食べるのが大好きなので、全てをいただきます   作:にゃもー

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あけましておめでとうございますー。
祝15巻発売ー。
祝アニメ第二期ー。

・・・と、いろいろあるくらい長らくお時間開いて申し訳ありませんー。
ようやく余裕が出始めてきたので更新速度も上げていきたいと思いますー。

本日もお邪魔しますー。


美咲と侍従

 

「ふう・・・こんなところかな」

 

真紅の旗を槍のごとく振り回していた少女が、一息を付き旗を地面に立てる。

次の瞬間、甲冑に身を包まれていた少女が一瞬にしてメイド服に変わり、槍がモップへと変貌する。

明らかにありえない光景に、しかし何事もなく話しかける執事服の青年が居た。

 

「精が出ますね、リリィ」

 

「ウィルか。ああ、パーティーも近そうだからな。芸の練習さ」

 

ここはギルド【ラピッドファイア】の拠点。

ギルドマスターであるリリィと相棒のウィルバートを中心に、

新興勢力ながら高レベルのプレイヤーで構成されており、

今回のイベントでも最終的に生き残った数少ないギルドの1つである。

 

「どうだい?主賓のほうは?」

 

「ええ。近く来るそうですよ。先ほど連絡がありました」

 

「まったく。物好きだね。まあ、来るなら歓迎するまでさ」

 

リリィとウィルバートは軽口を言い合いながらも鋭く一方を見ている。

そちらは、先ほど「接近する小部隊あり」の報告が来た方向だった。

 

戦闘が終結した後も、念のため二人は各ギルドの拠点へ偵察を送り込んでいた。

【楓の木】で起こった小さな戦闘ももちろん把握しており、その後どう動いて今どこへ

向かっているのかも二人は把握していた。

 

「おや、爆発音が聞こえましたね」

 

「ああ。来たようだ。さて、お手並み拝見と行こうか」

 

「では先ほどの通りに」

 

ギルドの一角を揺らす大爆発を見ても、動じることなく二人は準備に入った。

 

 

「マジか!全く崩れねぇ!」

 

「向こうも準備していたようだな。」

 

「警戒!何があるか分からないよ!」

 

イズの放った爆弾での大爆発。

その先に爆発前と全く変わらない光景を見た【楓の木】の面々は、

今まで以上に警戒しながら攻撃を仕掛けていく。

 

「メイプル!」

 

「うん!【身捧ぐ慈愛】!」

 

駆ける皆を光が包む。

防御の心配がなくなったメンバー達は一気に攻撃を仕掛けていく。

 

「【パワースラッシュ】!」

 

「【ウィンドカッター】!」

 

「ぎゃああ!!」

 

攻撃が集中した前線の何人かがやられるが、

【ラピッドファイア】のメンバー達は動じることなく反撃に出てくる。

 

「反撃だ!行くぞ!」

 

「ああ!【パワーアックス】!」

 

「きゃあ!?」

 

「ユイ!」

 

「大丈夫!貫通攻撃でもないよ・・・!」

 

(ん?・・・貫通攻撃でない?)

 

ユイの言葉を聞いて、サリーがふと考える。

メイプルに対して【貫通攻撃】が有効なのは今や周知の事実だ。

使用中の【身捧ぐ慈愛】の効果も既に知られていると考えていい。

 

先ほどの爆発を無傷で凌いだことから、相手は準備万端と考えられた。

この状況で【貫通攻撃】をしてこないのは妙だ。

 

「ランチ!」

 

「はーい。どしたのサリー?」

 

サリーはメイプルの近くに居たランチに素早く近寄り声をかける。

 

「相手が【貫通攻撃】を使ってこない。なんか別の狙いがある!

