食べるのが大好きなので、全てをいただきます   作:にゃもー

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お時間開いてごめんなさいー。

ミィご訪問ー。


美咲と紅蓮の少女

「お夜食だよー!」

 

「ありがとうランチちゃん。・・・平和ねぇ」

 

木の椅子に座りながら受け取ったスコーンを片手に、

紅茶を飲んでいるイズがつぶやく。

 

「そうですねぇ」

 

オーブ台座の横に座っているサリーが何となく応じる。

手にはランチから渡されたシュークリームを持っていた。

 

イベント3日目も終わろうかという夜。

【楓の木】の拠点にはメンバーたちが全員そろい、身を休めていた。

 

他のギルド殲滅の為に激闘を繰り広げた後、

殆どのギルドが消滅したことを確認し、拠点へと戻ってきていた。

 

「こんなまったりしていて良いのだろうか」

 

「まあ、もう戦闘は起こらないだろうし、良いんじゃないかな?」

 

「ああ。メイプルちゃんたちも休んでいるしな。」

 

少し警戒をしているカスミに対して、これまたリラックスしているカナデとクロムが答える。

なお、カスミも立ち上がってウロウロしているが手にはどら焼きを持っているので

あまり深刻な様子は見られなかった。

 

ちなみに、ユイ、マイ、メイプルは激闘の疲れもあり現在休憩中で、

奥の部屋ですやすや眠っていた。

 

 

既にイベント終了モードが漂う【楓の木】に、来訪者が現れたのは

イベントが4日目に入った直後だった。

 

「!?誰か来ます!」

 

いち早く気づいたサリーが立ち上がる。

 

「なんだと!?」

 

「どうしたの?」

 

「ここに誰か来くるそうだ。襲撃者か?」

 

呼応したカスミがすぐに迎撃態勢を取る。

にわかに緊張感が増した中、来訪者が姿を見せる。

 

赤い髪に外套、そして真紅の短剣。

そんな姿を持ち、今まで残っているプレイヤーは一人だけだ。

 

「【炎帝】!?」

 

「マジか・・・。」

 

【炎帝】ことミィが一人で楓の木の拠点へと現れた。

そして、ひそかに一番驚いていたランチが声をかける。

 

「ミィ!どうしたの?」

 

「ランチ。ギルドの皆も。突然の来訪、済まない。」

 

「・・・襲撃に来たということですか?」

 

眼を鋭くしたサリーが訪ねる。

しかし、ミィは苦笑いしながら首を振った。

 

「いや、いまさら襲撃はしないさ。既にメンバーは私だけだし、私もあと1デスで終わりだ。」

 

既に体勢が決した状況ではあるが、

自分やギルドの状況を詳らかに話すミィに驚きの声が上がる。

 

「それなら、どうしたの?」

 

今度はランチの問いかけに、暫しうつむいたミィはしっかりとランチを見据えてこう答えた。

 

「・・・ランチ、貴女に決闘を申し込む。受けてもらえないだろうか」

 

「えっ・・・?」

 

突然の提案に、ランチが戸惑った声をあげる。

 

「・・・それは一対一ということですか?」

 

「ああ。それが私の希望だ。」

 

「全員そろっているのに、わざわざメンバーを危険にさらすと思いますか?」

 

「そうだな。・・・しかし、全員で来たとしても、私の意思は変わらない」

 

「・・・イズさん!メイプルを起こしてください!」

 

「分かったわ!」

 

サリーの問いかけに対しても、毅然と答えるミィ。

その目を見て、戦闘は避けられそうにないと悟ったサリーは、

メイプルを起すべくイズへ依頼する。イズは慌てて奥へ走っていった。

カスミ、クロム、カナデも静かに武器を構え戦闘の準備をする。

 

そんなメンバー達を前にランチが前に出た。

 

「ランチ!」

 

「サリー、大丈夫。私に任せてー」

 

ミィの前まで行ったランチが話しかける。

 

「どうしたの?ミィ?何か食べる?」

 

