【炎帝の国】との激闘ですー。
「【崩剣】!」
「ふっ!はっ!」
シンのスキルを、カスミが防ぐ。
「くっ!」
「カスミ!」
20を超える剣が襲ってくるシンのスキルは、
カスミの防御も突破しダメージを与えてくる。
「カスミさん、ポーションです!」
「ああ、助かる。そちらは大丈夫か?」
「はい!カスミさんのおかげで回復できています!」
「分かった。…しかし、このままだと終わらんな」
さすがにすべては防げないものの、
剣の大半を捌くカスミのおかげで、
メイプル達も回復などをする余裕が出てきていた。
「不利な状況ではないと分かっているが、落ち着かないなっ!」
カスミはその場で剣を弾き続ける。
メイプル達が動けない状態では、
【身捧ぐ慈愛】の範囲内から出るわけにもいかず、
相手の攻撃を防ぐことだけしかできていなかった。
「さて…このままではマズいな」
「ええ。そろそろMPポーションが心許ないです…」
「ボクも罠を使い切りそう…」
「俺もいつまでもは続けられないぜ!どうする?」
「そうだな…」
ミィ達もまた焦りが見えていた。
特に【火炎牢】を使うミィと【崩剣】を使うシンは、
常にMPを使っている状態で、回復手段にも限度があった。
「MPポーションを持ってきてもらう手もありますが…」
「ああ。だが、あの状態が簡単に崩れるともおもえんな…」
少し考えた後、ミィは3人に向き直った。
「【火炎牢】を解除する。」
「ミィ!?」
「そして、全員で全力の防御貫通攻撃を仕掛ける。
メイプルのあの防御は強力だが肩代わりに違いはない。
相手の回復を上回る威力で、押し切る!」
「ヒュゥ!乗ったぜ、ミィ!」
「おっけぇ…!」
「…分かりました。私のMPもすべて使うつもりで行きます」
「では行くぞ!まずは準備だ。解除後の混乱を狙うぞ!」
次の瞬間、【火炎牢】が解除された。
「あ!終わった!」
「「やりました!!」」
「よし、この溶岩の海からも出よう!」
「はい!」
「暑かったです…」
動けるようになったことを確認し、足元の溶岩から前に出る3人。
「大丈夫か?」
「うん!ありがと、カスミ!」
「「ありがとうございました!!」」
「ああ。だが、まだ油断はできないぞ」
体制を整えたメイプル達4人が見たものは、
各々がスキルを発動しようとするミィ達4人の姿だった。
「来るぞ!」
「【身捧ぐ慈愛】!」
メイプルがスキルを発動した直後、
「【炎帝】!【炎槍】!」
「【崩剣】!」
「【ホーリージャベリン】!」
「【遠隔設置 石槍】!」
ミィ達からの攻撃が降り注いだ。
「うわあぁ!こ、これ全部【防御貫通】だ!!」
メイプル達の居る場所全体をカバーするような物量攻撃。
避けられるはずもなくダメージをもらった結果、
メイプルのHPが目に見えて減少する。
「!?ユイ!マイ!私たちで迎撃するぞ!すべて受けていてはメイプルが持たない!」
「「は、はい!」」
「メイプルは自分を回復するんだ!」
「うん!前はお願い!」
「任された!」
最前線にカスミ、メイプルの左右にユイとマイ。
「来い!通さん!」
「えいっ!【ダブルスタンプ】!」
「あっち行って!!【飛撃】!」
カスミは【炎槍】と【ホーリージャベリン】を迎撃。
ユイとマイは【崩剣】と【石槍】を範囲攻撃で消していく。
「くぅぅ!ダメージが!で、でもこれくらいなら大丈夫!」
それでもすべては防げず、メイプルへダメージが通る。
しかしメイプルはイズとランチに貰ったアイテムをフル活用してHPを保っていた。
そして今のような飽和攻撃は各自のMPを著しく消耗する。
いつまでも続けられるものではない。
「…このままだとこちらがガス欠になるな」
「はぁ…。俺らの一斉攻撃でも倒せないのかよ…」
「彼女達の戦い方を見れただけで、良しとしましょう」
「出来れば、もう戦いたくないなぁ」
攻撃を続けながら、ミィは撤退について考え始めていた。
(もぉぉ…。なんでこれで倒せないのよぉ…。)
というか、内心は泣きそうだった。
【炎帝の国】幹部全員の攻撃を凌ぎ切るのは完全に想定外だった。
(MPポーションいくらあっても足りないじゃない…。
なんで小規模ギルドなのにあんなにアイテムいっぱい持ってるの…)
続ければどうなるかは分からないがMPポーションが大量に必要となる。
今後のことを考えると多くは使えなかった。
「撤退だ。合図をしたら集まれ。一気に離脱する」
「了解ー」
「分かりました」
「やっと終わりかな…」
(ここで撤退なら良いよね!?なんか言われないよね!?)
