大乱闘ですー。
「【雷槍】!」
「うわっ!やばっ!【多重障壁】!」
開口一番、ベルベットが放つ巨大な雷の槍がフレデリカを襲う。
とっさに避けようとするが、後ろにいるギルドメンバーのことを
思いだし、慌ててスキルで受け止めようとする。
強靭なはずの防壁が甲高い音を立てて一気に砕け散っていく。
残り1枚になった時点でなんとか雷の槍は消滅した。
「すごい威力。皆気を付けてー!ってうわあっ!?」
「行くっす!【爆砕拳】!」
槍を放つと同時にフレデリカに向かって突進していた
ベルベットがスキルによる一撃を放とうとする。
「おっと!それ以上はさせない!」
金属がぶつかる音がして、ベルベットの拳が止められる。
ペインはベルベットの拳を弾くとそのままスキルを発動する。
「【断罪の聖剣】!」
「おっと!危ないっす!ふっ!」
「当たらないな!せやっ!」
ギリギリで避けたベルベットが、今度は電撃に包まれた拳擊を返す。
つき出された拳を大きく横に避けた勢いのままペインが
その勢いのまま1回転し、勢いのついた切り下ろしを見舞う。
「強いなー。【多重障壁】。あとは・・・皆、お願いー」
その攻防を見たフレデリカは、補助スキルを発動させつつ、
回りの皆にチャットで指示を飛ばす。
「【凍てつく大地】」
対してヒナタはスキルを発動し、周囲の凍結を狙う。
「ぬっ!?」
「今っす!【爆砕拳】!」
ヒナタの放ったスキルとタイミングを合わせ、
ベルベットが再度ペインに一撃を叩きこむ。
「ぐっ・・・!!」
「ペイン!」
その威力はペインのHPを一気に削り、【不屈の守護者】をも発動させた。
「耐えるっすか!でも次で終わりっす!」
「そうはいかないな。今度はこちらの番だ!」
そう言うとペインは一瞬フレデリカを見たあと、攻撃を開始する。
「おっけー。皆、行くよー。【多重全転移】!」
次の瞬間、周囲で戦っていた【集う聖剣】のメンバーにかかっていた
バフがすべてペインに転移される。
「なっ!?」
「まずい・・・!」
「【破砕の聖剣】!」
強化されたペインが一瞬でベルベットの懐に潜り込み、
スキルの一撃を放った。
「ああああああ!」
「ベルベットさん!くっ・・・ここは・・・」
「遅い!【断罪の聖剣】!」
次の瞬間、ベルベットが抵抗する間もなくやられていく。
そしてペインは返す刀でヒナタをも切り裂いた。
「くううう・・・負けたっす」
「ぐっ・・・さすがです・・・皆さん・・・すぐ戻ります」
二人が消滅していく。
「ああっ!ベルベット達が!」
「くそっ!一度下がるぞ!」
ベルベットとヒナタがやられたことで、
ギルドのメンバーも戦いながら後退していく。
「ふぅ。何とかなったか。ありがとう、フレデリカ」
「どういたしましてー。さて、あっちは・・・」
「【グランドランス】!」
手をヒラヒラさせつつフレデリカが反対側を見ると、
大きな音と共に巨大な岩壁が地面から伸びる。
そこには岩壁に競り上げられて宙を舞うメイドがいた。
「【跳躍】。【ダブルスラッシュ】。」
「ぐうっ。・・・ははっ。さすがだね。」
そして、1つの影が隆起する岩をもろともせず迫っていく。
影は空中で身動きが取れないメイドを素早く切り裂いた。
「ウィルもやられたみたいだね。今回は負けたよ」
そう言って潔く消えていくメイドこと【ラピッドファイア】ギルドマスターのリリィ。
リリィが消えたことでギルドメンバーも後退していき、
【集う聖剣】がいる場所はひとまず落ち着きを取り戻していた。
幹部メンバー達は一旦集まっていく。
「お疲れー。そっちも楽勝だったー?」
「大きな被害はねぇ。楽勝・・・でもねえけど。」
「ああ。強いスキルをかなり使わされたぞ。」
「同じくだ。【神速】や【超加速】、食いしばりスキルまで使わされた。ダルい」
ドレッドとドラグは揃って肩をすくめる。
ドレッドのスキルはウィルバートへの対策として、
ドラグはリリィへの対策として使わされたものだった。
「ふむ。それならしばらくは迎撃中心だ。スキルが回復したら攻めに転じる」
「はーい」
「オッケー。」
「わかったぜ!」
【集う聖剣】のメンバー達が少しずつ陣形を小さくしながら防衛体制をとる。
相対する2つのギルドも後退したことで、状況も大きく変わりだした。
「どうやら流れが変わったみたい!」
「どうする、サリー!?」
サリーがすこし考える。
後退したギルドに代わって、押し込まれるように残り2つのギルドが
【集う聖剣】との距離を積めていく。
2つのギルドと戦う形になっていた【楓の木】もつられて移動しようとしていた。
「一度外側に!連戦続きだと厳しいから、あれを!」
「うん!ランチ、お願い!」
「はーい。ディナー、後ろに向かって【食らい付き】!」
(あおおおおおおおん!!)
