大規模乱闘も終わり、ミィのご訪問も終わって一段落したイベントですー。
「やー、平和だなー」
「ですねー」
イベント4日目の朝、草原にポツンとたたずむ台座とオーブの横で、
剣使いと弓使いのプレイヤーが座り込んで会話をしていた。
「おはよ。異常なしだぜ」
「おー、おはよう。まあ、だろうな。見回り乙。」
そこに斧使いのプレイヤーが戻ってきて、同じく座り込んだ。
ここはギルド【掲示板の民】の拠点。
とある掲示板で知り合った者達やそのフレンドたちが集まったギルドなのだが、
掲示板内の話題などに付いていくため各自が大きく・強くなり続けた結果、
今やNWOの中でも有数の勢力であり、今回のイベントでも生存することができた
数少ないギルドの1つであった。
「さーて、後はもう終わるの待つだけですかねぇ」
「そだなー。もう戦う意味もないしなー。頑張ったなー」
「大規模襲撃の時はどーしようかと思ったが、何とかなるもんだー」
戦闘は3日目夜の大規模殲滅戦から全く発生していなかった。
そのため、既にギルドメンバーは終戦モードに突入していた。
「あー。そいえば、クロムとかどうしてるんだろ」
「【楓の木】は普通に生き残ってるからな・・・。普通に拠点でまったりしてんじゃね?」
「彼とも早く語り合いたいですねぇ。話題目白押し。楽しみです」
「だな。ま、とりあえず暫くはまったりだな。」
他のギルドだが、同じ掲示板に居る他のメンバーを思い出しつつボーっとする皆。
そんなのんびりした空気をぶち壊すかのように、凄まじい爆発音が響く。
「おわぁ!!?」
「な、なんだ!?モンスター!?」
「いや、今回のイベントでは出ないはずだよな?」
そして、拠点の一端。爆発音が聞こえてきたと思われる方向から悲鳴と怒号が聞こえてきた。
「ぎゃああ!!」
「しゅ、襲撃だ!!あああ!!あれは【楓の木】だぞ!」
「な、何だか分からんが、迎撃だ!戦闘態勢だあ!!」
爆発音の正体がわかっても、信じられないといった様子で見ていた3人だが、
事態を把握してようやく動き出す。しかし疑問は尽きなかった。
「はぁ!?なんで【楓の木】が襲ってくるんだよ!」
「さらに戦果を挙げる気でしょうか・・・?」
「意味がないだろう!順位はすでに固定されてるんだぞ!」
「お前ら何してんだ!総出で行くぞ!あいつら本気だ!」
急いで準備をしていると、魔法使いのプレイヤーが駆けてくる。
彼もまた掲示板の住人で、3人とはNWO開始時からよくやり取りしている間だった。
「魔法使い!どうなってんだ!?」
「分からん!【楓の木】が全員で襲ってきてる!」
「な、なんでだよ!?クロムいないのか!?」
「いるが普通に攻撃してきてる!」
明らかに普通ではない状況だが、黙ってみているわけにもいかなかった。
爆発や悲鳴の規模は大きくなるばかりだからだ。
「しゃあない!迎撃だ!クロムだろうがメイプルちゃんだろうが襲ってきたんなら仕方ない!」
「もし可能なら、クロムに聞いてみましょう。無論、命優先で!!」
「分かった!」
こうして4人は【楓の木】が暴れる戦場へと繰り出した。
「「【ダブルスタンプ】!!」」
「ぎゃああ!!?」
「ああああ!!!」
前線へ着くと、白黒の衣装を着た小さい女の子2人のスキルで、
大量のプレイヤー達がエフェクトになって消えているところだった。
「あの子たちの攻撃を食らうな!盾役でも死ぬぞ!」
「地面の光から出せ!ノックバック重視だ!」
「光から出てるやつは優先で狙え!」
たどり着いた4人が周りへ一気に指示を飛ばす。
【楓の木】についてある程度知っている4人ならではのものだった。
「【パワーアックス】!」
「きゃあ!!」
「お姉ちゃん!」
斧使いのスキルで、黒髪の女の子が地面の光の範囲から押し出される。
