色々あり過ぎた第4回イベントもようやくクライマックスですー。
「やっぱ強いなー、【集う聖剣】」
「なんだかんだで普通に勝ってるよな」
「さすが最強ギルド・・・」
観戦席でプレイヤー達が色々話をしている。
目の前のモニターでは大軍同士が大乱戦を繰り広げていた。
「【thunder storm】も強いな。特にあの二人はヤバい」
「雷と氷か・・・。範囲が凄まじい上に、ペイン達とも戦えるとは・・・」
その中で、ベルベットとヒナタを中心として、周りの相手をなぎ倒していくギルドがあった。
「【ラピッドファイア】もかなりヤバいぞ。あの中で統制取ってるの信じられん」
「カオスにもほどがあるからな・・・。あのメイド執事コンビがとんでもない」
「なんだあの軍団・・・?」
対して、リリィが人形の兵士を大量に布陣させ、
ギルドメンバーへの被害を抑えながら、ウィルバートが周りを攻撃していく。
「【おさんぽ隊】と【掲示板の民】は苦戦してるな」
「かなり頑張ってるが、エース級の中心メンバーが居ないのが響いてるな」
「ってか、それで生き残ってるんだからあいつらも大概だぞ」
2つのギルドメンバーは他のギルドに押されてバラバラになりつつある。
しかし、個々の能力・経験はNWOの中でも上から数えた方が早い面々ばかり。
指示などが全くない状態でも個人の判断で猛攻を捌いていく。
「・・・で、【楓の木】は?」
「先ほどまた休憩に入りましたとさ」
「あー。くつろいでるなー。」
VRMMOの中でも滅多にみられない、トッププレイヤー達の超大規模戦闘。
誰もが盛り上がる激突の中で、完全に別世界のような光景が広がっている。
戦場の端付近に展開された全長60mの水球、
その中で漂っている9人のプレイヤー達が居た。
彼らは先ほどまで周囲に桁違いの被害を振り撒いていた。
各々が持てる全スキルを一気に放出し、一気に破壊をまき散らした。
「ちょっと!攻撃が当たらないっす!」
「これは・・・下手な攻撃は逆効果になります」
雷撃をギリギリで交わすサリーを信じられないものを見る目で叫ぶベルベット。
ヒナタもあまりの精度で交わしいなすサリーにスキルを打てないでいる。
(まあ、さっき見させてもらったからね。ペインさんに感謝)
全てを知っているかのごとく避けるサリーだったがタネはあった。
そんなことを思いながらベルベットへスキルを放つ。
「ここっ!【ダブルスラッシュ】!」
「こっちも当たらないっすよ!」
「後ろ・・・!」
「「【飛撃】!」」
「なっ!?」
攻撃を避けた先にユイとマイからの範囲攻撃が炸裂する。
先ほどのサリーの攻撃が誘導であったことをようやく理解するが、
体勢を崩したベルベットには成す術がない。
「くっ!【氷盾】!あああっ!」
咄嗟にヒナタが盾を展開するが、薄紙を貫くがごとく粉砕される。
そのまま二人はエフェクトとなって散った。
「やれやれ。参ったね。これは専用の対策が必要だよ」
「すみません、近づけさせないではいますが、厳しそうです」
「仕方ないさ。さすがにあれは想定外だった」
メイプル達が戦っていたところから少し先、リリィとウィルバートがたたずむ。
そこには戦いのとき彼女らを守る兵士たちの姿はない。
「・・・まさか、独立している兵士を攻撃されて私自身が【スキル封印】されるとは」
「ええ、今後何らか対応を考えないと」
先ほどまでは居たのだが、突然すべての兵士たちが消滅した。
その理由はウィルバートが視界の端に捕らえていた。
「うーん、味しなかったなぁ。しかも【調味料】でも味つかなかったし・・・大問題だよ!」
そこには深刻そうな様子で兵士を食べたランチの姿があった。
特に衝撃だったのが、【調味料】を使った後も味が無かったことだった。
「なんだろう?何か味が付かないことがあるのかなー?」
「ランチ!そろそろお願い!」
「あ、サリー。分かったー。皆ー、あと3分したらまた行きますー」
