食べるのが大好きなので、全てをいただきます   作:にゃもー

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お時間開いてごめんなさいー。

【集う聖剣】との戦いですよー。


美咲と激闘

「【食神の霧】!」

 

戦闘開始の直後、ランチがスキルを発動させる。

 

「そーくるよねー!バレバレだよー!皆、手はず通りに!」

 

「「はい!!」」

 

フレデリカが素早く指示を出し、各自がスキルで霧を散らす。

数百人で取り囲む中、一人くらいは霧に呑まれてもよさそうな状況だが、

霧に触れ続けたプレイヤーは居なかった。

 

トップギルドに相応しい対応力。

しかし、【楓の木】側も初手でどうにかできるとは思っていない。

 

「今の隙に!」

 

「【身捧ぐ慈愛】!」

 

「【比翼連理】をメイプルへー」

 

「「ドーピングシードを!」」

 

霧の中で周りが見えなくとも、

各自がアイテムやスキルを使うことはできるため、

補助スキルやアイテムなどを一気に使用する。

 

【食神の霧】は戦闘準備の時間稼ぎのため、

サリーがランチに頼んで発動して貰ったのだ。

 

準備をしながら矢継ぎ早にチャットで話をしていく。

 

<[サリー]基本は【身捧ぐ慈愛】の中で戦う!>

 

<[カスミ]配置は!?>

 

<[サリー]真ん中にメイプル!【身捧ぐ慈愛】を維持しながら支援!ノックバックに気を付けて!>

 

合わせて、メンバーはアイテムを使いながら素早く移動を開始。

メイプルは真ん中に陣取る。

 

<[メイプル]分かった!絶対に皆を守るよ!>

 

<[サリー]ランチは結界の端で敵を防いで!【比翼連理】は切らさないで!支援もお願い!>

 

<[ランチ]おっけー。ディナーも行くよー。【覚醒】×2!>

 

<[サリー]クロムさん、カスミ、私は結界の端で敵を防ぐ!メイプルに攻撃を通さない!>

 

<[クロム]了解!>

 

<[カスミ]心得た。何人たりとも通さん!>

 

続いて、ランチ、サリー、カスミ、クロムは四方へ散り、

各々がメイプルの【身捧ぐ慈愛】の範囲ギリギリへとどまる。

 

<[サリー]ユイとマイは端で攻撃!範囲攻撃で蹴散らして!届かなければ【投擲】!>

 

<[ユイ]分かりました!行くよお姉ちゃん!>

 

<[マイ]うん!頑張ります!>

 

<[クロム]ユイ!マイ!俺の近くに!それでいいな!?>

 

<[サリー]はい!いざという時はクロムさんがカバーをお願いします!>

 

ユイとマイも移動。クロムの横へ陣取る。

 

<[サリー]イズさんとカナデは皆の支援を!余裕があれば攻撃も!>

 

<[イズ]分かったわ!ありったけのアイテムを使うわ!>

 

<[カナデ]僕もスキルの出し惜しみはナシで行くよ!>

 

イズ、カナデはメイプルの近くへ。

すぐに支援魔法やアイテムを準備していく。

二人とも、戦闘の間は切らさず支援を続けるつもりでいた。

 

<[サリー]後は状況に合わせて!何かあればチャットで!生き残るよ!>

 

<[クロム]ああ。どうせなら返り討ちにしてやろうぜ!>

 

<[カスミ]無論だ。負ける気は無い!>

 

<[ランチ]皆渡したおやつも食べておいてねー。とっておきだよー!>

 

<[メイプル]うん!ありがとランチ!>

 

そして、各自がランチの渡した料理を急いで「使う」。

 

大量の料理が食べずに消費されることに、

ちょっと悲しみを覚えるランチと引き換えに、

凄まじい量の付与効果がメンバーにいきわたる。

 

全メンバーに「HP」「MP」「STR」「VIT」「INT」「DEX」「AGI」の5%アップと、

「状態異常回復」「ダメージ軽減」「HP回復アップ」「MP回復アップ」の10%アップ。

さらにメイプルとクロムには「ノックバック無効」、「状態異常無効」。

 

<[イズ]ありったけ行くわよー!>

 

<[カナデ]皆、頼んだよ!>

 

考えられる限りの付与効果を得たメンバーが、

更にイズとカナデが強化していく。

 

各ステータスのアップに加え、

【身捧ぐ慈愛】の領域内にアイテムをばらまき、

誰でもいつでも使用できるようにする。

 

<[サリー]霧が晴らされた!来るよ!!>

 

<[メイプル]皆!頑張ろう!>

 

<[ランチ]おー。ディナー、いっぱい食べるよー>

 

(わおおおおおお!!)

