ルドルフはカップリングの相手が多いですし、書いてて楽しい。そう思う今日この頃です。
トレセン学園。日本で最大級のウマ娘の学校であり、ここを運営するにあたって、生徒会にも強い権限が与えられている。
そんなトレセン学園の生徒会長を勤めるのは名家シンボリ家出身であり、初の無敗三冠を達成したシンボリルドルフである。文武両道を地で行く彼女は、まさにこの巨大学園の生徒会長として相応しい、とほとんどのウマ娘が認めていた。
副会長であるエアグルーヴやナリタブライアンですら並び立てないであろうシンボリルドルフ。だが、彼女に対して対等なウマ娘が居ないわけではない。それは例えばルドルフの親族であり、幼馴染であるシリウスシンボリ、学園最年長との噂もあり、強すぎるが故にダービーに出走できなかったマルゼンスキーであり、そして……。
「あら、まだ仕事をしているのかしら? ルドルフ」
「ラモーヌか。用事があるなら少し待ってくれるかな? キリの良い所まで仕事を終わらせたいんだ」
今、生徒会室にてルドルフの前に立っているのはメジロラモーヌ。桜花賞、オークス、エリザベス女王杯を制した優俊であり、メジロの至宝と称されている彼女は、学生と言うにはあまりにも成熟した魅力を醸し出しており、その魅力にはさしものルドルフも白旗を上げざるを得ない。
「あら、私を待たせるなんて良い度胸ね? 生徒会長と言うのはそんなに偉いのかしら?」
「ふぅ……別に偉くなったつもりはないさ。でも、私が仕事を疎かにして、皆に迷惑をかけるのは本意ではないさ」
「それが傲慢。だとわからないのかしら? 貴女一人でこの学園の全てを背負っているとでも増長しているの? ほら、こちらに来なさいな」
ルドルフの言葉を問答無用で叩き切り、ラモーヌはソファーに座ってルドルフを呼ぶ。その呼びかけに苦笑しながらも、ルドルフは仕事の手を止めて、ラモーヌの隣に座った。
「それで、何の用なんだ? ラモーヌ……ん?」
隣に座ったルドルフの肩に自然と手を置き、そのまま引き寄せて自分の膝の上に寝かせるラモーヌ。あまりにも自然な動きであり、ルドルフがその動きに気づいた時には既に彼女の膝枕に頭を置く形になっていた。
「ラモーヌ? これは一体?」
「あら、こんなことをされても反応ができないような貴女に事細かく説明するつもりはないわ。このままおとなしくしていなさい」
ルドルフの問いに取り合う事はなく、ラモーヌは懐から耳かきを取り出し、ルドルフの耳を摘まむ。
「あら、生徒会長さんったら、よく見たら耳がこんなに汚れてらっしゃるのね。自分の身だしなみも整えられない方が生徒会長など勤めるのですか?」
「う、いや、それは失敬してしまった。仕事が終わったら、耳の手入れをしよう」
「ふふ、嘘をおっしゃらないでください。どうせ、テキトーにやるだけなのはわかってますわ。そんな会長さんには……恥ずかしい目を受けて貰わないといけないわね」
そう言うと、ラモーヌは耳かきをルドルフの耳に当て、そのまま耳垢の掃除をし始める。
「ラ、ラモーヌ!?」
「動かないでもらえます? 動いたら、痛い思いをするのは貴女でしてよ」
驚いたルドルフが体を動かそうとするが、それをラモーヌは片手で強引に抑え込む。
「まったく、行儀が悪いわね、ルドルフ。そんなので生徒会長を務められるのかしら?」
「い、いや、今のは生徒会長とは関係ないのでは……」
「言い訳は見苦しいだけよ?」
ルドルフの言葉をばっさりと切り捨て、ラモーヌは耳かきを続けていく。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
ルドルフと言えど、普段の耳掃除を誰かに頼っているわけではない。その為、他人の膝枕による耳かき……それも、ラモーヌと言う、親しい仲である相手に耳かきをされていると言う事で、どうしても緊張してしまう。
「ふぅ、見なさいルドルフ。匙にこんなに汚れが取れてるじゃない」