「ぎゃああ!!!」
「くそっ!ランチちゃんの!距離を取れ!」
「まともに戦うな!普通のモンスターとかじゃないぞ!」
咆哮の先には【掲示板の民】のメンバーがいた。
後退してくるギルドと戦いを繰り広げているなかにディナーが突進する。
「クロム!クロムはどこだ!?」
「あそこだ!メイプルちゃん達を挟んで逆!」
「せっかくだ!行くぞ!」
「ええ!ここまで来たらやったもん勝ちです」
とある掲示板の住民達がクロムに向かっていく。
「よっと!・・・ん?何か見覚えあるやつらが来るな・・・」
「いたぞ!昨日のお返しだ!いくぞ!」
「おっと!」
先行した剣使いのプレイヤーが一撃を放ち、クロムが受け止める。
その間に斧使い、魔法使い、弓使いのプレイヤーも合流する。
「あー。気持ちは分かるが、一度離れた方が良いぞー」
そんなメンバー達にクロムは同じ住民のよしみで警告する。
「この期に及んで命乞いか!?」
「先ほど襲撃しておいてそれはないでしょう、クロム?」
「いや、戦うってんなら相手にはなるが、今はたぶん戦いにならんぞ」
「何を訳をわからんことを!行くぞ!」
息巻く4人の背後で、準備が整ったランチが大声で宣言する。
「よーし!いくよー!皆、準備してねー。【封鎖海域】!」
次の瞬間、ランチを中心に半径30mが深海へと姿を変えた。
「うおわっ!?」
「こ、これはランチちゃんの!やべぇ!」
クロムを囲んでいた4人も唐突に水中へと放り込まれた。
「だから言っただろうに・・・。居てもらっても困るんで、すまんが倒させてもらうぞ」
慌てている4人を尻目に、クロムは青いキャンディを口にする。
イズ謹製の対水中用アイテムだ。
自前と合わせ、潜水と水泳のVIII相当のスキルを得たクロムが、
一気に4人のもとへ近づいていく。
「は、謀ったなクロムー!」
「謀ってねぇ。注意しただろ」
「くそっ!一矢だけでも!」
「ぐうっ!やるな。と言いたいがその程度じゃ倒れんからな」
「このままでは終わらんぞー!」
「化け物めぇ!」
銘々の悲鳴を残して4人は消えていった。
「ぎゃああ!!!」
「何で水中でそんな動けるんだ!?」
「ちくしょぉ!!」
そんな間に、各地で巻き込まれたプレイヤー達が倒されていく。
そして9人だけが残った。【楓の木】のメンバー達だ。
「他の人たちは、もう誰も居ないよー」
水球を一通り回っていたランチが戻ってきて、サリーに告げた。
「ん、上手くいった!」
「よーし、じゃあ皆予定通り・・・休憩ー!」
「「はい!」」
メイプルが皆に話しかけると、各々が散らばる。
手にはクロムが使ったものと同じ、青色のキャンディがあった。
「皆、キャンディ持ったかしらー?早速使ってね」
「ああ。水中で飴を舐めるのも不思議だな・・・」
「うん。ちゃんと味がするのに水の中の感じもするんだよね」
「なんにせよ、これでしばらく休憩できるって訳だ。・・・こんなやり方は思い付かなかったが」
各々がキャンディを食べると、水のなかでくつろぎはじめる。
「ちょっと大変だったけど、確かにスゴいなぁ、これ」
「「頑張って泳ぎました!」」
昨日の夜を振り替えるカナデだった。
「問題は疲労だと思う」
今回の戦いにあたっての会議で、サリーから切り出されたのがそれだった。
最終日は深夜までではなかったが、正午からイベントの終わりまでは数時間はある。
恐らく乱戦になるため休憩や離脱は難しく、また相手も一筋縄ではいかない強者ばかり。
「うーん、途中でお休みできればいいんだけど・・・」
「危なくなったら、ランチの【封鎖海域】で何とかしてもらうしかないかな?」
