ゴルシに付き合わされるトレーナーって、絶対にトレーニングをどうこうするよりもゴルシのやらかしの後処理のほうが負担大きそうですし、それでいて、ふとした時にゴルシに女の魅力を感じて情緒がおかしくなったりしそうだよなぁ。と思っています。
は~……と深いため息をつきながら書類を処理している俺はどこにでもいる極々普通の一般トレーナー。強いて違うところをあげるとすると、あのゴールドシップのトレーナーだって事かな。
……そうなんだよ……俺の担当ウマ娘はあのくっそ破天荒なゴルシだ。あいつに振り回されてどれだけ酷い目にあってきたか……。
いや、苦痛だとか、そう言うことは言うつもりはない。あいつはあれでも才能溢れるウマ娘だ。普段の奇行はさておき、あいつの走りに魅了されているやつは大勢いるし、俺だってその一人だ。担当トレーナーとしてできるだけの事はやっているつもりだ。だけどな……だけどなー……あいつの奇行の後始末するのって疲れるんだよ……こないだなんてトレセン学園変顔大会なんてのをいきなり開催しやがったせいで生徒会からめちゃくちゃ怒られたし。しかも優勝したのあいつだぞ。あいつなぁ……黙ってりゃ美人の典型例だろ。スタイルも顔も良すぎるのに、なんでああも破天荒なんだ……。
「と言うわけでトレーナー。このゴルシちゃんがトレーナーの事を労わってやりに来たぜ。なんかやってほしい事ってあるか?」
ため息をつきながらそんな事を考えていると、いきなりドアが勢いよく開けられてゴルシがなんか言い出してきた。
「え? マジ? じゃぁ、しばらくの間おとなしくトレーニングしといてくれ。ちょっと仕事溜まってるし、俺もたまには外で羽を伸ばして……」
そう言うと、前触れもなくヘッドロックをかけられた。痛い痛い痛い! ギブギブギブ!
「おいおいトレーナー。このゴルシちゃんが労わってやるって言ってるんだぜ? 何もするな。はないんじゃねーの?」
「イダダダダダ! し、仕方ないだろ! お前が暴れた後の処理が一番しんどいんだから! ちょ、当てるな、顔に当てるなー!」
俺の顔面にゴルシの胸が押し付けられてくる。ヤメロー! ヤメロー! お前、それは反則だ! そのプロポーションでそれは反則だぞー!
「まったく、ノリが悪いトレーナーだなー。なんだー? 耳の中詰まってんのか? どれどれ?」
「ちょ、突っ込むな! 指突っ込むな!」
必死にタップしている俺の耳にゴルシが指を突っ込んできた。うおおおお、怖い、色んな意味で怖い!
「よーし、トレーナーがアタシの言う事聞いてくれねえし、このまま耳の掃除していくぜ。おら、こっちこいや」
ヘッドロックをかけられたまま引きずられていき……いや、全力で抵抗してるけど、ウマ娘に人間が勝てるわけもなく、そのままベッドの上まで引きずられていった。
「おいゴルシ。離せ、離してくれって」
「そんな暴れんじゃねーよ。耳掃除するだけなんだから、ほらおとなしくしろって」
ヘッドロックを外され、首を回して真面に動くことを確認すると、そのまま何食わぬ顔でベッドから降りようとしたら無理やり引っ張られてゴルシの膝枕に頭を置く事になった。
「んー……汚れてるなぁ。こんなんだったらちゃんとした道具も持ってくりゃ良かったか?」
「よし、それじゃぁ道具を取ってきてくれ」
「なーに言ってんだ。道具取りに行っている間にどっか逃げるつもりだろ? 何年の付き合いだと思ってんだ?」
くっそ、ばれてるか。俺がゴルシの事をわかるように、ゴルシも俺の事がわかるって事か。
「ほれ、遠慮すんなよ。なんだったら前みたいに耳のマッサージしてやってもいいんだぜ?」
「そうだな……確かに、ゴルシのマッサージは気持ちよかった……普段のお前の言動からは想像できないほどにな……」
「だろー? だから今回も……」
「だが断る。このトレーナーの好きな事は、自分の言う事なら聞いてくれるだろうと高を括っている愛バに対してノーを突きつけることだ」
俺がどや顔でビシッと言い切ると、ゴルシが俺の頭を押さえてきて……ムグー! か、顔が腹で埋められて呼吸がー!
「ムー! ムー! ムーーーー!」
必死にタップして逃げようとするが、その間にも酸素はどんどん無くなって……あ、ヤバ……ガチで頭が……と言ったところでようやく解放された。
「ブハー! ゼハー!」
あ……危うく逝く所だった……酸欠で頭がヤバい中でゴルシの匂いだけが入ってくるとか、頭がおかしくなるぞ。ゴルシの腹から反対のほうを向いて、なんとか呼吸を整える。そうじゃなきゃ、ゴルシの匂いが更に頭の中を染めてきちまう。
「よー、これで気が変わったか? 何? 変わってない? 仕方ねーなー、じゃぁもう一回……」
「降参! 降参! わかった! ありがたく耳かきをしてもらいます!」
もう一回埋められそうになったから、慌てて降参の意を示す。クソッ、やっぱりこうなるしかないのか……。
「よーし、じゃぁ早速やってくぜー……んぁ? なんだこりゃ?」
耳の中を見ていたゴルシがいきなり怪訝な声を上げて、顔をもっと近づけてきた。なんだ? 俺の耳に何かあるのか?