「ああ。それも良いな。だが、先に答えを聞かせて欲しい」

 

「わかったよ・・・。でも、どうしてそんな話になったのか、聞かせて欲しいな?」

 

するとミィは、静かに先の戦場の最後を話し始めた。

 

 

 

「【爆炎】!」

 

「ぎゃああ!!?」

 

「ぐああ!!」

 

乱戦の中、紅蓮の火炎が弾ける。

ランチに貰ったアイテムでMPを補充したミィは、最後の戦いを繰り広げる。

 

その威力は衰えることなく、周囲のプレイヤー達を一瞬で焼き尽くす。

しかし、アイテムも無限ではない。徐々に限界が近づいていることをミィは悟っていた。

 

(そろそろかぁ・・・。ランチのおかげでかなり戦えたけど、あと数回かな)

 

「ぐう!!だ、だが生きてるぞ!」

 

「火力が弱まってるのか?!今だ!」

 

「【炎槍】!」

 

「ぎゃああ!!」

 

「だ、だめだ!やっぱ強ぇ!!」

 

悲鳴をあげながらプレイヤー達が消滅していく。

少しづつMP消費を抑えた戦いにシフトしていたミィだったが、最後のアイテムも尽きた。

そして、最後のMPを少しづつ使いながら戦いを続けていた。

 

(これでホントの最後。うん、頑張ったかな。)

 

わりと満足げに笑うミィは、残り少ないMPがゼロに近づいていくのを静かに見ていた。

・・・そして終わりは訪れた。

 

「・・・あれ?」

 

それはMPの枯渇ではなかった。混とんとしていたはずの戦場から音が急激に消えつつあった。

 

「ここまでかな。」

 

「ああ。怠い奴らも居なくなった」

 

「そだねー。残りギルド7つすべてが10位以内。後はやってもやらなくても変わらないー」

 

「これで終わりか?まあまあだったな。」

 

「皆ご苦労だった!撤収する!」

 

【集う聖剣】のメンバーたちが戦場から去っていく。

 

「これで終わりっすかね。」

 

「うん・・・。もう戦闘は・・・起こってないと思う。」

 

「おや、ようやく波が引き始めましたね」

 

「やれやれ。面白かったが、とんでもない戦いだったな。」

 

そして、他のメンバー達も戦場から姿を消していた。

 

生存したギルドが10位以内のところばかりとなり、戦闘が終結したのだった。

 

「お、終わった・・・?生き残っちゃったのかぁ・・・」

 

ミィは、誰も居なくなった荒野で一人座り込んだ。

自分はこの戦場の中で戦えるだけ戦って散っていくと思っていた。

しかし、ランチからの施しもあり、結果として生き残ったのだった。

 

「・・・どうしよう。このまま、自分だけ残るのもなぁ」

 

ミィは散っていったギルドメンバーを思い浮かべた。

そして、最後に助けてくれたランチの姿を思い浮かべた。

 

「・・・うん。意味はないかもしれないけど・・・」

 

しばらく休んだミィは、静かに立ち上がって歩き出した。

 

 

 

「・・・そっか。」

 

「メンバー達は【炎帝の国】のために役目を果たし、散っていった。私も同じでありたい」

 

それは最後まで残ったミィの想いだった。

それを聞いたランチは、静かに答えを返す。

 

「うん。分かった。ミィがどうしてもというなら、受けるよ。」

 

「ランチ!?」

 

「サリー、大丈夫だよ。だって私は・・・」

 

「ランチ・・・。・・・そうだね、分かった。ランチが良いなら、良いよ」

 

改めてミィに向き直るランチ。

 

「・・・ありがとう、ランチ。念のため言っておくが、恨みなどはない。むしろ感謝している。料理、美味だった。」

 

「どういたしましてー」

 

「だが、それはそれ。これはこれだ。第2回の決着も付けられるしな。外へ行こう」

 

「うん。分かったよ」

 

洞窟の外へ出ていくミィとランチ。

 

「・・・と、とりあえずついていこう!」

 

