そのうちフラッシュはもう少し書いてみようかと思う今日この頃です。
トレセン学園の寮。多くのウマ娘達が勉学に、レースに、青春に励んだ後に心身を休め、明日への活力を溜める場所。そんな寮の一室で一人のウマ娘が居た。
「……勉強の時間は終了。ここからは休憩の時間ですね」
机の上に広がる勉強道具を片付け、軽く伸びをするウマ娘はエイシンフラッシュ。ドイツ出身のG1ウマ娘であり、予定通りの行動取る事で知られている。そんな彼女だが、勉強を終えて休憩に入っているが、集中できていないのか、何回も時計に視線を向けている。
「……ファル子さん、遅いですね」
フラッシュが呟いた相手はスマートファルコン、通称ファル子。ダートで活躍するウマ娘であるが、アイドルウマ娘としても活動している彼女はレース以外にも時間を使う事が多く、寮に帰るのが遅くなる事がしばしばあるのだ。
「……ただいまー……」
フラッシュが気を揉んでいると、扉が開きファル子が帰ってきた。だが、その顔は明らかに疲労が溜まっており、尻尾や耳も力なく垂れている。
「お疲れ様ですファル子さん……本当にお疲れのようですね」
「あーーー……うん、疲れたよー……フラッシュさーん……」
出迎えたフラッシュに抱き着くように座り込むファル子。
「お疲れ様です。ここで寝たらダメですから、少し失礼しますね」
身を屈め、ファル子を抱き上げるとそのまま彼女のベッドに連れて行くフラッシュ。だが、ふと彼女はファル子の耳に視線が向いた。
「ファル子さん、耳が少し汚れていますね。今日のイベントの影響でしょうか」
「本当? 後でお風呂に入ったらしっかり洗わないといけないね」
弱弱しく笑みを浮かべるファル子にフラッシュは少し考えこむと、ファル子に声をかける。
「ファル子さん、もしよければ耳かきをしましょうか? 本日は大変頑張られたようですし、ご褒美と言う事で」
「え? 本当? ……うん、お願いしちゃおっかな」
「わかりました。では、少しお待ちください」
ファル子をベッドに座らせた後、フラッシュは耳かきの道具を用意して彼女の隣に座る。
「では、失礼しますね」
「えへへ……フラッシュさんの膝枕、温かいなぁ」
中距離を走るフラッシュのふとももは持久性に優れた筋肉が多く含まれ、それは瞬発力に優れた筋肉よりも基礎体温が高くなりやすい。故に平熱が高くなりやすいウマ娘の膝枕は程よい温もりを与えてくれる。
なお余談ではあるが、ダートにおいて、同じG1ウマ娘達から赤鬼とまで称されるファル子の足も、普通のウマ娘からは考えられない程に鍛え上げられているため、平熱がかなり高い。
「では、掃除を開始します」
ファル子の耳を軽く引っ張り、フラッシュは外側の汚れを擦っていく。
カリカリカリ……サリサリサリ……
ゴシゴシ……ゴシゴシ……
耳かきの匙で埃や粉を搔き集め、目立つ汚れを取っていった後にはタオルで軽く拭いて全体の汚れを落としていく。
「んー……くすぐったい……かも」
「すみません。でも、少し我慢してくださいね。すぐに終わりますから」
「あ……あんまり早く終わらなくてもいいかも」
くすぐったさに耳が反射的に動いてしまうファル子の耳を軽く押さえながら掃除を続けるフラッシュ。そして程なくして掃除を終えると、耳かきをファル子の耳の中に差し込んでいく。
カリカリカリ……カリカリカリ……
カリカリカリ……カリカリカリ……
軽く、軽快に、リズミカルに響く音。その音が響くたびにファル子の耳の中の汚れが掻きだされていく。
「ふええ。フラッシュさん、ファル子の耳の中、そんなに汚れてる?」
「うーん、一概に汚れているとは言い難いと思いますが……綺麗とも言い難いですね。普通、でしょうか。ですから、そんなに気にしないでください」
耳の中から掻きだされる耳垢の量にファル子が心配そうにフラッシュに尋ねるが、フラッシュは問題ないと言わんばかりに笑みを浮かべてファル子の頭を撫でる。
「さぁ、梵天で掃除していきますから。そんなに心配ならちゃんと汚れを掃除しちゃいますね」
「うん、お願いします」
クルクル……コシュコシュ……
シュコシュコ……ススー……
耳かきが汚れを取った後の細かい汚れを梵天が耳の中を埋めながら動く事で纏めて絡めとっていく。そのくすぐったさにファル子が目を閉じて我慢していると、掃除を終えたフラッシュはそのままファル子の耳に口を近づける。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「はわっしゃあああ!?」
優しく吹きかけられた吐息に驚いたファル子の体がベッドから落ちそうになるが、事前にファル子の体に手を回していたフラッシュが支える。
「フフフ……フラッシュさん!?」
「ごめんなさい、ファル子さんが可愛くてつい悪戯しちゃいたくなっちゃって。でも、耳かきが終わった後に息を吹きかけるのはお約束ですから大丈夫ですよね」
「うう~~……フラッシュさんの意地悪!」
可愛らしく微笑むフラッシュにファル子は多少ジト目になってフラッシュを睨むが、気を取り直したフラッシュは気にすることなく、ファル子の残りの耳に手を添える。
「さあ、こちら側の掃除もしていきましょう」
「はぁーい」
カリカリカリ……カリカリカリ……
ゴシゴシゴシ……ゴシゴシゴシ……
残る耳も、まずは外側の汚れが同様の手順で落とされていく。
「ファル子さん。痒い所とかありませんか?」
「うん、大丈夫だよ」
カリカリカリ……ガリガリガリ……
ゴリゴリゴリ……ベリベリベリ……
外側の汚れが掃除された後は、そのまま中の掃除がされていき、固形の耳垢が掻きだされていく。
「うう……フラッシュさん、ちょっとそこ……今耳かきが当たってる部分、掻いてもらえる?」
「ここですね? では、カリカリっと……もう、痒みは大丈夫ですか?」
「うん、もう大丈夫」
クルクル……クルクル……
コシュコシュ……ススー……
細かい汚れを絡めとるため、梵天がファルコの耳の中を動く。
「さて。細かい汚れを取ったら……ファル子さん、どうします? お約束、やらない方が良いですか?」
「……お願いします」
「はい、わかりました」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
ファル子の了承の元、温かい吐息がフラッシュの口から吹きかけられ、ファル子はくすぐったさに体を震わせる。
「はいファル子さん。これで耳かきはお終いです。汚れは取れましたし、少しリラックスできたと思います」
「うん……なんだか眠くなってきちゃった……ふぁ……」
途中、驚かされる、場面もあったが、疲労が溜まっている事が変わるわけでもなく、ファル子は眠そに欠伸をする。
「では、このままお休みください。御飯やお風呂の時間になったらちゃんと起こしますよ」
「うん……お休みなさい……」
思考が回らなくなったファル子はそのままフラッシュの膝枕に全てを預けて眠りにつく。そんな彼女の頭をフラッシュは優しく撫でる。
「お疲れ様です……今ぐらいはゆっくり休んでくださいね」
穏やかな寝息を立てるファル子にそう呟かずにはいられないフラッシュであった。