「えーと、耳かき耳かき……と。後は……やっぱマッサージしとくか」
何があったのか教えてくれる事はなく、耳の外側を摘ままれたと思うと、そのまま耳のツボを押してきた。
モミモミモミ……モミモミモミ……
グリグリグリ……グリグリグリ……
「うお……柔らかいよな……お前の指って」
「あったりめーだろ。これでも手入れは欠かしてないんだぜ」
普段の破天荒さからは想像できない言葉だけど、こいつ、妙に乙女っぽい所あるからなぁ。俺も1年以上付き合いがあってようやく気づいたけど。
「グリグリグリ……と、こんなもんにしとくか」
耳のツボと思しき部分を指圧され、耳の血流が促進されていくのが自分でもわかる。血が流れる感覚とともに耳が熱くなってくる。と、そう思っていると、ゴルシの指が離れていった。
「えーと……じゃぁ、手前からやってくからな。気持ちよくても動くなよー?」
「怖くて動けないって……」
動いて耳の中をガリッ。なんてされたらたまったもんじゃない。耳かきが差し込まれた以上、おとなしくする以外の選択しなんて存在しないんだ。ましてや相手はゴルシだぞ。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
俺の心配とは裏腹に耳かきは順調に進んでいるようで、耳の中から掻きだされた耳垢がティッシュの上に捨てられていく。こいつ、破天荒な割に色々と器用だよなぁ。
「なんだよトレーナー、耳垢は素直じゃんか。トレーナーももっと素直にゴルシちゃんに甘えて良いんだぜ?」
「いや、愛バに甘えるのはNGだろ、常識で考えて」
「常識じゃゴルシちゃんは図れねーんだぜ」
「それはよくわかってるよ」
こいつが常識で測れるウマ娘ならどれだけ楽だったか……いや、破天荒だからこそこいつであって、それを無理に止めさせたところで仕方ない事なんだけどな。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
「んー……こんなもんか? あんまやりすぎる程汚れてるわけでもねーしな」
「……テキトーな言葉だけど、本当に掃除終わったんだろうな?」
「お? 疑うってのか? よーし、じゃぁトレーナーの気が済むまで掃除していくか」
「いいえ、遠慮します」
うん、取り敢えずこいつの言うことを信用しておこう。信用せずに抵抗したところで余計に耳掃除が続くだけだし。
「んー……それじゃぁ……おっし、動くんじゃねーぞ」
なんだ? なんか頭が抑えられて……。
「ふ~……ふ~……」
「おっひょう!?」
突然強めに息が吹きかけられて、背筋がゾゾッと快感が走る。こ、これは予想外だ……。
「おいおいトレーナー。なんだよその声は」
「いきなりでびっくりしただけだ。まったく……」
本当、こいつの行動は読めないよなぁ。まぁ、こいつの行動を読めるようになったらそれはそれでヤバそうな気もするけど。
「おう、それじゃぁ引っ繰り返すぞ。おっしゃーい」
「おおう!?」
いきなり体の下に手を入れられたと思うと、勢いよく体が持ち上げられ……と言うか、体が浮き上がり、勢いのままに反対側を向いてゴルシの膝枕に落ちる。
「こっちもバランスよく耳のマッサージを……んー、凝ってますねぇ、お客さん」
「あー……うん、そこ、気持ち良いわ」
あ~……くっそ……なんでこんな気持ち良いマッサージができるんだよこいつ。思わず表情に出ちまうじゃないか。
「じゃぁ、このまま耳の掃除もやってくからな。気持ち良くても動くんじゃねーぞー」
「わかってる。怖いからな」
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
変に動いて耳の中をガリッ……は本気で怖いからな。おとなしく身を任せる以上の選択肢はない。
「なぁトレーナー。ちょっと耳垢溜めてみねーか? そっちのほうがやりがいがあるんだけどよ」
「流石にそれは嫌だよ。意図的に汚れを溜めるなんてやりたくないからな」
「つまんねーなー」
がっかりした様子が伝わってくるけど、わざわざ自分で耳の中を汚すなんて事したくはない。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「うッ……ふぅ……」
「よーし、これで掃除は終わりだぜー」
ふー……息の吹きかけも終わって、ようやく耳掃除が終わったか。気持ち良いのは認めるんだが、やっぱ怖いのほうが勝るんだよなぁ。さて、取り敢えずこいつの膝の上からどかないと……。
「おいおいトレーナー。どこに行こうと言うのかね」
「いや、掃除終わったし……どくのが普通だろ?」
「何言ってんだよ。アタシの黄金の不沈艦に頭乗せてるんだから、このままお休みするのが筋ってもんだろうが」
「いや、確かにお前は不沈艦だけど、足の事をそう表現したのは初めて聞いたわ……あ、いや、わかった。ありがたく堪能させてもらうから、腹に押し付けようとするな」
頭の後ろに手が回されて大慌てで膝の上で寝る事を了承する。またこいつの腹に顔を埋められたらもう理性が崩壊しかねない。絶対にヤバい事になる。
「おう、それじゃぁ子守歌だって歌ってやるからな。安心しろよ」
「いや……それはマジでいいわ。……いや待て、実力行使しようとするな。マジで、このまま横になってるだけでいいから」
耳の穴が広げられてそのまま耳元で大声で歌われる気配を感じて慌てて目を閉じる。あー……でもまぁ……良い反発具合で、良い匂いで……あ、なんか本当に眠くなって……。
ゴールドシップで耳かき、男トレーナー視点を書きました。
ゴルシに付き合わされるトレーナーって、絶対にトレーニングをどうこうするよりもゴルシのやらかしの後処理のほうが負担大きそうですし、それでいて、ふとした時にゴルシに女の魅力を感じて情緒がおかしくなったりしそうだよなぁ。と思っています。