どういう内容での逆なのかと言う指定はなかったのでこの形で書きました。たまにはこういう形で書くのもいいですね。
トレセン学園。その生徒会では日々数千人を超える生徒、教員、その他の職員等が活動しているこの学園において生徒会にもまた多くのウマ娘が在籍し、日々活動している。
その中で飛びぬけているのは勿論無敗三冠であり、七冠のウマ娘であるシンボリルドルフ。そして副会長はオークスウマ娘のエアグルーヴ、三冠ウマ娘のナリタブライアンが居る。
最も、ブライアンは生徒会活動には熱心でいない為、ルドルフを直接支えるのはほとんどがエアグルーヴである。
そんな彼女だが、今日も生徒会室にて、ルドルフの隣で共に書類仕事を片付けている。当然彼女達にもプライベートや勉学、レースの練習などがある為、補佐する為に多くのウマ娘がいるのだが、今日は偶然にも、二人しかいなかった。
(会長……今日も素晴らしい書類捌きだ……が)
そんな彼女は仕事の合間に時折ルドルフの方に視線を向ける。大人顔負けの仕事ぶりに、彼女の中でルドルフの評価は常に高まり続けているのだ。だが、常に見ているためか、同時に今日の彼女はルドルフの異変にもいち早く気付いた。
(おかしい、今日の会長の仕事ぶりは少々精彩を欠いている……もしや、疲れているのか?)
考えてみれば、生徒会の会長、七冠ウマ娘としてのトレーニングやレース。名家シンボリ家の者としての責務と、恐らくこの学園で彼女以上に忙しいウマ娘はおらず、もしかしたら全職員と比べても彼女以上に忙しい者は居ないかもしれない。
(……当然の事に気づかないなんて……私は阿呆か? 会長を一番見てきているのは私だろう)
その事に気づき、エアグルーブは内心で自分を責める。それによって書類を処理する手が止まり、ルドルフがそれに気づいた。
「エアグルーヴ、どうかしたかな?」
「いえ、私は大丈夫です。それより会長。お疲れの様子ですしいったん休憩にしましょう。今は急ぎの仕事もないですし」
「おや、私はまだ大丈夫だよ。このままなら明日の仕事も……」
「会長」
ルドルフの言葉を遮り、エアグルーヴが呼び掛ける。その視線を受け止め、ルドルフはしばし考えた後にペンを置いた。
「そこまで言われては逆らうわけにはいかないな」
「ありがとうございます。それではお茶を淹れてきます」
ルドルフを説得できたことに満足感を覚えつつ、エアグルーヴは紅茶とお茶請けを用意して、ルドルフの前に置く。その時、ふと彼女の視界にルドルフの耳が映った。
(ん? 少し……汚れているか?)
ルドルフに気づかれないよう、さり気なく視線を向けるエアグルーヴ。そうしてみると、普段よりもルドルフの耳の毛並みが悪く、粉のようなものが見え隠れしているのに気づいた。
「ん? どうかしたかな?」
「いえ、なんでもありません」
流石に視線に気づいたルドルフに問われ、エアグルーヴは取り敢えず誤魔化して、自分の席で紅茶に口を付ける。そしてしばしの間二人はティータイムで気分を整えていく。
「……会長、実は最近少々耳かきの練習をしてまして……良ければ、会長に成果を評価して欲しいのですが、宜しいでしょうか?」
「ん? 初耳だな。だが、私で力になれるなら、喜んでなろうじゃないか」
「ありがとうございます」
恐らく普通に提案しても断られるだろう。そう考えたエアグルーヴはルドルフの気質を利用した。頼られることに慣れているルドルフはエアグルーヴの言葉に快く承諾する。
「では会長。こちらへどうぞ」
耳かきを手にしてソファーに移動したエアグルーヴは、自分の膝を叩く。それを見たルドルフは、穏やかな笑みを浮かべながらソファーに横になり、エアグルーヴの膝の上に頭を置いた。
「では、失礼します」
「ああ、宜しく頼むよ」
エアグルーヴはまず、ルドルフの片耳を手で包み、触診でルドルフの耳の様子を確認する。そして、凝り固まっている部分をじっくりと揉んでいき、凝りを解していく。
「ん……エアグルーヴ、耳かきじゃなかったのかな?」
「耳かきの前にまずはマッサージで耳垢を取りやすくします。それに……会長の耳は思った以上に凝っていますね。やはり疲れが溜まっているのではありませんか」
「はは、そんなつもりはなかったのだがな」
エアグルーヴの指摘にルドルフは苦笑を浮かべる。それに心が痛む事を感じつつ、エアグルーヴはマッサージを続けていく。
「グリッ……グリッ……グリッ」
「ん……ん……ぁ……」
エアグルーヴのマッサージが続いていくと、ルドルフの口から甘い声が漏れ出てくる。普段は聞くことのない言葉にエアグルーヴは内心でもっと聞きたいとすら思いつつ、マッサージを続けていき、程なくしてマッサージを終える。
「マッサージはこの辺りにしておきましょう。汗もかきましたし……汚れも浮き上がってきましたのでこのまま掃除をしていきたいと思います」
「ん……うん、頼むよ」
マッサージしていた手を離し、耳かきを手にしたエアグルーヴはそのままルドルフの耳の汚れを掻き取っていく。
