ドーベルの男トレーナーには是非ともベタベタに甘くなったドーベルと過ごして欲しい。そう思う今日この頃です。
俺はメジロドーベルのトレーナー。世間的にはそうとしか認知されていないが当然だと思ってる。あのメジロのご令嬢たるドーベルに比べれば俺なんてカレーに付いてくるラッキョウ程度の存在だ。
彼女は自分に自信を持っていないが、ポテンシャルは計り知れないものがある。そう信じて彼女と共に歩んできたが、彼女はレースで大輪の華を咲かせることに成功した。その一助にでもなれたと思ったら感慨深いものがある。
と言うわけで今日も今日とてドーベルのスケジュール調整をしつつ、後々新しい担当ウマ娘を迎える事を考えていると、珍しい事にドーベルが俺の部屋に来た。取り敢えず中に招き入れ、彼女が好きな紅茶を淹れる。
「ふぅ……美味しいよ、トレーナー」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。ドーベルのトレーナーとして、こういうところからも支えていきたいからな」
ドーベルのトレーナーとして、彼女の好みは把握している。伊達にプロから指導を受けたわけじゃない、彼女のメンタルサポートのためにもしっかりと好みと淹れ方をマスターしたぜ。これはこれで今後の担当ウマ娘にも使えるしな。
「ねぇ、トレーナー。その……前に耳かきしてからけっこう時間経ったでしょ? そろそろ、また耳かきしたほうが良いと思って」
「えっと……ドーベル。やってくれるのは嬉しいけど、無理はしなくていいんだぞ?」
「だ、大丈夫だから! ほら、早くこっち来てよ!」
俺が内心で悦に浸っていると、唐突に耳かきの話題を出され、彼女はベッドに腰掛けた。断ったら……後が怖いからおとなしく膝枕してもらおう。
「えっと……前はウェットティッシュだったけど、今回はこんなの用意してみたんだ」
ドーベルがそう言うと、耳が温かくて湿ったタオルで包まれ、そのままゴシゴシと拭かれていく。
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
「あ~……温かくて良いな……ウェットティッシュより好きだな」
「本当? それじゃぁ次からはこっちでやっていくね」
ウェットティッシュはちょっとひんやりしてたし、こっちの方が俺的には好みだな、うん。
「トレーナー。中の掃除していくからね」
「あ、うん。わかった」
温かいなぁ……と思ってたら、拭き終わったのか耳の中の掃除に移行するようだ。うーん、ちょっと物足りないような……。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
お、耳の中に耳かきが入ってきて……お、そこそこ、ちょうど良い……。
「トレーナー、痛くない? ちゃんと掃除できてる?」
「あ、大丈夫大丈夫。ちょっと痛いけど、耳かきならこんなもんだと思うよ」
耳垢が剥がされる痛みはこんなもんだろ。うん、大丈夫大丈夫。ちょうど耳垢も剥がれてきて……うん、リラックスできる。
ガリガリガリ……ゴリゴリゴリ……
ベリベリ……ガリガリ……
ベリベリと耳垢が剥がれてティッシュに捨てられて……あー、うん。担当のウマ娘の膝枕ってヤバイ状況だと思うけど……あー、気持ち良いわぁ……。
「トレーナー、耳の中どう? 変な感じしない?」
「ん? うーん……うん、大丈夫。変な感じはしないよ」
前は最後にちょっと耳の中に痒みがあったけど、今回はちゃんと取れているのか、スッキリ爽やかだな。
「それじゃぁローションを塗っていくから、動いちゃダメだよ」
「ん、大丈夫。動かないよ」
「じゃぁ、塗ってくね」
お、これは……うん、良い匂いだ。甘くて良い匂いで……はぁ~……眠くなってきそうだ……。
ヌリヌリ……ヌチョヌチョ……
ヌリヌリ……ヌリヌリ……
「甘くて良い匂いだな。普段から香りを楽しみたいんだが、どこで売ってるんだ?」
「え!? そ、そうなんだ。うん、今度私が持ってるの分けるね」
「良いのか? どこで売ってるかを教えてくれたら自分で買いに行くんだが」
「良いの。これぐらいなら安いものなんだから」
どこで売ってるか聞いたらドーベルが譲ってくれると言ってきた。う~ん? いや、普通に買いに行くんだけどなぁ……でも、深く追求してヘソを曲げられてもあれだからこれ以上の追及は置いておこう。
「じゃぁ、後は……」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
ドーベルに息を吹きかけられて、耳の中がヒンヤリとするだけでなく、甘い匂いが一層強くなり、鼻孔を擽ってくる。
「うん……ヒンヤリして、くすぐったいな」
「そ、そんな感想言わなくていいから。ほら反対側してくから、その……え、えい!」
不意に差し込まれた手によって俺の体がひっくり返り、そのままドーベルの腹のほうを向く形になった。あれ、この体勢大丈夫か?
「ド、ドーベル? こっちを向くのは恥ずかしいんじゃなかったのか?」
「み、皆してる事だから!」
いや、赤信号皆で渡れば怖くない。じゃないんだから……でも、話の腰を折るのもなんだしなぁ。
ゴシゴシゴシ……ゴシゴシゴシ……
グリグリ……グリグリ……ギュッギュッ……
温かいタオルで耳を念入りに擦られると、それだけで満足感が凄い。
「あ~……温かい……」
「うん、温かいタオルって気持ち良いよね」
カリカリカリ……ガリガリガリ……
ゴリゴリ……ベリベリ……
耳垢が掻かれ、剥がされ、引き出されて行って……。
「耳垢の取り残しのないように……気を付けて……」
「あの、ドーベルさん? そこまで真剣に見なくても、痒い感じとかないから大丈夫だぞ」
「ダメ。ちゃんと確認しないと」
うん、まぁ、前の耳掃除だと中途半端に残った耳垢が痒かったけど、ちゃんと取ってくれたんだから、そんなに意識しなくても良いと思うんだけど。
ヌリヌリ……ヌチョヌチョ……
グチュグチュ……ヌチョー……
ローションが塗られていくと、心地よさと鼻をくすぐる甘い匂いが眠気を誘ってくる。
「これまであんまり匂いって気にした事なかったけど、こういう匂いって良いな」
「うん、私もお気に入りなんだ。今度持ってきてあげるからね」
持ってきてくれるのが楽しみだ。ローションだからどう使うか悩む処だけど。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
息が吹きかけられる。それだけでなんとも言えない背徳感に襲われる。
「少し甘い匂いが強まる気がするな……スーッてして気持ち良いけど……」
「だ、大丈夫だから!」
俺が全部言う前にドーベルに叫ばれてしまった。恥ずかしいなら無理にしなくていいのに。とは言えないな。
「ト、トレーナー。疲れてるでしょ? 今日はその……このままお昼寝……していいから」
「え、本当に良いのか? 本当に?」
「本当だから! ほ、ほら、気が変わらない内に寝ちゃってよ!」
「お、おう……わかった」
前は恥ずかしいからって事でできなかったけど、今回はできるようだ、嬉しい、正直シンプルに嬉しいんだけど……途中で恥ずかしくなって放り出したりしないよな?
とは言え、それでもやっぱりドーベルの膝の上で眠れるという幸いにありつけると言う事で、彼女の膝の上で目を閉じて……グー……。