ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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ブルボン×タンホイザで耳かきを書きました。実はけっこう前から書きたいと思ってましたが、中々書く機会もなかったのを、ようやく形にできました。

多分、ブルボンってあの世代からしたらかなり憧れになる存在なんじゃないでしょうか? ライスに負けてなければ無敗三冠。それだけじゃなくて短距離からマイル、中距離までG1含めて全勝。ウマ娘ではとかくライスだけを取り上げられますが、ブルボンももっと取り上げられていいと思っています。

個人的にはブルボンはもっとライス以外の同世代と絡んでいる作品が増えても良いだろ。そう思う今日この頃です。


ブルボン×タンホイザ

 チームカノープス。トレセン学園に存在するチームの一つである。所属するウマ娘はナイスネイチャやツインターボと言った面々が揃っている。

 

 G1勝利ウマ娘が居ない……と言われてはいるが、そもそもとして、ウマ娘においてはレースで一度でも勝利した時点で上澄み確定であり、G2 G3で勝利しているだけでなく、何かしらの名勝負を演じている時点で、上澄みも上澄みなのである。そう言う意味では、このチームに所属するウマ娘達もまた優俊と言われるべき存在である。

 

 そんなカノープスに所属するウマ娘の一人、マチカネタンホイザは今日もレースに向けてのトレーニングを進めていた。普通のウマ娘と自称している彼女だが。当然ながら彼女も一般的なウマ娘から見ればどこが普通なのかと言いたくなるような成績をしている。そんな彼女が普通などと自称するのは、関わるウマ娘の多くが良くて自分と同レベル、あるいは自分以上の成績の持ち主だからであろうか。

 

 特に彼女の世代は、同じ距離にミホノブルボン、ライスシャワー。別距離にサクラバクシンオー、ニシノフラワーと言った優俊達が揃っている事もまた、彼女を目立たない存在にさせている要因なのかもしれない。

 

「もっと……もっと早く……!」

 

 同世代。そして、関わり合う別チームの優俊達。彼女達と接すれば接する程、自分が普通であると考えこむタンホイザ。同室で同じマチカネの名を冠するフクキタルもまた、菊花賞を制した優俊である事が、その想いをさらに強くするのだろう。

 

「あ……」

 

 だが、想いと体が一致するわけではなく、タンホイザの疲労の溜まった足が絡まり、そのままターフの上に倒れ転がる。

 

「ちょ、大丈夫!?」

 

 一緒に練習をしていたネイチャが駆けより抱き起こすと、タンホイザは鼻血を流しながら立ち上がった。

 

「うーん……失敗しちゃいましたなぁ」

 

「いや、鼻血出てるじゃん。疲れも溜まってるみたいだし、保健室行ってきなよ。ほら、足がプルプルしちゃってるしさ」

 

「大丈夫ですか? タンホイザさん」

 

 二人がそうして話していると、不意に声がかけられた。視線を向けた先には、ジャージ姿のミホノブルボンが立っていた。

 

「あわわ、ブルボンさん? いやぁ、お恥ずかしい姿を見せちゃって……」

 

「いえ。それよりタンホイザさん、保健室へ行くなら私がお連れしますね。私もちょうど用事がありますし。では失礼します」

 

「うわわわー!?」

 

 タンホイザを抱き上げたブルボンは「ミッション、タンホイザさんの運搬を開始します」と言うと、そのまま彼女を連れて行く。残されたネイチャはどうしようかと少し考えたが、まぁ、大丈夫だろう。と結論を出すのであった。

 

 暫くしてタンホイザを保健室へと連れてきたブルボンは、ウェットティッシュを手に取り、タンホイザの顔を拭いていく。

 

「あわわ……ブルボンさん、一人でできますって」

 

「怪我をされているんですから、気にしないでください。それに足も……生まれたての小鹿のようにプルプルしてますよ」

 

 そう言うと、ブルボンはタンホイザをベッドに座らせて、ウェットティッシュで彼女の顔を拭う。こけた拍子についた土汚れや鼻血を拭き取り、顔を綺麗にしていく。

 

「もう血は出ていないようですね。ではこのまま横になってください。十分な休息を取れば回復すると思います」

 

