遺跡跡に爆発音が響く。
「予想はしてたけど…効かないね」
「ええ…」
ゆっくりとマルクス達に向かって歩くメイプル達が、
マルクスの仕掛けた罠を次々起動しているのだ。
「話に聞いてたけど、とんでもない防御力だね…」
「でも、メイプルにも有効なトラップも仕掛けてあるんでしょう?」
「うん。」
言ったそばからマルクスが狙っていた罠が発動する。
四方から蔓が伸び、メイプルを捕捉した。
「よっし!」
思わずガッツポーズをとりそうになるマルクス。しかし…
「「えいっ!」」
ユイとマイの一撃で、衝撃とともに蔓は消し飛んだ。
「えええっ…」
思わずひきつった声を出すマルクス。
メイプルを倒すことができないのは何となくわかっていたが、
まさか拘束の罠を一撃で消し飛ばす相手がいるのは予想外だった。
「マルクス、メイプル用の罠はあといくつ設置していますか?」
「効きそうなのは6つ…かな。どれも倒せそうにはないけど…」
「上等です!」
ミザリーは向き直るとギルドメンバーに声をかける。
「皆さんは戻っていてください。オーブをお願いします」
「よ、よろしいのですか…?」
「うん。仕方ないね。僕らが足止めするから。」
「分かりました!」
「ご武運を!」
遠ざかっていくギルドメンバーを尻目に、
ミザリーとマルクスはメイプル達と相対する。
「有効なトラップは後ろにもあるから…下がりながらならさらに増えるよ」
「良いですね。分かりました。」
「行くよー!【毒竜】!」
メイプルの掛け声とともに、巨大な竜からの毒液が二人を襲う。
「【アンチドーテ】!」
避けることはかなわなかったが、解毒呪文で即回復する。
この辺りは、NWOのヒーラーの頂点とも言われる
【聖女】ミザリーの面目躍如であった。
「【遠隔設置 岩壁】!【遠隔設置 風神】!」
続けてマルクスが遠隔に設置できる罠を発動。
メイプル達が巨大な岩に包まれ、中で暴風が吹き荒れる。
「ユイちゃん、マイちゃん!お願い!」
「はい!」
しかし、ユイとマイの攻撃で風ごと吹き飛ばされる。
「マルクス、下がりましょう!」
「うん!」
二人は前を見据えたまま数mほど後退する。
合わせるかのように歩を進めるメイプルに、罠が発動する。
それは洪水のような大量の水を地面から発生させる罠だった。
「わわっ、足を捕られちゃう!」
急激な水流が足元を襲い、3人は転びそうになる。
「ま、任せてください!いくよ、ユイ!」
「う、うん!」
マイが地面に大槌を叩きつける。
それを見たユイも同じく叩きつける。
叩きつけた範囲を大きく超えて水が散る。
「ありがとう!」
何とか体勢を立て直したメイプルは、そのまま進んでいく。
更に数個の罠が発動するがメイプル達には効かず、
歩みを邪魔するものはユイとマイがすべて壊していた。
「…これは厳しいかもしれないですね」
「最後まで、頑張ってはみるよ…」
近づいてくるメイプルに心が弱りそうになる二人。
更に後退するかどうか判断を重ねている時、目の前に炎が舞った。
「「ミィ!」」
「【炎帝】!【炎槍】!」
「うわわっ!」
メイプル達とミザリー達の間に現れたミィは、
即座にスキルを放ちメイプル達の足を止める。
「…貴様がメイプルか。」
「はい。【炎帝の国】の、ミィさんですね。」
「ああ。…ランチは居ないようだな」
「ランチはお留守番です!」
「め、メイプルさん、それは言わない方が…」
「ああ!?もう、つられちゃったよ!」
「…釣ったわけではないんだが。まあいい。ここは通さん。行くぞ」
「負けません!!」
若干気が抜けそうになりつつも、ミィは3人を見据える。
対するメイプルも、ミィたちをまっすぐ見る。
第1回イベント3位と4位、今回も共にトップ10入りしている
ギルドのマスター同士の戦いが始まる。
その様子は内外へ映像で配信されていた。
「おおお!!始まるぞ!メイプルちゃんとミィの激突だ!」
「今大会でも屈指の好カード!大興奮!」
「テンション上がってきた!メイプルちゃん頑張れ!」
「俺はミィが勝つと思うがな。あの火力はさすがにメイプルでも…」
「いや、メイプルの防御なら!」
周りが盛り上がる中戦闘が始まった。
<[ユイ]ミィさん達3人と今から戦います!>
そして、ユイは1つのメッセージをギルドメンバーへ送り
「…そうか。念のため向かうか…。シンも居るだろうしな」
そのメッセージが別の場所で戦うカスミを動かしていた。
「【爆炎】!!」
「うわわっ!の、ノックバック!?」
ミィのスキルがユイとマイに直撃する。
【身捧ぐ慈愛】で身代わりとなったメイプルが、
スキルに付与されたノックバック効果で、後ろへ押し出される。
それは、ユイとマイがメイプルの庇護から外れることを意味する。
「メイプルさん!?」
「も、戻らないと!!」
「【炎槍】!」
