眠り姫(♂)にとって、子作りは貴族の義務に入りますか?   作:尾張のらねこ

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眠り姫(♂)にとって、子作りは貴族の義務に入りますか?

 

伯爵家嫡男である僕ことユニスは15歳の成人を迎えて、婚約者である同い年で伯爵令嬢のシンシアと一週間後には婚姻を結ぶ予定だった。

 

 

シンシアは領地が隣接した幼馴染で、小さい頃は月に一度は遊ぶくらいの仲良しだった。いまは王都で同じ学園に通っている同級生で、僕の愛する婚約者。

小さくて儚げで可愛らしい容姿の美しい少女。すこしふわっとウェーブした柔らかな髪、笑うとすこし垂れる目元。おまけに魔術を駆使する魔導士で、成績も優秀。年相応の体つきでないことだけが悩み。

 

なんで僕なんかに惚れてて結婚するんだよとよく言われる。まったく同意したい。まあ、物好きというか運命というか、シンシアにとってはそうなんだとしか言いようがなかった。

好意を寄せられているのを疑っているわけではもちろんない。僕もシンシアのことを大好きなので。

 

 

 

そんな僕らの結婚を目前にして、事件は起きた。

 

子供にとっての貴族社会は意外と狭い。

幼い頃からの顔見知りではあったものの定期的に挨拶を交わす程度でしかない別の令嬢が、なぜか僕に横恋慕していたらしい。

僕は伯爵令息にしては珍しいほど、基本的には令嬢にモテたりはしないんだけど。まあ彼女も物好きだったとしか言いようがない。厄介なことに。

 

その令嬢は恋心をこじらせた挙げ句に妖しげな呪いと魔道具に頼り、僕の心を奪おうとして失敗。

奪われたのは僕の身体の自由だった。斜め上すぎる。

 

 

素人が偶然と思いつきで組み合わせたにもかかわらず、それは非常に厄介な代物だった。

 

優秀な呪い師や魔導士、医師を集めていろいろと調べた結果、特殊な呪いのたぐいになっていると結論付けられた。

おそらく自然に解けるまで治療も解呪もできず、いつ解けるかは予測不能。明日かもしれないし、数年後かもしれない。数十年まではいかないだろうと。

数十年もたったら死んでいるかもしれない身としては慰めにもならなかったけど。

 

 

そんな経緯を経て、特に美少年でも男の娘でもない眠り姫(ただし男)が爆誕した。

王子様の目覚めのキスは遠慮したい。本当に目覚めるなら一度くらい我慢するけど。

 

一応、ダメ元でシンシアが唇にキスしてくれたけど、呪いは解けなかった。

まだ若くて美人な僕の母親にもキスされたのは、記憶に封印したい。

 

 

 

さて、なんで眠っているはずの僕がそんな事を語っているのかというと。

実は意識があるんだよね。身体は全く動かないんだけど。

 

最初に認識したのは、婚約者の泣き顔だった。そしてまわりにいる家族。

まぶたは開いてないはずなんだけど、見える。そしてなんか視点の位置がおかしかった。

 

手を握られている身体の感触もあるのに、それを別の角度から見ているような。

そういう夢なのか、幽体離脱だっけ? 身体から霊体だけ外に出ているような。

 

すこしだけなら霊体だけ部屋から離れることもできた。

声も聞こえるしまわりも見渡せるけど、まあ、あまり役には立たないよね。何かを見つけても誰かに伝えることもできないし。

 

 

 

そのまま結婚式は中止になったけど、シンシアと僕との婚約は互いの家族が協議のうえ継続となった。

 

ただし、長期に渡って僕が目覚めなかった場合、婚約解消もありうるという確認と同意があらためてなされた。

シンシアだけは解消など絶対しません! と主張していたが、人の気持ちは変わるものと大人たちはわかっている。結果として、その時点でのシンシアの意思を尊重するという一文が追加された。

 

 

 

本来ならば結婚式だったはずの夜、つまり初夜に、僕の部屋にシンシアは忍び込んできた。

ふわふわした外見に騙される人も多いけど、シンシアは優秀な魔導士で、魔術を駆使して様々なことを行うことができる。

あまり知られていないけど、王国の最強戦力の一人なのだ。

屋敷の警備もいるのに、誰にも気付かれずに貴族の屋敷に侵入して嫡男の部屋までやってこれたりするのもその一つ。

 

次いで、この部屋の空間に対してシンシアがなんらかの魔術を使っていた。綺麗な魔術行使。害意がないのはわかりきっているし、僕も気にしたりはしない。

 

