。

時は夜。普段は皆お休みタイムだが、対抗イベント中の今は暗殺や襲撃がはびこる時間帯だった。

 

「じゃあ、そろそろもう1回行くから」

 

「え?もうちょっと休んだ方が…」

 

幾つかのオーブを持ってギルドへ戻ってきたサリーは、

そんな闇に紛れて動くべく、オーブの受け渡しとちょっとした

情報交換を終わらせると、またすぐにオーブ奪取に向かうつもりでいた。

 

「スタートダッシュが肝心だからね。取り易い時に取っておく!」

 

「う、うん。気をつけてね」

 

メイプルが心配そうに見送る。

今はフルプレイヤーが揃っていたが、それではオーブは奪えない。

どんどん動く必要があった。

 

ちなみに運悪くこの時にオーブ奪還に来てしまい、

ほぼ攻撃すらできず全滅させられたギルド達が幾つかいたりした。

 

「サリー、ちょっと待ってー。」

 

「うん?」

 

出発しようとしたサリーをランチが引き留める。

 

「おやつだよー。味わって食べてくれると嬉しいな」

 

【ショートケーキ】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:STR上昇 10分間 5%

 

【シュークリーム】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:STR上昇 10分間 5%

 

【水ようかん】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:STR上昇 10分間 5%

 

ランチがサリーに渡したいくつかのおやつは、

ちゃんとスプーンやフォークで食べる必要があるものが多かった。

走りながらでは食べにくく、立ち止まる必要があった。

 

また、付与効果はサリーの動きを変えずに支援できる、

STR上昇に限ったものばかりだった。

忘れずにサリーが好きなシュークリームも添えておく。

 

「ランチ…。ありがと」

 

貰ったお菓子を見て、少し肩の力が抜けたサリー。

 

「いってらっしゃーい」

 

「うん。行ってくるね」

 

 

サリーが出ていった入り口を見て、イズがつぶやく。

 

「サリーちゃん。頑張ってくれてるわね」

 

「ああ。俺たちも負けられないな!」

 

「ええ。私たちも打って出ましょう。

 守りは…メイプルちゃん、マイちゃん、ユイちゃんが居れば大丈夫よね」

 

「はい!」

 

「「頑張ります!!」」

 

「ランチちゃんはどうする?」

 

「私も出てこようかなーと。ちょっとやってみたいこともあるので」

 

「あー。うん。分かったわ。」

 

何となくロクなことではなさそうだと思ったイズだが、

深くは追及しなかった。

 

「じゃあ、行きましょう!」

 

「ああ」

 

「うむ」

 

「僕も出てくるよ」

 

「はーい」

 

ギルドを出ていくものたち。

 

「頑張ってね!守りは任せて!」

 

「いってらっしゃい!」

 

「お気をつけて!」

 

見送る、ギルドを守るものたち。

どちらにも最初の試練が近づきつつあった。

 

 

 

「ディナー!【覚醒】×2!」

 

(わおお!)

 

外に出たランチは、ディナーに乗りながら近くのギルドへ向かう。

 

「はっ?狼!?」

 

「くそっ!!迎撃だ!」

 

「ぎゃああ!!!」

 

途中、偶然出会った不幸なパーティが食べられつつ、目的の場所へ向かう。

そこは先ほどマッピングした場所で、来てみるとそこそこ中規模のギルドで、

神殿の跡地のような石造りの場所に拠点を構えていた。

 

「着いたー。さて、まずおやつかな。」

 

近くの草原まで来たランチは、一度ディナーから降りてアイテムを取り出す。

食べたかったものを出しただけなので、付与効果などは考えていない。

 

【サンドイッチ(玉子)】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:VIT上昇 10分間 5%

 

【スコーン(プレーン)】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:DEX上昇 10分間 5%

 

【レモンティー】

  飲み物。飲むと美味しい。

  付与効果:VIT上昇 10分間 5%

 

「ディナーも一緒にね。いただきまーす」

 

(わうわう)

 

ディナーにも食べ物を渡すランチ。

 

【干し肉】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:STR上昇 10分間 5%

 

【牛ステーキ】

  食べ物。食べると美味しい。

  付与効果:AGI上昇 10分間 5%

 

「ごちそうさま。じゃあ、ディナー、行こう!」

 

(わう!)

 

おやつタイムを終えたランチは、

ディナーにまたがってギルドに向かって突進する。

 

「敵襲!敵は一人、狼に乗ってるぞ!」

 

「了解!」

 

「狼!?モンスターを仲間にするスキルか?」

 

「例のパティシエの奴か!」

 

「マズい!霧に警戒しろ!」

 

襲撃を受けたギルドは、しかしすぐに迎撃態勢を取ろうとする。

相手がランチと分かり緊張しつつも布陣を引こうとしていた。

 

しかし…

 

「いけーディナー!ジャンプだー!」

 

(わうう!!)