「間に合わない!」
「【カバームーブ】!」
メイプルがスキルでユイとマイのもとへ移動。
【身捧ぐ慈愛】で何とか二人を守り切る。
「「【飛撃】!」」
「【フレアアクセル】!」
お返しとばかりに放たれる二人からの衝撃波を、
ミィはスキルで交わしながら空へ舞う。
「空に!?」
「【遠隔設置 氷槍】!」
「【ホーリージャベリン】!」
「うわわっ!」
思わず空を見上げる間に、マルクスとミザリーからスキルが放たれる。
防御貫通効果もあるスキル達でHPを削られるメイプル。
「【爆炎】!!」
「くうぅ。ま、またぁ!?ほ、【捕食者】!!」
再びノックバックが出て飛ばされるメイプル。
ユイとマイへの攻撃をフォローするため、捕食者を出す。
「【ホーリーボール】!」
対してミザリーはスキルで捕食者を攻撃。
捕食者は消えるがユイとマイへは通らなかった。
「ユイちゃん、マイちゃん!こっちへ!」
「こちらも一度集まるぞ!」
一通りの攻防を終え、お互いに体勢を立て直す。
「うーん。やりづらい…」
「ノックバックが大変です…」
「何か良い手はないですかね…?」
メイプルが思わずつぶやく。
トッププレイヤーからの対メイプル用の攻撃は、
モンスターとは比較にならないくらい厄介だった。
「ああもう…なんて硬さなんだ」
「貫通攻撃ですらほとんど攻撃が…」
「化けものめ…」
対して、攻めているように見える【炎帝の国】も苦しんでいた。
いくら優勢に見えても倒せないのではどうしようもない。
「そうだなぁ…あっ!そうか!」
「何かあるんですか?」
「うん!ユイちゃん、マイちゃん、座ろう!」
「えっ?」
メイプルは、突然何かを思いついたように足元へシートを置く。
そして料理を並べ始めた。
「ど、どうしたんですかメイプルさん?」
「こういう時は、ごはんってランチが言ってた!」
「ええっ…ってこれは…!」
【カップケーキ】
食べ物。食べると美味しい。
付与効果:ノックバック無効 5分間
【レモネード】
飲み物。飲むと美味しい。
付与効果:炎耐性アップ 10分間 10%
【醤油煎餅】
食べ物。食べると美味しい。
付与効果:STRアップ 10分間 5%
【コーヒー(ミルク)】
飲み物。飲むと美味しい。
付与効果:炎耐性アップ 10分間 10%
出された料理を見てユイとマイが思わず声をあげる。
ランチは料理中たまに作られるレアな効果を持つものを、
各メンバーに合わせて渡していたのだった。
「な、なんか座ってご飯食べ始めた…?ちょっと攻撃しづら」
「【爆炎】!!」
「【ホーリーウィンド】!!」
「えええっ。よ、容赦ないね」
一方の炎帝の国。
マルクスは突然始まったご飯タイムに少し気が抜けてしまっていた。
しかし、ミィ・ミザリーは容赦なく攻撃を放つ。
ちょっとびっくりしたマルクスだったが二人の焦った表情を見て固まった。
「マルクス!あれを阻止するんだ!あれはっ!」
「ええっ!多分ランチから渡されたもの!今出すということは」
「ああ。恐らく強力な付与効果を持つ料理だろう!」
「はいっ…?」
「いいから攻撃だ!」
ランチの料理の【付与効果】を知る二人には、
メイプル達の行動がどんな意味を持つか分かっていた。
そしてその効果はすぐに表れる。
「わわわっ!?で、でももう大丈夫!食べ終わった?」
「はい!」
「行きましょう!」
急いで食べた3人。結果付与された効果は、
メイプルが【ノックバック無効】【炎属性耐性アップ】
ユイとマイが【STRアップ】【炎属性耐性アップ】
いずれもミィ達を相手取るにこの上なく強力なバフだった。
「…直前の攻撃で、ノックバックしなかった。」
「の、ノックバックしない!?それヤバいよ…」
その中でも決定的と言える効果にミィは気が付いていた。
規格外のVITと範囲防御を持つメイプルにとって、
ノックバックしない特性は強力過ぎるもの。
ちなみにランチはノックバック関連の効果を持つ料理を
全てメイプルに手渡していたりしていた。
「厄介ですね…。ミィ、下がりながら戦いましょう。マルクスの罠もあります」
「…分かった。しかし、退路は無いぞ。」
「ええ。やるしかないようですね」
3人の見える先には、ランチの料理で強化されたメイプル達が歩いてくる。
「いくよ、マイちゃん、ユイちゃん!」
「はい!」
「頑張ります!」
まっすぐに相手を見据えるミィ達。
「まずは目の前の奴らを止める。
罠も魔法も使い切るつもりで良い。
シンにも連絡しておく。」
「分かりました!」
「おっけー…!!」
お互いにスキルを構える。
方々が注目する中、第2ラウンドが始まった。
ということで【炎帝の国】での激闘ですー。
…ランチさん出てこなかったのはごめんなさいー。
微妙に暗躍してたりします。
次回はますます激しくなる戦いですー。