トレーナーからしたら、優俊達に囲まれたダンツを育成するのって、かなりの緊張を強いられると同時に、やり甲斐を感じるのかもしれません
で、だからこそ、こういう風にダンツに甘える時は甘える方向に行くかもしれません、知りませんけど。
俺はトレセン学園に所属する一般的なトレーナー。そして、俺が担当しているウマ娘はダンツフレームと言う名前だ。
アグネスタキオン、ジャングルポケット、マンハッタンカフェ。優駿である彼女達と同期であり、また友達でもあるダンツは、彼女達と比べるとどうしても成績上でパッとしないものがある。いや、普通に考えればダンツも十分な優駿なんだが、自称普通のウマ娘であるヒシミラクルと同室なのも、彼女の自己評価を下げる要因になってると思う。普通のウマ娘はG1で勝てないんだよ。
でも、俺はダンツを信じている。彼女の素質、そして輝こうとする意志があるなら、決して彼女の友人たちと見劣りするものじゃない、と証明できる。だから、俺も頑張って彼女を支えないといけないんだ。
と言うわけで、今日は彼女と座学の時間だ。ダンツの先輩にあたるテイエムオペラオー、メイショウドトウ達のレースを確認する事で、どのように走るのが良いか。そして、彼女達の癖を見抜く事で、戦うときにどう立ち回るべきか。それを学ぶのもまた、実際に体を鍛えるのと同様に大切な事なんだ。
そんな事を考えながらも座学を進めていると、アラームの音が聞こえてきた。もうこんな時間か。
「ふぅ……休憩するか、ダンツ」
「あ、はい、わかりました。じゃぁお茶淹れてきますね」
休憩を伝えると、ダンツは二人分のお茶を淹れてくれて、一つを俺の前に置く。コップを手に持つと、温かさが手に伝わってくる。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとうダンツ……ふぅ、ダンツの淹れてくれるお茶は美味しいな」
「えへへ、ありがとうございます」
喉を通ったお茶の温もりが、クーラーで冷えた体を温める。ふぅ……人心地付けた気分だ。
だが、そんな中で不意に耳の奥に強烈な痒みと違和感を覚え、つい反射的に耳の中に指を突っ込んでしまう。いかんな、ダンツの前で無作法をしてしまった。
「うーん……ああ、ごめんダンツ、行儀の悪い事をしちゃったね」
「あ、いえ、大丈夫です。でもトレーナーさん、もしかして耳の中が痒いんですか?」
「ああ、なんか妙に痒くて……奥の方だから指も届かないのはわかってるんだけど、つい反射的に、な」
「じゃぁ、私耳かきしてあげますよ」
「うん、お願いしようか」
ダンツの提案に、つい前のめりに了承してしまった。まぁ、前にお願いした事もあるし、実際、誰かにやってもらわなきゃどうしようもないだろう。大丈夫大丈夫、バレなければ問題なんてないのだよ。
「お待たせしましたトレーナーさん、こちらへどうぞ」
「ああ」
ベッドに腰掛けるダンツの隣に腰を下ろし、そのまま彼女の膝枕に頭を乗せる。彼女のトモの固さを実感している間に、耳が摘ままれた。
「んー……あ、これ……かな? トレーナーさん、これですか?」
「おぅ……つ、突かれると余計痒い」
確認の為に突かれただけで、猛烈に痒みが襲ってくる。は、早く掃除してくれ……。
カリカリ……カリカリ……
ガリガリ……ペリッ……
耳の中で軽い違和感を感じたと思うと、そのまま耳垢が引き上げられ、その後に軽く掻かれると、一気に解放感を感じ、思わず大きく息を吐いてしまった。
「トレーナーさん、どうですか? 痒みは収まりました?」
「あ、ああ。スッキリしたよ、いやー、助かった」
ふう……これで当分痒みに悩まされないな。さて……ここでお終い、と言うのも味気ないし、ちょっと続きをお願いしようかな。
「トレーナーさん、折角ですからこのまま続けていきますね」
「あ、うん、お願い」
俺がお願いするよりも先にダンツから提案され、一瞬言葉に詰まったけど、素直にお願いする。いやぁ、こちらの考えを察してくれるとは、やっぱりダンツは良い娘だなぁ。
カリカリ……ガリガリ……
コリコリ……パリパリパリ……
先ほどの耳垢とは別の場所が掻かれていき、視界の端で剥がされた耳垢がティッシュに捨てられていくのが映る。案外耳垢が溜まってたみたいだな。その中でも一際痒みを感じたのが最初の耳垢だったわけか。
「うんしょっと……これで大体掃除は終わっちゃいましたね。この耳かきは梵天もないですし、後はお約束、でしたっけ」
「うん、お願いダンツ」
前にお願いした事をキチンと覚えてくれてただけじゃなくて自分から言ってくれるとは、ありがたいなぁ。
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
吐息が耳の中を通り、スッキリとした耳の神経が刺激されて思わず体が一瞬強張り、その後には気持ち良さから顔が惚けてしまう。はぁー……やってもらうと気持ち良いなぁ。
「トレーナーさん、反対側も、していきましょうね」
「ああ、お願いするね」
呆けたままだったが、ダンツに促されて彼女のお腹の方を向く形で体を動かす。俺が動き終えたのを確認してから、ダンツは耳を摘まんで耳かきを始めた。
カリカリカリ……バリバリ……
ガリガリ……ゴリゴリゴリ……
先にやった耳と同じような感じで掃除が進んでいく。どうも変に取りにくい耳垢もなくて順調に掃除は進んでるみたいだな。まぁ、今は体勢的に剥がされた耳垢が見えないから、どんな耳垢が取れてるかまではわからないのだが。
「トレーナーさん、痛くないですか?」
「お……いや、大丈夫大丈夫」
剥がされる時に一瞬痛みを感じて思わず体に力が入ったけど……まぁ、問題ない痛み、つい反射的に力が入っただけだとダンツに伝えて安心させる。
「トレーナーさん、これで最後の耳垢が取れましたよ。後はお約束、しちゃいますね」
ふ~……ふ~……
ふ~……ふ~……
どうやらさっきのが最後の耳垢だったらしく、耳かきが引き抜かれて吐息が耳の中を通り、耳掃除の終わりを告げる。
「トレーナーさん……休憩が終わるまでお昼寝、します?」
「うん、お願いするね」
どうやらこのままお昼寝までさせてくれると言う事なので、お言葉に甘える。まぁ、ダンツは真面目だから、ちゃんと休憩が終わる頃に起こしてくれるだろう。ふぁ……最近仕事もきついし……ゆっくり寝させてもらおう……。