 

そして、狼の咆哮とともに霧が晴れる。

ビリビリと響き渡る遠吠えの中、4人のプレイヤーが静かに動き出した。

 

「ふっ、準備は万端のようだな」

 

「こっちもオッケー!」

 

「じゃあ…」

 

「行くぜ!」

 

おおおおお!!!!!

 

次の瞬間、四方八方から怒号が響き渡る。

【集う聖剣】のメンバーが全方位から攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

「ふっ!」

 

「ぎゃあ!」

 

「当たらない!?」

 

「この数の攻撃を避けるとは!」

 

戦場の一角では、サリーが攻撃を避けながら敵を葬っていっていた。

 

ほぼ全方位を囲まれた状態での戦闘。

丁度フレデリカ達に囲まれたときと状況が似ていた。

 

ただし…

 

(【防御貫通】スキルなら、全部知ってる!)

 

今サリーを襲っているのは、【防御貫通】スキルのみ。

スキルの発動前に溜めがあり、軌道も一定である。

囲まれているとはいえ、今のサリーにとって避けるのは難しくなかった。

 

【集う聖剣】側もメイプルの防御は当然知っている。

そして、メイプルのスキルが範囲防御であるという情報を、

1デスと引き換えにしたドレッドが持ち帰っていた。

 

そのため、現在周囲を囲むメンバー全員に対して、

基本的に【防御貫通】スキルを放つようペインは言い含めていた。

 

「クソ!ならこれはどうだ!?」

 

囲んでいる魔法使いのプレイヤーが、炎の広範囲魔法を放つ。

【防御貫通】は乗っていないのでダメージはないが、

何らか崩れるきっかけになればと思って放ったものだ。

 

(これは食らってもいい!)

 

しかしサリーは止まらない。

瞬時に通常スキルと見抜き、逆に着弾へ合わせ一気に敵へ襲い掛かる。

 

「ぎゃああ!!」

 

「あああ!!」

 

炎が広がる中、襲撃を受けた【集う聖剣】の精鋭たちが、

一気に倒されていく。

炎が晴れた後に見えたのは、佇んでいるサリーただ一人だけだった。

 

第一波を退けたサリーは静かに武器を携える。

寄らば斬る。と言わんばかりのサリーに近づくプレイヤーがいた。

 

「んー、やっぱ強いよねーサリーちゃん。」

 

「フレデリカさん…。ここは…通しません!!」

 

「通っちゃうよー!!」

 

フレデリカ率いる第二波と、サリーの戦いが始まった。

 

 

 

「【ダブルスタンプ】!」

 

「【飛撃】!!」

 

同じころ、別の戦場では可愛らしい声が響いていた。

しかし結果もたらされた破壊は全くふさわしくないものとなる。

 

「ぎゃああ!!」

 

「あの二人の攻撃に当たるな!即死だぞ!」

 

「盾役も気をつけろ!貫かれる!」

 

ユイとマイのスキルは遠隔攻撃にも関わらず、

【集う聖剣】のメンバーを一撃で倒していた。

 

「あああ!!!」

 

「やらせるかっての!!」

 

そんな二人を狙うべく様々なスキルが飛来する。

しかし、そんな二人の前にはクロムがいる。

 

二人に届く攻撃の何割かはクロムが受け持ってくれている。

 

「きゃあ!!」

 

「お姉ちゃん!!このぉ!【ダブルスタンプ】!」

 

「だめか!?ぎゃああ!!」

 

マイに攻撃したメンバーをユイが一撃で吹き飛ばす。

攻撃自体はマイに当てられているが、

 

「大丈夫!?」

 

「うん!メイプルさんが守ってくれている!行くよ、ユイ!」

 

「うん!お姉ちゃん!」

 

二人に届く攻撃はメイプルが【身捧ぐ慈愛】で受け持つため、

安心して攻撃を仕掛けられていた。

そんな二人に背後から声がかかる。

 

「二人とも!!足元に鉄球!!踏まないでね!!」

 

「イズさん!!」

 

「ありがとうございます!」

 

圧倒的な攻撃力に、【集う聖剣】側が警戒している隙に、

イズが二人の足元へ鉄球をどんどん転がしていく。

 

「【投擲】!」

 

