男トレーナーが耳かきしてもらってる時、お友だちはきっとジーーッとてみるんだろうなぁ。と思う今日この頃です。
ある日のトレセン学園。今日のトレーニングを無事に終えた俺とカフェはミーティングルームでのんびりと過ごしていた。常に気を張り続けるのは良くない、こうしたゆっくりとした時間も大切なものだ。
そして、カフェは楽しそうにコーヒーを淹れている。本当に彼女はコーヒーが大好きなんだな。とその表情を見ていると実感する。
「トレーナーさん……どうぞ」
「ああ、ありがとう……うん、旨いな」
カフェから受け取ったコーヒーに口を付け、俺はその旨さに満足な息を吐いた。俺は元々コーヒーなんてインスタントで取り敢えず飲むぐらいしかしてこなかったんだが、彼女が俺の舌に合うように淹れてくれるコーヒーを飲むようになってからは自分でもブレンドする事が増えるようになった。
「トレーナーさん……今日はもう、予定はないんでしょうか?」
「ん? ああ、そうだな……トレーニングをやりすぎても疲労を溜めるだけだし、今日はこれ以上は特に何もないぞ」
カフェの様子を見るにまだ余力はありそうだが、無理をさせて体調を崩させてはいけないからな……って、思ってると、なんか耳かきを手にしてるカフェが見えた。
「では……トレーナーさんの耳かきでもしましょうか。最近……耳のお掃除、されていませんよね。また痒くなるかもしれませんよ……」
「ん? まぁ……確かにしてはないが、別にいいぞ、そんなに頻繁にするものでもないし」
耳かきなんてそんなやるもんでもないし、担当ウマ娘に毎回やってもらうって言うのも世間的によろしくないからな。今回は断ろう。
「でも……トレーナーさんって自分の事にはズボラですよね。担当ウマ娘の体調を気にするなら……自分自身の体調も気を付けるべきではないでしょうか」
「ん、でも、前にもしてもらったしな。流石に何かにつけてやってもらうのも悪いし、今度耳鼻科にでも……うおお!?」
それでもまだ言ってくるカフェに断ろうとしたら突然の浮遊感……いや、ガチで体が浮き上がってる!? み、身動きが取れない!
「では……準備ができましたので、こちらに来てください」
「いや、ちょ、これは俺が動いてるんじゃ……うおおお!?」
そのまま俺の体は空を浮いたまま勝手にカフェの元に移動して、そのまま彼女の膝枕に頭を置かれる。ちょ、これってお友だちの仕業か!?
「それでは、まずは耳の掃除を……今回は蒸しタオルをご用意しました」
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
カフェに温かいタオルで擦られていくと、気持ち良くては~……とおしぼりで顔を拭いた時のような気持ち良さを感じる。
「はー……温かいな……」
「はい……トレーナーさん、気持ち良さそうです。用意して良かった……」
そんな事を言われると、これまでカフェの為に頑張ってきた事が報われたような錯覚を覚えて思わず頬が緩む……いや、カフェがレースに勝つことが一番報われる事なんだけどな。
「トレーナーさんの耳をゴシゴシゴシ……うん、この辺りにしておきましょう」
痛みが出ない範疇で程よく耳が擦られ、温められた耳が空気に触れてヒンヤリとしている中で今度は綿棒が耳の表面を掃除し始めた。
ゴシゴシゴシ……グリグリグリ……
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
べっとりとした汚れが綿棒で絡めとられ、汚れた綿棒が捨てられていく。あー……こうしてみると本当に汚れてるんだな、俺の耳。
「それでは、ツボを指で押して行きましょう」
グッグッ……ギュッギュッ……
グリグリグリ……グリグリグリ……
そう言うと、カフェは俺の耳を包み、ギュッギュッ、グリグリと指圧してきた。ちょうどよい力加減で押してくれるのが嬉しい。
「ほぉ……ふー……」
暫くの間そうしていると、指が離れていき、カフェの体温が離れていくのが名残惜しい。
「さぁ……それでは中の掃除をしていきます」
カリカリカリ……カリカリカリ……
ベリベリ……ゾリゾリ……ズズズ……
耳かきが耳の中を掻いていき、ベリッて音がすると耳垢が剥がれてそのままズズズって引きずられていく。それが痒みを伴ってくるので正直指を突っ込みたい。
「おお、か、痒い……」
「少し……我慢してくださいね。まだ剥がれ切ってないですから……」
途中で中途半端に剥がれた耳垢なんて本当に痒くて仕方がない。は、早く取ってくれ……う、腕が動きそうで……って、う、動かない? ピクリともしない……まさか、お友だちか?
