「着いたよー」
「今度は何があるんだろ!」
「あー。また来るとはねー」
扉を降りて樹の中を下っていくと、ランチにはおなじみの場所へ着く。
「【食神の間】…?」
「とりあえず聞いたことは無いな」
「あはは、面白いね」
「興味はあるわね。」
「「ランチさん凄いです!!」」
他のメンバーはよくわからないながらも付いてきていた。
<よくぞ来た。食を制しものよ>
「お久しぶりですー」
そこには今までと同様に豚のモンスター<ヘンウェン>が居た。
<汝の得た力が引き寄せた。まずは歓待しよう>
「うわっ!眩しい!」
「なんだ!?」
そう言うと、目の前に光が溢れる。
あまりの眩しさに目を細めるメンバー。
「わああぁ!!」
光が収まると、そこには大きなテーブルと椅子、
そして多種多様な料理が並べられていた。
主にサーモンを使用した種々の料理と、
様々な味付けをされたミートボール、
他にも海鮮をふんだんに使用した料理が並ぶ。
「凄い!」
<座り、食すがよい。食しながら話をするとしよう>
「はーい!皆も座ろう!ヘンウェンさんありがとー!」
「うん!美味しそう!」
目を輝かせるランチとメイプル。
<食に感謝を>
「あ、ああ。」
「美味しそうね!作り方とか気になるわ!」
若干引きながらも席に座るメンバー達。
ヘンウェンも座り、そして唐突な晩餐が始まった。
<新たな力を得た汝に贈るものがある>
「んう?新しい力?」
食事をしながらヘンウェンが話をしだす。
<然り。汝は殻を破り、次へと至った。尾と角が証なり>
「あー・・・。これかぁ」
椅子から垂れ下がる黒い尻尾がぴこぴこ動く。
第4回イベント終盤で、ミィを食べた時に生えたものである。
<それこそ汝がヒトを脱した証なり>
「私はヒトじゃないのかな?」
思うところもあり尻尾を見つめながら言うランチ。
<然り。汝は同胞を喰らい魔に堕ち、ヒトを捨てた>
「そっか・・・。」
「ランチ・・・」
「大丈夫だよサリー」
心配するサリーに微笑むランチ。
「じゃあ、私は何なのかな。魔って悪魔ってこと?」
<然り、そして否。魔であることは事実だが些事である>
「どういうこと・・・?」
思わずサリーが問いかける。
<汝は我の授けた【食神】の力を持つ>
<その汝がヒトを捨てること、すなわち神へ至ることである>
「か、神・・・?」
黙って聞いていた他のメンバーも思わず反応する。
<汝は【食神】として覚醒した。そのうえで魔に堕ちた汝は【魔神】という存在である>
「魔神・・・」
「強そうだ・・・」
「「ランチさんやっぱり凄いです!!」」
「味方なら良いのよー♪」
メンバー達が唸る。一言で強そうと分かる称号だった。
そしてランチも今の状況が分かったようで少しほっとしていた。
(【食神】なんだから色々食べられるよねー。良かった)
なお、心配事とは今後も食べられるか?だけである。
「私はどうなるのかな?」
<同じく神の力を宿す存在を探すがよい。力を得るたび汝は【食神】として覚醒する>
<覚醒するにつれ現世の汝は儚くなるであろう。しかしそれは汝の真の姿にあらず>
<汝は幽世の民となり、世の【食】を司る存在となるであろう>
そこまで言った<ヘンウェン>は、今まで一切変わることのなかった表情を崩し、
にやりと笑みを浮かべた。
<ようこそ、神の世界へ。汝を歓迎しよう>
「あ、こちらこそーよろしくですー。」
軽く返事をするランチだった。
<油断することなかれ。汝は現世に居ながら神に覚醒した。世界にも影響が出る>
<それは神を模す武具、神を制す武具となって表れよう>
「は・・・?」
「待って。今後そんな武器や防具が現れるってこと・・・?」
さらっと重要なことを言われたメンバーが呆然としながら問いかける。
食べることが主体ではあるがランチの強さは第4回イベントで実証されている。
局所的にでも同じ力を振るえる武器があるとすれば価値は計り知れない。
<然り。どちらも汝に抗しうる力だ。警戒せよ>
「私は何をしたらいいのかな?」
<神の力を磨くがよい。神として成った汝は【食】を制し、世界を制すだろう>
<まずは我からの祝福だ>
そう言うと、ランチの後ろに大きな宝箱が出現した。
「これは?」
<我から贈るものだ。開くがよい>
「はーい。ありがとー」
宝箱を開くと光とともに一着の服が浮かび上がってきた。
ランチが服に触れると、更なる光が発せられた。
「うわっ!」
「今のは・・・?なんか服が見えたが」
驚くメンバーをよそに光が収まる。
そこには今までと全く異なる衣装を着たランチが居た。
「うわぁ!ランチ可愛い!!」
メイプルが思わず声をあげる。
それは黒を基調とした前開きで袖繰りが短い胴衣を基本とし、
その下には同じく袖繰りが短い白のブラウスを纏う。
足は黒を基調としたスカートが踝までを覆い、
その上には腰に巻く緑色のエプロンがはためいていた。