カリカリカリ……カリカリカリ……
ガリガリガリ……サリサリサリ……
「カリカリ……サリサリ……会長、どうですか? 痛くはないですか?」
「うん……大丈夫だよ。気持ち良くて……癖になりそうだ」
「そう評価してもらえるのは幸いですが……まだ外側の掃除の途中ですから」
ルドルフに褒められ、笑みを浮かべるエアグルーヴ。そのまま掃除を続けて行く。
カリカリカリ……サリサリサリ……
サリサリサリ……サリサリサリ……
「ふぅ……さて、この辺りにしておきましょうか」
そう言うと、エアグルーヴは水分を吸ってドロッとした耳垢がこびりついている耳かきをティッシュで拭い、更に耳の外側をタオルで軽く擦っていき、残っている汚れをぬぐい取った。
「ふぅ……気持ち良いよ、エアグルーヴ。これなら、中の掃除も期待して構わないかな?」
「会長が期待してくださるなら、それに応えるだけです。では、始めていきます」
汚れを拭った耳かきをルドルフの耳の中に差し込んでいく。浅い部分から順番に耳垢を引っ掻け、剥がして行こうと奮闘する。
ガリガリ……ゴリゴリ……
ザリザリ……ベリッ、ベリッ……
「会長の耳垢は……中々手強いですね。少し力を入れますが……痛かったら言ってください」
「ああ、わかった。その時にはちゃんと言うよ」
想像以上の耳垢の固さにエアグルーヴは力加減に気を付ける。ウマ娘の力なら多少力を入れれば耳垢如きすぐに取れるが、それでルドルフに痛い思いをさせては本末転倒なのだ。
「カリ……カリ……」
慎重さを表すような、囁くようなオノマトペ。その声の細さをルドルフは敏感に感じ取り、耳を震わせる。
「会長? 痛かったですか?」
「ん、いや、大丈夫だよ。続けてくれるかな」
会長に促され、エアグルーヴは先程と同じように耳かきを続けていく。力を入れ過ぎず、それでいて固い耳垢が剥がれるように力を籠め、少しずつ耳の掃除を続けていく。
「カリ……カリ……ペリ……ん、大体……取れてきました……ね」
「うん……そう……だね」
その甲斐があってか、掃除は徐々に進んで行き、ルドルフの耳の中が綺麗になっていく。そして、最後の耳垢を剥がし終わり、ホッと一息を吐いた。
「ふぅ、これで耳垢は全部取れました。それでは、少し失礼しまして……」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
掃除を終えたルドルフの耳の中にエアグルーヴが息を吹きかける。細く長い息がルドルフの耳の中を通っていき、その感覚にルドルフは僅かに体を震わせる。
「ふぅ……こそばゆいな」
「すみません。ですが、やはりこれはお約束という物ですので……さて、と。それでは反対側もしていきましょう」
片側の耳かきが終わり、ルドルフの目に眠気が纏わりついていく。エアグルーヴはそれに気づきながらも、まだ寝る事は無いだろうと判断し、残りの耳の掃除を始める。
「会長の耳の凝りをグリグリ……ギュッギュッ……グッグッグッ……」
モミモミ……グリグリ……
ギューッ……ギューッ……
「んん……あ……そこ、気持ち良いな……」
「はい、これだけ凝っていますから……少しのマッサージでも、効果があるようですね。さぁ、マッサージはこの辺にして、耳かきをしましょう」
カリカリカリ……カリカリカリ……
サリサリサリ……ゾゾゾ……
「ん……んん……ああ……気持ち良いな……」
「そう言って頂けて幸いです。後はタオルで拭って行って……さぁ、外側もこれぐらいにして、中をしていきましょうか」
ガリガリ……ガリ……ガリガリ……ガリ……
ゴリ……ゾリッ……ズズ……ガリガリ……ガリ……
「やはり……会長の耳垢は固いですね……慎重に……慎重に……」
そうして耳垢の掃除を続けていくエアグルーヴ。慎重な手つきながらもようやく耳かきを終えた彼女は息を吹きかけようと顔を近づけ……。
「……会長?」
気づくと、ルドルフの体から力が抜けていて、口からは穏やかに寝息を立てており、目は優しく閉じられていた。
「……ふぅ、やはりお疲れなのですね、会長。他の者には休息も大事だと仰っているというのに……」
耳かきを置き、タオルで汚れを拭った後に手持ちの癖で耳の毛を整えていく。それが終わってもまだ起きる気配のないルドルフの頭を撫でながら、エアグルーヴはルドルフの寝顔を見続ける。
「……穏やかな寝顔ですね、会長。これだけ穏やかなのは私の事を信用して下さっているからですか? でも……貴女はきっと、他にも同じような顔を見せられる相手がいらっしゃいますよね」
シリウス、クリスエスと言ったシンボリの面々。ラモーヌのようにルドルフと対等に話せる相手、テイオーやツヨシと言った、ルドルフを慕い、ルドルフもまた慕っている相手。きっと、彼女達相手にもルドルフは今と同じような顔を見せられるだろう。だが……。
「今は……今だけは……貴女は、私だけのものです。他の誰でもない……私だけのものですから……」