いやぁ、やっぱり好きですね、この組み合わせ。タキオンには子供にベッタベタになって欲しいですし、ダスカには両親に存分に甘えて欲しいです。
私、ダイワスカーレットはこのトレセン学園に通っている一人のウマ娘。多くのウマ娘が居る中で、一番を目指して毎日努力している。
幸いなことに良いチームに所属できて、先輩達にも……それと、認めたくはないけど、ライバルにも恵まれていて、とても充実した生活を送っている。ママから貰ったこのティアラに恥じるような事は全然してないわ。
でも、私が充実した学園生活を送れている理由はもう一つ……それは、タキオンさんのおかげ。
初めて会った時には不意に抱きしめられて驚いたけど、タキオンさんの言う通り、なんだか他人の気がしなくて、私も良くタキオンさんと一緒に過ごすようになったの。
凄いのよ、タキオンさんが作ってくれた栄養剤を飲んでると、体に力が漲ってきてトレーニングが捗るの。やっぱりタキオンさんは凄いウマ娘なのよね。でも、タキオンさんのトレーナーさんがいっつも発光してるのはなんでなのかしら?
そんな事を考えながら、私はタキオンさんの研究室に足を向ける。今日は新しい栄養剤を受け取りに行く日なんだけど、いっつもタキオンさんにはお世話になりっぱなしだから、今日は私がタキオンさんのお世話をしたいのよね。でも、何ができるかしら……。
とと、そう考えている間に着いちゃった。
「タキオンさーん、お邪魔します」
「おや、スカーレット君、よく来たねぇ。新しい栄養剤はちゃんと用意しているよ」
私が入るとタキオンさんは一週間分の栄養剤を渡してくれた。
「ありがとうございます、タキオンさん。いつもすみません」
「いやいや、私がやりたくてしている事さ、気にしないでくれたまえ」
タキオンさんはそう言ってくれるけど、このままお世話になりっぱなしなるわけにもいかないから、私はタキオンさんの後ろに回って両肩に手を置いた。
「いつもお世話になってますから、今日は私にタキオンさんのお世話をさせてください。ほら、肩も凝ってるじゃないか」
「あ……あ"あ"それはちょっと……効くねぇ……」
肩を揉んでいると、タキオンさんの口からパパにマッサージしてあげた時の声に似たような声が出てきた。やっぱり、タキオンさんも疲れが溜まってるよね。揉んでる感触も、石……とまでは言わないけど、明らかに固いし。
「こことかどうですか? それとも、この辺りですか?」
「ん"ん" あー……そこそこ……あ"あ"あ"」
うふふ、タキオンさんの気持ちよさそうな顔を見てると私も嬉しくなっちゃう。ピコピコと耳も動いてて、本当に気持ち良さそう……あれ?
「タキオンさん、ちょっと失礼しますね」
動いている耳に顔を近づけてみると、粉状の汚れがいくつか見えた。タキオンさん、耳の手入れちゃんとしてないのかしら?
「タキオンさん、耳の手入れってちゃんとされてますか?」
「ん? んー……いや、最近はあまり手入れしてないねぇ。モルモット君もカフェの付き添いでトレセン学園を離れているからね」
そう言えば、タキオンさんって基本的にトレーナーさん任せにしてるんだっけ。それじゃぁ、今日は私がその分もお世話してあげなくちゃ。
「それじゃぁタキオンさん。このまま耳かきもしましょうよ。私、耳かきも上手なんですよ」
「いやいや、別にそこまでしてもらわなくても……」
「ね? タキオンさん!」
「……君のその圧の強い所は、本当に誰に似たんだろうねぇ」
タキオンさんが了承してくれたので耳かきの場所を聞いたら、タキオンさんは持ってきてくれたから、早速やっていくわよー。
「タキオンさん、どうですか?」
「ふむ……寝心地は悪くないねぇ。まぁ、君の立派なトモにいちゃもんを付ける気は更々ないのだがね」
ベッドに腰掛けた私の膝の上でタキオンさんがこちらを見ながら頭を置いてくれている。さあ、やっていくわよ。
「まずは……タキオンさんの耳をグッグッ……ギュッギュッ……」
「ああ……良い力加減だよ、スカーレット君」
タキオンさんの耳をモミモミとしていると、タキオンさんの顔が蕩けてきて、満足そうに息を吐いて……あー、見てるだけで私まで幸せになっちゃう。
「えへへ、タキオンさん気持ち良さそう。こことか、こことかどうですか?」
「うん……君の指が自分の耳に絡みついているだけでも気持ち良いからね……はぁ~~……」
暫くの間タキオンさんの耳に指を這わせ、凝っている部分や、耳のツボの部分をギューッ、ギューッと指圧していく。柔らかくて温かいタキオンさんの耳を触ってると、なんだか頬ずりしたくなっちゃう。
「ん、スカーレット君、ちょっと痛いよ。流石にやりすぎじゃないかい?」
「え? あ、ご、ごめんなさい!」
いけない! タキオンさんの耳を揉むのに夢中になっちゃった。気を付けないと。
