ウマ娘耳かき小説   作:雨宮季弥99

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ジェンヴィルで耳かきを書きました。

良いですねぇこの二人。理想的なライバル関係の一つだと思います。ちょうどこれを書こうと思った当たりでヴィルシーナが実装されたので、ちょっとヴィルシーナの確保はしておこうかな、と思う今日この頃です。


ジェンヴィル

 ジェンティルドンナとヴィルシーナ。二人の関係はライバルと呼ぶには少々力のバランスが片方に傾いているだろう。ジェンティルはトリプルティアラにおいて全てのレースでヴィルシーナを下し、他のレースも合わせても、ヴィルシーナはジェンティルに対してほとんどのレースで敗北。唯一先着したレースですら、一着はゴールドシップであり、ヴィルシーナがジェンティルを完全に下したレースは一つもないのである。

 

それゆえに、ヴィルシーナのジェンティルに対する敵対心は圧倒的なものがある。幸いなのはそれが陰湿な方向ではなく、あくまでレースで真正面から勝つ方向に行っている事だろうか。

 

 だが、それゆえに彼女はしばしばトレーニングにおいて限界を超えようとする傾向があった。それは今日も変わる事はない。

 

「はぁ……はぁ……まだ……まだぁ!」

 

 サンドバッグに向けて渾身のストレートを叩きこむヴィルシーナ。だが、振り切った腕を戻すよりも先に、弾き飛ばされ、勢いを増して戻ってきたサンドバッグが直撃し、彼女の意識を刈り取った。

 

「……ん、あれ?」

 

 サンドバッグで意識を刈り取られたヴィルシーナが目を開けると、そこは見慣れない天井であった。だが、徐々に意識が明確になってくると、それが保健室の天井である事に気づいた。

 

「あら、ようやくお目覚めですのね」

 

「な!?」

 

 ヴィルシーナが声のしたほうを向くと、ベッドの横でジェンティルが彼女の事を見ている事に気づく。慌てて体を起こそうとするが、ジェンティルに頭を抑えられ、起きる事は叶わない。

 

「まだ寝ていなさい。顔面にサンドバッグを強打して、意識を失っていたのですから。不意に起きるのはよろしくなくてよ」

 

「わ……わかったわ。でも、なんで貴女が居るのよ」

 

「たまたま近くを通りかかった時に、貴女のトレーナーが貴女を背負って出てきたのを目撃しましたの。ですから、運ぶのを代わってあげましたの。貧弱な人が、G1ウマ娘を背負うのは少々骨が折れる作業なのは、おわかりでしょ?」

 

「むうう……」

 

 当然のことながら、身長があり、更にレースウマ娘として筋肉を苛め抜き、成長させてきたウマ娘と言うのは、それ相応の体重をしている。例えウマ娘のトレーナーであっても、その重量が負担になると言うのは明白なのだ。

 

「……運んでくれたことはお礼を言うけど……もう、大丈夫だから」

 

「……確かに、そうしても構わないですが……それだと少しばかりつまらないわね。ちょっと貴女、練習台にさせて頂くわ」

 

「は? 何を……ひゃああ!?」

 

 不意にジェンティルがベッドに座り、ヴィルシーナの頭を自分の膝の上に乗せる。突然の事に混乱するヴィルシーナだが、ガッシリと頭を抑えられ、膝の上から逃れる事ができない。

 

「寝ているときに少し見ましたが、耳が汚れてますわよ、ヴィルシーナさん。私に食らいつこうとするのなら、日頃の身だしなみもしっかりなさいな」

 

「いや、それは暴論なような……」

 

「弱者は、おとなしく強者の施しに甘えてなさい」

 

 ヴィルシーナの戸惑いを一蹴し、ジェンティルはヴィルシーナの耳を摘まみ、軽く引っ張って顔を寄せる。

 

「毛並みも乱れているし……まずはマッサージをして差し上げますわ。ほら、おとなしくなさい」

 

「ちょ、強引すぎ……あ……気持ちいい……かも……」

 

 ジェンティルの指がヴィルシーナの耳の凝りを指圧すると、最初は抵抗していたヴィルシーナから徐々に抵抗が弱まっていく。それだけ、ジェンティルは的確にヴィルシーナの耳の凝りを解しているのだ。

