キタサン自体が他にカップリング先が多いのもあり、ゴルマクに比べると非常に作品数が少ない印象がありますが、個人的にはバクキタ好きです。バクキタ流行れ、超流行れ。
「はぁ……はぁ……」
今日もトレセン学園では多くのウマ娘がトレーニングを重ね、レースに向けて日々を過ごしている。今、ターフの上で息を切らしている彼女、キタサンブラックもまた、その内の一人であった。
だが、彼女は既にオーバーワークに達していた。度を越した練習は体の為にならない事をわかりつつも、彼女はトレーニングを辞めることができない。
(あと……もう少し……もう少しだけでも……)
額から流れる汗を拭い、ろくに呼吸も整わないまま、彼女は顔を上げる。憧れのその先で待っている、彼女の目標へと少しでも近づくために。そして、そのために一歩を踏み出した瞬間。
「あ……れ……?」
視界が回る、赤く染まる。脚から力が抜け、頭が理解する前に、彼女の意識はそのまま消えていった。
「ん……あれ……私……」
目を覚ました彼女が見上げたのは知らない天井であった。白く、沁みのない天井を見上げつつ、彼女がぼんやりと意識の中で過ごしていると。
「おや、気づきましたかキタサンブラックさん」
「はぇ……? えーと……バクシンオーさん?」
キタサンブラックの視界に入ってきたのはサクラバクシンオーであった。キタサンブラックが入学した際にバクシンオーに絡まれて以降、何かと接する機会のある二人ではあるが、キタサンブラックにはなぜ彼女がここに居るかわからなかった。
「あの……バクシンオーさん? ここって……」
「ここは保健室です。キタサンブラックさんはターフで練習中に倒れたので、私がここに運びました。先生いわく、疲労による気絶だそうなので、ゆっくりと休んでください」
「疲労……倒れた……んですか、私……」
そう言われ、彼女はターフで練習していた時の事を思い出す。そう言えば、走ろうとして……そこで、意識を無くしたという事にキタサンブラックは気づいた。
「幸い疲労以外の異常はないとの事なので、今日一日ゆっくり休めば明日からはトレーニングも再開できるとの事です。あ、喉が渇いてたらスポーツドリンクを飲みますか?」
そう言って飲み物を差し出すバクシンオーだが、キタサンブラックは体を起こし、ベッドから降りようとした。
「き、キタサンブラックさん? まだ安静にしていた方が……」
「いえ……倒れてる暇なんてないんです……もっと頑張らないと……」
そう言って立ち上がろうとするキタサンブラックだが、前方に回ったバクシンオーが彼女の肩に手を置くと、そのままベッドに押し倒した。
「いけません、キタサンブラックさん。このままではまた倒れるだけです。今日はもう休んでください」
「でも……練習しないと……!」
「ダメです! 委員長として、無理をする生徒を放っておくことはできません! もしも行きたいと言うのなら、私を押しのけてください!」
ウマ乗りになったバクシンオーが迫真の気迫を込めてキタサンに告げる。その言葉にキタサンは何か言おうとするも、言葉が出ず、やがて、諦めた。
「うう……わかりました。今日はおとなしくしておきますね……」
「わかって頂けてなによりです。とは言え、ただ休んでるだけですと気持ちも落ち着かないでしょうし、何か……お、良い物がありますねぇ」
キタサンの上で周りを見渡していたバクシンオーは一点を見つめると、それを取りに行く。戻ってきた彼女の手にあったのは一本の耳かきであった。
「折角です。耳の調子を整えるためにも耳かきをしましょう。先ほど見た時にも少し汚れがありましたし……大丈夫、私、こう見えても耳かきは得意です」
「え? あの、その、ちょっと怖いかなぁ……って」
「遠慮はいりません。さぁ、やりますよー」
キタサンの遠慮を気にすることなく、バクシンオーはベッドに腰掛け、キタサンの頭を乗せる。
「では早速……マッサージからしていきましょう」
「ほえ? マッサージ? あ、くすぐった……」
