いやぁ、桐生院葵を書いた後にふとミークはどれだけ書いたっけ? と思って見返したらリクエストで地の文ありを書いていこう触れてなかったのを思い出したので書きました。
仕様上そうなるよね、とはなりますが。やっぱり全部に適性があるって、育成する側からしたらかなり頭を悩ませますね。それと、折角だからウマ娘公式オリウマ娘と男トレーナーや女トレーナーでもちょこちょこ書いていこうかなと思う今日この頃です。
トレセン学園。今日も多くのウマ娘達がレースに勝利するため、青春を謳歌するため、頑張っている場所だ。
さて、ウマ娘と一言で括っても、当然ながら彼女達は千差万別、様々な個性を持ち合わせている。それはレースにおいても同じで、得意な距離や走法、バ場等、彼女達の適性を見極めて適切な指導を行えるかどうかがトレーナーの手腕が問われるものであると言えるだろう。
しかし、俺が指導しているハッピーミークに関しては非常に難しいと言わざるを得ない。なぜなら彼女は……。
「……まったく不得意がない、と言うのも凄いよな」
模擬レースやトレーニングを行って出された結論は、彼女はいかなる距離、走法、バ場であろうとも一定の成果を出せると言う事であった。良い意味で言えば欠点がなく、悪く言えば長所がない。
例えばミホノブルボンであればどの距離において成果を出せるが、最も得意なのは中距離だし、逃げ以外の走法は非常に苦手である。アグネスデジタルであれば芝もダートも走れるが、短距離は走れないし、走法も差しを最も得意としている。
このようにある程度オールマイティーに走れるウマ娘も居ない事はない。だが、ミークのように全てにおいて同じ成果を出せるウマ娘等初めてだ。
「はー……どうするかなー……」
苦手はなく、長所がない。つまり、彼女がこの先のレースで勝てるかどうかは全て俺の手腕にかかっているといえる。さて、本当にどうしようかな……。
そんな風に頭を悩ませていると、部屋の扉が叩かれてミークが入ってきた。
「……トレーナー。少し、良いですか?」
「ミーク? どうかしたのか?」
「……トレーナー、悩んでいると思って……私、トレーナーが決めてくれたならどの距離でも、どのバ場でも……頑張ります」
「う……そ、そうか。うん、そう言ってくれるのは嬉しいが、やっぱり悩むな」
悩みをズバリ的中されて言葉に詰まるが、取り敢えず取り繕う。うーん、担当にここまで言わせてしまうとはなぁ……。
「……トレーナー、悩みすぎは体に毒。少し休むのが一番……です」
「ん、ああ、そうかもな」
そう指摘されるが、レースに向けての体作りをする必要のない俺が休むのもなぁ……。
「……トレーナー。これはまたゆっくり寝てもらう必要があります。だからこっち、来てもらいますね」
ミークはそう言うと、俺の引き出しから耳かきを取り出したと思うと、止める間もなく俺を持ち上げ、ベッドに強制的に移動させてくる。そして、俺が起きて逃げようとするよりも先に、俺の頭を彼女の膝枕の上に納められる事となった。
「いや、おい、ミーク。これはどういう状況だ?」
「……トレーナーが疲れてるなら癒してあげるのが担当ウマ娘の役割ですから。おとなしくしていてください」
それはどう考えても別に担当ウマ娘の役割ではないと思うのだが、そう指摘するよりも先に耳が彼女の手で包まれる。
グリグリ……グリグリ……
モミモミ……モミモミ……
おお……しっかりと指で押されると……耳が温かくなって、気持ち良くなってくる。本当にちゃんと人間のツボの位置を勉強してるんだな。それにヒンヤリとした彼女の指先も気持ちいい。
「ミークの指って。なんかヒンヤリしてるんだよなぁ……先端冷え性とかじゃいよな? ちゃんと体調整えてるか?」
「……大丈夫大丈夫。ミークは嘘吐きません」
それは本当に大丈夫な時の返し方か? そう思っていると、彼女の指が離れる。
「……耳かき、始めます。おとなしくしてください、トレーナー」
「あ、うん。わかった」
俺が了承すると耳かきが耳の中に入って……少しして、なにやら横側が眩しくなってきた。
「……あ、これでも良く見える……かも」
横目で見ると、スマホのライトで俺を照らす姿が見えて、眩しさから思わず目を逸らす。俺の耳かきなんて特に先端が光るものではないからスマホライトで代用してるわけか。
