クリークとは別方向でお母さん的な部分のあるエアグルーヴに、割と天然気質なスズカ。史実での事もあり、なんやかんやとこの二人は相性が良いのかもしれないと思う今日この頃です。
トレセン学園の生徒会。数千を超える人たちが存在するこの学園の中では毎日様々な問題が起きている。そして、それを処理するために生徒会には大きな権限を与えられると同時に、生徒会メンバーは日々業務に追われる事になる。
そんなある日、生徒会室の中に二人のウマ娘が居た。一人はこの生徒会の副会長であるエアグルーヴ。そしてもう一人は異次元の逃亡者と呼ばれるウマ娘、サイレンススズカである。
「スズカ……貴様、この間トレーナーから言われた事を覚えているか?」
「えっと……」
エアグルーヴの問いにスズカが顔を横に逸らす。だが、その肩に手を置き、逸らした方向の頬に手を添えてエアグルーヴは強引にスズカを自分に向かせる。
「足の療養の為に10日間走ることを禁止する……確か、そう言われていたはずだな? 私もその場にいたんだ、聞き逃しや聞き間違いはしてないし、貴様もそれに了解したはずだ」
「……」
「それで、スペシャルウィークやフクキタルから報告が来ているが……貴様、トレーナーから言われた翌日から既に毎日一時間ほど走り込みを行っていたらしいな」
「……」
「目を逸らすんじゃない」
真正面のエアグルーヴの視線から逃げるようにスズカは視線を横に逸らす。だが、その視線の先に顔を移動させたエアグルーヴに思いきり睨まれるだけであった。
「お前、何回トレーナーの言うことを聞かずに走るつもりだ。それで足を壊したらどうするつもりだ」
「だって……走りたいから」
「だってじゃない、このたわけが」
頬を膨らませるスズカだが、その両頬をエアグルーヴの手が顔を挟む形で潰したため、なんとも間抜けな表情になる。
「……それじゃぁ、エアグルーヴが何か気を紛らわせれる事してくれる?」
「なんで私が……いや、いい。どうせこのまま解放しても走り出すのは目に見えてるからな……仕方がないが同じトレーナーに教わっている仲だ、一肌脱いでやる」
諦めたようにため息をついたエアグルーヴはそのままスズカの手を引っ張ってソファーに座らせる。そして、エアグルーヴは自分の机から耳かきや梵天を取り出すと、スズカの隣に座り、自分の膝を叩く。
「ほら、頭を置け。お前がトレーナーの言う事をよく聞けるようにするためにも耳かきをしてやる」
「えーと……私、耳は汚れてないと思うけど」
「いいからさっさと頭を置け、このたわけが」
エアグルーヴの圧に負けたスズカはおとなしくエアグルーヴの膝枕に頭を置く。そして、スズカのメンコを外したエアグルーヴが彼女の耳を観察する。
「ふむ……おい、スズカ。あんまりちゃんと耳の手入れをしていないな? 耳毛も乱れてるし、汚れも見えるぞ」
「そ……そうかしら? そんな事はないと思うけど」
「そんな事はあるんだこのたわけが」
スズカの額にデコピンをしつつ、エアグルーヴはスズカの耳の掃除を始めた。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
耳かきがスズカの耳に触れ、優しく汚れを搔き集めていく。黄色や白色の汚れを搔き集め、耳毛に絡まっているものはティッシュで拭い取られていく。
「ほら見ろ、こんなに汚れが取れてるじゃないか。風呂上りにはちゃんと耳の隅々まで拭くようにしろ」
「ちゃんと拭いてるわよ」
「それは拭いているつもりになっているだけだ」
そんなやり取りをしながらもエアグルーヴは耳掃除を続けていく。耳かきがスズカの耳に触れ、擦られるたびにスズカの体が反応し、僅かに体が揺れる。
「なんだ? どこか痛いのか? それか、痒いか?」
「違うの……耳……気持ち良くて……」
「敏感すぎないか? ……いや、メンコを付けてる者は大体そうか」
頬を赤く染めるスズカの態度に納得したエアグルーヴはそれでもしばらくの間外側の掃除を続け、ほどなくして耳かきが中に差し込まれていく。
「中の掃除をしていくぞ。ん、手前から固いのがあるな。まずはこいつから……」
手前にある固い耳垢に耳かきが触れ、端から掻かれていくと、スズカは目を強く閉じて、拳を強く握る。
「……ほら、あまり体に力を入れるな」