サリーから声がかかったランチが、他のメンバーにメッセージを出す。
「心得た!」
「分かったぜ!」
そして、それに呼応するように【楓の木】のメンバーが集まり始める。
「おや、彼らがあそこに集まり始めてますね」
「またアレをするつもりなんだろう。メンバーを引かせよう」
「分かりました。」
ウィルバートが矢継ぎ早に指示を飛ばす。
交戦中のメンバーも含め、【楓の木】から遠ざかる。
「またランチちゃんがやるぞ!巻き込まれるな!」
「クロムには話が聞けそうにないですねぇ・・・」
「掲示板で問いただす!それでこそ【掲示板の民】だ!」
他のメンバーもどんどん距離を取っていく。
混沌とした戦場の中、【楓の木】の周りだけ人が居なくなる。
今回で3回目となれば、各メンバーも対応がスムーズになる。
「行きまーす。【封鎖海域】!」
再び【楓の木】のメンバーが水球に閉じ込められる。
戦闘態勢を解いてキャンディを舐めるメンバーを、
周りのギルドのメンバーは何とも言えない気持ちで見ていた。
「くつろいでるねー。私らもくつろいじゃう?」
「そーしたいのは山々だがなぁ」
「周りの相手も必要だ。何より、【楓の木】がいつ解除してくるかわからない」
「あー・・・。そっか、いつでも解除できるんだよねーあれ」
「解除した瞬間に襲ってくる可能性がある。警戒は解けないな」
「だるい・・・」
そんなことを言っているとドラグから声がかかる。
「おーい!こっち手伝ってくれ!」
「はいはーい!」
「こっちも来るぞ!」
【集う聖剣】のメンバー達は再度戦いへと突入した。
水球の中ではメイプルがふよふよ浮いている。
そこにサリーが泳いでいく。
「あ、サリー!気持ちいいねー!」
「そうだねメイプル。でも、これが最後、次戻ったらノンストップだよ」
「うん!」
ランチの【封鎖海域】は1日3回まで。
戦いの合間合間に挟んできた休憩タイムは今回が3回目で最後となる。
「まあ、大丈夫じゃないか?」
「ああ、もうあまり時間もないしな」
イベントの終了時刻までは既に1時間を切っていた。
数時間に及んだ戦いもあと少しで終わる。
「戻った後はどうする?」
「そうだねー。おやつもごはんもあるよー」
人魚姿でお菓子を配っているランチが答える。
「うん、そうじゃなくて、水球無くなったあとね」
「まあ戻った後ももう少しあるからな、戦いは続きそうだ」
「どうなってるか分からないな。向かってくる相手を倒すことになる気がする」
「そうですね。基本は待ちで良い気がします」
「じゃあ、最後は皆で頑張ろう!」
「「頑張ります!!」」
その後は皆揺蕩いながら時間は過ぎていく。
「皆おやつだよー」
そしてランチが配るお菓子をみんなで食べていく。
付与効果を撒きつつ、スキルの制限時間がやってきた。
「【楓の木】のスキルが終わりました!」
「さて、出てくるぞ。」
次の瞬間、スキルが解除され、中央に【楓の木】のメンバーが現れる。
「行くっすよ!ヒナタ!」
「はい・・・!」
「さあ最後だ。楽しもう!」
「ええ」
それを待っていたかのように、四方から他のメンバーが殺到する。
「皆行くかー。まあ、あと少しだしねー」
「さて、我々も行くとしよう。」
「あー、まあ思うところはあるからな」
「今度は負けないぜ!」
【集う聖剣】のメンバーもそこに集まっていく。
「なんか向こうに集まっているな」
「どうやら【楓の木】がいるようです」
「ここまで来たらやるしかねぇな。行くぞぉ!」
現在生き残るメンバー達が【楓の木】を中心に集まり始めた。
「これは・・・!全員来るぞ!」
「全方位から敵が集まってる!」
「メイプル!ランチ!」
「うん!【身捧ぐ慈愛】!」
「はーい。【比翼連理】~」
メイプルに白い翼と緑の翼が生える。
横には同じく緑の翼が生えたランチ。
「前みたいに、皆なるべく範囲から出ずに戦って!」
「「分かりました!」」
「最後まで何人たりとも通さん。斬る!」
メイプルから伸びた光の絨毯の先端にマイとユイ、逆側の先端にカスミ。