キタサンの片耳がバクシンオーの手に包まれたと思うと、そのまま優しく、しっかりと揉み解されていく。
「んー、やはり、耳も凝っていますねぇ。これはしっかりと解さなければなりません」
バクシンオーの指によってコリが解され、耳の血流が促進されていく。その感覚にキタサンの口からは思わず甘い吐息が漏れ出る。
「はぁ……バクシンオーさん……気持ち良いです」
「それはなによりです。さぁ、ここもしっかりと……解していきましょう」
そうして暫くの間、耳のマッサージが続けられていく。血流が促進される事による熱によって、キタサンの耳にじんわりと汗が浮き上がり始める。
「さて、それでは中の掃除をしていきましょう。カリカリカリ♪ カリカリカリ♪」
耳かきを手にしたバクシンオーは、そのままキタサンの耳の中を掃除していく。顔を近づけ、擬音を囁き、吐息が吹きかけられながら、耳の中が掃除されていくキタサン。
「あ……バクシンオーさん、そこ……痒くて……」
「ここですね、大丈夫です。ちゃんと掻いてあげますよ」
耳垢を取りつつ、痒い部分もしっかりと掻いていくバクシンオー。そうして耳掃除が続けられていくが、程なくして耳かきが引き抜かれる。
「さて、それではこれで大体の汚れが取れましたね。後はお約束の……ふ~……ふ~……」
「わひゃあああああ」
マッサージと耳かきで汚れが落とされ敏感になったキタサンの耳にバクシンオーの吐息が吹きかけられる。突然の事にキタサンの口からは可愛らしい悲鳴が上がる。
「バ、バ、バ、バクシンオーさん! いきなりしないでくださいよぉ……」
「ふふ、すみません。そこまで反応されるとは思いませんでしたので……。さぁ、反対側をしていきますよ」
笑みを浮かべながらバクシンオーが残ったキタサンの耳に手を添える。そして、優しくマッサージを始めていく。
「こうして凝っている部分を……グリグリ……グリグリ……あ、この辺りが特に凝ってますねぇ」
「あ、バクシンオーさん、そこ……そこ……気持ち良いです……」
マッサージを受けて、背中を逸らせながら気持ち良さをアピールするキタサン。それを嬉しそうに見つめるバクシンオー。
「カリカリカリ……カリカリカリ……気持ち良さそうにする貴女を見ていると、私もやりがいを感じますよ。ほら、ここの汚れを取りますから、おとなしくしていてくださいね♪」
「あ、そこ……耳垢が取れて……ひゃう♡」
耳垢掃除の匙に迷走神経が刺激され、キタサンの口からは甘い吐息が漏れ出ていく。
「ふむ。これで汚れも大体取れましたからね。さて……ふ~……ふ~……」
「ひゃああああああ♡」
最後の吐息にキタサンが再び甘い叫びをあげる。
「さぁ、これで耳掃除はお終いです。少しは気持ちも落ちついたと思いますが……どうやら大丈夫そうですね。では、このままお休みください。大丈夫です。貴女が起きるまで、この学級委員長がしっかりと見守ってあげますからね」
「え? そ、そんな。悪いですよ、私、すぐに起きますから」
そう言って体を起こそうとするキタサンブラック。だが、そんな彼女の肩を優しく抑えるバクシンオーは、キタサンの耳元に口を近づけると、そっと囁いた。
「嘘つき♡」
「ッ!?」
これまでのバクシンオーからは想像もできない程甘く、蠱惑的な囁き。その言葉は瞬時にキタサンの脳内に届き、彼女を困惑させ、動きを止める。
「わかってますよ。耳かきされて気持ち良くて……眠くなってますよね? 大丈夫ですよ。私が居てあげますから……ゆっくりお休みください♡」
「バ、バクシンオーさん……ダメ……起きないと……」
「う・そ・つ・き♡ もう、眠たくて仕方ないですよね? 良いんですよ。私が許してあげますから♡ 今は……ゆっくりと休んでください」
「あ……そん……な」
バクシンオーの甘く、優しく、蠱惑的な。そんな声に誘われ、キタサンの瞼が徐々に落ちていく。彼女を安心させるように、バクシンオーはキタサンの肩を優しく叩きながら子守歌を歌い始める。
(バク……シン……オー……さ……)
そうして、キタサンの意識は穏やかな闇の中に落ちていくのであった。