ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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フジタキで耳かきを聞きました。今回はaozakana様(https://syosetu.org/user/442523/)のリクエストとなります。

フジタキはウマ娘のローディング画面のネタしか知らなかったので改めて調べてみましたが、作品も少なく、割とどう書こうかと悩んだ結果、割と無難な内容となりました。

追記
これで最近のリクエスト作品ラッシュはひと段落となります。かなりのリクエストを頂き、作品を書けた事は良かったです。ただ、やはりリクエスト作品に対してコメントを頂けないケースがいくつか出てきている為、その部分は非常に残念に思う今日この頃です。


フジタキ

 アグネスタキオンの実験室。そこではタキオンが日々怪しげな薬を作り、実験と称して他人に飲ませている。

 

 それは学園で広く認知されている事であり、それでもなおこの実験室に訪れる人物は限られる。例えばそれは発光しているトレーナーであり、タキオンに懐いているスカーレットであり、タキオンに苦情を言いに来たカフェであり、発光の危険を冒してもタキオンの薬を求める一般ウマ娘であり、そして……。

 

「やぁ、タキオン、ちょっと良いかな?」

 

「おや? これはこれは麗しの寮長様。一体何の用なのかな?」

 

 今タキオンの実験室を訪れているのはフジキセキであった。普段二人の間に特別濃い関係と言うのはなく、時折タキオンがフジに薬を飲ませようとしたりするのを注意されるぐらいである。故に、フジの方からタキオンに尋ねてくるのは珍しいと言える。

 

「何、ちょっと君に関して良くない噂を聞いてね。君、この研究室に篭って何日目になるのかな?」

 

「ん? ふーむ、何日だったかな。ちょっと調べたい物が溜まってたし、モルモット君が海外に視察に行っている間に片付けようと思ったんだったな……えーと……」

 

顎に手をやり考え込むタキオン。その様子を見たフジキセキは苦笑を浮かべながらタキオンに近づく。

 

「ほら、そうやって考え込む程度には研究室に引きこもってるって事でしょ? 毎晩ここから怪奇音や異臭がするって苦情も出てるし、君自身の健康にも良くない。寮長としては流石に見過ごすことはできないよ」

 

「ふーむ、言われてみれば心当たりがなくもない。だが、まだまだ実験したいことは沢山あるんだ。悪いけど、実験をストップしろと言うのは聞けないねぇ」

 

「はは、思った通りの言葉だね。だから、ちょっと勝負をしないかな? 私がこの勝負に勝ったら、君には大人しくしてもらうよ」

 

「ほう? 君からそう言う言葉が出てくるとはね。だが、君が最も得意なのはマイル。そして私の得意とするのは中距離だ、レースをするには少々問題があると思うがね」

 

「誰がレースで勝負って言ったかな? 勝負の内容は……これだよ」

 

 そう言うとフジキセキはタキオンの両肩に手を置くと、そのまま軽々と持ち上げる。ウマ娘の腕力ならば数十キロ程度の体重を持ち上げる事も容易く、思いがけぬ行動に目を見開くタキオンを他所に、フジキセキはソファーまでタキオンを運ぶと、そのまま座らせ、隣に自分も座った後にタキオンを横にして自分の膝の上に頭を置かせた。

 

「ふむ……あまりに予想外の行動に驚かざるを得ないね。これは何の勝負なんだい?」

 

「耳かきをしたら迷走神経が刺激されて眠くなるって言うのは知ってるよね? これから君の耳の掃除をするから……最後まで起きてたら君の勝ち、途中で寝落ちしたら私の勝ちだよ」

 

「それはそれは……随分と強引な勝負内容だ。君がそう言う事を仕掛けてくるとは思っても居なかったよ」

 

「まぁまぁ、たまには付き合ってもくれても良いんじゃない? ほら、始めるよ」

 

 そう言うと、フジキセキはタキオンが何かを言う前に彼女の耳を摘まみ、マッサージを始める。暫くの間不健康な生活を送っていたタキオンの耳は凝りで固くなっており、フジキセキも少々力を入れてマッサージをしていく。

 

「ん……ん……これは耳掃除になるのかね?」

 

「掃除の前の準備かな。こんなに凝っているんだから、解している間に十分体温が上がりそうだね」

 

 グリグリグリ……グリグリグリ……

 

 ギューッ、ギューッ……グリグリグリ……

 