「うう……ごめんなさい~」

 

 ブルボンに促され、ベッドで横になるタンホイザ。だが、心ここにあらずと言う様子なのが、ブルボンの目から見ても良く分かった。

 

「タンホイザさん? 何か気になる事でもあるのでしょうか?」

 

「え? いや、大丈夫ですよ。ただまぁ、こうして寝てる時間がもったいないな~……って思っちゃって」

 

「休息は大事です。休息を怠れば体調を崩し、より長く回復に時間がかかってしまいます」

 

「う……わかってはいるんですけどね」

 

 タンホイザの様子にブルボンはしばらく考えこみ、不意に立ち上がると、保健室の棚へ向かって歩き始める。

 

「ブルボンさん?」

 

「確かここに……ああ、ありました。後はこれも少々……タンホイザさん、落ち着けないのでしたら、落ち着くようにお手伝いさせてもらいたいと思います」

 

 そう言うと、ブルボンはタンホイザのベッドに座ると、彼女の頭を持ち上げ、自分の膝の上に乗せる。

 

「ブ、ブルボンさん?」

 

「耳かきは気持ちが落ち着きますし、こけた事によって耳にも土汚れが付いてますからこれも綺麗にしていきましょう。

 

 ゴシゴシゴシ……ゴシゴシゴシ……

 

 グリグリグリ……グリグリグリ……

 

 まず、ウェットティッシュでタンホイザの耳を拭いていき、土の汚れと共に耳の垢や埃などを擦り、落としていく。

 

「タンホイザさん、少し冷たいと思いますが、我慢してくださいね」

 

「あ、ひゃ……ひゃぃ」

 

 同世代とは言え、深く関わり合いのあるわけではない。しかし、タンホイザにとってブルボンは一種の憧れでもある。そんな相手から、敏感な耳を触られ掃除される。その事にタンホイザは困惑しつつも、自分の体温が上昇する事を自覚してしまう。

 

「……外側は大体汚れが落ちました。これより耳の中の掃除を開始します」

 

そう言うと、ブルボンは耳かきを手にして、慎重にタンホイザの耳の中に差し込んでいき、耳垢を掻きだしていく。

 

「カリカリカリ……カリカリカリ……あ、ちょっと固い耳垢ですね。タンホイザさん、痛くないですか?」

 

「あう……だ、大丈夫です……はぅっ」

 

 固い耳垢が剥がされた瞬間、タンホイザの口から甘い吐息が漏れる。それを自覚したタンホイザの顔が赤く染まるが、ブルボンは気にする様子もなく、耳掃除を続ける。

 

「カリカリ……ガリガリ……これで大体の汚れは取れましたね。タンホイザさん、痛い所や痒いところはありませんか?」

 

「あ、大丈夫です……それよりも、耳がスッキリして……ブルボンさんの声がよく聞こえるような気がしますね」

 

「ありがとうございます。では、後は」

 

 耳かきを引き抜いたブルボンはローションを手に取り、綿棒にそれを付着させると、タンホイザの耳の中に塗っていく。

 

「あぅ、ブルボンさん。ちょっと冷たいですぅ」

 

「少し我慢してください。ローションを塗っている方が耳荒れ等を防げますので……はい、これで塗り終わりました。では最後に」

 

 タンホイザの耳の中に丹念にローションを塗った後、ブルボンは顔を近づける。近づいてくるブルボンの顔にタンホイザが驚いていると。

 

「ふ~……ふ~……」

 

「ひゃあああああ!?」

 

 掃除が終わった耳の中にブルボンの吐息が走り、ローションを塗られた耳にひんやりとした感触が走る。その予想外の刺激に、タンホイザの口からは驚きと気持ち良さの声が上がった。

 

「やはり、これは耳かきのお約束ですから。それでは反対側の耳掃除を開始します。タンホイザさん、動かないようにお願いしますね」

 

「あえっ? は、はいいい」

 

 驚きからまだ回復しないタンホイザをおいて、ブルボンの耳掃除が開始される。

 

「まずは外側の掃除……こちらも土汚れがありますし、全部拭いていきましょう」

 

「ちょっと冷たいですけど……大丈夫ですからね」

 