夜なのに学園の制服姿のシンシアを見て、魔術の行使には制服が意外と便利と言っていたことを思い出した。若干だけど増幅効果が付加されているらしい。

月光に照らされる横顔は、なにかの決意を秘めていた。あまり見たことがない彼女の表情。

 

残念ながら延期になってしまったけれども、僕のお嫁さんがかわいすぎる。

早く起きて結婚したい。

 

 

シンシアは僕の横たわる寝台に近づいてくると、そっと腰を下ろした。

 

その細い指先で、髪を梳かれて頭を幾度となく撫でられる。

涙を目尻に浮かべながら、唇に触れるだけの口づけをされる。

胸板にそっと頬を寄せられ、ゆっくりとこすりつけられる。

手を握られる。動かなくて少し冷たくなった指を絡められる。

耳を舐められる。身体を寄せられて、遠慮がちに長い足が絡められていく。

唇が触れ、舌先が押し込むように口の中に入り、息が止まるほどの大人の口づけをされる。

 

 

あれ、なんか違くない?

そう思ったのはシンシアが僕の夜着を脱がせ、彼女も制服を脱いで、下着もすべて床に落としたときだった。

 

それでも裸で寄り添って互いのぬくもりを感じたい。くらいだろうと思っていた僕はまだ甘かった。

だって、身体が動かないということは当然男性の機能も同様なわけで、できるなんて思っていなかったので。

 

有名な格言をご存知だろうか?

 

『魔術に不可能はない』

 

 

 

シンシアは初めてだった。

初心(うぶ)な肉食令嬢って可愛くない?

 

まあ僕も初めてなんだけど。

 

基本的には貴族令息は手ほどきはされても、実際に筆を下ろしたりはしない。結婚前に別の女性に溺れるとか、家庭崩壊からの没落待ったなしなので。

もしかすると一生目覚めないまま童貞で死ぬ覚悟すらしていたので、シンシアが初めてを捧げてくれたことは嬉しかったし感激した。

令嬢が正式な結婚前の相手に捧げる、という覚悟は僕には一生わからないけれど、信頼をもらっていることに胸がじんわり温かくなる。

 

 

身を裂かれた痛みに関しては、しばし味わったあとはシンシアは痛み止めの魔術を行使したようだった。直後からあきらかに様子が変わってくる。

 

一糸まとわぬ姿で僕の身体にすがりつきながら、シンシアは乱れた。

 

僕の身体は、それに応えて子種を何度も吐き出した。溶けるかと思うほど、気持ちがよかった。

それはたぶん、相手がシンシアだったから。

色に溺れるとはこういうことなのだろうか。手も握れず、こちらから口づけもできないのが不満ではあるのだけれども、僕らはたしかに結ばれていた。心も、身体も。

 

 

朝までそうしていたはずなのに、彼女が身支度を終えて僕に服を着せ、空間を戻すと、始める前の時間と変わらない夜だった。月の位置もほとんど変わっていないのが見て取れる。

 

部屋の空間を切り離して、時の流れに干渉する魔術だろう。

僕以外の誰も、ここで起きたことには気づいていない。

 

彼女が優れた魔導士であるのだと、あらためて思い知らされた。

 

 

次の日からも、シンシアは僕の部屋へと忍んできた。

ときおり休みをはさみながら、何日も。

 

徐々に慣れていく色々な行為の中で、僕は女性の身体の奥深さを知った。

 

 

 

ほどなくして、シンシアの妊娠が発覚した。

 

当然ながら、最初は彼女の浮気が疑われた。僕以外の誰かの子ではないのかと。

僕の状態に失望して別の相手に身を任せたのではないか。もしくは知らぬ間に意に反して何者かに乱暴され、それを隠していたのではないかと。

 

シンシアは泣きはしなかったが、泣きそうな顔でしかし凛としてそれを否定した。

 

「わたくしが身をまかせたのは、夫となるべきユニスただ一人です。彼との子です」

 

真偽を判定する魔術でも、それは真であると証明された。

 

 

これはのちの話になるけれども、産まれてきた長男に対して、血筋の正当性を鑑定する手法まで用いて間違いなく僕の息子であると証明された。これは僕の血縁者――例えば父親や兄弟などと交わって子をなした場合でも違う結果が出るので、貴族の間では結果は重要視されるし忖度は一切ない。

 

 

つまりふしだらなことに、婚約者たちは結婚式直前に婚前交渉を行っていたのだ。ということになった。

まあ若いから、そういうこともあるだろうということで、それほど両親たちから問題にはされなかったのが救いだろうか。

 

