トレーナーには是非ともデジタルの良き理解者として、共に歩んで欲しいですが、それはそれとして、普段のデジタルの変態さを良く知ってるからこそ、変態じゃないときのデジタルとのギャップも良く理解して欲しいと思う今日この頃です。
俺はどこにでも居る一般的な中央トレーナー。敢えて違うところを上げるとしたら担当ウマ娘が芝でもダートでもG1勝利者と言う変態ウマ娘って所だな。いや、性格がそもそも変態なんだけど、他人に迷惑をかけるタイプの変態ではないので問題はない。あっちこっちで尊死して保健室のお世話になっている? 知らんな。
まぁそんなアホな事は置いといて。今はその変態ウマ娘ことデジタルと一緒にミーティングを行っている。近々行われるレースで出走する他のウマ娘への対策を練っているのだが……。
「と言うわけで……次のレースでの注意すべき相手としては……」
そう言いながら視線を向けると、そこには涎を零しかねないぐらい口元が緩んでいるデジタルの姿があった。こいつ、また変な妄想してトリップしてるな。
そんな俺の視線に気づいたのか、不意にデジタルが口元を引き締める。もう少し早ければ俺も気づかなかったもしれないがな……。
「……デジタル、また逝きかけてたな?」
「う……バレましたか」
俺のジト目に気づいたのか、デジタルは少しの間乾いた笑いを浮かべていたが、諦めたのか、肩を落として沈んだ表情になった。
「ご……ごめんなしゃい……」
「いや、良い。集中力も切れる頃合いだし、いったん休憩にしよう」
こんな事で一々怒っていたらキリがないからな。デジタルが逝きかけるなんていつもの事だし。それに、集中力が切れてきてるのも事実だろう。
と言うわけで、温かいお茶を淹れてデジタルの前に置く。それを手に取ったデジタルは茶を口にして、大きく息を吐いて肩の力を抜いた。そんなデジタルを見ていると、こっちも緊張が解けたせいか、思わずため息が漏れた。
「トレーナーさん……? もしかして、またお疲れですか?」
「ん? ああ、いや。大した事じゃないぞ。だから気にしなくていいからな。フリじゃないぞ、フリじゃないからな」
またデジタルに癒されると言うのも申し訳がないので念のため強めに気にしないように念押ししておく。
「トレーナーさん、まだ行けるは引き返すタイミングってよく言うじゃないですか。トレーナーさんは私の事を気にして過剰なトレーニングを規制するんですから、貴方自身も無理はしないでください」
念のためにと念押ししたにも関わらずデジタルはジト目で俺を見上げてくる。なんとか反論しようとするが、更に圧をかけてくるデジタルに根負けして、俺は白旗を上げることにした。
「……今日のミーティングが終わったら一息入れるよ。それでいいだろ?」
「はい、わかりました」
それでもまぁ、デジタルに手間をかけさせるのだけは回避できそうだ。さぁ、話をミーティングに戻してこの話題を忘れさせるぞ。
「それじゃぁ、レースのミーティングに戻るぞ。特にデジタルが注意すべきは……」
そうして1時間ほどミーティングを行って……大体の事を伝え終えたので、一区切り付けることにする。
「さて……取りあえずはこんなところか。何か質問はあるか?」
「いえ、大丈夫です。後は自室で復習もしますから……」
そう言って道具を片付けているデジタルを見ているとこっちも張っていた気が緩んだのか、眠気が襲ってきたので大きなあくびが出てしまった。まだだ、緩むにはまだ早いぞ。
「トレーナーさん。やはりお疲れですか?」
「ん、いや、大丈夫だ。後でちょっと横になるからな」
心配そうなデジタルに心配させないように返すが、デジタルは不信の目で俺を見てきた。解せぬ。
「えーと……ああ、ありますね。後は……ちょっと待っててくださいねー」
俺の後ろに視線を向けた後にデジタルはそう言って部屋から出て行った。ふぅ……よくわからないが……横になる前に一仕事してしまおう。そう思って書類仕事を続けていると、デジタルが戻ってきた。
「デジタル、どうしたんだ? わざわざ戻ってきて」
「トレーナーさん……休む気やっぱりなかったんですね」
俺が書類を片付けているのをみたせいか、デジタルがため息を吐いてきた。
「いや、この書類書いたらちゃんと寝るから……」
「やらないフラグじゃないですかーヤダー。と言うわけで、問答無用です」
俺の言い訳をバッサリと切り捨てて、デジタルは俺を持ち上げてベッドに運んでいく。なんとか逃れようと抵抗したが……人間の俺はデジタルに勝てるわけがなかった。
「おい、デジタル。なんかデジャブを感じるんだが……」
「奇遇ですね、トレーナーさん。私も感じております。では、耳かきをしていきましょう」
デジタルの膝枕と言うとてもデジャブを感じる状況に、更に頭を抑えられて耳かきまで始められてはデジャブしか感じなくなった。
カリカリカリ……サリサリサリ……
ザリザリ……ゾリゾリ……
外側を耳かきでカリカリと掻かれていって、ティッシュの上に粉が捨てられていくのを横目に見ていると、よくこんなに粉が出てくるなと思わざるを得ない。
「粉をこうして掃除していって……あー……汚れはそんなに無いですねぇ。もう擦っても取れそうにないです」
