シュヴァルグラン、比較的最近追加されたキャラなのもあってほとんど知らなかったですが(アニメ未視聴)中々に可愛いキャラですね。これはキタサンに構って構って構い倒して欲しいと思いました。まぁ、シュヴァルグランは姉妹にも構われているので、当人はちょっと大変かもしれませんが。
トレセン学園。二千人を超えるウマ娘。そしてそれを支える学園で働く人々と合わせて数千人を超える人々が日夜活動している場所である。その敷地は日本でも有数の広さを誇っており、ウマ娘のレースの練習の場と言う性質もあり、数千を超える人々が居る中でも、中には人がほとんど居ない場所が学園の中には存在している。
そんな場所の一つ、人気のない中庭にある一つのベンチに一人のウマ娘が座っていた。
「む……うーん……」
そのウマ娘の名前はシュヴァルグラン。ジャパンカップ勝利ウマ娘であり、キタサンブラック、サトノダイヤモンドを始めとした優俊達と争い競い合ったウマ娘である。
そんな彼女であるが、今、彼女は周囲からトレードマークとして認知されている帽子を外し、手には耳かきを持って、自身の耳を突いている。しかし、その先端が耳の穴に近づくたびにその手が止まり、耳かきを引っ込める。
「はぁ……情けないなぁ……」
暫しの間それを繰り返していたシュヴァルグランであるが、諦めたのか耳かきを自分の膝の上に置いてため息をついた。
「シュヴァルちゃん、何やってるの?」
「うわわわわわ!? き、キタさん!?」
シュヴァルグランに声をかけたのはキタサンブラックであった。突然声をかけられたシュヴァルが驚きの声を上げるのをキタサンは不思議そうに見つめる。
「その手に持ってるのは……耳かき?」
「み、見ないで!」
「もしかしてシュヴァルちゃん、自分で耳かきしようとしてたの?」
キタサンの問いにシュヴァルは帽子で顔を隠しながら頷く。
「最近……耳の中が痒くて……それで、なんとか自分でできないかなって」
「そっかぁ……でも、自分でやるのって危ないよ。シュヴァルちゃん、できるの?」
「う……でも、他の人に頼むのも恥ずかしかったから……」
「それじゃぁ、私がやってあげるよ!」
「え!?」
キタさんの言葉にシュヴァルは驚きの声を上げるが、キタサンは気にする様子もなく、シュヴァルの隣に座り、自分の膝を叩く。
「大丈夫だよ、シュヴァルちゃん。私、ダイヤちゃんに耳かきした事もあるし、私に任せて! セイヤー」
「わわっ!?」
シュヴァルを抱きしめ、自分の膝の上に寝かせるキタさん。その強引にやり方にシュヴァルは反応できず、ただなすが儘にキタサンの膝枕に仰向けに頭を置く。
「キ、キタさん! 別に……いいから……!」
「遠慮なんてしないでください。さ、やっていきますよ」
シュヴァルの手にあった耳かきを取ると、キタサンはシュヴァルの耳を観察する。普段は帽子で隠れ気味になっている耳をじっくりと見つめられ、シュヴァルの顔が赤くなる。
「ん~。外は特に汚れてはないかな? でも、一応こっちも掃除していきますね」
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
「あ、あ、あ……キ、キタさん。くすぐったい……」
「えっと、ちょっと敏感なのかな? でも、ちょっと我慢してもらってもいいかな? すぐに終わるから」
耳かきの感覚に体を捩るシュヴァルの頭を優しく撫でながら、キタサンは外側を掃除していく。暫くの間身もだえするシュヴァルを撫でながら掃除をしていくと、徐々に汚れが溜まっていき、キタサンはそれを地面に捨てていく。
「んー。けっこう汚れ溜まってるかも。もうちょっと……」
「ひゃぅぅ」
思った以上の汚れにキタサンは更に耳かきを動かす。それにシュヴァルは情けない声を上げるが、それでもキタサンは容赦しなかった。
