さて、今回のリクエストの内容、多分皆様馴染みがないと思います。私も馴染みがありません。
ルドルフがタキオンがモルモット君と知り合う切っ掛けになったと書かれていたのですが……実は詳細全然わからないので、取り合えずそれっぽく書いてみました。
トレセン学園の生徒会。普通の学校ではあり得ない程の権力が集中するこの生徒会では、清廉潔白であると同時に清濁併せ吞む事も必要になると言う、相反する事柄をバランスよく運用する必要がある。
そんな生徒会の会長であるルドルフの元には様々な問題が舞い込んでくる。そして、彼女はそれに対して真摯に向き合うのだった。
「……タキオン。また君の事で苦情が来ているよ。君の薬を飲んだウマ娘の七色の発光が収まらず、危うく模擬レースでの出場が取り消されかけたとの事だ」
「おやおや、それは申し訳ない事をした。彼女には今度、お詫びに新作の薬を提供してあげなくては」
「タキオン……?」
悪びれもなくそんなことを言うタキオンに、ルドルフはジトッとした視線を送る。だが、彼女はどこ吹く風と、その視線を気にすることなく続ける。
「さーてさて。件のウマ娘にはちゃんとお詫びをするとして……そうだねぇ、君にはお礼をしないといけないのだよ、生徒会長様」
「……? はて、心当たりがないな。もしかして、君の研究の邪魔をしたと言うお礼参りなのかな? だとしたら、それは君の……」
「いやいや、そんなつもりはないさ。純粋なお礼だよ……ほら、君の顔、少し見たらすぐにわかるさ」
そう言うと、タキオンは袖で隠れた手でシンボリルドルフの頬を包み、視線を合わせる。互いの呼吸が交じり合う距離で見つめ合う二人。
「ああ、やはりね。君、どうやらかなり疲れているようじゃないか。化粧で隠しているつもりだろうが、この距離なら隈がある事がはっきりとわかるよ?」
「む……」
タキオンの指摘にルドルフは言葉を詰まらせる。それを見たタキオンは、ルドルフの手を取ると、そのまま来客用ソファーまで連れていき、その上に横にさせた。
「では少し失礼するよ。よっと」
その隣に座ったタキオンが、ルドルフの頭を自分の膝の上に置いた。
「タキオン? これはその……一体、どういう状態なのかな?」
「簡単だよ。君へのお礼は耳かきだよ。ありがたく思ってくれ給えよ? 私が耳かきをするなんてめったにある事ではないぞ?」
「いや、謹んで遠慮しよう。君の耳かきなんて想像できないし、まだしご……とが……」
タキオンの上からどこうとして、ルドルフは気づく。体に痺れがあり、上手く動かせない事に。
「ああ、そう言うと思って、少々痺れ薬を散布させてもらったよ。そうでなければ、君が私にあっさりとこの状態になるなんて事もありえないだろ?」
「図ったな……タキオン……!」
「ふふ。それでは早速始めていこうじゃないか」
そう言うと、タキオンは懐から耳かきとウェットティッシュを手にしてルドルフの耳を観察する。
「ふーむ。やはり会長様は身づくろいもちゃんとしているのだな……とは言え、耳の中まで完璧と言うのは厳しいようだねぇ」
「そんなに……見ないでくれないかな……?」
マジマジとルドルフの耳を観察するタキオンの視線に、ルドルフの顔は仄かに赤くなっていく。
「さて、と。それではやっていこうじゃないか。痛かったらちゃんと言ってくれたまえよ? これは研究ではないのだからね」
そう言うと、タキオンはウェットティッシュでルドルフの耳を拭いていく。ほんのりと湿ったティッシュに汚れが絡みつき、拭き取られていく。
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
ギュッギュッ……ゴシゴシ……
「ふふ、なんだ、これでも気持ちよさそうな顔をしているじゃないか」
「む……そうなのか?」
タキオンの言葉に怪訝な顔をするルドルフ。だが、気にすることもなく、タキオンはウェットティッシュで掃除していく。
「ふむ。こんなもので良いかな? さて、と。ではでは、皇帝様の耳の中を掃除していこうじゃないか……ふむ、よく考えたらかのシンボリルドルフの耳掃除か。これは写真とかを撮影しておけば良いお小遣い稼ぎになるのかもしれないねぇ」
「……そう言う事をしたら流石に私も怒らせてもらうよ、タキオン」
「冗談さ。流石にそんなことをしたら後でどんな目に会うかわからないからねぇ」
