ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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フジキセキで耳かき(地の文あり)を書きました。

ゲノハラの元ネタの発言をした事で有名な彼女ですが、実際ウマ娘の嗅覚や聴覚ってどれだけ人間と違いがあるんでしょうね? 二次創作では色々とありますけど、公式でありましたっけ?

それはそれとして、王子様系女子に、君の前では女の子になっちゃう系の発言をされるのって良いと思いません? 私は思います。


フジキセキ(地の文あり)

私の名前はフジキセキ。このトレセン学園の栗東寮の寮長を務めているよ。

 

 寮長として色んな子に接していくのはやっぱり大変で、タキオンみたいな問題児には困らされることもあるけど、それでもやりがいがあるし、迷えるポニーちゃんのためならできる限りの事をしてあげたいと思う。

 

 もちろん、レースだってしっかりしているよ。私自身、長距離を走れる脚質じゃないのに菊花賞へ挑戦しようとしたり、割と無茶をしたりもしてるけど、そんな私を支えてくれるトレーナーさんには頭が上がらないかな。

 

 だから、私もちゃんとトレーナーさんを支えていかないといけないかな。トレーナーさんの実力なら私以外の担当ウマ娘も付くだろうし、もしかしたらチームの運営だって任されるかもしれない。その時に私が学園を卒業してもサポートできるように、しっかりと繋がりを作っておかないとね。

 

 と言うわけで、何かできることがあるかな? と思ってトレーナーさんの部屋に来たんだけど。

 

「……トレーナーさん? これはなんだろうね?」

 

「……カップラーメンです」

 

「それじゃぁ、これは?」

 

「……カロリーメイトです」

 

 今、私が机の上に並べているのは数日どころか一か月分ぐらいの保存食やエナジードリンク。そして、私の前でトレーナーさんが正座して何か必死に弁明してきた。

 

「ち、違うんだフジ! これは別にすぐに消費するものじゃないし……あ、そうだ、そう、非常時用の備蓄で……!」

 

「それじゃぁ、この一週間分の練習メニューは何なのかな? 別に、トレーナーさんって出張の予定とか何もなかったよね?」

 

「……ごめんなさい、トレーナー室に籠って集中するための備蓄です。安かったのでまとめ買いしました」

 

 予想通りの言葉に思わずため息がでちゃう。本当に、私のトレーナーさんは困った人だなぁ。

 

「トレーナーさん。前にも言ったけど、私は寮長だから、不健康過ごす子を見逃すわけにはいかないの。それが自分のトレーナーであってもね」

 

「いや、逆に考えるんだフジ。俺が籠っている間は、俺の事を気にしなくていいと」

 

「何をどうしたら逆の考えになるのかな? 前に言ったのに同じことをしたわけだし……それじゃぁ……トレーナーさんには罰を与えないといけないかなぁ。取り敢えずは、トレーナーさんが私の言うことをしっかりと聞き取れるように、耳のお掃除からしようか」

 

 私がそう言った途端、トレーナーさんが急に立ち上がったと思うと、そのまま全力で私の横を通って扉から出ようとした。まぁ、勿論そんなの許すわけがないから、背後から抱きしめて阻止する。

 

「トレーナーさん? どこに行こうというのかな?」

 

「い、いやだー。このままじゃポニーちゃんにされちゃう! ポニーさんにされちゃう!」

 

 そう言って逃げようとして右手を前に出しながら暴れようとするトレーナーさんの右手に自分の手を重ねる形でしっかりと掴み、扉から遠ざける。そして、そのままトレーナーさんをベッドに向けて放り投げた。

 

「わぷっ!」

 

「もー、トレーナーさん。逃げようとする子を捕まえるのも寮長の仕事には含まれているんだよ。それに、なんで逃げるのかな? 私、傷ついちゃうなぁ。怖い事なんてしないよ」

 

「い、いや。別にフジが怖いとかじゃなくて……フジに耳かきされたりすると、ポニーちゃんにされちゃいそうで……」

 

 あはは、おかしな事を言うなぁ、トレーナーさんは。

 

「もー、トレーナーさん、そんな事を言うなら、最初から部屋に籠るような真似をしなければいいだけでしょ。はい、それじゃぁトレーナーさんが私の言うことをちゃんと聞いてくれるように……耳かき、していこうか」

 

 トレーナーさんの頭を膝の上に乗せて耳を見ていると……んー……汚れてるなぁ。

 

「トレーナーさん、前に掃除した時も思ったけど、もうちょっと耳の手入れはしたほうがいいんじゃないかなぁ?」

 

「いや、人間の耳はウマ娘のと違って別に殊更手入れする必要はないからな。そもそもの前提が違うんだよ」

 

「でも、私が前に言ったことは聞いてくれなかったよね」

 

「うぐむ……」

 

 私の指摘にトレーナーさんは黙り込んじゃった。じゃ、今のうちに掃除していこうか。ちょうど、手の届くところに耳かきもあるしね。

 

「えーと……うーん、こうしてみると耳の毛もちょっと濃いかな? 今度から耳の毛を剃っていくのもいいかもしれないね」

 

「そ、それはちょっと……怖いな」

 

「あはは、そんな震えながら言われちゃうと、さすがにやらないよ」

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 体を震わせるトレーナーさんが可愛いと思いながらも、早速掃除をしていく。うーんと、外側の汚れを耳かきの匙で搔き集めて行ってと……。

