怪物の名に相応しく、彼女にはちょっと強引に、それでも愛を持って耳かきをしてもらいたいですね。
しかし、この形式を書くのも久しぶりです。今年に入ってリクエスト募集始めたら思ったよりも多くのリクエストを頂けてその制作をしてたので……。リクエストをくださった皆様には誠に感謝しています。
「まったく、マヤの奴はどうしてこう付き纏ってくるんだ」
あいつを振り切った私は疲れた足取りで廊下を歩いている。しつこいんだあいつは。
先日、私はクラシック三冠を達成した。これもトレーナーのおかげだと思っている。そして、三冠を達成した私に特に変わらず接してくるマヤにはまぁ悪い気はしてないが、それはそれとして流石にこうしつこく絡まれると面倒くさいし疲れる。
「……あいつの所にでも行くか」
あいつの所で昼寝でもするか。それか何か食い物でもあればそれでも食わせて貰おう。そう思い立った私はマヤに見つからないうちに移動しようと足早にあいつの部屋に向かって……ん? なんだ?
部屋の前まで来た私の耳に中の声が聞こえてくる。トレーナーと……前に私のスカウトに来たいけ好かないやつか。あいつ、まだトレーナーに何かあるのか? ……イラつく……な。
部屋の扉を開けると、そこでは俯ているトレーナーと、それに嫌悪の視線を向けているあいつが居た。
「ブ、ブライアン!?」
「ああ、良い所に来てくれたねナリタブライアン」
トレーナーの声を遮りそいつは私の前まで来る。そして、ねちっこい視線を私に向けてきた。
「クラシック三冠おめでとう……いや、残念だと言うべきかな。君の才能ならあのシンボリルドルフ同様無敗三冠もできただろう。なのに君はこんな才能のないトレーナーのせいでそれを失った。今からでも遅くない、君は私の元で……」
「黙れ」
口やかましい男の言葉を遮る。耳障りで仕方がない。
「私が誰をトレーナーにするかは私が決める。お前の出る幕はない。わかったらさっさと失せろ。失せなければ力で追い出すぞ」
「な、何を言う! 私は君の為を思って……!」
黙れと言ってるのに更に騒がしくしてくる男の胸倉を掴み、入口まで引きずっていく。そして、部屋の外に放り出す。
「もう一度言う。失せろ。貴様に用はない」
そう言って扉を閉めてしっかりと鍵をかける。外では男が何か騒いでいるが気にするつもりはない。さて……それよりもトレーナーだ。
「それで、お前は何を言いたい放題されているんだ?」
「……あいつの言う事も確かだからな……」
……おい、何を言っているんだこいつは。
「ブライアン、正直分っていたんだ。君は無敗の三冠になれるだけの才能がある。なのに、俺はそれをさせてやれなかった。それでも君が信じてくれるからトレーナーをしていたが……やはり俺には……」
ああ、またこいつはあいつに惑わされているのか……この私のトレーナーをしていて実績もあるのになんでこう自信を無くすんだこいつは。
「……どうやら私のトレーナーは頭が悪いらしいな。それとも、こないだ言った事をちゃんと聞いてなかったのか?」
「え? なんの事……うわっ!?」
こいつを掴み上げ、ベッドに放り投げる。そして、近くにあった耳かきを手に取ると、起き上がろうとするこいつの隣に座って無理やり自分の膝の上に頭を乗せる。
「ちょ、痛い痛い痛い痛い!」
「喧しい。もう一度お前の耳の中をしっかりと掃除して私の声が聞こえるようにしてやるから、おとなしくしていろ」
「わかった! わかったから! 首が折れる! 頭が割れる!」
腰の部分をバシバシと叩いてくるトレーナーに言われて力を緩めると、モゾモゾと体勢を整えたから、それが終わってから改めて頭を抑える。
「まったく……前にしっかりと掃除したはずなんだがな……ああ、また溜まってるのか。仕方がないな」
「いや、掃除は確かにしてないけど、そんな言うほど汚いわけでもないと思うんだが」
ほう、言うなこいつ。私が前に言った事を忘れているくせに、本当によく言う。
「ふん、本当に汚れてないと思っているのか? 少し待っていろよ。カリカリ……カリカリ……」
カリカリカリ……ガリガリガリ……
ベリベリ……ベリッ……ガリッ……
ああ、本当に汚れている。耳かきを入れた先から黄色い塊にぶつかり、奥に進むのを阻害される。こいつ、耳垢が溜まりやすい体質なのか?