「ああ。そうだな。」

 

展開についていけなかったクロム達は、

歩いていく二人を暫く見送っていたが、

状況を理解したのか慌ててついていく。

 

「ううん、何かあったの・・・?」

 

「お姉ちゃん眠い・・・」

 

「私も・・・」

 

メイプル、ユイ、マイも眠そうな目をこすりながら起きてきた。

 

「休んでるとこゴメン、メイプル、ユイ、マイ。実はミィとランチが・・・」

 

「ええっ!?」

 

「決闘!?」

 

「ど、どうして?」

 

サリーから話を聞いて3人も一気に眠気が吹っ飛んだ。

皆を追って慌てて出ていく。

そして、その行方は今や動きが無くなったイベントの観戦室、

そしてスタッフルームでも注目されていた。

 

 

<観戦室>

 

観戦室では、【楓の木】拠点の洞窟を出て

開けた森へと出るミィとランチを、各モニタが追い始めていた。

 

「おい!なんかミィとランチちゃんが戦うみたいだぞ!」

 

「なんだと!?」

 

「どうなってんだ!」

 

二人が映る画面が増えるにつれ、観戦室がざわめき始めた。

 

「分からんが・・・これはどっちが勝つんだ?」

 

「さすがにミィじゃないか?いくらランチちゃんでも」

 

「いやしかし、スキル掴まれたら封印されるんだぞ・・・?」

 

憶測を交えながらも皆が再度モニタのあたりへ集まり出す。

 

「うーむ。とりあえず見るしかない!」

 

「ああ!」

 

観戦室は再び興奮に包まれようとしていた。

 

<スタッフルーム>

 

そして、スタッフルームもその光景に注目していた。

 

「ランチとミィが一対一で決闘するようです」

 

「ああ・・・。最後の戦いのために行ったのか」

 

「【楓の木】拠点の外、森の中の開けた丘に着いたようです」

 

「ミィ側はデス4、全ステータス-50%の状態です」

 

「ランチ側はフルステータスだな。全スキル回数もMAXだ。」

 

「始まるよー」

 

全方面の注目を浴びながら、戦いが開始されようとしていた。

 

 

 

「準備は良いか?」

 

「うん。いつでもいいよ」

 

ミィとランチは数ⅿ離れて対峙していた。

ディナーは連れていない。文字通り一対一である。

 

「では行くぞ!【炎帝】!」

 

炎をまとったミィがランチへ向かっていく。

対するランチは動かずミィを見ていた。

 

「【炎槍】!」

 

ミィがスキルを放つ。狙うはランチの足首。

ランチはスキルを掴むことができず、直撃する。

 

「まだだ!【爆炎】!」

 

炎に包まれたランチを見据えながら、

矢継ぎ早に次のスキルを放つ。

 

こちらはランチの四方を囲むようにして発動。

掴まれないように工夫されたスキルはまたもランチへ直撃した。

 

「私も先の戦いから学んだことはある!今度は負けない!」

 

「ミィ、凄いね。全くつかめないや。でもね・・・」

 

対するランチは、静かにミィを見据えていた。

実はこの時点で前回と状況が決定的に異なっているのだが、

攻撃に全力集中しているミィは気づいていなかった。

 

「今だ!【噴火】!」

 

スキルの命中を確認したミィは、そのまま次のスキルを発動した。

それはランチの足元で発動し、ランチを空へ打ち上げる。

 

「行くぞぉ!!【炎槍】!【炎槍】!【炎槍】ぉぉ!」

 

空中へ飛ばされたランチへ、残る全てのMPを費やし、

最大ダメージのスキルを叩きこむミィ。

それらはすべてランチへ命中し、丘全体を揺らす大爆発を起こす。

 

更に空高く打ち上げられたランチは、なすすべなく地上へ激突した。

炎に交じって大量の土煙が舞い上がる。

 

「はぁはぁ・・・。今の私の全力だ!どうだ!!」

 

一気にスキルを放ったミィは、土煙の中を見据える。

 