「よし!今だ!【必殺の矢】!」
「【ウィンドカッター】!」
「いけぇ!」
押し出された瞬間、弓使いと魔法使いが遠距離攻撃スキルを放つ。
黒髪の女の子ことマイは、攻撃力が桁違いな代償として、HPや防御力は皆無のため、
全てのスキルが必殺の威力を持ってしまう。
「【カバームーブ】!」
「クロムさん!」
「くそっ!クロムか!」
しかし、それは当たらなければ意味がない。
放たれたスキルはすべて巨大な大盾に弾かれ、
マイのもとには一切届かなかった。
「な、なんでだよ!?何で襲ってくるんだ、クロム!」
「ん?だれだ?」
「おれは「槍使い」だ!」
「・・・ああ。もしかしてお前か」
マイをかばうように大盾を構えるクロムに、
槍使いのプレイヤーが思わず声をかける。
クロムも誰なのかを察した。
「既に10位以内のギルドは確定したんだぞ!今から何をやっても一緒だ!」
「その通りだ。なんだよ。自分で答えだしてんじゃねえか」
「は?」
「はい?」
訳も分からず尋ねる槍使いに、クロムもまた返す。
「んじゃ、行くぜ!やるぞ!マイ!」
「はい!【飛撃】!」
「あああ!!!」
「避けろ!当たるな!」
即死攻撃が再開されたのを見て、慌てて避けるメンバー達。
配置が崩れた隙を、しかしクロムは追撃しない。
右斜め前方、【楓の木】が戦っている場所を見ていた。
「そろそろか・・・」
「こ、攻撃してこない!?」
「な、何か狙って・・・!?」
そして次の瞬間、辺りが霧に包まれた。
「霧!?ランチちゃんか!?」
「ま、マズい!散らせ!」
「なんか凄い音聞こえてるんだが!?」
それを待っていたかのように、いろんな場所から爆発や閃光が発生した。
「今だ!おらぁ!!」
「行きます!」
「ぎゃああ!!」
「くそっ!同時攻撃かよ!」
その隙を逃さず、同時にクロムとマイが一気に詰め寄ってくる。
霧の中で対応に苦慮するメンバー達の何人かが消滅する。
「霧は散らさないと!」
「分かってる!行くぞ!【ファイアボール】!」
襲撃を何とかしのいだ魔法使いが、
ファイアボールを敵ではなく地面に叩きつける。
爆風で一気に周囲の霧が晴れた。
「よし!」
「アイツらどこ行った!さすがに許容できんぞ!」
「ああ!やり返すぜ!って、あれは!?」
「ランチちゃん!くそ、散らせ切れなかった奴らが居たか!」
メンバー達がクロムとマイを探しているが姿はなかった。
そして、暫くして霧がすべて消え、代わりに大きなランチが現れた。
拠点から少し離れた場所に出現したランチは、
いつも通り泡だて器でボウルの中を混ぜた後、消えていった。
「襲撃者たちが逃げるぞ!」
「逃がすなぁ!!」
そして、ランチが消えると同時に怒号が響く。
見ると【楓の木】のメンバー達を載せた巨大な亀が宙に浮かぶところだった。
「はーい。追いかけてくる悪い子にはこれをプレゼントするわー」
「どんどん投げろ!」
「ボクも何個か魔法撃っておこうかな」
「爆弾だ!ぎゃああ!!!」
浮遊する亀からは大量の爆弾や魔法が降り注ぎ、追従を許さない。
亀はそのまま、去っていた。
「・・・行ったな。何なんだよ!!」
「まったくです。。。意味が分かりません・・・」
「クロムと少し話したが分からんかった。
今さら何やっても同じといったんだが・・・。
逆に、『その通り、分かってるな』とか言われたよ」
「いや、マジでお前の言う通りだよな・・・。どういうことだ・・・?」
災害の通り過ぎた後のような心境でメンバー達が話をする。
今の攻撃でかなりのメンバーがやられてしまっていた。
霧との連携といい、本格的な襲撃だった。
しかしそもそも襲撃を受ける理由が全く分からかった。
そして、悩んでいた魔法使いに1つの考えが浮かぶ。
「・・・まさか。いや、だけどそれじゃあ何の意味も・・・」