普段通り動けなくなってしまえば、戦うことは難しい。
少人数ギルドの痛い部分が出てきていた。
・・・しかし、そこら辺はよくわからない発想を出すメイプルであった。
「うーん。・・・あ、ランチ、【封鎖海域】ってどれくらい出せるの?」
「ん?えーと、1日3回で30分。今日はあと2回だねー」
「おー。それじゃあ、今から皆で泳ぎます!」
「・・・はい?」
「そうすれば休めるんじゃないかな!」
「・・・説明どうぞ」
ニコニコな顔で説明を続けるメイプル。
「えーとね、サリーも持ってる潜水のスキルって、泳げば取れるよね?」
「そうだね。私も湖で泳いでる時にとったから」
「で、イズさんのアイテムで潜水スキルが強化できるんだよ!」
「そうねぇ。スキルレベルを幾つか上げられるわ」
「それでそれで、潜水スキルが高ければ30分なら大丈夫じゃないかな?」
「うん。まあそうだと思う。実際、私は時間一杯耐えられるし」
潜水Xを持つサリーは40分潜っていられるので、
ただ閉じ込められるだけならなんとかなるのだ。
「だから、【封鎖海域】の中で皆で泳いでスキルゲットして、
アイテムで強化したら、【封鎖海域】の中で休めるんじゃない!?」
「・・・」
ランチを除く全員がなんとも言えない顔でメイプルを見る。
皆の顔には「なぜそんな発想がでる?」と顔にかいてあった。
そしてメンバー全員が【封鎖海域】の中で目一杯泳いだ結果、
全員が潜水と水泳のIV以上を取得したのだった。
そこにキャンディのバフを合わせることで、
全員が30分以上の潜水が可能となった。
「ふー・・・。・・・まさか本当に休憩場所にするとは」
サリーがあきれた顔でメイプルとランチを見ていた。
メイプルは裏返した盾に乗って漂っている。
そしてランチは高速で皆にお菓子を配っていた。
そんな二人を見てサリーも体の力を抜いてリラックス。
他のメンバーも水中ながら休んでおり、とても戦場の真ん中とは
思えない光景が展開されていた。
もちろん、その姿は回りの戦場からも丸見えだった。
「なにそれー!?サリーちゃんめっちゃくつろいでるんだけどー?」
「あー。全員が水中でもOKってことか」
「フレデリカ、中にワープしたらどうだろうか?」
「ワープ自体は可能だけどー、入ってもたぶん倒せないよー」
「メイプルに加えてランチまでいるからなぁ・・・」
少なくともあの中でランチを相手にするのは自殺行為だということは、
実際に相対したドラグとフレデリカが一番わかっていた。
回りではなんとか水球を破壊しようと試みているプレイヤーもいたが、
物理・魔法無効の壁を突破できるものはいなかった。
「仕方ない。まずは回りのことを片付けよう!」
「おっけー!」
ペイン達が距離を詰めていく。
戦場が再び広がりを見せていた。
戦火が広がるなか、【封鎖海域】の時間が終了する。
「そろそろ終わりー」
「うん、かなり休めた。ありがと、ランチ!」
「よーし!じゃあ皆、行くよー!」
「「元気一杯です!」」
「さて、いくか。」
「スキルもストックできたね」
「気を付けていこうぜ!」
「私も幾つかアイテム作れたから、頑張るわよー」
全快状態の【楓の木】が戦場に解き放たれる。
「戻ってきたっす!」
「行きましょう・・・」
「やれやれ、こんどはやられないようにしたいね」
「ネタは割れました。大丈夫でしょう」
そして、一度やられた者達も再度集まってきていた。
既に時間は夕方を過ぎ、日が傾き始めようとしていた。
夜の帳が下りてくる中、戦いは続いていた。
ということで【楓の木】のバカンスでした―。
次回は大乱闘、そして波乱の第4回イベントの終了ですー。