「さーて、またログインしちゃった」
「今日は、昨日取ったスキル試してみよっと」
せっかくなので行ったことがない方へ行ってみる。
歩いているときにふっと気になったことがあった。
「そういえば、理沙や楓もこのゲームやってるのかな?」
「理沙はやるんだろうな。…まあテスト終わってからなんだろうけど」
そもそも理沙に教えてもらったゲームだ。
それゆえに中々話がしづらいのもあったりする。
「フライングしてる感があるから話題にしにくいんだよね…」
今話すと、明らかに理沙からヘイトが集まりそうな気がしている。
「楓はどうなのかな?今度こっそり聞いてみよう」
…そんな親友は、ランチが最初に行った森の中で、
【絶対防御】【瞑想】といったスキルを取っている真っ最中だったりするのだが、
そんなことはランチが知る由もなかった。
「さて、なんか森に着いたね。まずは装備してステータス確認してみよう」
ユニークシリーズの格好は目立つので、森に着くまでは普通の初心者装備で来ていた。
早速装備をすべて身に着けて、パティシエな格好でステータスを確認する。
name:ランチ
Lv :18
HP :3040(+1000)
MP :10
STR :0(+5)
VIT :0(+4)
AGI :0
DEX :0
INT :0
装備
頭 :食神のシェフハット
左手:食神のボウル
右手:食神のウィスク
体 :食神のコックコート
装飾:食神のコックタイ
:空欄
:空欄
スキル
【超大物食らい】【暴食】【双身】
【食材集合】【相対成長】【食材分割】
【食神の霧】【食材観察】【料理生成】
「おお、これなら戦闘中はHPが3万超えるね。強くなったぞ」
ちなみにトッププレイヤーと比べても数十倍の差があるのだが、
他のプレイヤーのステータスを知らないランチには、
どの程度のHPなのか想像できていなかった。
「MPは少ないなぁ。MPアップのスキルは取りたいかも」
「まあ、とりあえず色々やってみましょー」
暫く森を進むと、モンスターが出てくる。以前も出会った狼だった。
早速攻撃されるが、HPバーはほとんど減っていなかった。
「じゃあ、最初は…【食神の霧】!」
ランチがスキル名を叫ぶと、ランチの周囲から白い霧が一気に広がる。
今回はHPを 100 消費したので、半径1mの空間に霧が広がった。
「これで、狼さんは食材扱いになったと…」
「じゃあ次は…【食材観察】!」
スキルを発動すると、食材となった相手の誰を選択するかのウィンドウが出てきた。
今回は狼しかいないので、狼を選択する。
すると、狼の情報が表示された。
name:フォレストウルフ
HP :50
MP :0
STR :30
VIT :20
AGI :50
DEX :10
INT :10
装備
なし
スキル
【ウルフファング】
「おお、相手のステータスとか見れるんだ。あ、でもスキルの詳細は分からないんだ。」
「そこまで分かっちゃうと筒抜けになっちゃうからかな?
理沙からも、スキルなどの重要な情報は極力教えないように言われているし」
このスキルも、さりげなく強力なスキルである。
初見のモンスターでも相手がどんなスキルを持っているか?は分かる。
また、プレイヤーであればスキルを新しく手に入れたことも分かる。
相手から見ると、対策を立てられやすくなってしまうのだ。
「よーし、じゃあいよいよ…【食材集合】!」
スキル名を叫ぶと同時に、ボウルから光があふれる。
そして、目の前の狼からも光があふれた。
「あれ?集まってこないな」
しかし、光が収まった後も狼に変化はなかった。
とりあえず狼はそのまま近づいて普通に食べておいた。
「ごちそうさま。うーん、なんか条件あるのかな?」
スキル説明を再度見てみる。
【食材集合】
食神の霧の効果範囲から食材をボウルに集める。
相手のVITが消費HPの1/100以上の場合、成功しない。
集められた食材には、耐性無視の1分間の麻痺がかかる。
「VITが高いとダメなんだ。あ、でもいっぱいHP使えば大丈夫なんじゃないかな?」
期待をこめて、ランチは再びスキルを使用した。
「【食人の霧】発動!消費HPは…10000!」
消費HPはなんと10000。対象半径である周囲100mに対して瞬時に霧が立ち込める。
それは森の大半を覆い、一部は草原などにはみ出るとともに、上空も大きく覆われた。
唐突に、半径100mの白色のドームが出来上がる。
そして、それは近くに来ていた一部のプレイヤーも巻き込んでいた。
「え、何!?何これ!?」
「何も見えん!どうなってんだ?」
「イベント?そんな告知あったか?」
オロオロしているプレイヤーをよそに、ランチは次のスキルを発動させる。
「よーし、まずは【食材観察】! おお!いっぱい選択ウィンドウが。100匹はいるね!」
「それじゃいよいよ…【食材集合】!」
ランチがスキルを発動した瞬間、霧が立ち込めているすべての場所でモンスターが消えた。
そして、ランチが巨大化する。
「わわわっ!すごい大きくなってる!えっまだ止まらない!」
その大きさは、森の木々を超え、元の数十倍まで達していた。
白い霧に覆われた森から、巨大なパティシエの姿をした女の子が、姿を現す。
「や、やっちゃった…。これは恥ずかしいよ…」
様々な視線を感じるランチは、恥ずかしそうにモジモジする。
仕草は可愛いが、数十mの大きさだと威圧感たっぷりである。
「早めに終わらせちゃおう!」
ボウルの中を見ると、1000に届こうかという大量のモンスターが麻痺していた。
兎、狼、ムカデ、イモムシ、果ては鹿や熊まで、昆虫・動物勢ぞろいである。
「それじゃあ、早速料理の素にしちゃおう」
麻痺して動けないモンスターたちに、容赦なく泡だて器が襲う。
泡だて器につぶされ、中に入り込み、追い出され、
そのたびに防御・回避不可の割合ダメージがモンスターを襲い、
信じられない量のダメージエフェクトがボウルから巻き上がる。
【料理の素を319個手に入れました】
【スキル「生命循環」を獲得しました。】
最後のモンスターが消滅したところで、アイテムを入手した。
そして、一気にランチの姿が小さくなっていく。
それは、巨大な姿が森へと吸い込まれていくようだった。
「料理の素もいっぱい、スキルも手に入ったけど…失敗したなぁ…。」
「あんな大きくなるなんて…。恥ずかしかった…。今度からは範囲を狭めてやろう…」
元の大きさに戻ったランチは、思わずしゃがみこんで顔を手で覆う。
さすがにあの大きさではいろんな人に見られてしまっただろう。
ちなみに、スキルの特性上、基本は大範囲でやらざるを得ないことに
ランチが気が付くのは、しばらく先のことだったりする。
「ま、まあ料理の素もいっぱい手に入ったし、いろいろ作ってみよう!」
「あと、色々食べてみないと。前にヘンウェンさんと対決したときに、
いろんなもの食べたけど、他にもいっぱいあるし」
「お菓子類があるといいけど。あ、イズさんに聞いてみようかな」
イズに会うべく街の方へ向かうランチ。
そして、呆然と空を見つめるプレイヤー達と、呆然と画面を見つめるスタッフ達が残された。
ということで、ランチさん新スキルお披露目(強制)でしたー。
ボウルに集めなきゃいけないですからね。仕方ないね。
次回はゲーム外な方々のお話ですー。