 

 モミモミ……グリグリ……

 

 ギュッギュッ……ギュッギュッ……

 

 指圧を受けるたび、刺激を受けた凝りの血流が促進され、凝りが解消されていく。その快感にヴィルシーナの口から甘い吐息が漏れ出る中、一通りマッサージを終えたジェンティルは次に耳かきを手にする。

 

「ちょ、いや、流石に耳かきまでしてもらわなくても……!」

 

「あら? 遠慮できるほど綺麗な耳とは思えなくてよ? ほら、ここ……掻いていると、耳垢があるって事が貴女にもわかるでしょ? ほら、もう少しで剥がれて……ちゃんと剥がれたわね。まだあるから、おとなしくしていなさい」

 

 有無を言わさぬ様子で耳かきを続けるジェンティル。指摘され、掻かれる場所から耳垢が剥がされ、ティッシュに捨てられるのを目の当たりにして、ヴィルシーナも文句を言えず、おとなしくならざるを得なかった。

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 ガリガリ……ベリベリ……ベリベリ……

 

 暫くの間、沈黙する二人の間に耳かきの音だけが響いていく。気恥ずかしさからか、沈黙に耐え兼ね、ヴィルシーナが口を開く。

 

「その……恥ずかしいし……こんなのしてもらうような理由もないんだけど……」

 

「先ほども言ったように、弱者に施す事も強者の務め。それに、知らぬ仲でもない貴女がみっともない様子を晒しているのを放っておくのもなんだか、と言う事ですわね」

 

 再度のヴィルシーナの拒否を否定するジェンティル。やがて片側の耳の掃除が終わると、耳かきを置いて残りの耳に手を添える。

 

「こちらもマッサージからして差し上げますわ」

 

「……もう、好きにしなさいよ」

 

 諦めたヴィルシーナの様子を見たジェンティルは、これ幸いとマッサージを続けていく。

 

 グリグリ……ギュッギュッ……

 

 グー……グリグリ……

 

 ジェンティルの程よいマッサージは、僅かな痛みと、それ以上の快感を持ってヴィルシーナの耳を包み込み、凝りを解していく。

 

「あ……♡ な、なんでこんなに上手なのよ……」

 

「一流のウマ娘には、それ相応の技術が求められるものでしてよ? そうね……同格の相手と一緒に居る時とかにね」

 

 同格の相手。それが誰なのかを問いただす前に、ヴィルシーナの耳の中に耳かきが入り込む。

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 カリカリカリ……カリカリカリ……

 

 リズミカルに、それでいて痛みは最小限に。洗練された手つきで行われる耳かき、圧倒的筋肉から放たれる温もり。それらに包まれたヴィルシーナはされるがままに耳かきを受け続ける。そして、それは程なく終わりを告げた。

 

「大体の掃除は終わりましたわね。途中からはちゃんとおとなしくしてくれましたし、偉かったですわよ? ヴィルシーナさん」

 

「うう……そんな風に言わないで!」

 

 耳かきの気持ち良さから、途中からウトウトとし始めていた事を揶揄われ、ヴィルシーナが顔を赤くする。そんな彼女の耳にジェンティルは顔を近づけ。

 

 ふ~……ふ~……

 

 ふ~……ふ~……

 

「あひゃあああああ!?」

 

 突然息を吹きかけられ、驚くヴィルシーナ。それを見たジェンティルは笑みを浮かべながらも平然と答える。

 

「あら、ご褒美を差し上げたつもりでしたが……貴女には少々刺激が強すぎたかしら?」

 

「うううううう……!」

 

 ジェンティルに揶揄われ、悔しそうな顔をするヴィルシーナ。それを見たジェンティルは笑みを浮かべながら、ヴィルシーナの頭を撫でる。

 

「このままお昼寝しても宜しくてよ? 起きるまでの間、子守歌も必要かしら?」

 

「要らないわよそんなの!」

 

 顔を赤くして抗議するヴィルシーナに、微笑みを浮かべながら彼女の頭を撫でるジェンティル。その光景は、どこか、姉妹のような微笑ましさすら感じさせるものであった。

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