念のため、メイプルから離れないで!いざとなったら・・・」

 

「うん。分かった。いつでも出来るようにしておくね」

 

「お願い。」

 

「大丈夫。私が言い出したことだしねー。頑張って食べるよ!」

 

「あーうん。頼んだ!」

 

一気に話を進めるとそのまま前線に戻るサリー。

 

「よーし。じゃあディナー乗せてー。で、メイプルの近くの相手に【食らいつき】!」

 

(わうわう)

 

「ぎゃああ!!?」

 

一方ランチはディナーへ乗って周り食べさせながら全域を見ていた。

すると、少し離れたところへ明らかに他のメンバーと装備が異なる二人を見つける。

 

「んー。あ、なんか真ん中に狩人さんとメイドさんが居る。矢を構えてるね。

サリーが言ってたのってあれかな。見てよっと」

 

そしてランチは攻撃をディナーに任せて、二人の様子を見ていた。

その間にも、統制の取れた【ラピッドファイア】の攻撃は、

ダメージこそ与えないものの動きを制限し、

徐々にメイプルの近くにメンバーを集めさせることに成功していた。

そして、それこそがリリィとウィルバートの狙いでもあった。

 

 

「そろそろ頃合いですね。」

 

「ああ、やろう。【王佐の才】【理外の力】【この身を糧に】【アドバイス】」

 

「ええ。では。【引き絞り】【矢の雨】」

 

リリィとウィルバートが一気にスキルを解放する。

そして、二人はそのままウィンドウを開き急いで準備を始めた。

 

「皆!上!」

 

「なっ!?矢!?」

 

その結果もたらされたのは、メイプル達が居る場所を覆うように落ちてくる、

ほぼ避けようがない密度の矢の塊だった。

 

「【ピアースガード】!」

 

「【比翼連理】!」

 

この状況で撃たれた大規模攻撃が【貫通攻撃】でないはずはない。

そう思ったメイプルはとっさにスキルを発動しダメージを防ぐ。

同時にランチがスキルを発動し、メイプルのHPを補強する。

 

「お、終わらない!?きゃああ!!?」

 

しかし、【ピアースガード】の効果が切れても矢は降り注いできた。

 

それは鉄壁を誇るはずのメイプルの防御を貫き、大ダメージを与えてくる。

 

「メイプル!【身捧ぐ慈愛】を!」

 

「だめっ!解除したらみんなが!」

 

【比翼連理】の効果でメイプルのHPはまだ残っているが、減り方は尋常ではない。

しかし、それでも【身捧ぐ慈愛】を解除することはできないとメイプルは分かっていた。

 

上から壁が落ちてくるかのような矢の密度は避けるということを許さない。

各メンバーが各々のスキルを駆使して弾いてはいるが完全ではない。

加えて・・・

 

「今だ!皆【貫通攻撃】に切り替えろ!」

 

「やれ!!」

 

【ラピッドファイア】のメンバー達がこの時を待っていたかのように【貫通攻撃】を使いだした。

 

「くっ!どちらも防ぐのは無理だ!」

 

「どうする!?このままだと!」

 

「わあっ!?」

 

クロムやカスミも打開策を考えていたがどうにも思い浮かばない。

そんな中、ついにランチの【比翼連理】がHP限界を超えて強制的に終了する。

 

「メイプル!」

 

「だ、大丈夫!何とか!」

 

ようやく矢の雨が終わる。果たしてメイプルは生きていた。

しかしそれは【不屈の守護者】による紙一重のものだった。

 

 

 

「やれやれ。噂以上だな、メイプル。」

 

「ええ。あれで死なないとは。ただ、これ以上は難しいかと」

 

先ほどと打って変わって、甲冑姿の女王と

仕える執事のようになったリリィとウィルバートは、

メイプル達の様子をじっと観察していた。

 

「そうだな。恐らく【不屈の守護者】だろう。後一撃当てるだけか」

 

「はい。では手はず通りに」

 

「【我楽多の椅子】【命なき軍団】【玩具の兵隊】」

 

「【王佐の才】【理外の力】」

 

そして止めを刺すべくスキルを発動する。

 

「なっ!?」

 

「機械の兵隊!?」

 

「全方位囲まれてるぞ!逃げ場がねぇ!」

 

【楓の木】のメンバーが、【ラピッドファイア】のメンバーに加えて、

機械でできた大量の兵隊たちに囲まれた。

 