なんて思ってたらデジタルに言われた事に驚いた。これでもそんなに汚れてないらしい。
「ではでは~……中の掃除……の前に、耳のツボを押して行きましょうか」
「ツボ?」
「はい~、トレーナーさんの事ですからあちこち凝っているでしょうから。少しでも解消できればと思いまして」
以前はなかった出来事に首を傾げる。そう言えば耳にはツボが多くあるって何かで見たっけ……。なんて思っていたら、デジタルの指が俺の耳を摘まんで上から順番にギューッと指圧してきた。
「おお……痛……気持ち良い。温かくなるし……」
「はい~、ここがこうして効くって事はトレーナーさんが疲れている証拠なのですよ。やはりこのまま休んでもらうのが一番ですね」
暫くの間、ツボを押される気持ち良さを味わい続ける。じんわりと暖かくなる耳にデジタルの指が絡みついてくるのが何と言うかこう……ちょっと背徳感を感じなくもない。
「では、そろそろ中の掃除をしていきますね。えーと……はい、ここもササッとしていきましょう」
カリカリカリ……ガリガリガリ……
ズズ……ベリベリ……ベリッ……
なんて事を思っているとデジタルの指が離れ、次に耳かきが中に入ってきた。マッサージでちょっと汗をかいた事で耳の中がちょっとジワッとしているせいか、耳垢もちょっとグシュって感じで剥がれる。
「カリカリカリ♪ ペリペリペリ♪ トレーナーしゃんの耳垢を掃除するのは楽しいですねぇ♪」
「……こんなのが楽しいってのもどうかと思うんだが」
トレーナーの耳かきが楽しいってのはどうかと思うんだよなぁ……いや、これは他人に耳かきをするのが楽しいって事か。デジタルから楽しそうな空気を感じるしな。
「まぁ~……とは言え、耳垢も大体取れましたし~……次はローションを塗っていきますから、動かないでくださいねぇ」
思ったよりも耳かきは早く終わり、引き抜かれた耳かきが横に置かれ、代わりに入ってきた綿棒の先端に付着したローションが塗られていく。
「塗り塗り塗り♪ トレーナーさん、冷たくないですか?」
「あー……大丈夫だ」
冷たい、と言うよりは温い。と言った感じのローションが塗られていく。その適度な刺激をおとなしく味わっていると。
「ふ~……ふ~……」
「う……」
綿棒が引き抜かれた後にデジタルが息を吹きかけてきたので思わず体が反応してしまった。完全に油断してたな。
「うへへ……トレーナーさんが体をビクッてさせるとちょっと可愛いですね」
「いや、男に可愛いはどうだと思うんだが……」
横目で見上げると、デジタルがウマ娘に対して見せるような顔をしていた。おい、涎垂らしたりなんてするんじゃないぞ。
「さて、ではでは、このまま反対側をやっていきましょう。反対向いて貰えます?」
「ああ、わかった」
幸いデジタルの顔つきが元に戻ったので、体を動かして反対側からデジタルの膝枕に頭を乗せる。すると頭にデジタルの手が置かれて、しっかりと押えてくる。
「まずは外側の粉をサリサリっと掃除していきまして~」
サリサリサリ……ザリザリ……
ゾリゾリ……ソリソリ……
耳かきで外側が掻かれ、思わずくすぐったさを感じる。
「ん……くすぐったいな」
「我慢してくださいね~……では、次はツボを押して行きましょう」
グリグリ……ギュッギュッ……
ギューッ……ギューッ……
耳かきが離れ、デジタルの指が耳を摘まんで、ギュッギュッとツボを指圧してきて、耳が熱くなる。
「デジタルの指が耳に絡みついてくるのって……なんかドキドキするな」
「ちょ、トレーナーさん、変な事を言わないでくださいよー。私みたいなのにドキドキする人なんて居ませんって」
……こいつ、前々から思ってるんだが、自己評価が低すぎるんじゃないか? こいつもこいつで十分美少女に分類できると思うんだが。一度しっかり教えたほうが良いか?
カリカリカリ……カリカリカリ……
ゴリゴリ……ズズ……ベリッ……
ツボを押し終わったのか、指が離れ、耳かきが中に入ってきて、汗で多少なりと湿った耳垢が剥がされていく。
「ふむふむ、ふむふむ。うーん……そんなにやりがいがないですねぇ、こっちは」
「そこ、残念そうにしない」
残念そうな顔をしているが、こんなものさっさと終わらせる方が良いんだから、そんな残念そうな顔をするな。
ヌリヌリ……ペチャペチャ……
ヌリヌリ……ヌリヌリ……
そうこうしているうちにローションが塗られていき、耳の中がヌルヌルしている中で綿棒が引き抜かれ……これは来るな。
「ふー、これでローションも無事に塗り終わりました。さて、それでは最後、行きますよー」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
覚悟ができていたから、今度は体が動くこともなくこれでようやく耳かきが終わった。
「ふぅ……デジたん、トレーナーさんのお耳の掃除、達成です」
「ん、そうか。それじゃぁ俺はこのまま寝るよ……お休み……」
どうせ逃げようとしても抑え込まれるのは目に見えているので、そのまま目を閉じると……あれ、なんか……意識が遠のいて……デジタルの体温しか感じないよう……な……。