「ごめん!もう守るスキルはないよ!代わりに攻撃を!」
「よっしゃ、守りは任せとけ!」
「回復は任せて!」
メイプルとランチの横にイズとカナデ。
クロムがマイとユイの前に出た。
「来たよ!」
前後2か所を中心とした布陣の中、
どちらにも行けるようサリーがスタンバイする。
次の瞬間、各方面から敵が一気に殺到した。
イベント最後となる戦いが開始された。
「さて、最後の大放出だね。一気に行こうか」
「隙間から狙撃していきます」
「マイ、ユイ、離れるなよ!」
「「はい!」」
「行くよお姉ちゃん!【ドーピングシード】!」
「うん!」
クロム達には大量の人形の兵士とそこに交じるプレイヤー達が殺到する。
「斜めに撃って!」
「「!!分かりました!行きます!【飛撃】!」」
まずはマイとユイが範囲攻撃をぶちかましていく。
直前のサリーの声に従って、お互い斜め前に放つ。
丁度真正面だけに衝撃が届かない位置。
「当たるな!触れるだけで死ぬぞ!」
「大きく回り込め!」
衝撃の前に居た人形の兵士が一気に崩れ去った。
ドーピングシードと付与効果に加え、イズのアイテムで強化された二人の攻撃は
今残っているメンバーだろうとたやすく粉砕する。
今までの戦いからそれを痛感している【ラピッドファイア】のメンバー達が一気に散開する。
結果、真ん中に人形の兵士とメンバー達が集まり出す。
「今!真ん中に攻撃して!」
「「はい!【投擲】!【投擲】!【投擲】!」」
「くっ!盾で弾け!」
「おう!ああああ!!」
「はっ!?ぎゃああ!」
そこに飛来する大きな鉄球。
大盾を構えたプレイヤーを大盾ごと貫通し、後ろのプレイヤーをも貫いた。
そんなものが密集したプレイヤー達に幾つも飛んでくる。
真ん中に集められたプレイヤー達は一気に壊滅した。
「やはり厳しいね。でも今だね。【王佐の才】【理外の力】【この身を糧に】【アドバイス】」
「ええ。では。【矢の雨】」
前日に襲撃した際、【楓の木】を追い詰めたスキルが再び放たれる。
「今だ!メイプル!【超加速】!」
「うん!【イージス】!!」
しかし、一度見た技をサリーは覚えている。
ウィルバートがスキルを放った瞬間、自分もスキルを使いながらメイプルを呼ぶ。
阿吽の呼吸でメイプルがスキルを放つ。
「なっ!矢を無視している!」
「無敵系のスキルですか!しかも仲間だけを!」
「ぎゃああ!!?」
「ああああ!!!」
メイプルを中心に無数の矢が降り注ぐ。
しかし、【イージス】に守られた【楓の木】のメンバーは一切の防御をせず、
逆に目の前の敵へ攻撃を集中する。
降り注いだ矢はむしろ【楓の木】の敵メンバーを撃破することとなった。
「まずい、ウィル!」
「・・・リリィ、後はよろしくお願いします。」
そしてその中でも【超加速】を使ったサリーは
矢の雨の中で反応できない敵メンバー達を尻目に、
ウィルバートのもとへ一気に接近する。
スキルを放った直後の二人に、サリーを抑えることはできなかった。
「【トリプルスラッシュ】!」
「【王佐の才】【理外の力】!」
サリーの放ったスキルがウィルバートを切り裂く。
対してウィルバートは一切の抵抗をせず、ただリリーへスキルを使った。
「後は頼みます・・・!」
「引き受けたよ。【我楽多の椅子】【命なき軍団】【玩具の兵隊】!」
ウィルバートの支援で再度スキルを使ったリリィが、
サリーの周りに大量の兵士を召喚する。
「せっかく来てくれたんだ。歓迎しようじゃないか!」
「お気遣いどーも。お構いなくて大丈夫ですよ」
サリーはリリィを見据えつつ、周りの兵士を警戒する。
「ははは。つれないね。こちらもウィルがお世話になったからね。ゆっくりしていってくれ」
「また今度お邪魔しますよ。また雨が降りそうですし」
そう言うとサリーは後ろを振り返る。
そこには上空に飛び立ったメイプルがフル装備で構えていた。
「行くよー!【全武装展開】!【攻撃開始】!【にじみ出る混沌】!【毒竜】!」