「まずい!逃げ場がないぞ!」

 

「わ、私もまずいかも!」

 

「・・・ランチ!!」

 

【比翼連理】でHPが少なくなっているランチ、

【不屈の守護者】を使わされ、HPが1のメイプル、

囲まれているギルドメンバー、

それらを鑑みてサリーがランチに叫ぶ。

 

「分かった。行くよー。【封鎖海域】!」

 

そしてランチは切り札ともいえるスキルを使用する。

ランチを中心として、半径30mが瞬時に深海へ置き換わる。

 

「うおっ!?水中!?」

 

「マジか!動きが!」

 

いきなり水中に放り込まれた【ラピッドファイア】のメンバーに動揺が走る。

そして機械の兵士たちも水中で戦えるようにはできておらず、次々に水の底へ沈んでいく。

 

「よし!皆、アイテム使って!」

 

「「はい!」」

 

「うん!」

 

対して、【楓の木】のメンバー達はイズから渡されているアイテムを使用する。

それは透き通る水色の飴で、水中での活動時間を延ばすイズ謹製のアイテムだった。

 

「よーし私も!」

 

「うん、ランチは必要ないよね?」

 

「美味しいよ!」

 

ちなみに【海皇の魂】で水中制限を受けないランチもしっかり飴は貰っていたりする。

 

対する【ラピッドファイア】には水中活動をするような準備はさすがにしていない。

しかし、そんな中でも慌てていない二人の姿があった。

 

「きましたか」

 

「これが噂のスキルか。水中で【速度低下30%】か。はは、とんでもないね」

 

「ではリリィ、手はず通りに」

 

「ああ。準備していて正解だったな。【陣形変更】」

 

リリィがスキルを発動すると、深海の蒼をかき消すような青白い光が水球に広がる。

次の瞬間、【ラピッドファイア】のメンバー全員が忽然と姿を消した。

 

「うん?皆いなくなった?」

 

「脱出した!?転移スキルか何か?でも全員を転移させるなんて・・・」

 

「サリー!解除しちゃって良いかなー?」

 

「・・・うん。そうだね。このままだと皆溺れちゃうし。解除して!」

 

「はーい。解除ー」

 

水球が消え、【楓の木】のメンバーが元の場所に降り立つ。

 

「【ラピッドファイア】が戻ってこないうちに撤退するよ!」

 

「メイプル!乗って!」

 

「うん!」

 

「マイちゃん、ユイちゃん、乗ってー」

 

「わ、分かりました!」

 

「ディナーさん、お願いします!」

 

(わう!)

 

極振り組を背中に乗せたメンバー達が急いで離脱する。

そしていれかわるように【ラピッドファイア】のメンバーが戻ってきた。

 

「やれやれ。終わったかな。」

 

「ええ。ひとまずは。」

 

「この後が想像できないね。いやはや、何を思って襲ってくるのか」

 

戦闘態勢を解いたリリィとウィルバートが一息を付く。

見事に【楓の木】を退けた二人だったが、その意図までは分からなかった。

 

「・・・お祭りのようなものなのかもしれません」

 

「うん?どうしたんだいウィル?」

 

「いえ、なぜ襲ってくるのかと考えてふと思いついたことです。」

 

「興味深いね。」

 

「リリィも知っての通り、今回のイベントすでに順位は固定されました」

 

「そうだね。今さら何をやっても同じ・・・・・・そうか」

 

「ええ。同じなら、無茶をしても同じということです」

 

「ははは!だから記念に他のギルドにも攻めてみようかということかい?無茶苦茶だね」

 

楽しそうに苦笑いするリリィ。

 

「これで終わりかは分かりませんね。再度警戒しておきましょう」

 

「ああ、そうだね。歓迎は派手に行こうじゃないか」

 

こうして【ラピッドファイア】も戦闘態勢に入る。

時間は4日目の夜にかかろうとしていた。

 




ということで、お邪魔しましたー。
次回はランチさん達のお話ですー。

・・・今さらですがここ数話はネタバレ注意が必要だった気がする今日この頃。
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