「【投擲】!【投擲】!」

 

通常は持ち上げることすら困難な鉄球たちは、

二人の手にかかるとこの上ない威力の飛び道具と化す。

 

「ぎゃああ!?」

 

「ダメだ!避けろ!」

 

「あああ!?」

 

前方にばらまかれた鉄球は、囲んでいる人数が多いこともあり、

避けられないメンバーも出て来ていた。

 

「何とかしないと!」

 

「おっと、俺を忘れるな…よっ!」

 

「ぐああ!?」

 

二人の投げる鉄球に当たってしまう、

吹き飛ばされるというレベルでは済まず、

当たった場所を完全に貫通されたまま消滅する。

 

常軌を逸する光景に意識を割かれたメンバーは、

クロムの鉈で斬られ、消滅していった。

 

「あああ!当たる!?」

 

とある槍使いのメンバーにも避けられない軌道で鉄球が迫る。

 

「はっ!」

 

「えっ?」

 

1デスを覚悟したメンバーだったが、鉄球は当たる直前で上方へ弾かれる。

 

「あー。来たら今みたいに見て弾いとけ」

 

「ドレッドさん!ありがとうございます!(でもアレ弾けるのは貴方だけと思います!)」

 

「ったく相変わらずエグイな…」

 

メンバーを救ったドレッドは、そのまま進みつつ鉄球を弾いていく。

 

「マジか!?」

 

「嘘!【投擲】が弾かれてる!」

 

「お姉ちゃん、あの人は!」

 

「よう、お嬢ちゃん方。ちょっとおイタが過ぎるんじゃねえか?」

 

当たれば即死の【投擲】を弾きながら、

唖然とするユイとマイ、そしてクロムの前へ来た。

 

「アンタ、第1回2位の…」

 

「ドレッドだ。そこの嬢ちゃん方はよぉく知ってるだろうがな」

 

「ドレッドさん…」

 

「今度は…負けませんよ!」

 

「はっ!こっちのセリフだぜ!」

 

ユイとマイにとっては2度目の、クロムにとっては初となる、

ドレッドとの戦いが幕を開けた。

 

 

 

「くっ!さすがに多いな!!」

 

クロム達の横では、カスミが襲い来る敵の猛攻を何とか凌いでいた。

いくら精鋭揃いの【集う聖剣】メンバー相手とはいえ、

トッププレイヤーたるカスミが1対1で遅れをとることは無いが、

四方を敵に囲まれた状態では苦戦は免れなかった。

 

「ぎゃああ!!!」

 

「貰った!【ピアースアーマー】!!」

 

「しまっ!?」

 

カスミの刀が目の前のメンバーを切り捨てる。

しかしその隙に後ろに回り込んだメンバーが

槍による防御貫通スキルを仕掛ける。

 

「【パラライズレーザー】!」

 

「がっ?!ぎゃあ!!」

 

しかし、スキルが届く直前にそのメンバーへ光線が命中。

麻痺したメンバーはカスミに叩き斬られた。

 

「カナデ!助かったぞ!」

 

「うん!でもこっちも忙しい!いつもは助けられないよ!」

 

「心得た!メイプルの守りもある!やってみせるさ!」

 

カナデは襲い来る敵と戦いつつ、可能な限りカスミのことを見ていた。

そして危なそうなときにはスキルで支援していた。

大規模な乱戦の中でも戦況を把握しているカナデならではの技だった。

 

「たあっ!」

 

「ぎゃああ!!」

 

「ふっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

四方を囲む敵をどんどん倒すカスミ。

 

「マジか!当たらない!!」

 

「背中に目でもついてんのか!?」

 

「はっ!もっと手癖の悪い奴を相手にしてきたからな!」

 

全方位からの攻撃をカスミは信じられない精度で避ける。

【炎帝の国】の幹部、シンとの戦いが役に立っていた。

 

(シンの【崩剣】に比べれば!)