「【食神の霧】!消費HPは・・・10000!そしてーディナー!【覚醒】×2!」
そして・・・全方位が霧に包まれた次の瞬間、砲撃と化け物と毒のブレスが展開された。
「ああああ!!?」
「ぎゃああああ!!!」
「どうしろってんだ!」
ただでさえ矢の雨を防ぐのにスキルを使わされた周囲のメンバーに、
その多重攻撃を防ぐ術はほぼ残っていなかった。
「ちっ!【ダブルスラッシュ】!」
「【多重障壁】!」
一部のトップクラスのメンバー達を除いて、一気に周りからエフェクトが散る。
【集う聖剣】の中心メンバーはそれでも全員が生き残っていた。
「・・・まーったく。めちゃくちゃだよー!」
「はは。俺も何かスキルを探してみるか。」
「おう!何とか生き残ったな。もう終わりだろ?」
「ああ。・・・?飛べ!」
会話をしているドレッドが何かを察知して横へ飛ぶ。
その声を聞いたペインとドラグが問いただす間もなく銘々が飛んだ。
「ディナー!【ヴァナルガンド】!」
次の瞬間、ペイン達が居た場所が川に変貌する。
「うわっ!ランチ!?」
唯一、スキルを使った後で反応が遅れたフレデリカだけが取り残される。
「あ、ペインさんとドレッドさんが逃げちゃった・・・」
「やれやれ。油断も隙もねえな」
「悪いがこの状態で君と戦うのは御免被るよ」
「もう時間もねえしな。」
時間もあと数分となろうとしていた。
「仕方ないです・・・。またフレデリカさんのいただきます」
「何でさ!?もう何回も食べたでしょ!?」
「美味しいので何度でもいただけます!ありがとうございます!ディナー!抑えて!」
(あおおおおおおおお!!!)
水の中で逃げようとするフレデリカを猛スピードでディナーが追う。
「ひぃぃ!?【多重風刃】!」
「うわわっ!って、良し!つかめた!いただきます!」
思わず撃ったスキルのうち1つを、ディナーの上に乗っているランチが掴んで食べる。
「うん!メロンソーダ!」
「えっ!?あ!スキル封印された!みんな助けてー!!」
スキル封印がかかったフレデリカに成す術はなかった。
「善処しよう。【断罪の聖剣】!」
「しゃあねーな。【グランドランス】!」
「俺はちょっと無理だな」
川の中に入るのは自殺行為と分かっている3人から、可能な範囲のスキルが飛ぶ。
そのスキルはディナーに命中するが、撃破するまでは及ばなかった。
「うわあっ!もう、邪魔しちゃダメですよー!【食神の霧】!消費HPは・・・5000!」
「また霧が!払えない!まずいー!」
「先にこれを払うしかないか。【破砕の聖剣】!」
「【フレイムランス】!」
「だるい・・・ふっ!はっ!」
「ちょっとみんな、助けてよー!」
「すまない、霧を晴らしたらすぐ行く」
「がんばれ!」
「私も霧どうしよー!・・・あっ」
霧を晴らそうとしているフレデリカの腕が動く。
前にもあった感覚に絶望的な顔で振り返るフレデリカ。
「いただきまーす!」
「やめてよぉ!!」
武器は食べられた。
「すまない。間に合わなかった」
「ペインさんとドレッドさんの武器も食べたいです!」
「はは、遠慮しておこう。そろそろ、終わりのようだしね」
そしていつものマスコットが空に登場する。
【がおー!皆、お疲れさまー!第4回イベント終了だよー!!】
【イベントの結果とかは、また通知するから、今日はゆっくり休んでねー!】
【それじゃ、ばいばーい!がおー!】
次の瞬間、全てのメンバーが光に包まれ、転送陣が足元に出る。
「うーん、残念。また食べさせてくださいねー」
「やだよ!?」
「ペインさん達も、またお会いしましょー」
「ああ。次こそは勝たせてもらうよ」
「次こそは食べますよー」
そんなことを言いながらプレイヤー達はフィールドから消えていった。
かくして、大波乱の第4回イベントが幕を閉じた。
ということで終了しましたー。
ランチさんはすこし不完全燃焼な今日この頃。
次回はイベントの後日談ですー。