追記
日刊ランキング43位に入る事ができました。これも皆々様のおかげです。ありがとうございます。
また、感想、誤字報告、お気に入り登録、評価等々も誠にありがとうございます。
ライスさんとの戦いを終え、私は無事に三冠を達成しました。これも全てマスターのおかげです。その為、今日は彼にお礼をするつもりです。その為にも……
「耳かきよし、ローションよし、蒸しタオルよし、綿棒、ピンセットよし」
一つ一つ、耳かきの道具の確認をしつつ、マスターを待ちます。三冠達成までの間、耳かきをする暇もなく私達はトレーニングに励みました。きっと、マスターの耳の中には多くの耳垢があるでしょう。それを掃除しなければなりません。
「ブルボン、待たせたな」
不意に部屋の扉が開かれ、マスターが入ってきました。
「いえ、大丈夫です。それでは早速、マスターの耳かきを始めたいと思います」
そう言って、私はまず部屋の鍵を確認。それからカーテンが開いてないかも確認します。マスターは耳かきをしている姿を誰かに見られたくないと仰っていたので、この辺りは念入りに確認を行います。
「チェック項目の確認を終了、耳かきに最適な環境を確認しました。それではマスター、こちらへどうぞ」
「ああ、頼むよ」
正座をし、膝を叩くと、マスターは恥ずかしそうに頭を掻きながらも、大人しく頭を載せてくれました。さぁ、いよいよ耳かきの開始です。
「まずは、耳周りの掃除を開始します。ゴシゴシ……ゴシゴシ……」
蒸したタオルでマスターの耳の外側、裏側を丁寧に擦っていきます。この辺りは加齢臭の元にもなるので、念入りに掃除をしなくてはなりません。
「マスター、耳の後ろに汚れが溜まっています。最近は体をちゃんと洗っていらっしゃるのでしょうか?」
「あー……ブルボンのレースの調整であれこれしてたからなぁ……」
「では、これからはちゃんと洗う事を強く進言します。私は三冠ウマ娘になりました。マスターも今後は一層テレビへの出演などが増えるはずです」
マスターが不潔である。等と思われるのは不本意です、ここは私がしっかりと掃除してあげなければ。
「耳の外側のタオル拭き、完了しました。これより綿棒による掃除に移ります」
タオルを脇に除け、綿棒を使って耳の外側を掃除していきます。
「ゴシゴシ……ゴシゴシ……ギュッギュッ……ギュッギュッ……」
熱気で浮かび上がり、水分を吸ってペースト状になった汚れを綿棒で擦り、落としていき、その途中で各所の耳ツボを押して、マスターの耳に刺激を与えていきます。
「マスター、痛かったりしないですか?」
「ああ……大丈夫だよ」
その言葉に安心を覚え、私は外側の掃除を続けていきます。汚れを取りすぎた綿棒を捨てるころには、十分に汚れが取れたと判断します。
「外側の汚れはほぼ取れました。これより、耳の中の掃除を開始します」
そう言って、私はマスターの耳の中に耳かきを差し込んでいきます。金属製の耳かきが耳の中に触れた瞬間、マスターの体が少しだけ震えました。
「マスター、大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫。ちょっと驚いただけだ、続けてくれ」
マスターがそう言ってくれたので、耳かきを再開します。まずは手前、小さな奴から。
「カリカリ……カリカリ……カリカリ……」
耳かきの動きに合わせ、マスターの耳元で呟いていると、マスターの口元が僅かに緩んできました。すると、私の中の心もざわついてきます。
(これは、レースには無用の感情。でも、今は……)
「カリカリ……ガリガリ……マスターの耳垢、もうすぐ取れます……ガリッ……ガリッ……」
この感情をもっと味わいたいと、囁きながら耳かきを続けていき、しかし、耳垢はあっさりと取れてしまいました。
「一つ目の耳垢の除去を完了。マスター、いかがですか?」
「ああ……痛気持ちいいな……」
すぐに取れたのは残念ですが、マスターの緩んだ顔を見れた事に心が満足感を覚えます。さぁ、次に取り掛かりましょう。
「次は……パッと見える範囲には確認できません」
改めて中を見ますが、どうやらマスターの耳の中はそんなに汚れていません。それ自体は嬉しい事なのですが、物足りないです。どこかにないでしょうか?
