キング×女トレーナーって、自分はそんなに目にすることがないので普段どういったやり取りをしてるのかはあまり想像できないですが、二人三脚上手くやっていってるんだろうなぁ、と思う今日この頃です。
私は中央のトレーナー。あのキングヘイローの担当をしている……と言ったらもしかしたら顔を知ってる人は居るかもしれない。居てくれると嬉しいな。
あのキングが一流のウマ娘として輝くのをサポートできている。と言うのは私の今後のトレーナー人生において最も輝かしいものになるだろう、と私は確信してる。それぐらい、あの娘は凄いんだ。
まぁ、彼女がどれだけ凄いと言っても私自身は平々凡々な中央トレーナーでしかないんだけどね。
それはまぁともかくとして、最近なんだか耳の中に異物感があって気がそぞろになる事があるし、夜も寝付けないのよねぇ。と言うわけで今日は彼女には自主トレをしてもらい、私は耳鼻科に行くことにするんだけど……。
「……キング、さっきから私を見てるけど、どうかしたの? 私の顔に何かついてる?」
「いえ、何もないわよ」
部屋の中で私を見てくるキングに尋ねるが素っ気なく返される。何かした覚えはないんだけど……っと、それより予定を伝えないと。
「……そうそう、キング。私、ちょっと午後から用事あるから、午後の予定は自主練にしてもらっていい? メニューは組んでるから」
「あら? 何か予定でもあったかしら? それとも緊急で何かあったの?」
「えっと、ちょっと耳の中が痒いのよ。指じゃ届かないし、自分で耳かきを入れるのは怖いから、耳鼻科で見てもらうつもりなの」
「そうなの……それじゃぁ、このキングが耳かきをしてあげるわ」
突然の宣言に私は困惑する。と同時に以前にキングに耳かきをされた事を思い出した。
「え? いやいや、そんなの悪いよ。担当ウマ娘にそんな事させられないし、メニューはちゃんと組んでるから……」
「遠慮なんてするんじゃないわよ。トレーナーの面倒を見るのも一流のウマ娘と言うものよ。さぁ、早く来なさい……と言うか、この話の流れ、前にもやったじゃないの。なんで遠慮なんてするのよ」
有無を言わさず手を掴まれ引きずられていく私。いや、確かにこれは前の耳かきの時にも同じ流れだったし、抵抗しても無駄なのはわかってるけど、担当ウマ娘とトレーナーって普通こういう関係にはならないもんでしょ? でも、抵抗しても無駄なのよね……。
「えっと、耳かきと、ウェットティッシュと……用意できたわよ。ほら、こっちに来て、頭を乗せなさい。動くんじゃないわよ?」
「あ、はい……お手柔らかにお願い……ね?」
「貴方の愛バを信用しなさいって」
抵抗も空しく彼女の膝枕に頭を置く事になったけど……前みたいに痛い事はされないように少しお願いすると頼もしい答えが返ってきた。返ってきたんだけど……キングも少しへっぽこな所があるのよねぇ……。
ゴシゴシゴシ……グリグリ……ギュッ……
ギュッギュッ……グリグリ……
そうして心配半分に身構えていると、ウェットティッシュで耳が拭かれ始めた。
「どう? 冷たくて気持ちいいんじゃなくて? 窪みもしっかりと擦ってあげるわ」
「あ、はい。お願いします」
耳の外側を掃除されるのは特に痛くもないし、安心して身を任せられる。ウェットティッシュでごしのキングの柔らかい指の感触も気持ちいい。
「まったく、こんなんじゃぁ、定期的に掃除してあげるしかないわね。一流のウマ娘のトレーナーとして、相応しい身だしなみをしなくちゃダメよ」
「え、いや、凄いのはキングだし、私なんて単なるオマケみたいなもんだし」
「それは謙虚じゃなくて嫌味になるわよ」
軽く頭を叩かれるが、そう言うものかなぁ? あんまりトレーナーがしゃしゃり出るものでもないと思うけどなぁ。