 ブルボンがウェットティッシュで丁寧に汚れを拭い、タンホイザはその冷たさに僅かに耳を震わせるも、しっかりと耐える。

 

「耳垢は……こちらは大した汚れはなさそうですね。それでも一応、目につくものは掃除していきましょう」

 

「お願いします……ね」

 

 耳かきが差し込まれ、僅かながら、固くなったり変色していたりする耳垢が掻きだされる。

 

「ローションをヌリヌリ……この辺りにも、しっかりと塗っておきましょう」

 

「……次は温めた物を使用してもらえれば……あ、なんでもないです。ないですから」

 

「了解しました。次は事前に温めておきましょう」

 

「……ありがとうございましゅ……」

 

 ナチュラルに次の耳かきの約束をしてしまい、恥ずかしさ覚えるタンホイザだが、ブルボンは気にする様子もなく耳にローションを塗り続ける。

 

「では最後に。ふ~……ふ~……」

 

「はう……はぅぅ……」

 

 そして最後に再び吐息が吹きかけられ、近づくブルボンの顔、感じる彼女の吐息。それらがタンホイザの羞恥心を煽り、彼女の顔を赤面させる要因となる。

 

「さて、これで耳かきはお終いです。どうでしょうか? 気持ち良くなって頂けていればよいのですが」

 

「うん……なんだか、スッキリして、少し落ち着けたかなぁ……あー、でも、ブルボンさんにこんな事してもらって……私、普通以下のウマ娘になっちゃうかなぁ」

 

 ブルボンの顔を見上げながら苦笑を浮かべ、自嘲するタンホイザ。だが、ブルボンは首を傾げる。

 

「タンホイザさんが普通? いえ、タンホイザさんは優秀なウマ娘であると思いますが」

 

「いやいや。ブルボンさん、そんな気を遣わなくても大丈夫ですよ。自分の事はよくわかってますから……」

 

「ブルボンさんも、ライスさんも、私なんかより強くて……私、情けなくて……」

 

 タンホイザの脳裏に過るは、ブルボンやライスと走ったレース。誰もがブルボンの勝利を疑わず、ライスシャワーの勝利に失望と絶望を覚えたあの菊花賞。そして、それ以前のレースでも、タンホイザは二人の目に入る事すらなかったのだ。

 

「……いいえ。貴女は強いです、タンホイザさん」

 

 そんな彼女の悲観を否定するのは、ほかならぬブルボンであった。

 

 

「……確かに、私はレースの時には自分の事を最優先にします。自分のペースを崩さず、ただ前を見て走る……それが、私にとって最良の走り方だからです」

 

「ですが、レースの後に映像を見るたびにライスさんやタンホイザさんが私に迫っている姿を認識していました。私に届きうる可能性があるならお二人である……そう、考えていたのです」

 

「だから……少なくとも私は、貴女が普通だなんて思いません。貴女は立派な優駿の一人です。どうか、胸を張って頂ければ、そう思います」

 

 タンホイザの顔をしっかりと見ながら宣言するブルボン。その言葉を聞いたタンホイザは、内容を理解していくうちに、徐々にその目に涙が浮かんでいく。

 

「ブ、ブルボンさんにそんなごど、い"っでもら"え"るなんでええ」

 

 ミホノブルボン。彼女はこの世代にとっては一種の憧れである。菊花賞でライスに敗北こそしたものの、中距離では無類の強さを誇り、短距離やマイルにも適性を持ち、長距離だってライスさえいなければ勝利し、無敗の三冠ウマ娘になっていたのだ。総合力で見れば、間違いなく、彼女が世代最強であり。その彼女にはっきりと認められた。それは、タンホイザにとって何より嬉しい言葉なのだ。

 

 涙を流し、ブルボンを見上げるタンホイザ。そんな彼女に驚きつつも、ブルボンはタンホイザの涙を拭う。

 

「……私も、近いうちにレースに復帰するつもりです。ですから、その時にはまた競い合いましょう」

 

「わ"わ"がりまじだあああ」

 

 こうして、タンホイザはブルボンに認められていると言う自信を得て、練習を積んでいく。そんな彼女が春の天皇賞でライスシャワー、ミホノブルボンと競い合うのはもう少し先の話であった。

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