「・・・」

 

「え、うそ・・・?」

 

土煙が晴れた後、果たしてランチはそこに居た。

戦いが始まる前と寸分たがわぬ姿で。

あまりに想定と異なる光景に思わずミィが素に戻る。

 

「うん。ミィ、凄かった。前の私だとやられちゃったかもしれない」

 

「ら、ランチ・・・無傷なの・・・?」

 

「・・・うん。今の私、火の攻撃は効かないんだ・・・。」

 

少し申し訳なさそうな顔で、ランチが決定的な事実を告げた。

 

「なっ・・・。そ、そんな・・・ってことは・・・」

 

ミィは絶句し、理解した。

この戦い、初めから負けていたのだと。

 

「・・・うあああ!!!まだ!まだだぁ!!武器ならぁ!!」

 

既にMPが尽きていることを分かっているミィは、

それでも最後の可能性に賭けてランチへ突撃する。

 

「ああああ!!」

 

「ミィ・・・」

 

そんなミィをランチはまっすぐ見据え、

振り下ろす武器に向かって手を突き上げた。

 

パシッっという軽い音が響いて、ランチの手にミィの武器が収まった。

それは同時に、ミィの動きが取れなくなったことを意味していた。

 

「あっ!武器が!動けない!」

 

「じゃあ、いただきまーす」

 

「あああ!!!」

 

「うん!ラズベリー!美味しい!」

 

「武器が・・・・・・これまでかな・・・」

 

そのままミィの武器を食べたランチ。

武器を無くし、【スキル封印】が付いたミィは戦いの終わりを感じた。

 

「ミィ!?」

 

ふと気が抜けたミィは、そのまま沈みこむように地面へ倒れていく。

しかし、地面に激突する直前で、慌てて抱え込んだランチに支えられた。

ランチは、そのままミィの頭を膝の上にのせる。

 

「ランチ・・・。そっか、私負けたんだね。」

 

ランチに膝枕をされたミィはすぐに気が付いた。

ミィは頭に感じる柔らかい感触を感じながら、負けたことを改めて受け入れた。

 

「ミィ。お疲れさま。強かったよ。どのスキルも全くつかめなかった」

 

「ランチに掴まれないよう考えたからね。」

 

「やっぱりミィは凄いね。あと、武器美味しかったよ!ありがとう!」

 

「・・・うん、そこはあまりお礼言われても嬉しくないかな」

 

そのあと暫く膝枕されていたミィだったが、意を決したようにランチを見た。

 

「・・・ねぇランチ、お願いがあるんだ」

 

「何かな、ミィ?」

 

「最後は、ランチの一番のスキルで、倒して欲しいな」

 

「それって・・・。」

 

暫く考えるランチ。

それは自分の中の誓いを破ることにもなる行為。

少し考えたランチは、しかしミィの目を見て決める。

 

「・・・うん、分かった。」

 

「ありがとうランチ・・・。」

 

「私は、空の上でみんなの活躍を見ているね・・・」

 

「そっか・・・うん、分かったよ。頑張るね」

 

更に考えるランチだったが、力強くうなづいた。

 

「じゃあ・・・そろそろ・・・」

 

「うん。またね、ミィ。終わったら、おやつ食べようね!」

 

「うん!楽しかった、ランチ!」

 

笑顔で答えたミィは、そのまま静かに目を瞑った。

膝枕をしていたミィを抱きかかえたランチは、

そのままミィに顔を近づけていく。

 

「さよなら、ミィ」

 

「あっ・・・」

 

そして、大きく口を開け、その細い首筋へと噛みついた。

思わずミィが声をあげる。

 

噛みついたところから大量のダメージエフェクトが漏れていく。

暫くするとミィの全身がエフェクトに包まれた。

 

そして、ミィは全身をエフェクトに変え、消えていった。

静かに見つめるランチに1つのメッセージが届いた。

 

スキル 【魔神】 を取得しました

 




ということでランチvsミィでしたー。
次回はランチさんが色々動きだしますー。
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