「えっと……んー……これかしら? ちょっと奥の方にあるから、深めに耳かきを入れるわよ」
「お、お願いね」
身構える私の耳に耳かきがゆっくりと差し込まれていく。
ガリッ……ガッ……ベリッ……
グイッ、ベリッ……ベリベリ……ズズズ……
耳かきが奥の方にある耳垢を剥がそうとしている音が耳の中で木霊し、耳かきの感触が痛いとも痒いともとれるような感触を伝えてくる。
「……キング、本当に大丈夫? 痒いやら怖いやらで、色々と怖いんだけど」
「大丈夫よ、愛バの事を信頼しなさいな……あ、取れそう」
その言葉通り、耳垢が剥がれていく感触と共に、一際大きく音が響いて、そこから耳かきが引き上げられていく。
「ふー、無事に取れたわよ。まったく、頑固な耳の汚れには困った物ね」
「あー……すっごいすっきりした。けっこう気になってたから、スッとしたよ」
耳奥の違和感がなくなり、解放感で耳の中が満たされる。はー……スッとしたぁ……。
「えっと……ん? あら、これでお終いかしら? 見た所他に目立つ汚れはなさそうだし……今回はこれ以上やる必要はなさそうね」
「あ、そうなの? それじゃ、これ以上手を煩わせなくて済んだってことだね……って、どうして頭を押さえられて……」
体を起こそうとしたらしっかりと頭を押さえつけられて、キングの顔が近づいてきたと思うと。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「はうあ……それは……予想外です……」
「ふふ、一流のウマ娘は、こう言う所にも気を回せるようにならないといけないもの。ほら、反対側をやるから、体を動かすわよ」
耳の中を優しく息が吹き抜けて、思わず体が反射的に動きそうになる。そして驚いている間に体が引っ繰り返されて、キングの腹にしっかりと抑え込まれた。
「んーと……あ、こっちにも汚れはあるわね。こっちも掃除していくわよ」
「お、お手柔らかに……お願いします」
最初がうまく行ったとは言え、まだ警戒を解く事はできず、キングの耳かきに身を固めてしまう。
ゴシゴシ……グリグリ……
グリッ……ギュッギュッ……
そんな私の警戒を解す様に、外側を優しくウェットティッシュで擦られていく。
「……キングって本当優しいよね……」
「あら、今更わかったのかしら? 一流のウマ娘は一流の気遣いもできるものなのよ」
一流としての矜持も勿論あるだろうけど、キングがそもそも優しい性格してるんだよねぇ。慕ってる娘をよく見るし。
カリッ……ゴリゴリ……
ベリベリ……ゴッ……ガリ……
「あとちょっと……で……よいしょ……」
「お……これ……気持ちいい……おああ……」
こっち側の耳の中は奥の方に耳垢はなかったようだけど、浅い所の耳垢を掃除されていくと痛み痒みよりも気持ち良さの方が勝ってきた。これなら次にやってもらう事があっても緊張しなくていいかもしれない……いや、やってもらう事がいけない事なんだけどね。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「あら、くすぐったい? でも身を捩ったらちゃんとできないじゃない。ほら、もう一度やるわよ」
「ほああ……ちょ、キング、やめて……」
スッキリした耳の中への吐息がむず痒く、思わず身を捩ってしまうと、キングにしっかりと抑え込まれて更に吐息が吹きかけられる。あ、ちょ、くすぐったいし、キングが近くなったから色々とヤバイ。
「はい、これでお終いよ。それで、今回はお昼寝をするのかしら?」
「あ……はい、させてもらえると嬉しいです」
前回耳かきされた時に痛かったことからつい意地悪で言ってみた事をナチュラルに実行しようとしてきている当たり、彼女の成長が窺い知れる。これはもう敵わない……かなぁ。