 

「カリカリカリ……サリサリサリ……どうかな? トレーナーさん。私の声、気持ち良い?」

 

「あっあっあっ……ヤバい……この声を聞き続けてたらヤバイ……」

 

 私が耳元で囁いていると、トレーナーさんが体を小刻みに震わせてる。もう、可愛いなぁ。

 

「駄目だよ、トレーナーさん。体を動かしちゃったら危ないから。動かないでね」

 

 そう囁いて、トレーナーさんの耳の掃除を続けていく。

 

「ほら、この固いのとかを……うん、無事に取れたよ。んー……これぐらいでいいかな?」

 

 最後に残してた一際固い物を無事に剥がして……と。これで大体の汚れは掃除できたね。後は、細かい汚れだけだ。

 

「最後は梵天で細かい汚れをクルクル~と」

 

 ゴシゴシ……ゴゾゴゾ……

 

 クルクル……スススー……

 

「はい、粉状の汚れも全部とれたよ、トレーナーさん」

 

「はぁ~……スッキリした」

 

 アハハ、とろけてるなぁ、トレーナーさん。このまま余韻に浸ってもらいたいけど……。

 

「ふ~……ふ~……」

 

「おっふ!?」

 

 とろけてるトレーナーさんに息を吹きかけると、一気に意識が起きたのか、体をビクッて動かして……おっと、落ちちゃダメだよ。

 

「トレーナーさん、驚きすぎ。前もやってあげたでしょ?」

 

「いや、そうなんだが……気を抜いてる時に来るとびっくりしてな……」

 

 気を抜いてくれるのは嬉しいんだけどねぇ。まだ、反対側もやらないといけないから、あんまり気を抜きすぎるのも困っちゃうよ。

 

「駄目だよトレーナーさん。まだ反対もやらないといけないからね。はい、反対を向いてもらうから、動かないでね」

 

 トレーナーさんをひっくり返して、私のお腹に顔を向けてもらう……うん、やっぱりまだ恥ずかしいなぁ。

 

「なぁ、フジ……やっぱり担当ウマ娘の腹を見ながら耳かきってのは、風紀的な意味で宜しくないと思うんだが……」

 

「今更だよ、トレーナーさん。そもそも、トレーナーさんが私の言うことを聞かずに不健康な生活をしようとするからいけないんだから」

 

 トレーナーさんの反論を封じつつ、反対側の耳を見て……うん、こっちもこのまま掃除していっちゃおう。

 

 カリカリカリ……サリサリサリ……

 

 ザリザリ……ザリザリ……

 

「耳の粉だけじゃなくて、埃も付着してるみたいだね。部屋の掃除も後でちゃんとやろうか」

 

「いや、前もそうだが、そこまでやってもらうのは……」

 

「そう言うのなら、普段からやってくれてると嬉しいんだけどね。生徒でも居るんだよ? 口では言うけどやらない子は」

 

 外側の掃除をしながら指摘すると、トレーナーさんが黙っちゃった。うーん、図星を突いちゃったかなぁ。

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 ゴリゴリ……ゴリゴリ……ベリベリ……ズリズリ……

 

「トレーナーさん、図星を突いちゃったからって、あんまりだんまりされると困っちゃうよ」

 

「年下の女の子に言われたら普通に傷つく……次からはマジで注意します……」

 

 うーん、ちょっと、次からは気を付けないと。トレーナーさんの体調が心配だとは言え、遠慮がなさ過ぎたなぁ、失敗。

 

 ふ~……ふ~……

 

 ふ~……ふ~……

 

「はい、これで耳掃除は終わりだよ。えーと……このままお昼寝して欲しいんだけど……」

 

「いや、ちょっと部屋の掃除とかするから……フジ? フジ? ちょ、止め……!」

 

 動こうとするトレーナーさんの頭を押さえつける。

 

「ちょ、フジ、離してくれって……ヤバイって……! このままじゃポニーちゃんになっちゃうって!」

 

「うーん……トレーナーさん、前からそういうこと言ってるけど……逆なんだよ?」

 

 そう言って、私はトレーナーさんの耳元に口を近づける。

 

「トレーナーさんが相手だと、私がポニーちゃんになっちゃうの。今も、私がトレーナーさんと一緒に居たいから、離したくないんだ」

 

 そう囁くと、トレーナーさんの目が見開かれて、こっちを見ようとしてきたから、思わず頭を押さえて、こちらを向けないようにしちゃう。

 

「だから……私に心配をかけた罰だと割り切って、このままで居てほしいかな。ね、たまには良いでしょ?」

 

「う……わかった……わかったから……耳元で囁くのは止めてくれぇ……」

 

 トレーナーさんがそう言うから、顔を上げて手の力を抜くと、トレーナーさんは目を閉じて、体から力を抜いてくれた。こないだみたいに、このまま寝てくれるみたいだ。

 

「ふふ、嬉しいな、トレーナーさん」

 

 トレーナーさんの態度に嬉しくなった私は、そのままトレーナーさんの頭を撫でながら、少しだけ体を屈めてトレーナーさんの匂いを嗅ぐ。

 

(もう……本当、私のほうがポニーちゃんになっちゃうよ)

 

 トレーナーさんの匂いを感じながら、私はそう思わざるを得なかった。

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