後、風邪引きました。小康状態のまま完治してくれませんが仕事が休めないのでしっかり休むことができません。ちくせう。
文化祭が近くなり、トレセン学園ではレースとはまた別の熱狂が渦巻くようになっている。
中等部、高等部が目立ちはするが、小等部の面々もまた、文化祭で活躍するために色々な催しが計画されている。そして、既にレースに出場しているフラワーもまた、これらの催しを楽しんでいる一人であった。
「ふ~……少し、疲れちゃったかも」
今日も、クラスの催しものの準備のために普段よりも忙しかったフラワーは、少しため息を付きながらも寮の自室へと向かう。G1ウマ娘である彼女であるが、短距離やマイルを主体としている事もあり、体力面で比較的劣っている事、小等部と言う事実もあり、疲労が溜まっている様子だ。
「ただいま~……」
「お帰りなさい、お嬢様」
「ブルボンさん、ただい……ふえええ!?」
疲労で下がった頭のまま自室の扉を開けるフラワー。中にいたブルボンの言葉に反応が遅れ、顔を上げて彼女に視線を移した時に、彼女は素っ頓狂な声を上げた。
「どうしました? そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をされて」
「い、いえ。あの、ブルボンさん、その恰好は……?」
視界の先に居るブルボンは、ロリータ風の黒と白を基調としたメイド服を着ていた。普段そう言った衣装を着る事のないブルボンに、フラワーが驚くのも無理はないだろう。
「この衣装ですか? 文化祭で私のクラスではメイド喫茶を催す事になりまして、その衣装です。似合わないでしょうか? お嬢様」
「い、いえ。すっごいブルボンさんに似ていると思います。でも、そのお嬢様って……?」
「男性ならご主人様、女性ならお嬢様と呼称するのがメイド喫茶のルールですので。どうでしょうか?」
「そう……ですね。なんだか新鮮な驚きもありますけど……ブルボンさんにそう呼ばれると、嬉しくなります」
花のような笑みを浮かべるフラワーにブルボンの口角も角度が上がる。
「さて……フラワーさん、折角ですし、私のご奉仕を受けて頂いても宜しいでしょうか?」
「ご奉仕……ですか?」
「はい。耳かき……受けませんか?」
自分のベッドに座って膝を叩くブルボン。それを見たフラワーは過去に耳かきをしてもらった事を思い出し少し顔を赤くするも、小さく頷く。
「お……お願いします」
「わかりました。では、こちらへどうぞ、お嬢様」
ブルボンがベッドに座り、フラワーを招くと、おとなしく膝枕に頭を乗せるフラワー。その頭を軽く押さえながら、ブルボンは耳かきを始める。
「お嬢様の耳は柔らかいですね。毛も手触りが良く……普段から手入れをちゃんとしているのがよくわかります」
「あの……ブルボンさん、そんな事言われると恥ずかしいですよぉ」
フラワーの耳を優しく触るブルボン。その言葉に顔を赤くするフラワー。
「失礼しました。では、早速耳かきを開始しましょう。まずはこちら側から開始します」
ブルボンが手にした耳かきをフラワーの耳に触れさせ、そのまま耳かきが始まる。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
耳の表面にこびりつく粉や埃。そう言った汚れが耳かきによって搔き集められ、ティッシュの上に捨てられていく。
「今日のレース練習の汚れも取れていますね。合わせて掃除していきましょう」
そう言うと、ブルボンは耳かきを器用に動かして砂埃や土埃も纏めて掻きだしていく。
「うう……ブルボンさん、あんまり言われると少し恥ずかしいです」
「失礼しました、お嬢様。では、掃除に集中していきます。カリカリカリ……カリカリカリ……」
オノマトペを呟きながら耳かきを動かすブルボン。軽快に動く耳かきと、囁かれるオノマトペ。二つの音がフラワーの鼓膜を震わせ、彼女の脳に沁み込んでいく。
「あ……ブルボンさん、そこ……痒いです」
「ここですね? カリカリカリ……カリカリカリ……」
耳かきの途中で生じた痒みを訴えると、それに対応し、耳かきがその部分を掻いていく。程なくして耳の表面が終わり、耳かきが奥に差し込まれ、本格的な掃除が始まる。
カリカリカリ……ガリガリガリ……
ベリベリベリ……ズリズリズリ……
表面についていたのとは別の、塊と言える大きさの耳垢を掻きだしていく。
「お嬢様、痛い所はありませんか?」
「はい、大丈夫です」
優しく耳を引っ張り、フラワーの耳を手際よく耳かきしていくブルボン。その手際の良さにフラワーは安心して身を任せる。
「ふむ……どうやら耳垢はこれで取りつくしたようですね。では、お約束を行います」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
顔が近づき、優しく耳の中に吐息を吹き込まれるフラワー。ブルボンの顔が近づいたことに思わず頬が赤く染まるが、ブルボンは指摘せずに吐息を吹きかける。
「これにてこちら側の耳かきを終了します。続いて、反対側の耳かきを開始します」
「お、お願いします」
カリカリカリ……サリサリサリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
フラワーの了承の元、耳かきが動き出し、耳の表面の汚れを掻きとっていく。
「カリカリカリ……カリカリカリ……お嬢様の可愛いお耳をカリカリカリ……」
「そ、そんな事言われたら恥ずかしいですよぉ」
「事実ですので、どうか恥ずかしがらないでください」
ブルボンの言葉に再びフラワーの頬が染まるが、ブルボンは耳かきを続けていく。
ガリガリガリ……ガリガリガリ……
ゴリゴリゴリ……ベリベリベリ……
「あ、少し奥の方に……固いのがありますね。少々力を入れますが、痛かったら言ってください」
「だ、大丈夫です。ブルボンさんを信用します!」
フラワーの言葉に頷いたブルボンは慎重に、奥にある耳垢を取り除き始める。
ガリ……ガリ……
ベリ……ベリ……ベリッ!
最後に少々力を入れると、大きな音と共に耳垢が剥がれ、引き出されていく。
「ふぅ……ちょっと、痛かったですけど……平気です」
「流石お嬢様です。我慢できて素晴らしいですが……やはり私自身まだまだ未熟である事を痛感しました。次はもっと上手にできるように勤めます」
少し涙目になりながらも健気に答えるフラワーにブルボンは感嘆の声を上げるも、次はフラワーに痛い思いをさせないようにしなければならないと改めて思う。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
最後に優しく息を吹きかけ、ブルボンは耳かきを置いた。
「これで耳かきはお終いです、耳の調子はどうですか? お嬢様」
「あ……はい、スッキリして……気持ち良いです」
「それは良かったです。これにてミッション、メイドのご奉仕を終了します。付き合ってくださってありがとうございます、フラワーさん」
フラワーの体を起こし、普段の呼び方に戻すブルボン。そして、耳かきを元の場所に戻そうと立ち上がる彼女だが、その手が不意に握られる。
「フラワーさん?」
「その……また、機会があったらしてもらっても……いい、ですか?」
頬を染め、俯き加減に尋ねるフラワーに、小さく笑みを浮かべたブルボンは彼女の頭を撫でながら答える。
「構いません、お嬢様が望むのなら」
その言葉に、フラワーの頬は更に赤く染まるのであった。