「マスター、少し奥の方を調べてみます。宜しいですか?」
「ん? ああ、任せるよ」
マスターからの承諾を得て、私は耳かきを奥の方、見え辛い所に伸ばしていきます。ん? これは……。
「な、なぁブルボン、何かその辺……耳かき差し込まれたらやけに痒くなってきたんだが……」
「はい、見え辛いですが、恐らく大型の耳垢があります。これよりこの耳垢の除去に集中します」
見え辛いため、耳かきから伝わる感覚に意識を集中させます。上部をなぞり、端の部分を何回かひっかき、大きさと固さを確認します。
「これは、かなり硬いと判断します。少しづつ、時間をかけて取り除きます」
「マジか……集中って事は、囁きは?」
そう言ってきたマスターの声音は物足りないというのを多分に含んだ声音でした。これは、囁かないわけにはいかないです。
「マスターのご要望ならば、囁きながら耳垢を取り除きます」
「じゃぁ、それで頼む」
「了解しました……ガリッ……ガリッ……」
マスターの要望に従い、再び囁きながらの耳かきとなります。耳垢は表面を掻いても剥がれる気配がないため、端を少しでも剥がし、そこから少しづつ剥がしていきます。
「ガリッ……ガリッ……ガッ……ガッ……」
耳垢をひっかくたびにマスターの眉間に皺が寄りますが、追撃の手を緩めるわけにはいきません。中途半端な所でやめたほうが余計に痒いですから。
「マスター、我慢が辛かったら私のスカートを握ってください」
「う……すまん」
一言謝ると、マスターはしっかりとスカートを握りました。これで、少しは我慢できればいいのですが。
「ガリッ……ガリッ……ガ……リッ……」
再開した耳かきで、ついに端が少しづつ捲れはじめました。このまま、剥がれた部分に耳かきを差し込んで、一気にクイッと持ち上げて……。
「ベリッ……ベリッ……ベリッ……!」
剥がれ始めた耳垢はそのまま一気に剥がすことができました。そのまま、落とさないように慎重に持ち上げ、ティッシュの上に捨てて改めて観察します。
「ミッションクリア。かなりの大物が取れました」
ティッシュの上に捨てられた耳垢は、先程とった小さい物よりもかなり大きく、耳かきの先端部分を隠す程の大きさをしており、分厚さもかなりのものです。色も薄い黄色っぽいものでなく、こり固まった濃い茶色をしています。
「おいおい……こんなのがあったのかよ」
「はい。恐らくこれが最大の大物となると思います。引き続き耳掃除を継続します」
大きい耳垢を取り除いた周辺に残っている小さい欠片や粉を掻き出していき、改めて中を覗き、耳垢の除去が終わった事を確認します。
「耳垢の除去を確認。これより梵天の使用、その後ローションの使用に移行します」
耳かきを置き、梵天を手に取ります。
「クルクル……ゴシゴシ……クルクル……ゴシゴシ……」
マスターの耳の中を上下に擦り、左右に回し、梵天によって耳かきでは取り切れない粉を絡めとっていきます。しばらくの後に梵天を縫うと、白い毛の一部が黄色くなっているのを確認しました。
「梵天終了、ローションに移行します……ヌリヌリ……ヌリヌリ……ペチャペチャ……」
綿棒にローションを絡め、耳垢を取った部分に念入りに塗っていきます。こうすれば、耳垢を取った後の耳の肌荒れを防げますから、念入りに、念入りに。
「……なぁ、ブルボン、流石に塗りすぎじゃないか?」
「あ……申し訳ありません」
気づけば少々塗りすぎていました。今後は注意しないといけません。
「それでは、最後に失礼して……ふ~……ふ~……」
耳かきの一番最後、ローションを塗った部分への息の吹きかけ。息を吹きかけるたびにマスターの肩が僅かに動きます。
「ミッション完了。これより反対側の耳掃除に移行します。マスター、反対側を向いてください」
そうお願いすると、マスターは一度体を起こし、反対側を向いてくれます。さぁ、反対側に取り掛かりましょう。
「タオルでゴシゴシ……ゴシゴシ……綿棒でゴシゴシ……ゴシゴシ……」