違うんです。現実はもっとふしだらなんです。

僕は泣いた。

 

 

 

シンシアは正式に僕の妻になった。

 

さすがに子供が産まれるというのに、婚約者のままというわけにもいかない。

結婚式は行わず、籍を入れただけではあったものの、シンシアは僕の家族にあたたかく迎え入れられた。

小さな頃から知っている娘さんで、いまは孫をその身に宿している彼女が、両親に可愛がられるのは当然のことだった。

 

 

数ヶ月後には、シンシアは長男を生み、母になった。

 

一児の母となっても、シンシアは儚げな美少女であり、人を惹きつけた。

跡継ぎをもうけたのだから義務は果たしている。離縁してうちに嫁ぐ気はないかという高位貴族や王族からのお誘い。あるいは快楽を得るためだけの一夜の恋の誘い。

 

当然ながら、シンシアは全部断った。

 

まあ16歳の色気の出た若妻で母乳付きの儚げな美少女とか、属性盛りすぎてて誘う気持ちはわからなくもない。

だが人の嫁に何を誘いかけてくれるのかこの国滅びろ。

 

お誘いを省いてシンシアと無理やり事に及ぼうとしたアホな侯爵令息がいた。魔導士の恐ろしさを知らないのか。

即座に潰されて不能になった彼?は、跡継ぎが望めないという理由で廃嫡になり、平民落ちした。シンシアは正当防衛が認められ、お咎めはなし。

この国はちょっとだけましになった。

 

 

 

子が生まれたあとも、シンシアと僕の間で秘密の夜の営みは続いていた。

シンシアは逆に積極的になったくらいだった。

 

出産後で少し身体の線が崩れているのが恥ずかしいのか、僕に見られるわけでもないのに着衣のままというのが増えた。

いや、見られてるんだけどね。それはそれで。

だが肌が触れあえないのが不満なのか、シンシアはやっぱり裸のほうが好きなようだった。

僕も好きだ。盛り上がってくると揺れる生のおっぱいはいいものなので。

 

 

 

ほどなくして、シンシアの第二子の妊娠が発覚した。

 

今度こそシンシアは浮気及び不貞を疑われたが、前回と同じような経緯をたどり、不貞はないという結論になった。

 

代わりに、性癖が白日のもとにさらされたと思われた。前回もそうだったんじゃないかという疑いとともに。

両親の目はすこし生暖かくなった。

つまり、シンシアは寝て反応のない愛する男性とすることを好むと。

 

それを知った男性陣は微妙な顔をしていたが、女性陣は少し興奮状態にあった。

それがあったか! みたいな。

王国の性癖に、新たな一ページが刻まれた瞬間だった。

 

なお、男性が寝ている女性に行うのは身勝手な行為として忌避されている。逆はいいらしい。

なんでよ。

 

 

 

月が満ち、産まれたのは女の双子だった。

 

自身が小柄なためすこし難産だったけれども、シンシアは嬉しそうだった。

この国では双子はしあわせの象徴とされている。国によっては忌避される場合もある。

第一子が男の双子だと家族の仲が悪い場合に相続面で面倒が起こるから、貴族が忌避するという他国の事情もわからなくはないんだけど。

 

まあうちには関係ない。双子かわいい。

長男もかわいいけど娘たちもかわいい。なにこれかわいい。もちもちしてる。寝てる場合じゃないだろ僕。

 

抱かせてもらった。というか、寝台の身体の脇に置かれただけだけど。

ふわふわしてる。かわいい。

 

 

 

その後も、シンシアは夜の僕との行為をやめようとはしなかった。

まるで、それが唯一の希望であり、義務でもあるかのように。

 

まだ婚約者だったころは小柄で儚げな美少女だったシンシアは、すこしずつ背も伸びて胸も大きくなっていた。清楚さのなかに時折妖艶さを含むような、大人の女性へと変わりつつある。

 

そして、またすぐにその身に僕の子を宿し、今度は男女の双子を産んだ。

 

医学の進歩で出産の危険は減ったとはいえ、母体の命の危険だってある。

なのに、シンシアはその身に何度も子を宿すことをためらわなかった。

無事にその子達の出産を終えたとき、シンシアは僕の名を繰り返し呼びながら安堵のあまり号泣した、らしい。

 

 

 

 

五人の子の父となったその日、僕の身を縛っていた呪いは霧散し、僕は数年ぶりに自分の身体を動かせるようになった。

 

出産の直後に嫡男の身体がもとに戻ったということで、屋敷の中はものすごい騒ぎになった。

もちろん、喜びで。

 