「どうした?何かわかったか?」
「分かったわけじゃない。あくまで、そーじゃないか?って話なんだが・・・」
「聞かせてくれ!」
そして、魔法使いは自身も信じたくないのか、怪訝な表情のまま話し始める。
話を聞いていくうち、耳を傾けていた全員の表情が変わっていく。
うち一人が天に吠えた。
「なんだそりゃああああ!!」
それはギルド全員の気持ちを表しているかのようだった。
一方そのころ、ギルド【thunder storm】では穏やかな時間が流れていた。
「平和ですね。」
「はい。戦いも終わりましたね。お疲れさまでした、ベルベットさん」
「ヒナタこそ、お疲れさまでした。楽しかったっす・・・ですよ」
ギルドマスターのベルベットと、相方のヒナタもまた朝の時間を楽しんでいた。
結成されてから急速に勢いをつけてきた大規模ギルドで、
全体的に高いレベルでまとまっている上に、中核の二人が隔絶した力を持ち、
今回のイベントでも最終生き残りかつ10位以内の戦績を出していた。
「今回は良い結果でした。次回も頑張りますよ!」
「はい。また皆さんと一緒に頑張りましょう」
「ベルベットさん!ヒナタさん!大変です!」
やり切ったという気持ちと、次への想いを胸に話をしていると、
ギルドメンバーが慌てふためいた顔で二人のもとへやってきた。
「どうしました?何か問題でも?」
「黒い化け物がこちらへ向かっています!【楓の木】のメイプルと思われます!」
「【楓の木】が・・・?どうして・・・」
「分かりません!とにかく、襲撃の可能性が高いです!準備を!」
「わかりました。皆にも伝えてください」
「はい!」
大急ぎで周りへ伝えるメンバー。ギルド内がざわめき始める。
ベルベットとヒナタはギルドのマスターとして全員に指示を飛ばす。
「【楓の木】と思しきモンスターがこちらへ向かっています!」
「皆さん落ち着いてください。陣形を組んで、迎撃の準備を」
支持をもとに素早く準備を整えるギルドメンバー達。
しかし、その中でも疑問は尽きなかった。
「どうしてっ・・・なぜ今襲撃を?意味はないはずなのに」
「分かりませんが・・・何か理由があるのかもしれません」
「で、でも!今は既に10位以内のギルドは確定してます。今さら何をやっても同じじゃないですか!」
「そうですね・・・・・・・・・あっ」
装備を整えながら話をするベルベットとヒナタ。
そのなかで、ヒナタがとあることに気が付いた。
「もしかして、何をやっても同じだから・・・?」
「どうしましたヒナタ?同じなら、攻撃してきても意味ないです」
「逆、じゃないかと」
「逆・・・ですか?」
「はい。何をやっても同じなら・・・」
「は・・・?」
思い至った考えをヒナタが述べるとベルベットがフリーズする。
「だから・・・どうせ何しても変わらないなら、最後まで戦おうか・・・とか・・・。
ある意味、他のギルドと戦える貴重な機会・・・ですし・・・」
ヒナタ自身も、あまり考えたくないのか滅多に見せない引きつらせた顔をしている。
(・・・いやいや、何考えてるっすか!?だってもう戦いは終わって・・・)
フリーズしたまま頭でイヤイヤしているベルベットだったが、
視界の端に大きな化け物が映り、その前方で爆発が起きたのを見て、顔をゆがめた。
襲撃は事実。戦闘は避けられない。様々な状況を察したベルベットは天へ向かって叫んだ。
「アホっすか!?アホっすねえええええぇぇ!!!」
ベルベットの叫びが空へ木霊したと同時に、
【楓の木】と【thunder storm】の戦闘が開始された。
ということで、襲撃でしたー。
(襲撃はする側とされる側があります)
次回はランチ達とベルベット達の戦いですー。
(自分で言うのも何ですがどうしてこうなったのだろう)