「こう、端っこの剥がれたところに耳かきを差し込んで……ベリベリ……と。はい、取れましたよ」
俺が動けない間に耳垢が剥がれ、ティッシュの上に捨てられる。ようやく痒みが収まった俺は安堵の息を吐いた。
「はー……痒かった……なんか体抑えられてたんだけど?」
「あ……お友だちが押さえてたみたいですね……トレーナーさんの耳の中に集中してたので……私は見ていませんでしたが」
そう言われて周囲を見渡すが、俺はお友だちを見ることができないから普段通りの室内でしかない。
「まぁ……うん、変に動いたら邪魔になるから仕方ないか……」
「はい……それは否定できませんので……あ、耳垢は大体取れたので、反対側をしていきま……なんですか? その視線は」
耳かきが終わったと聞いて思わずカフェに視線を向ける。してもらっていてあれだが、やはり耳掻きは最後にあれをしてもらわないと。
「……では、その……失礼して……」
そう言うとカフェが顔を近づけてきて、耳掃除をされたばかりの耳にカフェの息遣いが聞こえてくる。
「ふ~……ふ~……」
息を吹きかけられ、背筋がゾクッとする。敏感な耳の中をカフェの細い吐息が通っていくのはとても気持ち良い。でも、相当恥ずかしがってるよな……。
「……なぁカフェ。催促した俺が言うのも何なんだけど、そんなに恥ずかしいなら別に耳かき自体やらなくてもいいからな?」
「いえ……それはそれ、これはこれですから……」
そう言ってくれるのは嬉しいし、やってくれるのも嬉しいからこれ以上は何も言わないが……まぁ、嫌ならやらないだろうから大丈夫かな。
「さぁ……反対側、していきましょうか。よっと……」
カフェが俺の上半身を持ち上げると同時に足の方を多分お友だちが持ち上げて、そのまま引っくりかえされてカフェの腹のほうに顔を向ける形になった。
「ちょっと……怖いんだよなぁ。お友だちに捕まれるのって」
「それは……慣れてください。そっちのほうが安全にトレーナーさんを引っくり返せますから」
まぁ、いくらウマ娘の筋力とは言え、一人でひっくり返すのは流石にバランス的な物があるもんな……いや、やれそうな奴は普通にやれそうだけど。
「先程と同じように……トレーナーさんのお耳を蒸しタオルでゴシゴシゴシ……」
ゴシゴシゴシ……ゴシゴシゴシ……
グリグリ……ギュッギュッ……
さっきと同じように耳の外を温かいタオルでゴシゴシと擦られて、タオルの水分と汗を吸ってベットリとした粉を綿棒で絡めとられていき、それが終わってからカフェの指でツボをギュッギュッと押されて耳が熱くなっていく。
「は~~ぁ……カフェの指って、温かいよなぁ……」
「……突然恥ずかしい事……言わないで欲しいです」
横目に見えるカフェの頬が赤く染まっているのを見るともうちょっと言いたくなるが、言いすぎてお友だちから何かされるのも怖いからこれ以上は抑えておこう。
「さぁ、耳の中の掃除をしていきますから……おとなしくしていてください」
「ああ、わかった」
恥ずかしさを振り切るためか、カフェは話を打ち切り耳かきを手にして掃除を始めた。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
小さい耳垢が取られた後に耳の穴が広げられ、カフェの顔が近づいてくるのが気配でわかる。カフェの呼吸が耳に良く聞こえてくる。
「ガリガリガリ……ガリガリガリ……」
「おお……カ、カフェの声がくすぐったい……」
「……我慢……してください」
我慢したいんだが、カフェの声って元々小さいから、耳掃除で敏感になった耳の中にはちょうどこそばゆく感じるんだ。これはこれでゾクッとするんだよなぁ。
「カリカリカリ……ベリッ……あ、これで大体終わりました」
「え、早くないか?」
「その……そんなに汚れてませんでしたから」
先にやった側の耳かきに比べると明らかに早くて思わず聞き返すが、カフェもちょっと困った顔をしてた。どうやらカフェからしても相当予想外だったらしい。
「それでは……行きますね。ふ~……ふ~……」
困惑している間にカフェの顔が耳に近づいてきて、息を吹きかけてきた。
「さぁ……これで掃除はお終いです……お疲れ様でした」
「ん……あー……耳の中がスッキリした。要らないと思ってたけど、やっぱりやったほうがいいのか」
こっち側の耳が思った以上に早かったのが驚きだったが、それでも十分気持ち良くて大きな息を吐いた。は~……気持ち良かった。
「では……トレーナーさん、このままお昼寝してください……ほら、お友だちもそうだそうだって言ってますから」
「お友だちは何を言っているんだ……? いやまぁ、抑えられてるから逃げられないし……このまま休ませてもらうよ」
お友だちがどういう事を言ってるのかはわからないが、体が抑えられて逃げられないのは確実だし、俺は全て諦めて眠気に全てを委ねる。は~……こんな姿、世間様には見せられないよな……。