暫くの間掃除をしていき、あらかたの汚れを取り終えたキタサンは、耳かきをシュヴァルの耳の穴に近づける。
「それじゃぁ、このまま中の掃除をしていきたいんだけど……大丈夫? 怖かったら、止めておいたほうがいいかな?」
「ん……いや、キタさんの事は信用してるから……大丈夫」
「本当? 嬉しいなぁ。それじゃぁ、頑張ってやるね」
シュヴァルグランの了承を得たキタサンは彼女の耳の中に耳かきを差し込んでいく。
「大丈夫だよ、シュヴァルちゃん。気を付けてやっていくから。でも、痛かったら言ってね」
「うん……わかった」
ガリガリガリ……ゴリゴリゴリ……
ベリベリ……ガリガリ……ベリベリ……
集中し、耳の中の掃除を行っていくキタサン。大きい物を取りつつ、細かい汚れも見落とさないよう、真剣に取り組んでいく。
「キタさん……その……そんなに見られると恥ずかしいんだけど」
「汚れが耳の中に落ちたら取るのが大変だから、我慢してね」
恥ずかしさから耳を伏せようとするシュヴァルだが、その耳を摘まみ、伏せさせないキタサン。そうこうしている間にも耳掃除は進んでいき、耳かきが奥のほうに差し込まれる。
「後はここだけ、だね。シュヴァルちゃん。あとちょっと、我慢してね」
「う……うん。わかった」
一言断ったうえで、キタサンは一番奥の耳垢を掃除していく。普段なら異物が入り込むことのない耳の奥への掃除にシュヴァルの体が強張るが、キタサンは優しく耳垢を掻き続けていく。
カリカリ……カリカリ……
カリ……ベリ……ベリ……ズズズ……
「うん、上手に取れたよ。後は、ちょっと残ってる汚れを取っていって……これでお終い」
耳垢を全て取り除き、耳かきを引き抜かれた事でシュヴァルの緊張が解ける。しかし、不意にキタサンが体を前に倒し、シュヴァルの耳に口を近づけると。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「うひゃあああ!?」
突然の事にシュヴァルの顔は赤く染まり、口からは情けない声が響き渡る。
「あれ? 驚かせちゃった?」
「お、お、驚いたよ!? なんで! なんで息吹きかけるの!?」
「え、耳かきの時にはお約束じゃないの?」
「それは……そう……だけど」
思えば、自分の母親にやってもらったときに息が吹きかけられたりした。そのことを思い出してシュヴァルの声は最後は尻すぼみになっていく。
「それで、もう片方の掃除もしていくね。片方だけ掃除するのも収まりが悪いでしょ?」
「う……うん。そう……だね」
承諾を得たことで、キタサンは引き抜いた耳かきを反対の耳に近づけ、そのまま掃除を始めた。
サリサリサリ……カリカリカリ……
サリサリ……カリカリ……
「シュヴァルちゃんの耳、普段帽子を被ってるからあんまりちゃんと見た事ないけど、可愛いね」
「そ、そういう恥ずかしい事、言わなくていいから!」
ガリガリガリ……ガリガリガリ……
ベリベリベリ……ベリベリベリ……
「中の掃除は順調に進んでるよ。痒みとか大丈夫?」
「ん。それは、大丈夫、問題ないから」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「はい、これで耳かきは終わりだよ、お疲れ様」
「あ、うん。ありがとう」
息の吹きかけも終わり、解放されたシュヴァルは体を起こし、耳の調子を確かめる。
「凄い……痒みが全然ないや。調子よくなったよ」
「よかったー。シュヴァルちゃん、もしまた耳の中が痒くなったら、私に言ってくれたら掃除してあげるから、遠慮なく言ってね」
「……うん、その時にはお願いする……かも」
邪気のない善意だけの笑みを浮かべるキタサンに、顔を赤くしながらも、シュヴァルは答えるのだった。