 凝り固まった耳の筋肉を解しているうちに、滞り気味になっていた血流が促進されていき、熱を持った血液が耳の中を循環することによって上昇する体温によってうっすらと汗が浮かび上がり始め、それによって水分を含んだ汚れが浮き上がっていく。

 

「あー……やっぱり汚れが多いようだね。それじゃぁ……マッサージもやりすぎると痛くなるだけだから、この辺りで掃除をしていこうか」

 

「う……ん。そうしてくれるとありがたいかな」

 

「じゃぁ、耳かきを持ってと……」

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 浮かび上がった耳の汚れを器用に搔き集め、ティッシュに捨てていくフジキセキ。

 

「うーん、耳の垢……だけじゃなくて、埃とかも多いのかな。もうちょっと部屋の掃除はしておいた方が良いよ」

 

「ふーむ、最近はデジタル君もスカーレット君も忙しくてここに来てなかったからねぇ。確かにあの二人に頼りっぱなしと言うのも良くはないか」

 

「……同室の子や後輩に頼り切りは流石にダメだと思うよ」

 

 タキオンの言葉に呆れながらも掃除を続けるフジキセキ。やがて大体の汚れを取り終え、耳の毛も整えた彼女は次に耳の中の掃除に着手する。

 

 カリカリカリ……ガリガリガリ……

 

 ガリガリ……ガリガリ……ベリベリ……

 

外を掃除している時よりも重く、鈍い音、そして耳かきから確かな手ごたえが伝わってくる。それに対してフジは苦笑を浮かべる。

 

「タキオン、ちょっと思った以上に汚れてるみたいだけど。少しは耳の手入れもしなよ」

 

「ふーむ……前にスカーレット君にしてもらったんだけどねぇ……」

 

「だから、後輩にお世話になりっぱなしなのはどうかと思うよ」

 

タキオンの言葉にツッコミを入れつつも、フジは掃除を続けていく。時折取れる固い耳垢の時にはタキオンは体を多少固くして反応を示すが、それ以外の時には徐々に耳の力が失われていき、倒れそうになっている。

 

「あれれ、もう眠くなっているのかな? 無理してるって事だよ」

 

「うう~ん……いや、これぐらいなら寝るほどじゃないよ」

 

 そう返すタキオンだが、既に瞼が重くなってきていた。それに気づいたフジキセキは口元の笑みを浮かべながら、次の掃除に取り掛かる。

 

「うーん、それじゃぁ反対の掃除をしていくね。我慢できるかな~?」

 

 モミモミモミ……モミモミモミ……モミモミモミ……

 

 グリグリグリ……ギュッギュッギュッ……グー……

 

「こっちも凝ってるねぇ。もうちょっとちゃんと手入れしないとダメだと思うけど」

 

「う~ん……そこまで言われるとちょっと気になってしまうかなぁ」

 

 そんな事を言っている間に耳のマッサージが終わり、フジキセキは耳かきを手にする。

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 サリサリサリ……ザリザリザリ……ザリザリザリ……

 

「粉に薄い汚れに……この際だし、全部綺麗に掃除しちゃおうか」

 

「うーん、別にそんなに……しなくていいんだがねぇ……」

 

「別に良いじゃないか。ほら、カリカリカリ……♡」

 

「くぅ……」

 

 フジキセキが殊更甘い声で囁きながら掃除していると、タキオンの口から先程までは出てきたことのない甘えたような声が上がり始める。

 

 ガリガリガリ……ガリガリガリ……ガリガリガリ……

 

 ゴリゴリ……ガリガリ……ベリベリ……

 

「……もしかして君って大きい耳垢が作られやすいのかな?」

 

「ふーむ、そう言う体質では……ふぁ……ない……はず……」

 

 そうして耳の中の掃除をしているフジキセキがふと気づくと、タキオンの瞼は完全に閉じられており、口からは穏やかな寝息を立てていた。

 

「あらら……まだ途中なんだけどね。まぁ、勝負は私の勝ちみたいだね」

 

 苦笑を浮かべながら、フジキセキは耳かきを横に置いて、タキオンの頭を撫でる。

 

「問題児とは言え、君も私が面倒を見るべき寮生である事は変わらないんだから……もうちょっとおとなしくしていて欲しいかなぁ」

 

 その苦笑交じりの、割と本音の囁きは、タキオンの耳にこそ届くものの、脳はそれを感知することはなかった。

 

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