たづなさんが深堀されましたし、次のシナリオではこの二人が深堀されても良いんじゃないかと思う今日この頃です。
ある日のトレセン学園、ハッピーミークが歩いている。その姿は普段と変わらないのんびりとしたように見えるが、彼女と親しい者からしたら、何かしらを決意しているような、そんな気迫を漂わせていた。
そして、彼女は自身のトレーナーである桐生院葵の部屋に到着すると、扉を開ける。
「……トレーナー、少し良いですか?」
「ミーク? どうかしましたか?」
パソコンで作業していた葵が画面から顔を上げてミークを見つめる。それに答えず、ミークは葵の後ろに回り込むと、彼女の両肩に手を置く。
「……お世話になっているお礼に、マッサージをしてあげます」
「え? あ、ありがとうございます……あ、気持ちいい」
ミークが葵の肩を揉んでいると、葵が気持ち良さそうに体を弛緩させる。しかし、一方でミークは薄い表情の中に驚きを隠せないでいた。
「……凝りすぎじゃないですか?」
「そうですか?」
ウマ娘の握力をもってしても固いと感じる凝り。デスクワークに留まらず、一部からはウマ娘を凌駕する身体能力があると噂される葵は、ミーク用のトレーニングをまず自身で実践して結果を確かめている。そう言った疲労も相まって、ミークが驚く程の凝りがあるのだろう。
暫しの間、ミークは真剣に葵の肩を揉んでいく。それがひと段落して、ミークが両手に痛みを感じている頃にはすっかり葵の肩は揉み解されていた。
「んん……肩が軽い。確かにミークの言う通りちょっと凝ってたみたいですね」
「ちょっと……? それより、チャンスです……」
「へ? ひゃっ!?」
ミークは葵を持ち上げると、そのままソファーに寝かせ、自分の膝枕の上に葵の頭を乗せる。
「あの、ミーク? これは一体?」
「普段耳かきもしてもらってますから……これもお礼です……普通に言っても逃げられそうでしたから……」
「いやいや、そんなミークからの好意を逃げるなんて」
「でも……トレーナーだから、気持ちだけで充分……とか、言いそうでした……」
「……それはまぁ……」
ミークの指摘に、それは反論できない、と言い淀んでしまう葵。そうこうしている内に、ミークが葵の耳を両手で包む。
モミモミ……グリグリ……
ギュッギュッ……グッグッ……
的確なツボへの指圧で、葵の耳の血流が促進され、耳全体が温まる。
「どう……ですか? 本を読んで、ツボの場所とか……勉強してみました……」
「んんー……気持ち良いです、ありがとう、ミーク」
「お礼は……まだ早い……です」
一通りの指圧を終えると、ミークは耳かきを葵の耳に差し込んでいく。
サリサリ……サリサリ……
カリ……カリ……
耳垢を探して覗き込むミーク。だが、これと言った塊もなく、僅かな粉や、小さなものしか見当たらない。
「……トレーナー……普段から掃除……してます?」
「あはは……まぁ、人並みには自分で掃除してますよ」
思ったよりも掃除のし甲斐のない耳の様子に、少ししょんぼりして耳が倒れるミーク。だが、気を取り直し、今度は梵天を差し込む。
クルクル……クシュクシュ……
ススー……ススー……
耳かきでは取れない細かい粉が梵天に絡めとられていく。流石にこちらの方まで完全に綺麗と言うわけでもなく、梵天には粉の汚れがしっかりと絡めとられている。
「……掃除、できてますね、ブイ」
「ん、ありがとうございます、ミーク」
梵天を引き抜いた時に汚れを確認し、気を取り直したミーク。そして、動こうとする葵の頭をしっかりと抑えると、彼女の耳に顔を近づけ。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
柔らかい吐息が葵の耳の中を通り、彼女の背筋を僅かに逸らすだけの刺激を与えてくる。
「トレーナー……その反応は可愛い……です」
「あの、それは流石に恥ずかしいんで言わないでください」
ミークの言葉に恥ずかしそうに視線を逸らす葵。その隙を逃さず、ミークは葵の体を持ち上げて反転させ、反対側の耳を上に向けさせた。
「……では、こっちもやっていきます……落ちそうになったら、お腹に抑え込みますから」
「ちょ、ミーク、それは本当に恥ずかしいですから!」
慌てる葵をしっかりと抑えて、ミークは掃除を始めていく。
モミモミモミ……ギュッギュッギュッ……
グリグリグリ……グリグリグリ……
まずはマッサージをしっかりと行い、葵の耳の凝りを取り除いていく。
「……この辺り、凝ってますね。ちょっと固いですから……しっかり、指圧して……」
「んん……ミーク、その辺りもうちょっと、お願いします」
カリカリカリ……サリ……サリサリ……
ザリザリ……ザリザリ……
こちら側の耳も、大した汚れがないためスムーズに終わっていく。
「……なんだか、あんまりやりがいがない……です」
「アハハ……ごめんなさい」
クルクルクル……ススー……ススー……
シュッシュ……クルクル……
耳かきでは歯ごたえを感じず、梵天で掃除していくミーク。
「……やっぱりこっちの方が……汚れが良く取れます……」
「あ、ミーク、そこ、ちょっとむず痒いかも」
「この辺り……ですね……」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
梵天が終わると、優しく吐息が吹きかけられ、耳かきの終わりを告げる合図となる。
「これでお終い……です。なんだか、物足りなかった……です」
「いえいえ、ミークのおかげですっきりしましたよ。ほら、なんだか体も動かしやすいです」
ミークの膝枕から立ち上がると、その場で軽く動く葵。そして、そのままミークの両手を掴む。
「ミーク、ありがとうございました」
「……そう言ってもらえると……嬉しい……です」
「あれ? ちょっと顔が赤くありません? もしかして体調が悪いんですか?」
「……気のせいです」
葵の言葉に少し顔が赤くなるミーク。それに気づいた葵が心配そうに声をかけるも、ミークは横を向いて誤魔化すばかりであった。