勇敢なギルドマスターとして大丈夫か?
内心ヒヤヒヤしながらも表向きは迅速に撤退を決断したミィ。
「行くぞ!【フレアアクセル】!」
そして、ミィたちはスキルを止めたと思った次の瞬間、
ミィの【フレアアクセル】で一気に上空へと上がった。
「悔しいが…最低限のことはできた。一旦離脱する!」
「次は負けませんよ、メイプルさん」
「カスミとも決着つけないとなぁ!」
「…うん、やっぱり当たりたくないなぁ」
自分たちを見上げるメイプル達を空中から見据えるミィ達。
「攻撃止まった。って、あああ!!逃げちゃう!」
「「追いつけません!!」」
攻撃が来なくなったと思ったら相手が一気に上空へ逃げて焦るメイプル。
「…どうするメイプル?追うか?」
対して、カスミは冷静に問い返した。
「で、できれば追いたいけど…。あんな距離じゃ…」
「私とメイプルなら可能だ」
メイプルに作戦を話す。
「なるほど!さすがカスミ!」
「だが相手は空中、私は移動させるだけになるぞ。」
「そこは任せて!一気に決めるよ!」
力強くうなずくメイプルに、カスミもうなずきで返す。
「よし、行くぞ!【原初の太刀 虚】!」
「【機械神】!」
カスミがスキルを発動。
白髪と紅眼になったカスミはその場から掻き消える。
同時にメイプルもスキルを発動。
両腕を砲へと変える。
「うん?カスミがスキルを発動してるか?…あれは!気をつけろ!」
その姿を見たシンは、先ほどの戦いからカスミの狙いをある程度察する。
次の瞬間、ミィたちの後ろにカスミが現れる。
「なっ!?そういうスキルか!」
「前回はこれでやられたな。だが、空中なら話は別だぜ!!」
驚くミィ達だが、シンの言葉の通り現れた瞬間からカスミは落ちていく。
これではスキルを届かせることはできない。
しかし、それでいてカスミは冷静に呟く。
「この後も同じことがいえるかな?」
「【カバームーブ】!!」
カスミを追うようにメイプルが移動してくる。
メイプルはカスミに対して【カバームーブ】を発動した。
「なんだと!?」
「なんだその腕は!」
そして、カスミと合わせるように腕だけ発動した【機械神】を
ミィ達に向ける。
「行くよぉ!【砲撃展開】!」
「ミィ!!」
とっさに他のメンバーを弾き飛ばすミィと、
ミィに対してスキルを使うミザリー。
そしてミィたちは火砲に呑まれた。
「…皆」
ミザリーのスキルでミィだけは攻撃を免れた。
しかし、残りの3人はスキルに巻き込まれて消滅していた。
そして目の前にはメイプルが降り立ってくる。
「【炎帝】!…はMPが足りないか。だが!!」
ミィはメイプルに向かって駆ける。
「【砲撃】!」
「【フレアアクセル】!」
そして最後のMPを使用して跳躍。
メイプルの肩へ着地する。
「うわあっ!?」
「【自壊】!」
ミィのスキルが発動。二人が蒼い炎に包まれる。
「お前だけは倒す!!」
「自、自爆!?わわわっ!!」
蒼い炎はメイプルに収束し、近くのフィールドが
揺れるほどの大爆発が発生した。
暫くして視界が晴れた後、ミィは消えていた。
そして傷一つないメイプルがたたずんでいた。
「腕だけ見せちゃったけど…良いよね」
【機械神】を解除するメイプル。
なるべく奥の手を見せないようにしていたが、
あの状況だと【毒竜】では倒しきれないと踏んで、
腕だけ【機械神】を発動させたのだった。
「メイプルさん!」
「ご無事で!!」
「ユイちゃん!マイちゃん!二人も無事でよかった!」
暫くするとユイとマイが駆けてくる。
二人は飛び上がったメイプル達を見た後、
念のため近くの瓦礫へ避難していた。
「カスミは!?」
「ああ。私も無事だ。」
逆方向からカスミがやってくる。
「カスミ!良かった。落ちていったから心配してたよ」