最初と同じ手順でまずは耳の外側をタオルと面倒で掃除していき、さぁ、耳の中……を……。
「……こちらも、あまり汚れはありません」
覗き込んだ耳の中には小さな耳垢が見えるぐらいで、いたって綺麗な状態となっています。マスターの耳掃除はしばらくやっていないので、ここまで綺麗なはずはないのですが……。
内心で首を傾げながらも、取り合えず目に付いた汚れを取っていきますが、正直囁く必要すらないぐらいの簡単な掃除です。後は……。
「では、奥の確認をしていきます」
耳かきを奥の方に差し込み、感触を頼りに探っていくと……ありました。前の耳の中にあったような、固い感覚が。
「奥に耳垢を確認。これより除去を開始します……カリカリ……カリカリ……」
先程と同じように耳垢の周りを耳かきで掻きながら探りつつ、耳垢の除去に取り掛かりますが、こちらは表面が多少崩れこそすれど、やはり簡単に剥がれそうにありません。
「カリカリ……ガリガリ……ガリガリ……ズズズ……」
表面の剥がれた耳垢を掻き出しつつも本体を取ろうとしますが、マスターも痒いのを我慢しているのが、口に力が入ってしまっています。これはなんとかしなければ。
「マスター……我慢をお願いします。我慢……我慢……」
マスターの耳元で囁きながら、頭を撫でていきます。少しでも力を抜いてもらえるように我慢……我慢……と呟いていると、マスターの体から少しづつ力が抜けていってくれます。
「では、処置を再開します」
マスターから力が抜けたのを確認し、耳かきを再開します。こちらも端から少しづつ剥がしていきます。
「カリカリ……ガリガリ……ガッ……ベリッ……」
「ガリガリ……ガリガリ……ガリガリ……」
集中的に同じ場所から剥がしていったおかげか、少しづつ剥がれてきました。このまま、力を入れて、グッと……。
「耳垢が剥がれたのを確認。このまま引き揚げます」
引き上げた耳垢は、こちらもかなり大きく分厚いもので、先に掃除した方も含め、なぜこれだけが大きいのか疑問が残ります。もしかしたら……。
「耳垢の除去を完了。これより周囲の掃除及び梵天、ローションの順番で移行していきます」
疑問を一度置いて置き、先の耳掃除と同じ手順で掃除を続けていきます。
「ふ~……ふ~……マスター、耳かき、完了です」
「はぁ~……今回は、色々と凄かったな。まさかあんな塊が出てくるなんてな」
息の吹きかけを終えると、マスターも大きく息を吐き、安心したように脱力します。さぁ、ここから疑問を解消させなければ。
「ところでマスター。私が耳かきをしていない間、もしかしてご自身で耳かきをしていましたか?」
「あ? ああ……流石にレースに集中してる時に頼むのも悪いからな。一応自分で調べてやってみたんだが」
「耳垢の原因はそれです」
「へ!?」
私の言葉にマスターは驚いた顔をでこちらを向いてきました。
「耳かきは繊細な作業です。今回はマスターが無暗に耳かきを入れていたせいで奥に細かい耳垢が押し込まれ、固まったと予想されます。もしそのまま続けていたら完全に耳穴が塞がっていた可能性もあります」
「マジかぁ……え、それじゃぁ俺、自分で耳かきやらないほうがいいのか?」
「はい。ですので、今後もマスターの耳かきは定期的に私が行います」
「いや、それは流石に……」
「わ、た、し、が。行いますので、マスターはそれに従ってください」
「……はい」
申し訳なさそうにするマスターに改めて宣言すると、マスターはどこか諦めたように息を吐いて、顔を横に向けました。
「それでは、これよりお昼寝に移行します。マスター、何か希望はありますか?」
「そうだな……手を握っていてくれるか?」
「了解です、マスター」
マスターの手を握り、それから、頭を撫でていきます。そうすると、マスターは静かに目を閉じ……やがて、寝息を立て始めました。
「……おやすみなさい、マスター。どうか良い夢を」
なお、今回初めて活動報告を書きましたので、そちらも見て頂ければ幸いです。