カリ……カリカリ……カリカリカ………
カリカリカリ……ガッ……カリ……
耳かきの音が聞こえ、耳垢が剥がされる感覚がしてくるが……なんだろう、なんか、前より手間取ってないか? たまに耳かきが変な所に当たったりもするし。
「えーと、ミーク? 本当に大丈夫か? なんか、前よりちょっと手間取ってないか?」
「……大丈夫。スマホで明かりにしてるから、両手が塞がっているです。ミーク、嘘付かない」
カリカリ……ガリガリ……
ベリベリ……ベリベリ……
だから、その返答の仕方は本当に大丈夫な時の返答なのか? そう思うも、今更動くわけにもいかずに身を任せていると……おっ、うまく剥がれたようだ。
「……うん、無事に剥がれました。この調子でやっていきます」
「うん、ちゃんと掃除できてるなら良いよ、うん」
無事に耳垢が引き上げられると、思わず安堵してしまう。そして、そのまま耳かきが入ってくるかと思ったら、梵天が中に入ってきた。
「……では、細かい粉のを掃除をしていきます」
「おう、頼む」
ゴシゴシ……ザリザリ……
ザリザリ……ゴシゴシ……
こっちは思ったよりも短く終わった。いやまぁ、耳の穴が変に曲がってるみたいだから、梵天も無理に押し込むなんてできはしないか。
「……じゃぁ、最後にお約束」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「ふぅ……」
「……トレーナーの新鮮な表情、もっと見たいかも……しれないです」
背筋を走る快感に思わず口角が上がると、ミークから淡々とそんな事を言われてしまった。本気なのかどうかわからないが、本気だとしたらよくわからない感性だな。
「いや、こんな顔眺めてても面白くもないだろ。おかしな事を言うな、ミークは」
「……そんな事、ないですよ」
俺の問いに僅かに頬を膨らませるミーク。無表情に見えるけど、よくよく見ると細かい所でちゃんと感情表現してるんだよな。
「……では、反対側をしていきます。それ、ころりんころりん」
なんて思ってると、あっさりと転がされてミークの腹の方を向く形で耳かきをされる事になってしまった。
グニグニ……モミモミ……
ギュッギュッ……グー……
「……トレーナー。耳のマッサージなら、耳かきと違って毎日やっても、問題……ない、ですよ」
「えーと。うん、ご厚意だけありがたく頂きます。流石に誰かに見られたら怖い」
当然だけど、未成年の担当ウマ娘にこんなことをされているなんてバレたらトレーナー人生の終了である。頻度が高くなればなるほどバレる可能性が高くなるのだから、毎日なんてとても無理だ。
カキカキ……カリカリ……
カリカリ……ペリペリ……
「……トレーナーの耳の中、もう少し見えやすかったら良いのに、と思わなくもない……それをちゃんとやる私は偉いと思う」
「あ、うん、その、ありがとうございます。ミークは偉いです」
本当に偉いのなら無理にやらないで欲しいのだが……まぁ、好意の表れだと思ってヨシとしておこう。実際、やられて嬉しいと思ってしまっている部分もあるのだ。
サリサリサリ……サリサリサリ……
ザリザリ……ザリザリ……
「……綿棒が黄色くなりましたし、これで十分掃除できましたね」
「うーん、こうして直視させらえれるのはちょっと来るものがあるな……」
わざわざ汚れた綿棒を見せなくても良いんだぞ? ちょっとこう、微妙な気分になってしまうから。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
「……はい、これでお掃除完了……です」
「ふー……あー……気持ち良かった……」
最後の吐息も終わり、さて移動しようかと起き上がろうとしたら頭を抑えられた。
「……それではこのまま寝てください。疲れをとるのには寝るのが一番……ですから」
「いや……前もだけど……担当ウマ娘に膝枕してもらうのって、色々ヤバイと思うんだが……」
「……逃がさない……ですから」
「ア、ハイ」
しっかりと抑えられて逃げようのない俺は、諦めて寝るしか道がないようだ。これは……そのうちバレたら怖い事なりそうだよな……たづなさんにどんな目に合わされるか……。