「砂漠の遺跡と同じ要領でな。かなりヒヤッとしたがな…」
カスミは着地直前で【三ノ太刀 弧月】を発動させ、
反動で浮き上がることで事なきを得ていた。
「よーし!オーブを取りに行こう!」
果たして、オーブは台座に無かった。
「…オーブが無い」
「もしかして、持って逃げた…?」
オーブはシンが持っていて、
倒されたときに地上へ落下していた。
そして、落下したオーブは【炎帝の国】のメンバーが
しっかり回収し、保持していたのだった。
「それって良いの!?」
「ルール上はアリだな…。ポイントは入らないが」
「どうしようかなぁ…」
若干途方に暮れているメイプル。
「あのメイプルさん、考えがあるんですが」
「ん?」
「この近く、結構ギルドが多いみたいなんです」
「メイプルさん達に守ってもらったおかげで、私たちはまだまだ元気です!」
「近くのギルドからオーブを持って帰りましょう!」
「ユイちゃんマイちゃん…。うん!それで行こう!」
「決まったな。拠点も気になるし、私は戻るとするよ」
「分かった。カスミ、ありがとうね。」
「礼などいらないさ。同じギルドの仲間だ」
「でも嬉しかったです!」
「はい!ありがとうございました!」
「じゃあな。気を付けていくんだぞ」
「はい!」
そしてメイプル達は亀に乗って近くのギルドへ、
カスミは走って拠点へと向かった。
そのころ、リスポーンしたミィは近くに誰も居ないことを
確認するとうつむいて震え出した。
「もぉぉぉぉ!!やられたぁぁ!!何なのよぉアレ!!」
切り札の【火炎牢】すらも通じない規格外の相手。
イベント中でなければ地団太を踏んだあとふて寝したい気分だった。
「ミィ!復活したんですね!」
「お疲れ、ミィ!」
「とんでもない相手だったね…」
そんなところにミザリーとマルクス、そしてシンが現れる。
滅茶苦茶な相手に健闘したお互いをねぎらう。
「ああ。だが一矢は報いた。今はそれで」
「ミィの【自壊】を耐えるなんて…」
「無事だったそうです、メイプル…」
「信じられないよな…」
は?
信じられない顔で固まるミィ。
トッププレイヤーたるミィが命と引き換えに放つスキル、
恐らくNWOでも上から数えた方が早い威力のはずだった。
「まあ、これでメイプルのスキルも分かりましたし」
「もう戦いたくないけどね」
「ミィ?」
「うああぁぁぁん!」
思わず泣いて駆けだすミィだった。
そして戦いの様子は方々へ伝えられ、大興奮が巻き起こっていた。
「いやぁ!メイプル勝ったかぁ!」
「さすがのミィも相手が悪かったか」
「いやしかし、あそこまでメイプルを追い詰めたのは初めてじゃね?」
「カスミが来なかったらヤバかったかもな」
「…まあ最後はメイプルちゃん完全勝利だったが」
「腕からレーザー出してたんですが。弓使いに謝るべきことがあると思うんだ」
「ミィの最後のスキルも効いてないみたいだしなぁ」
「自爆スキルっぽいな。耐えるとかそんなスキルじゃないと思うんだが」
「メイプルちゃん防御いくつなんだ…」
激闘は終わった。
しかし、上位ギルド同士の戦いが起こったことで、一気に状況が動いていく。
2日目にして佳境を迎えようとしていた。
そして激闘の様子は、とあるギルドにも伝わっていた。
「【炎帝】が敗れた…か」
「信じられないけど、事実なんだよねー」
「やはり、面白いな、メイプル」
青と白を基調とした鎧をまとう騎士は、静かに微笑む。
「どっちにしろトップは変わんねぇだろ。いいんじゃね?ちょっとした冒険くらい」
「まあ、借りもあるしなぁ」
「せっかくだ。楽しく行こう。全力でね」
聖剣を持つ騎士達がひそかに動き出していた。
ということで、対【炎帝の国】終了ですー。
(2話くらいで終わらせるつもりだったのは内緒)
激闘を聞きつけて血が騒ぐ人たちも少々。