 

これが、眠り姫(♂)が目覚めるまでのおとぎ話の顛末。

 

数年ぶりに目覚めたら婚約者とは結婚していて、五人の愛しい我が子がいる、なんて。

まあ、全部見て知ってたんだけど。

 

これからは、いっぱい抱きしめてあげたい。

 

「おはよう」

「おやすみ」

 

それを愛する人に告げることができる幸せを、僕は天にちょっとだけ感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニスの妻となり、彼との間に四人以上の子をなせば、呪いは消滅しユニスは目覚める』

 

 

それが、婚約者である愛しいユニスが呪いによって眠りについたとき、シンシアが呪いを調べて出た結論だった。

おそらく、他の誰も気づくことはないだろう。解呪の起点となっているシンシア以外には、それを見ることはできない。ある意味、幸運ではあった。

 

自分で導いた結論ながら、目を疑って三度見くらいした。というか自分の頭を疑った。

シンシアが得たそれは、未来視のようなもので確度はかなり高い。少なくとも、シンシアはそうすればユニスは目覚めると確信を持っていた。

 

それにしても、なんだろうこの頭の悪い呪いは。

 

 

 

『(呪われた眠り姫の)ユニスの妻となり』

『彼との間に四人以上の子をなす』

 

この条件を成就させるのは非常に難易度が高い。

達成しなければいけない結果が、前提条件に含まれている。順番が逆なのだ。

 

シンシアの両親も、ユニスの両親も、反対するだろう。

眠ったままでいつ目覚めるかもわからぬ相手と婚姻を結ぶことを容易に許す両親ではない。

せめて結婚して妻の座に収まったあとであれば、なんとでもなったであろうに。

 

解呪の条件をそれと知らせて協力をお願いすればどうだろう?

両家はともかく、他に情報が漏れたら厄介なことになりかねない。

令嬢の献身を強いるような両家を批判し、周囲の家から無理やり婚約を解消されるかもしれない。

 

 

シンシアはあらためて絶望した。

 

無理矢理にでも、ユニスと結ばれるしか道がなかった。

だが、儚げでおとなしく見えるシンシアは、泣いて世をはかなむような貴族令嬢ではなかった。色々と規格外で、無駄に行動力がある。

 

子をなし、それを理由にユニスの妻の座におさまる。そして次の子を産む。

悲壮な決意のもと、シンシアは覚悟を決めた。

 

 

そうして、寝たままの愛するユニスと許可もない行為に及んだ。

 

初めてのときは痛くて泣きそうだったけど、一生に一度のことでもあるのでしばらくはその痛みを味わった。そして、痛み止めの魔術を行使して行為を続けた。

思いついて媚薬的な効果があるらしい魔術を追加したら、慣れていないせいか加減を間違えて大変なことになった。

 

反省はしたが後悔はしていない。

未知を知って、シンシアの世界は変わった。

 

 

ユニスとの行為はすごく気持ちよかったので、あえて可能性の低い日にも通ってしまったりもした。可能性がゼロではない以上、手は抜けないということにして自分を納得させた。

実はそれが正解なのかもしれないしシンシア自身も否定はできない。

 

まずは一人目の子を妊娠して、どうにかユニスの嫁として認められないことには話が始まらない。

あまり時期が遅くなってしまっては、不審に思われるかもしれない。

 

当たりやすい日には気合が入り、すこしやりすぎた。

ユニスが(いと)しすぎるのが悪い。シンシアは反省したが、次の日もやりすぎた。

 

 

シンシアには焦りがあった。

生理が止まり、しばらくして妊娠が確定したときには全身の力が抜けて涙が浮かんだ。

 

ユニスの両親は良くしてくれた。

婚前交渉だと思わせたような発言については、心のなかで詫びた。ごめんなさい。

 

 

産まれてきた息子は可愛かった。ユニスとの子だと思うと、愛情は更に増した。

 

次に産まれた双子の娘も可愛かった。双子であることを天に感謝もした。これで三人。うまくいけば、次の子でユニスを解呪することができるのだから。

 

 

ユニスの知らない間に子供を作り、道具にするような経緯には心が痛んだが、その分は生まれてきた子供を思いっきり愛することで返せば良いと割り切った。

 

なにより、ユニスを目覚めさせることができたなら、誰が不幸になる結末でもない。たぶん。

ユニスが目覚めたあとで思いっきり愛することで詫びる。いや、いまも愛しているけど、もっと甘えてどろどろに溶かすくらいに。

 

無事呪いを解除できたときの、ユニスの視点を想像してみる。

結婚式直前に倒れ、目覚めたら婚約者とは結婚していて数年たち、四人以上の子がすでにいる。

一番甘酸っぱい新婚のときめきはどこへ!?

