トウカイテイオー。二冠ウマ娘であり、メジロマックイーンを始めとした多くのウマ娘とも切磋琢磨し実力を鍛え上げる、優秀なウマ娘の一人である。
しかし、彼女自身はその戦績とは裏腹に非常に子供らしく、言動も相まって、幼くみられる事が多い。それは今日であってもだった。
「ねーシリウスー、レースしてよー」
「やかましい、私はお前ほど暇じゃねえんだ他所へ行け」
テイオーを邪険に扱うのはシリウス。ルドルフに何かと絡むシリウスはテイオーにとっては良い感情を抱く先ではないはずだが、テイオーからの印章は特に悪いものでもなく、むしろこうしてテイオーの方が積極的に絡みに行くのだ。
「大体言う先が違うだろうが。お前の愛しの会長様に言ってきたらどうだ」
「もう言ったよー。そしたらエアグルーヴが会長の邪魔をするなって引きずり出されたの。酷くない? カイチョーは別に走りたくないなんて言ってないのにさー」
「あいつの現状もわからずに言ってきたお前が悪いだけじゃねーか。いい加減離れろ!」
生徒会長であるルドルフは当然多忙である。その為アポもなしにレースをしようと言っても簡単に応じられる時の方が少ないのだが、なぜかルドルフを慕うテイオーよりも、反発するシリウスの方が事情を汲むことができていると言う奇妙な状態であった。
「良いじゃーん、シリウスぐらいの実力がちょうど良いんだもん」
「……おい、今なんて言った? 私ぐらいだと? ……良いぜ、その挑発乗ってやる」
テイオーの何気ない一言がシリウスのプライドを刺激する。これが言ったウマ娘が大した成績も持っていないのであれば一蹴していただろうが、なまじテイオーが優秀だからこそ、このセリフはシリウスを強く刺激したのだ。
「あ、やる気になってくれた? ヨーシ、なら勝負だー! 絶対負けないもんねー……あ、そうだ、負けたら勝った方の言う事を一つ聞かないといけない、とかどう? まぁ、僕が勝つんだけどね」
「はっ、言ってろガキンチョ、私を挑発した事後悔させてやるぜ」
そうして二人は模擬レース場でレースを行う。その結果……。
「わー、シリウスの膝枕ってちょうど良い高さだねー」
「クソッ……なんでなんだよ!」
見事勝利したテイオーは、現在シリウスの膝枕の上に頭を乗せていた。レースの勝敗が決した後、意気消沈して沈み込むシリウスの手を引っ張って、自分の寮の部屋に連れ込んだテイオーは、そのまま流れるようにシリウスをベッドに座らせて、自分はその膝の上に頭を乗せたのだ。
「おいテイオー、なんなんだこれは。なんで私がお前の事を膝枕してやらなくちゃいけない……と言うかお前もなんでこんなのやらせてるんだよ」
「え? だってカイチョーが、シリウスの膝枕はとても寝心地が良かったし、耳かきも上手だったから僕にもしてもらえって言ったんだもん」
「あんのやろー……!」
先日ルドルフに耳かきをすることになった件を思い出し、眉間に皺を寄せながら怒りに震えるシリウス。そんな彼女をしり目に、テイオーは耳かきをシリウスに差し出す。
「ほらほら、シリウスは負けたんだから、言う事聞いてよね」
「次それ言ったら張り倒すぞ……はぁ……」
トレセン学園に置いてレースの勝敗によって決められた約束事は決して軽くない。それに、自分が勝っていたら勝っていたで、当然何かやらせるつもりであった手前、無理に拒否すると言うのは彼女のプライドが許さなかった。
「チッ……動くなよ? 動いて膜ぶち抜いても知らないからな?」
「怖くない!?」
恐怖の声を上げるテイオーをよそに、シリウスは耳かきを始める。
カリカリ……ゴリゴリ……ベリベリベリ……
バリバリ……ガリガリガリ……ズリズリ……
テイオーの耳を傷めたりしないよう、慎重に差し込まれた耳かきが、早速中の耳垢を剥がしていく。