「それは……その、自分ではちゃんとやっているつもりなのだが」
「ふふ、面白い冗談を言うのね。普段のダジャレよりもよっぽど面白いわよ」
そんな会話をしている間にも耳かきは続き、程なくして、耳の外側は汚れを取り終えた。
「さあ、中の掃除をしていくわ。もちろん、動かないでいてくださるわよね?」
「あ……ああ、勿論、動くつもりはないが……」
ルドルフが気圧されながら答えると、ラモーヌは満足そうに頷きながらルドルフの耳の中を掃除していく。
カリカリカリ……ペリペリ……
ペリペリ……ゴリゴリ……
薄く張り付いている耳垢が剥がされ、ズルッと引きずり出されていく。
「あら、思ったよりも長い物が取れたわね。意外だわ」
「これは……ちょっと、予想外だな」
二人揃って想像なかった形のものが取れたしばし、その耳垢を見つめるも、やがて耳かきを再開させたラモーヌによって無事に耳の中の掃除が終わる。
クルクル……クシュクシュ……
ズボズボ……ススー……
そして、耳かきがひっくり返り、梵天がルドルフの耳の汚れを絡めとっていく。白い梵天が汚れにより黄色く染まっていく様子を見て、ラモーヌから呆れのため息が漏れた。
「耳垢を取ったはずなのに、こんなに汚れているのね。はぁ、疲れてきたわね」
「そうか……それなら申し訳ないから、私はそろそろどこうか……」
「まだ終わってないのに逃げるのかしら?」
「そ、そう言うわけではないが……」
どこうとした時に軽く耳を引っ張られ、近づいたラモーヌの囁き声にルドルフは顔を赤くし、そのままおとなしくする。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
そして、引っ張られたままの耳にラモーヌの吐息が吹きかけられる。
「さて……これで一段落したかしら? 調子はどかしら? ルドルフ」
「うん……さっきよりも音が聞こえやすくなったよ。君の声も聴きやすくなった」
「そうなのね。それじゃぁ反対側もやっていきましょう」
そう言うと、ラモーヌは軽く反対側の耳を摘まみ、逃げられないようにしながら耳かきを始めた。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
耳の外側が掃除され、汚れが捨てられていく。
「こちらもこんなに汚れて……ため息が出るわね」
「め、面目ない……」
カリカリ……ベリベリ……
ゴリゴリ……ゴリゴリ……
「こちらの耳垢は固いみたいね? 厄介な耳垢ばかりじゃない」
「そ、それは体質だからどうにもならない……かと」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「息を吹きかけたらこんなにピクピクさせて……まだやって欲しいのかしら?」
「い、いや、それはその……遠慮するよ」
そうして耳かきが終わり、どこうとするルドルフだが、その額にラモーヌが人差し指を置く。
「あら、この体勢なら、後は何があるかお分かりではなくて?」
「しかし、まだ仕事が残っている。私が裁決しないといけないから……」
「黙りなさい。私に言いようにされている貴女に拒否権なんてないわ。このまま寝なさい、ルドルフ」
そう言われてもルドルフは目で訴えるが、それでもラモーヌの表情が変わる事はなく、諦めたルドルフは目を閉じ……やがて穏やかな寝息を立て始めた。
「……まったく、本当につまらないわね、ルドルフ……」
寝息を立てている事を確認したラモーヌはルドルフの目元を指で撫でる。指で撫でられ薄く取れた化粧の下から見えたのはうっすらとした隈であった。
「昔の貴女はこんな事で自分を追い込むような事なんてしたかしら……? ねえ、ルナ」
眠りに落ちているルドルフに語りかけるラモーヌの言葉には普段は見せない感情が見える。だが、それを見る事ができるのは、この場には誰も居なかった。
「ねえ、ルナ? このままつまらなくなるだけだと……私、もうちょっと強引になるかもしれないわよ?」