 

想像したら泣きそうになったが、シンシアは我慢した。

彼は必ず許してくれると確信していたので。

 

 

三回目の妊娠後も、経過は順調だった。無事に育ち、その日を迎えた。

 

ユニスが目覚める条件を満たした子を無事に産み終えた瞬間、ユニスの名だけを何度も何度も繰り返して叫んでいたらしい。覚えていない。

出産直後なのに、目覚めた愛する夫の元へ駆けつけようとしてものすごく怒られたけれども。

むしろなんでそんなに元気なんだと訝しげに見られたことは忘れていない。

 

 

目覚めたユニスに抱きついて、ふんわりと抱き返されたときには、安堵のあまりぐちゃぐちゃになった精神を持て余してしまった。

頭を優しく撫でてもらって、彼の言葉を聞いて、思わず身体の奥がきゅんと疼いてしまったのは一生の秘密にしておきたい。

 

 

その後、ユニスは数年来ずっと寝たきりだったとは思えないくらい急速に回復し、普通に歩き回れるようになった。

もう一度はじめからするようにゆっくりと進めながら、夫婦の営みもしている。落ち着いた彼との行為も、シンシアは好きだった。

もっともっと先になると思っていた、たくさんの子どもたちにも恵まれている。

 

 

シンシアは幸せだった。

 

だから、あえて触れる必要はないと思っていたユニスが寝ていたあいだのことを、寝物語にぽろっとこぼしてしまった。

 

「愛の試練だと思って頑張ったの。その、ユニスの赤ちゃん作らないといけないし、慣れなくて大変だったのだけど」

 

ユニスには呪いの解除の条件は知らせていた。それを達成するために、シンシアが子供を求めて行為に及んでいたことも。

 

愛はあったけど、あくまで子作りが目的だったんですからね! というアピールをしながら、色々な意味で快楽に溺れていたシンシアはそれを隠して清楚に微笑んだ。

初めてのときに使った媚薬効果がある魔術での失敗は、記憶の奥底に封印して本人も忘れていた。

寝ている男性のあれをそれして無理やりするのが好きだとかでも断じてないので。本当に。嫌いでもないけど。

 

もちろん、ユニスにしてきたあれやこれがバレているなどと、毛ほども思ってはいなかった。次の言葉を聞くまでは。

 

 

「その、寝ている間のこと、全部覚えてるんだ……シンシアとの初めても、そのあとも」

 

ユニスは、いつかは告げなければいけないと思っていたので、この機会に怒られておこう、と覚悟を決めてそう告げた。

 

「ごめん。でもシンシアの初めてとか、すごく嬉しかった。可愛かったよ。あと、積極的だった、よね」

 

最後に余計なことを足したユニスは、最も触れてはならないところを的確に撃ち抜いていた。

 

 

シンシアは一瞬間を置いてから顔を真赤に染めると、羞恥のあまり半ば錯乱してユニスに襲いかかった。性的に。

 

「なんで覚えてるの!? やり直して! 上書き! 上書きさせて!」

 

シンシアは魔導士のくせに、わりと脳筋で肉食系女子だった。

 

泣く子と魔導士には勝てない。

ユニスは童貞の設定で初夜にシンシアの処女を優しく奪うことを要求された。血は出なかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

伯爵家の次期当主夫妻は、仲睦まじいと評判である。

 

その結婚間際からの呪い絡みのあれやこれな出来事は、脚色されて劇場で演じられるほどになっている。

もちろん、結論はハッピーエンド。夫は無事目覚め、愛らしい家族を得て、幸せになりました。

ただし子供向けの脚色は、脚本家の頭を悩ませるところだった。どう表現しろと。結果R-15(成人向け)となったのを、誰も責めはしなかった。

 

 

 

伯爵家の次期当主夫妻は、仲睦まじいと評判である。

 

夜になると屋敷では毎晩のように夫人の可愛らしい嬌声が響いているが、遮音魔術で部屋の外には漏れていない。

たまに、別の魔術を夫人が使う日には、さらなる盛り上がりがあるようだ。夫は翌日大変そうだったが。

 

さらに家族が増えていくであろうことも、未来視などなくても皆に予想されていた。

 

 

 

 

 

 

 





シンシア「魔導士は己のためにしか魔術を行使しない」
ユニス「別の意味にしか聞こえない」






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