「怒ってはいないよ。でも、次は気を付けてくれたまえよ」
「は、はい。頑張ります!」
気合を入れ直してタキオンさんの耳のマッサージをしていって……うん、これぐらいね。
「タキオンさん、そろそろ耳の掃除をしていきますね」
「ああ……頼むよ、スカーレット君」
はぁぁ……タキオンさんがちょっと眠そうにしてて……ちょっと可愛いかも。
「まずはこっちの耳から……外側の汚れを……カリカリカリ……♪」
オノマトペを囁きながら耳かきを動かして、タキオンさんの耳の外側を掃除していく。うふふ、タキオンさんの耳が綺麗になっていくのは楽しいわね。
「カリカリカリ♪ カリカリカリ♪」
「……楽しそうだねぇ、スカーレット君。別にそんなに楽しい事でもないだろう?」
「そんなことありません! タキオンさんの耳が綺麗になっていくのはとても楽しいです!」
もう、タキオンさんはもっと手入れをすればいいのに。ほら、耳の外側の掃除が大体終わって、綺麗になった耳が素敵なんだから。それじゃぁ、このまま中をやっていきましょう。
「それじゃぁ、中の掃除もしていきますね。何かあったら言ってください」
「ああ、わかってるけど、君なら大丈夫だろう」
ふふ、信用してくれるって事ね。頑張らないと。
「ガリガリガリ……カリカリカリ……」
「ズリズリズリ……ベリベリ……ベリベリ……」
オノマトペを囁きながら、タキオンさんの耳の中を掃除していく。黄色く固まって、こびりついている耳垢を少しずつ剥がしていき、都度都度タキオンさんの顔を見て、痛くないか確認していく。
「……スカーレット君。別にそんなに顔を見つめてこなくても、痛かったらちゃんと言うさ」
「はい、わかりました」
見過ぎたのかタキオンさんにそんな事を言われちゃった。いけないいけない、集中集中、
カリカリカリ……ペリペリ……
ズズ……ズズ……ガリガリガリ……
けっこう汚れが溜まってたわね。固くこびりついてるのや、細長く剥がれるのとか。やりすぎもダメだけど、タキオンさんはちょっとやらなすぎかも。次はもっと、道具を揃えてちゃんとやってあげないと。
「えーと……はい、これで大体取り終わりました。本当はローションを塗ったりとかしたかったですけど……」
「ふむ、そんなに汚れてたかね? あまり自覚はなかったんだけどねぇ……」
私の言葉に少し考えこんでいるタキオンさんを見ていると、ふと悪戯心が湧いてきて、タキオンさんの耳に顔を近づけるとそっと息を吹きかけた。
「ふ~……ふ~……」
「ひゃっ!? ス、スカーレット君……いきなりは反則じゃないかな?」
「ご、ごめんなさい、タキオンさん……♡」
可愛い声を上げてこちらを見つめるタキオンさんの普段見ないその表情に、なんだろう……ゾクゾクしちゃう♡ もっと見たい……かも。
「え、えーと、それじゃぁ反対の方もやっていきますね」
「あ、ああ。この際だからお願いしようか」
湧き上がる心を隠して、反対の方の耳かきを始める。
「カリカリカリ……ソリソリソリ♪」
「……なんだか、さっきよりも楽しそうじゃないかな?」
「え、そんなことないですよ♪」
タキオンさんの耳の外側の汚れを掻いていって、乾いた粉状の汚れを落としていって。
「カリカリカリ……ガリガリガリ……♪」
「ゴリゴリ……ペリペリ……♪」
「んっ……ちょっと痛かった……かな」
「あ、ごめんなさい!」
耳垢を剥がした時に涙目になってこちらを見上げるタキオンさん。申し訳ないって思うと同時に、やっぱり心がちょっと昂って……。
「ふ~……ふ~……」
「ん……覚悟しててもくすぐったいねぇ」
今度の息の吹きかけは覚悟されてたこともあって、可愛い声が聞けなかったわ。ちょっと残念ね。
「それじゃぁ……タキオンさん、このままお昼寝しちゃいましょう♪」
「いや、そこまでは流石にね。ほら、起きるよ……」
「ダ・メ・で・す♪」
「……本当に、君の押しの強さはどこから来ているんだい?」
笑顔で言い切ると、タキオンさんは大きくため息をついて……あ、目を閉じてくれた。そのまま暫くの間タキオンさんの手を握っていると……ふふ、寝息が聞こえてきたわね。
「……可愛いなぁ、タキオンさん♪」
普段見ないタキオンさんの驚いたり涙目になった時の表情や、可愛い声に心の高鳴りを感じちゃった。でも、それ以上に今は、穏やかに寝息を立てているタキオンさんを見ていると……。
「……パパみたい♪」
勿論タキオンさんとパパは別に似てはいない。でも……でも……タキオンさんを見ていると、パパと同じような安心感を感じちゃう。タキオンさんが私の事を他人だと思えないって言ってたように、私も……。
「……パパ、いつもありがとう、大好きよ♪」
聞いているはずもない、聞こえているはずもない。むしろ、聞かれたくはない言葉。でも、そう囁かずにはいられなかった。