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
軽口を叩きながらも、タキオンは耳掃除を続けていく。が、そこまで耳かきが動くことなく、手が止まってしまう。
「ふーむ、これは困った。なんだ、そんなに汚れてはいないかな」
「ふむ……それは良かった」
タキオンの言葉にルドルフは安堵を覚える。それは自分の耳が汚れていない事に対する純粋な喜びと、長時間タキオンに耳を弄られずに済むと言う安堵によるものであった。
「しかしまぁ、これでは君を気持ち良くできないのは事実だからねぇ。では、こうさせてもらおう」
そう言うと、タキオンは耳かきを置いて、ルドルフの耳を優しく両手で包み込み、ツボを押し始める。
グリグリ……モミモミ……
ギュッギュッ……グリグリ……
「ほら、こちらはどうかな? 流石に疲れは溜まっているようだねぇ。ほら、ここのツボをグリグリッと指圧していくと……」
「ん……あ……そこは、気持ち良い……」
指圧による血圧の促進。それに伴う気持ち良さにルドルフの口元が僅かに上がる。
「ふむ。やりすぎると痛いだけだから……この辺りにしておこうか。では耳の細かい粉の掃除を片付けてしまおう」
「ん……頼むよ」
クルクル……クルクル……
スポスポ……ズズズ……
梵天を手にしたタキオンが器用にルドルフの耳の細かい汚れを絡めとっていく。目には見えづらいそれらの汚れを上手に取っていき、そのくすぐったさに、ルドルフは僅かに体を身じろぎさせる。
「さて、と。後はお約束だねぇ」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「んん……」
息が吹きかけられ、細かい汚れが飛ばされ、耳掃除で敏感になった耳に受けるその刺激に、ルドルフの体が震える。
「ふふ。皇帝様が気持ち良さそうにしているとはね」
「タキオン、あまりからかわないでくれないかな?」
タキオンの言葉に苦笑を浮かべるルドルフに、タキオンは意地の悪い笑みを浮かべる。
「さーて、それは、反対側の掃除をおとなしく受けてくれるなら考慮しようじゃないか。さぁ、おとなしくしていてくれたまえよ」
ゴシゴシ……グリグリ……
ギュッギュッ……ゴシゴシ……
「おや、少し抜け毛が多いかな。もしかしてストレスでも溜まっているんじゃないのかい?」
「はは、流石にそんなことはないさ」
「ふーむ、それならいいんだがね?」
カリカリカリ……カリカリカリ……
ガリガリガリ……ゴリゴリゴリ……
「こちらもやはりそんなに汚れていないねぇ……面白くないねぇ」
「耳かきは、面白がってするものではないと思うよ、タキオン」
モミモミ……モミモミ……
グリグリグリ……グリグリグリ……
「くっふふ、マッサージはどうやらお気に召しているようだね。それなら、私もやりがいがあると言うものさ」
「否定はしないよ……確かに、気持ち良い」
クルクル……クルクル……
コシュコシュ……ススー……
「まぁ、塊ではないが、粉もちゃんと掃除しないといけないねぇ」
「確かにそうだな」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「ふふ、さて、これで耳かきはお終いだよ、堪能してくれたかな?」
「ああ……まさか君がこれだけ上手だとはね……それで、薬の効果はいつ切れるのかな? なんだか眠くなってきたんだが……眠り薬まで使ったんじゃないだろうね?」
トロンとした眼に力を入れてタキオンを睨むルドルフだが、その視線をタキオンは悪い笑みで受け止める。
「おやおや、何を言っているんだい? 耳かきをしたら眠くなる、眠くなるから昼寝をする、お約束と言う物だろ? さぁ、遠慮せずに寝たまえ。君はたまには休息も必要だ。なに、何か言われたら私のせいにしておけばいい」
「む……いやしかし、まだ仕事が……」
「ほら、全て私のせいにすれば良い……目を閉じて……ゆっくりと呼吸して……」
「ん……んん……」
やがて、ルドルフの口から穏やかな吐息が漏れだしていく。それを見てタキオンは口角を上げる。
「くっふふ、君のおかげでトレーナー君とは知り合えたからね。彼は私の研究にもレースにも欠かせない人材だ。だから、これぐらいのお礼はしてもバチは当たらないと思わないかな?」