「……おい、なんか耳垢多くないか? ちゃんと手入れしてんのか?」
「ちゃんとしてるよー……マヤが」
「……下手な奴にやらせてると、汚れを奥に押し込んで余計に酷くなることがあるって知ってるか? そいつ、上手なのか?」
「……わかんない」
シリウスの指摘にマヤへの信頼が揺らぐテイオー。それを気にせずシリウスは耳かきを続ける。
ゴリゴリ……バリバリ……
ガリガリ……ベリベリ……
重厚な音を奏でながら耳かきは耳垢を剥がしていく。そして掻きだされる耳垢の量はかなりのものがあり、シリウスの言葉の信ぴょう性を増すのに十分であった。
「……悪い事は言わねえから、一度そいつに頼むのやめて他のやつにやらせるか自分でやってみろ。それでもダメならお前の体がどっか悪いんだよ」
「……そうしとく」
最後の耳垢が剥がされ、耳かきが引き抜かれる。異物が無くなり軽くなった耳の感触に、思わず耳そのものが動き出す。
「んー……なんかスッキリしたー。マヤにやってもらうとここまでスッキリした事ないよ。シリウスって耳かき上手なんだね」
「言ってろ。おら、反対側もやるぞ」
嬉しそうに動くテイオーの耳を強引に抑えて、シリウスは耳かきを始める。
ゴリゴリゴリ……バリバリバリ……
ビリビリ……ベリベリベリ……ザリザリザリ……
先ほどよりも一際大きく耳垢が剥がれる音が響き、剥がされた耳垢が次々にティッシュの上に捨てられていく。
「……これ、下手したら耳の中詰まったんじゃないのか?」
「言われてみたら……ちょっと、聞こえづらい時があったかも」
「悪い事は言わないから、次は他のやつにやらせろ」
「……わかった」
そんな事を話している間にも耳垢が剥がされていき、最後に大きく変色した耳垢が剥がされると、シリウスは耳の中を覗き込んで確認する。
「よし、これで終わったぞ。じゃぁ私はこれで……っておい、なにしがみついてやがる、離せ」
「えー、だって梵天とか、お約束とか、お昼寝とかそう言うのまだじゃん。ちゃんとやってよシリウス」
「膝枕と耳かきだけで十分だろうが! ……くそ、剥がれねえ!」
強引に剥がそうとするシリウスに、しがみ続けるテイオー、暫しの間戦いが続いたが、根負けしたシリウスは額に大きな汗を浮かばせながら、大きくため息を吐いた。
「ちくしょー……覚えてろよ」
クルクルクル……コシュコシュコシュ……
ススー……ススー……
悪態をつきながらも、丁寧な手つきでテイオーの耳の中の細かい汚れを梵天で掃除していくシリウス。
「んん……くすぐったい」
「変な声出してんじゃない……おら、梵天はこれでお終い、後はさっさと寝ろ」
枕を手にしたシリウスはそれをテイオーの顔面に押し付ける。
「む……シリウス、お約束はー?」
「あんな事やらねえよ。やれって言うなら本気で蹴落とすぞ」
「むー……」
ふくれっ面になるテイオーだが、シリウスが本気で言っている事を察し、おとなしく枕で顔を覆う。しばらくして、シリウスの膝枕の上で寝息を立て始めたテイオーであった。
「やっとおとなしくなりやがったか……くそっ、こんなガキに負けるなんて、私も鈍ってるな……」
枕がずり落ち、穏やかな寝息を立てているテイオーを見ながらため息を吐くシリウス。
「……次は負けないからな、覚悟しておけ」
そう言いながらも、ずり落ちそうになるテイオーをちゃんと支えて元の位置に戻す、なんだかんだで優しいシリウスであった。
シリテイで耳かきを書きました。
いやぁ、一回、なんとかキャラを書くと、なんとか書き進められるようになりますね。シリウスはなんだかんだ書こうと思っても書けてなかったキャラの一人なので。
シリウスおいたん、のタグをつけるほどかと言われたら首を傾げたのでつけてはいませんが、シリウスはなんだかんだテイオーには甘いと良いなぁと思う今日この頃です。