「でも……」
「それなら、これならどうだ? カリカリカリ……カリカリカリ……」
スズカの耳に口を寄せ、カリカリと囁きながら耳かきを動かすエアグルーヴ。
「あ……エアグルーヴの声……気持ち良い……」
「それはまぁ……悪い気はしないな」
エアグルーヴの声の気持ち良さに体から緊張が解けていくスズカ。それを見てエアグルーヴは耳かきを続けていく。
カリカリカリ……ゴリゴリゴリ……
ベリベリ……ガリガリ……
「カリカリカリ……カリカリカリ……」
耳かきが掃除する音とエアグルーヴの囁きの二重奏がスズカの耳の中に響き渡っていく。
「ふぁぁ……気持ち良い……」
「ここまで気持ち良くなられるとは思わなかったな……ほら、まだ汚れはあるから、掃除をしていくぞ」
「ひゃぁぁぁぁ」
器用に耳かきを動かし、掃除を続けていくエアグルーヴと、気持ち良さを味わうスズカ。暫しの間そうやって掃除が続いていったが、程なくしておおまかな汚れを掃除し終えたエアグルーヴは耳かきを引き抜き、顔を離す。
「さて、こちら側はこれで大体終わったぞ。反対側をしていくから、おとなしくしているように」
「んん……」
エアグルーヴの言葉におとなしく頷くスズカ。そしてそんなスズカの耳への掃除が開始される。
「ふむ……こちらも……似たような状態だな……同じように掃除していこう」
スズカの耳を摘まみ、汚れを確認したエアグルーヴは耳かきで掃除をしていく。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
「あ……そこ……」
「変な声を上げるのをやめろ」
メンコの下に隠れていた耳垢やメンコの糸くず等を搔き集めていき、順調に捨てられていく。
「さて、このまま中の掃除だな」
「うん……わかった……」
ガリガリガリ……コリコリコリ……
ベリベリ……ベリベリ……
耳垢が掻きだされ、剥がされた後の赤くなっている部分をうまく避けながら、耳かきは進んでいく。
「うん……そんなに汚れてはないが……汚れてないのに人の話をなぜ聞かないんだ、お前は」
「だって……走りたいから……」
「だってじゃない、このたわけが」
「……エアグルーヴ、お母さんみたい……小言よりも、もっと耳かきの音を囁いてほしいけど」
「誰が母親だ誰が。お前の母親になった覚えはないぞ……カリカリカリ……カリカリカリ……」
そんなやり取りをしつつも耳かきは進んでいたが、エアグルーヴ自身が言ったように、大した汚れのない耳掃除は早めに終わりを迎えた。
「さぁ、これで掃除はおしまいだ。これで少しはお前も人の話を……おい、何をしている」
耳かきを横に置き、ティッシュを捨てているエアグルーヴが違和感を覚え下を向くと、スズカが体を動かし、エアグルーヴのお腹に顔を埋めていた。
「なんだか……眠くなっちゃった……」
「おい、人の上で寝ようとするな……おい、おい!」
スズカの体を揺さぶるエアグルーヴだが、スズカは耳を伏せ、エアグルーヴの腰に腕を回し、腹に顔を埋めて抵抗する。少しの間スズカを起こそうとするが、やがてため息をついたエアグルーヴは、諦めてスズカの好きにやらせるようにした。そうしてスズカが眠りに落ちてからも、エアグルーヴは起きるまで待ち続ける。
それから暫く経ち、エアグルーヴがスマホを弄っていると、部屋の扉が開いてルドルフが入ってきた。
「お疲れ様、エアグルーヴ。おや? その娘は……」
「あ、会長。すみません、見苦しい物をお見せしまして……」
「いや、構わない。しかし……ふむ」
二人に近づいたルドルフはスズカの様子を見る。既にエアグルーヴの腰から腕を離しているスズカは、天井のほうを向きながら、その寝顔を晒している。
「会長? お邪魔でしたらすぐに叩き起こしますが」
「いや、大丈夫だよ。しかし……穏やかな寝顔をしているな、彼女は。それだけ、エアグルーヴの事を信用していると言う事か」
「さて……どうでしょうか?」
「……」
「……会長?」
「いや、グルーヴが優しい顔をしていると思ってね。はは、これはスズカに妬いてしまいそうだ」
「か、会長! お戯れを申さないでください!」
ルドルフの言葉に顔を赤めて反論するエアグルーヴ。そんな彼女をルドルフは苦笑を浮かべながら相手をするのであった。