「耳かきで順番にガリガリと……ベリッと……早速一個取れたか。次に行くぞ。おい動くな」
「いや、ちょっと痛い……」
「今回は貴様の要望は聞いてやらん。わざわざ二度言うなと言った事を言ったんだからな、許さんぞ」
まったく、こいつが私の言う事を聞いていれば少しは手加減をしてやったのに。
「ん、これも固いな……ガッ……ガリッ……よし、取れた」
固い手ごたえの耳垢も剥がれ、これでようやく音の通りが良くなってきたか。さて……。
「それで、貴様はあの男とどういう関係なんだ? 前にメールを送ってきたのもあいつだろ」
「なんでメールを知って……ああ、いやまぁ……そうだな……あいつはいつも俺の上に居たやつだよ。トレーナーになるための勉強も、トレーナーとしての実績も……全部アイツが上だ」
……ああ、つまり。こいつにとってあの男は劣等感の象徴みたいな物か。バカバカしい、私に指導している時のこいつはどこに行ったんだ。
「はぁ……バカらしいな。つまり、劣等感の象徴であるあの男にあれこれ言われて自信を無くしているだけか」
「いや、だが、実際にお前の才能を生かせれて無いのは事実で……」
「やかましい」
ブチブチと弱音を吐いているトレーナーの耳に梵天を突っ込んでグルグルと回し、それから少し勢いを強めで息を吹きかける。そうして口を閉じたこいつの体を持ち上げ、私の腹に顔を強引に埋める。
「これで無駄口を喋れないだろう。こっち側の耳の中を掃除していくぞ」
蠢くトレーナーを無視して耳の中を確認して……耳かきで垢を掻き出していく。
ガリガリガリ……ガリガリ……
ベリベリ……ベリッ……ガリガリ……
やっぱりこいつは耳垢ができやすい体質なんだろうな。こっちもこんなに汚れているとは。やはりこいつの耳掃除は私が定期的にやってやらなければならないな。
「もご、もごごごごご!」
腹に埋めたままだからくぐもった音しか出ないから、構わず掃除を続けていくが……耳かきで掃除するだけじゃ限界があるか。仕方ない、今度の耳掃除の時は姉貴から耳かき用の道具を借りてくるか。
「カリカリ……じゃないな。お前の耳垢はどれもガリガリだ、まったく」
ガリガリガリ……ガリガリガリ……
ガリガリガリ……ベリッ
むぅ……流石にやりすぎたか。こいつの暴れ具合も大きくなってきたし、この辺りにしておこう。
梵天で粉を掃除し、息を吹きかけて……この辺りで終わらせておくか。さて……。
「ブハッ! ブ、ブライアン! 流石にこれは怒るぞ!」
「ああ、そうだ。お前は怒れるんだ。怒れるんだから、さっきの男にも怒って見せろ」
私を見上げるトレーナーの頭を撫で、目をしっかりと見つめながら言ってやる。どうやらこいつははっきりと何回も言ってやらねばわからないようだからな。
「トレーナー。私はお前がトレーナーになって良かったと思っている。だからあんな奴の言う事に一々気を取られるな。私はお前以外をトレーナーにするつもりはないからな」
そこまで言って……恥ずかしくなってきたから、トレーナーの顔を腹に押し付ける。しばらくトレーナーは動いていたが……程なくして動かなくなった。少し力を緩めてやったら胸が動いてるからちゃんと息をしてるようだな。
「……トレーナー、私はお前以外のトレーナーの指導を受けるつもりはないからな。私が卒業するまで……面倒を見てもらうぞ」