ドイツのディアンドルをベースとする服装に、
左手にはランチの二の腕と同じくらいの大きなトレイを持つその姿は・・・
「ウェイトレスさんだー!!」
メイプルが一言が言い表していた。
「おー!」
ランチも思わずくるっと回ってみる。
スカートとエプロンがふわっと舞った。
「「ランチさん可愛いですー!!」」
「似合ってるわねぇ」
「ああ。綺麗だな」
他のメンバーからの評判も上々だ。
「どんな装備なの!?」
「えーと、これかな」
メイプルにせがまれてランチが装備を確認する。
【オリジンシリーズ】
取得した者だけの唯一無二の装備。
取得した者はこの装備を譲渡できない。
【食神のトレイ】
【破壊不可】
【HP+500】
・最大HPが+500される。
【あーん】
・相手にトレイを触れさせると発動し強制的に対面した状態になる。
・食べさせるプレイヤーが選択した料理を相手に食べさせる。
・食べさせられるプレイヤーは食べる以外の行動ができない。
・食べさせられるプレイヤーに以下の効果を発揮する。
<味方プレイヤー>
・付与効果の上昇率・効果時間が2倍になる。
<敵プレイヤー>
・付与効果の上昇率・効果時間が-3倍になる。
・【あーん】をしているプレイヤーとされているプレイヤーは
他のプレイヤー・モンスターからの干渉を受けない。
【食神のボディス】
【破壊不可】
【HP+500】
・最大HPが+500される。
【ウェイトレス】
・【あーん】した味方プレイヤーにスキル【WaitLess】を付与する。
・1つの料理で1回付与される。
【WaitLess】
・消費…付与回数。最大3回までストック可能。ストックは24時間で消える。
・あらゆる行動の予備動作をキャンセルする。
・キャンセル後はニュートラルな状態に戻る。
・しゃがみやジャンプなどの状態は維持する。
【食神のブラウス】
【破壊不可】
【HP+500】
・最大HPが+500される。
【食神のエプロン】
【破壊不可】
【HP+500】
・最大HPが+500される。
【食神のスカート】
【破壊不可】
【HP+500】
・最大HPが+500される。
「うわ・・・」
確認していたサリーが引く。
スキルは少なそうだが単純にHP+2500が尋常ではない数値だ。
そのスキルも見た目はともかく効果は非常に高い。
今後、味方の支援スキルとして大いに活躍するとともに、
敵として食らうと致命的な効果となる料理を食べさせられることから、
最大級の脅威として改めて周りに認識されることとなるスキルだった。
「【WaitLess】か…気になるな。」
サリーは特に【WaitLess】へ注目していた。
攻撃後の隙を消したりと出来ることは多い。
近接での立ち回りを主とするサリーの選択肢がさらに広がる。
「あとで確かめさせて貰って良いかな?」
「わかった!いっぱい【あーん】してあげるね!」
「うっ…スキル使うにはあーんして貰わないといけないのか…」
強さと恥ずかしさのはざまで悩むサリーをよそに、話は続いていた。
<その装備は【食神】たる汝の象徴となる。汝の神としての段階を進めるであろう>
スキル【魔神】が【魔神Ⅱ】に変化しました。
スキル【料理生成】が【料理生成Ⅱ】に変化しました。
【料理生成Ⅱ】
実際の材料に【料理の素】を加えてスキル保有者が料理をした場合、
【付与効果】の効果・時間が2倍になる。
その言葉とともに、ランチが新しいスキルを取得する。
「おー。料理すれば更に良くなるのかな。イズさんに教わらないと!」
「いつでも歓迎よー」
<汝が神として覚醒するに従い、その装備も完成する。精進せよ>
「分かりましたー。ありがとうございますー」
<神として進みし時、魂を手に入れし時、また訪れるがよい。歓迎しよう>
「はーい。ではまたですー。ごちそうさまでしたー」
そして、新しい力を手に入れつつ料理を堪能したランチ達は【食神の間】を後にした。
「美味しかったねー」
「うん!ランチありがとう!」
「どういたしまして―。私も料理とか色々頑張るぞー」
「私も協力するわね。楽しみだわぁ」
「はい!イズさんありがとうございますー」
ギルドに戻る中、ふとランチが気になったことをつぶやく。
「ところで、神様の力ってどうすればいいんだろ」
「なんか神様というか人じゃない相手を探す感じかな」
「あ!それなら1つ知ってる!」
「えっ・・・?」
サリーが答えると、メイプルが思い出したかのように言う。
それができれば苦労しないと考えていたサリーの言葉が止まった。
「ほんとメイプル?」
「うん!私も1つ【神】がついたスキルを持ってるんだよ!」
自信満々に言うメイプル。
そのスキル欄に並んでいるものの1つに、【機械神】があった。
ランチ新衣装もとい装備ですー。
次回はさらなる力を求めてごー。4層の攻略も進みますー。