 

「タイミング合わせろ!」

 

「同時なら!」

 

「甘いな!!」

 

「うわっ!?」

 

2方向からの攻撃は、敢えて大きく後ろに下がって一気に交わす。

その時、後ろ側に居る敵にぶつかるように移動して反撃を防ぐのも忘れない。

 

「今のところは…!?」

 

囲まれながらも一進一退を繰り返していたカスミが、

囲みを抜けるように大きく後ろへ下がる。

 

抜ける際、後ろに居たメンバーから攻撃を食らってしまうが、

元々居た場所に叩きつけられた一撃を避ける方が先決だった。

 

「はっ!アレを交わすとはやるな!」

 

「…貴方は確か…」

 

「ドラグってんだ。よろしくな!」

 

「…誰であろうとも通さないだけだ」

 

「話は早そうだな!行くぜ!」

 

カスミを大きく下がらせるスキルを放ったドラグが、

大きな斧を構えてカスミへと突進する。

対するカスミは静かに刀を構え、第二ラウンドが開始された。

 

 

 

「よーし、ディナー【ヴァナルガンド】!」

 

そして残る一角では他と全く異なる光景が繰り広げられていた。

ランチが立っている結界の端からは局所的な川が発生している。

 

「うわっ!?」

 

「なんだ!?【AGI-20%】が付いてるぞ!」

 

「気をつけろ!水から出るんだ!」

 

攻め込んでいた【集う聖剣】のメンバーたちは

突如出現した川へ一気に落下する。

 

「じゃあ、ディナー、川の中のプレイヤーに【食らいつき】!」

 

(わおおおお!!)

 

「来るぞ!迎え撃て!」

 

「【炎槍】!」

 

「【ウィンドカッター】!」

 

(わうっ!?)

 

大混乱の中でもさすがは精鋭。

的確にディナーへスキルを放ってくる。

 

川の中へ飛び込んだディナーはメイプルの

【身捧ぐ慈愛】から外れているため、

ディナー自身がダメージを受けてしまう。

 

しかし

 

「止まらない!?」

 

「効いていないの!?」

 

「来るなぁぁ!ぎゃああ!!」

 

「あああ!!」

 

川の中に居るディナーは【HP回復 1%/10秒】【火属性半減】

のおかげで多少のダメージではびくともしない。

一気に駆け抜けて川の中のメンバーを食べていく。

 

そして目の前に死地たる川ができたできたことにより、

ランチの周りから敵メンバーが居なくなった。

それはランチを自由にしてしまうことを意味する。

 

「いくよー!【銀翼の魂】!消費HPは10000!あーん」

 

ランチの周りに巨大な青白い魔法陣が幾重にも現れる。

【身捧ぐ慈愛】の光すらかき消す青白い光がランチの口に集まる。

 

「なんだアレ!」

 

「ヤバそうだぞ!」

 

「目の前の川もヤバいぞ!狼が!」

 

「周りこめ!」

 

発射されればどう見てもまともな結果になりそうもない光景を見て、

各メンバーが慌てて迎撃を試みる。

しかし、目の前の川と狼に邪魔されて攻撃ができなかった。

 

「ダメだ!止められない!みんな気をつけろ!」

 

「何が来るんだ!?」

 

そして、次の瞬間、【銀翼の魂】たる巨大レーザーがメンバーを襲う。

 

「あああああ!!!??」

 

「ぎゃあああ!!!!」

 

「マジかああ!!」

 

ランチは口を開けたまま首をぐるっと動かす。

動きに合わせ、レーザーが薙ぐようにメンバーを次々と消滅させていった。

 

「避けろぉ!」

 

「避けるったってどこに!?」

 

「無理だ!あああ!」

 

受けようとしたもの、避けようとしたもの、全てを飲み込んでいく。

 

「あむっ」

 

ランチが口を閉じ、スキルが終わった時には、

川を中心として全体の1/4くらいのメンバーがきれいに消えていた。

 

「やれやれ。とんでもないな。」

 

そしてその中で唯一無傷でスキルをいなした一人のプレイヤーが、

ランチにゆっくりと近づいてくる。

 

「どうも。君がランチで良いのかな?」

 

「あ。はい。貴方は…ペイン…さんでしたか?」

 

「ご存じとは光栄だね。【集う聖剣】ギルドマスターのペインだ」

 

「あー、その、どうも。」

 

戦場の中で何となく和やかな雰囲気で話している二人。

ちなみにランチはペインの剣を見ていた。

 

「どうも。さて、さすがに先ほどの攻撃を何度もさせられないからね」

 

「えーと」

 

「私がお相手するよ。」

 

「分かりました。貴方の武器、いただきます!」

 

「それは御免被る!行くぞ!」

 

残る一角では、ランチとペインの激突が始まっていた。

 

 




そんなわけで各所に分かれて戦いですー。
【身捧ぐ慈愛】の中なので場所的にはそんな離れていなかったりしますー。

次回は幹部メンバーも交えた激戦ですー。

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