 

「なんだと!?」

 

防衛とかち合う直前、ディナーは大きく跳躍する。

AGI400を誇るディナーのジャンプは、

構えていた前線プレイヤーを軽く飛び越え、

オーブの近場にまで到達した。

 

「ありがとう、ディナー。一旦【休眠】×2!」

 

「越えられた!」

 

「狼も消えたぞ!挟んで倒せ!」

 

一気に距離を詰められ混乱するギルド。

 

しかし、見ようによっては自分たちの只中に飛び込んだだけである。

狼も今のでMPを使い切ったのか、一旦ひっこめられた。

 

プレイヤーは、周りを囲んで一気に倒してしまおうと詰め寄る。

それは通常正しい判断だったというべきであろう。

…しかしランチ相手では明らかに誤った選択肢だった。

 

「【封鎖海域】!」

 

周囲30mが深海へ置き換わる。

 

「うわあ!」

 

「す、水中!?息が…!」

 

「くそっ、動きが!」

 

「【AGI低下】だと!?」

 

唐突に水中へ放り込まれ、大混乱に陥いる中規模ギルドの面々。

そんな中でもランチを狙おうとしたプレイヤーはいたが、

水中+速度低下のせいでまともに攻撃すらできなかった。

 

「あーなるほど。オーブだけはそのままなんだねー」

 

そんな中、唯一自由に動くマーメイドランチはオーブを見る。

先ほどまで台座に鎮座していたオーブが、

今は水中で漂うかのように浮いていた。

 

「じゃ、オーブいただきまーす」

 

オーブの方へ泳いでいくランチ。

 

「ヤバい!オーブが!」

 

「止めろ!」

 

「無理だ!速すぎる!」

 

「い、息が!ちくしょう!」

 

ランチを止めようとするが追いつくことすらできない。

むしろ、【潜水】などのスキルを持たないプレイヤーが、

【窒息】によってやられ始めていた。

 

「…そういえばこれ食べられるのかな?」

 

オーブを見てふと考えるランチ。

 

「…じゃ、オーブいただきまーす」

 

先ほどと同じだが、どこか不穏な響きがあった。

 

「あ、触ると消えちゃった。手に入れたことになっちゃうのか。」

 

オーブは他のギルドプレイヤーが触ると消えてしまい、

つぼみのようなアイテムとして取得できる。

そのため、触った時点で消えてしまい、食べることはできなかった。

 

「次は直接食べてみようかな」

 

更に不穏なことをつぶやきつつ周りを見る。

 

「くそっ!オーブを返せ!」

 

「よくもみんなを!許さない!」

 

殆どのプレイヤーは【窒息】でやられていたが、

【潜水】などの水中スキルを持つ数人のプレイヤーは

まだ活動できるため、ランチに向かってきていた。

 

ちなみに最初は逃げようと思っていたが、

境界部分に攻撃してもダメージエフェクトが出ないと分かり、

半ば絶望しながら攻撃を仕掛るプレイヤーも居たりする。

 

「んー。どうしよう。やっぱこれかな。【食神の霧】!消費HPは…10000!」

 

水球を中心に巨大な霧が広がる。

 

「うわあ!またか!」

 

「霧を散らせ!」

 

「くそっ、戦闘中に!」

 

それは周囲のいくつかの戦場やギルドを巻き込んでいた。

 

「真っ白に!?」

 

「な、何も見えない!」

 

「くそぉ!!」

 

そして、霧は白色の水という形で、

水球の中に居るプレイヤーたちにも襲い掛かかる。

 

水には10秒以上触れないように対処が必要となるが、

それが可能なプレイヤーは残念ながらいなかった。

 

「じゃあ、【食材集合】!」

 

「うわああ!!!」

 

「混ぜまーす」

 

「あああ!!!」

 

「ぎゃあああ!!!」

 

【料理の素を、52 個 入手しました】

 

水中で麻痺状態の中、泡だて器で混ぜられて消えていくプレイヤー達。

 

「それじゃ、解除。ごちそうさまでした!」

 

フィールドが元に戻る。

しかし、オーブも、それを守るギルドのプレイヤーも周囲からは消えていた。

 

その後、復活したギルドのプレイヤー達。

しかし、オーブを取り返しに行くことは無かったという。

 

 

 

ランチが【封鎖海域】でオーブを奪取したシーンは、

モニタでもハイライトされ、様々な場所で話題になっていた。

 

それは巨大な空間の中で動くマスコットたちの間でもそうだった。

第4回イベントを陰から見守るスタッフ達である。

 

<スタッフルーム>

 

「ひでぇ…」

 

「うん?なんか問題か?」

 

「いや、トラブルじゃないんだが…」

 

そのうちの一人【青】は、ランチのスキルを見て思わずため息を漏らす。

何かあったかと思った【赤】はその映像を見せられて閉口していた。

 

「これはどうしようもないかもしれん…」

 

「今のところスキルに巻き込まれて生き残れそうなプレイヤーがいない」

 

「ペインとかは?」

 

「スキルなしなら勝つ可能性はあるが、これはなぁ…」

 

取られることを想定していなかった海皇のユニーク装備。

一応コンセプトは「楽しく遊泳する人魚」だったが、

そんな可愛いものではないのは先ほどの光景で明らかだった。

 

そして、リーダー格の【黒】はある点を気にしていた。

 

「…ちなみに、さっきオーブを食べようとしてた気がするが…」

 

「大丈夫です!オーブは触ると特殊な取得処理が入ります!深海の影響も受けません。」

 

「ランチが直接食べたらどうなる?【暴食】とバッティングした場合だ」

 

「大丈夫…と思うんですが一応確認します!」

 

暫くすると【青】から悲鳴が上がる。

 

「あああああっ!!!ダメです!」

 

「どうした!?」

 

「ランチが直接食べてしまうと、【暴食】が発動すると思います!」

 

「その場合どうなる?」

 

「オーブが一部食べられて、機能停止してしまうかも…」

 

「すぐ修正できるか?」

 

「頑張ります!」

 

「追加作業だ…」

 

「早くしないと!ランチが次のギルドへ向かってるぞ!」

 

「急げ!」

 

スタッフに安息の時は訪れそうになかった。

 




そんなわけで、観戦者とスタッフによる、ランチのスキル鑑賞会でしたー。

次回はイベントもさらに加速。ランチ達にも色々な試練が降りかかりますー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。